【井上陽水の歴史】はこちら!
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Best30では取り上げなかった、『氷の世界』の残りの2曲
「僕の勝手なBest30【井上陽水編】」では、井上陽水の楽曲を30位から1位まで紹介してきました。
ただし、第10位に2曲を選んだため、実際に取り上げた曲数は31曲です。
その中で、アルバム『氷の世界』からは、なんと全13曲中、11曲が取り上げれる結果となりました。
ここまで紹介すると、『氷の世界』の中で、触れていない曲は2曲だけになります。
『氷の世界』は、ぜひとも皆様に聴いてほしいアルバムなので、この機会を借りて、「特別編」として全曲紹介を完成しようと考えました。
その2曲が、今回取り上げる『待ちぼうけ』と『はじまり』です。
『待ちぼうけ』には、濃密なアルバムの中で、ふっと表情を変える面白さがあります。
『はじまり』には、曲単体ではなく、アルバムの曲順の中でこそ分かる聴き(効き)方があります。
『待ちぼうけ』――『氷の世界』に置かれた、軽みと寂しさ
超訳:『待ちぼうけ』の世界
誰かを待っている時間だけが、妙に長く伸びていきます。
待っている相手は来ません。けれども、待っている自分もその場を離れられません。
本当は寂しいのに、その寂しさを大げさな悲劇にはしない。
少し間の抜けた時間の中に、人を待つことの可笑しさと切なさがにじんでいます。
💡 あわせて読みたい:公式の原曲歌詞はこちら(外部サイトへ移動します)
まずは『待ちぼうけ』をYouTube動画でお聴きください
『1本目(スタジオ録音音源です。) 下の画像をクリックしてください。

楽曲名:待ちぼうけ
歌唱:井上陽水
作詞・作曲:井上陽水
収録アルバム:『氷の世界』
アルバム発売:1973年12月1日
2行解説
『待ちぼうけ』は、『氷の世界』の中でも、張りつめた孤独や深い情念とは少し違う表情を見せる一曲です。深刻になりすぎない軽さと、どこか乾いたユーモアが、このアルバムに別の手触りを加えています。
2本目 2014年4月27日・宇都宮市文化会館公演のライブです。下の画像をクリックしてください

クレジット
井上陽水「待ちぼうけ(ライブ)」
作詞・作曲:井上陽水
収録:アルバム『氷の世界ツアー2014 ライブ・ザ・ベスト』
発売:2014年9月10日
音源:2014年4月27日・宇都宮市文化会館公演
2行解説
「待ちぼうけ」は、誰かを待つ時間の甘さと虚しさを、井上陽水らしい軽やかな言葉遊びで包んだ一曲です。このライブ音源では、歌詞のユーモラスな表情の奥にある孤独感が、年齢を重ねた陽水の声によってより深く響きます。
※当ブログでは公式による配信ではないものは、著作権上の配慮に基づき、動画の直接埋め込みではなく、独自に用意した画像から外部サイトへリンクする形式を採用しております。
『待ちぼうけ』がアルバムに加えているもの
アルバム『氷の世界』には、聴き手の心を強くつかむ曲がいくつも並んでいます。
『帰れない二人』には、夜の冷たさと二人の切実な距離があります。
『白い一日』には、言葉にできない沈黙と、静かな日常の濃密さがあります。
『心もよう』には、手紙という形を借りた深い孤独があります。
『自己嫌悪』には、自分自身を見つめる痛みがあります。
その中で、『待ちぼうけ』は少し違う場所に立っている曲です。
この曲は、重く沈み込んでいく作品ではありません。
強いドラマで聴き手を引き込む曲でもありません。
むしろ、どこか軽く、少しとぼけたような調子があります。

待っているのに、相手は来ない。
来るのか来ないのかも分からない。
帰ればよいのに、なかなか帰れない。
この状況だけを見れば、寂しさや空振りの感情が前に出てもおかしくありません。
しかし、井上陽水はその状態を大げさには描きません。悲しみを真正面から歌うのではなく、少し斜めから眺める。その絶妙な距離の取り方に、初期陽水らしい独特の味わいと面白さがあります。
『氷の世界』は、ただ名曲を並べただけのアルバムではありません。
冷たさ、孤独、恋、日常、自己嫌悪、そして飄々としたユーモアまでが、一枚の中に収められています。
その中で『待ちぼうけ』は、アルバムの表情を少し柔らかくしています。
強烈な一撃を放つ曲ではありません。
けれども、この曲があることで、『氷の世界』は重苦しさ一辺倒にはなりません。
聴き手の肩から、ふっと力を抜かせる。
『待ちぼうけ』には、そんな不思議な効き方があります。
『はじまり』――『あかずの踏切り』から『帰れない二人』へ移り行く、なくてはならない一曲
『はじまり』の世界
💡 あわせて読みたい:公式の原曲歌詞はこちら
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まずは『はじまり』をYouTube動画でお聴きください
1本目・・・まずは公式動画からご覧ください。
クレジット
井上陽水「はじまり(Remastered 2018)」
アルバム『氷の世界』収録
リリース:1973年12月1日
作詞・作曲:井上陽水
アコースティック・ギター:井上陽水
2行解説
『氷の世界』の入口(2曲目)に置かれた「はじまり」は、短いながらもアルバム全体の緊張感と孤独な空気を静かに告げる楽曲です。井上陽水の声とアコースティック・ギターが、これから始まる濃密な世界への扉をゆっくり開いていきます。
2本目 2014年5月22日、東京・NHKホール公演の模様です。 下の画像をクリックしてください。

クレジット
井上陽水「はじまり」
映像:『氷の世界ツアー2014 ライブ・ザ・ベスト』より
公演:2014年5月22日、東京・NHKホール公演
作詞・作曲:井上陽水
編曲:星勝
オリジナル収録アルバム:『氷の世界』
2行解説
1973年の名盤『氷の世界』を、40年後のステージ上であらためて開くような短い導入曲です。
わずか41秒ほどの演奏ながら、井上陽水の声が会場の空気を一気に変え、アルバム世界への入口を静かに作っています。
※当ブログでは公式による配信ではないものは、著作権上の配慮に基づき、動画の直接埋め込みではなく、独自に用意した画像から外部サイトへリンクする形式を採用しております。
『あかずの踏切り』から『帰れない二人』へ続く流れの中で
アルバム『氷の世界』では、『あかずの踏切り』のあとに『はじまり』が置かれ、その次に『帰れない二人』が続きます。
この曲順で聴くと、『はじまり』の役割がよく分かります。

『あかずの踏切り』が開いた少し不穏な景色から、いきなり『帰れない二人』の夜へ入るのではなく、その間に『はじまり』が置かれています。
この短い一曲があることで、アルバム序盤の流れにひと呼吸が生まれます。
そして、そのひと呼吸のあとに間を置かず『帰れない二人』の静かなイントロが始まるからこそ、あの曲の冷たさや切なさが、より自然に立ち上がってくるのです。
『はじまり』から『帰れない二人』へ――アルバムで聴くからこそ分かる魅力
『帰れない二人』は、単独で聴いても圧倒的な名曲です。
僕の勝手なBest30でも、第1位に選びました。
静かなギターの爪弾き。
夜露の冷たさ。
街の灯りが消えていくような情景。
結んだ手と手のぬくもり。
どの要素を取っても、ほかの曲では代えがたい深さがあります。
けれども、アルバム『氷の世界』を最初から聴くと、『帰れない二人』の響き方は少し変わります。

『あかずの踏切り』で幕が開く。
そのあとに『はじまり』が来る。
そして、『帰れない二人』が静かに始まる。
この曲順で聴くと、『帰れない二人』は、単独曲としてではなく、アルバム序盤の大きな場面として立ち上がってきます。
この感覚は、好きな曲だけを選んで聴く方法では、なかなか味わえません。
もちろん、1曲ずつ自由に聴く楽しさもあります。
しかし、アルバムには曲順があります。
そして、その曲順によって、同じ曲でも印象が変わることがあります。
『はじまり』は、そのことを教えてくれる曲です。
この曲があることで、『帰れない二人』は、ただの3曲目ではなく、そこへ向かう準備を経て現れる曲になります。
その意味で、『はじまり』は、『氷の世界』というアルバムの序盤を語るうえで外せない存在です。
Best30とは別の聴き方で見えてくるもの
『待ちぼうけ』と『はじまり』は、Best30本編では取り上げませんでした。
しかし、この2曲をあらためて聴くことで、アルバム『氷の世界』を別の角度から見ることができます。
Best30では、歌詞の深さやメロディの強さ、歌声の迫力など、「一曲ごとの印象」を中心に30位から1位までを選んできました。
一方で、アルバム全体を見渡す場合は、一曲単体の強さだけでは測れない別の視点が必要になります。

曲と曲の並び、全体の濃淡、聴き手の気分を変える配置、そして次の名曲を引き立てる働き。この2曲に光を当てることで、『氷の世界』は単なる名曲の集まりではなく、一枚の立体的なトータル・アルバムとしてその真価を現すのです。
終わりに
今回、『待ちぼうけ』と『はじまり』を取り上げたことで、当ブログ内での『氷の世界』全曲紹介は、ようやく形になります。
本編のBest30に入れなかった判断は今でも間違っていたとは思いませんが、この2曲を紹介して初めて、アルバム『氷の世界』の全曲紹介が完成することになります。
これらを加えることで、アルバムの立体的な姿をようやく皆様に提示できました。

次回は、いよいよ「僕の勝手なBest30【井上陽水編】」の総括に入ります
31曲をアルバム別に振り返ると、どのアルバムから多くの曲が選ばれたのか。
そして、その結果から何が見えてくるのか。お楽しみに!

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