五輪真弓の歴史は、こちらから!
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第2位は『少女』です。
『少女』は、1972年10月21日に発売された五輪真弓のデビューシングルです。同日にはファーストアルバム『少女』も発表され、21歳の五輪真弓はシンガーソングライターとして本格的なスタートを切りました。
アルバム制作のため、同年6月に渡米。L.A.のクリスタルサウンドスタジオでジョン・フィッシュバックのプロデュースによる録音が行われ、キャロル・キングらも参加しました。さらに五輪真弓のためのレーベルが設立されるなど、新人としては異例のデビューが当時大きな話題となりました。
この『少女』を上位に配置たのは、デビュー曲とは思えないくらいの、落ち着きと、深みを感じるからです。題名から連想する若さや青春のきらめきよりも、この歌が見ているのは、生きているものが少しずつ姿を変え、やがて去っていくという現実なのです。

超訳
真冬の陽だまりで 少女はひとり景色を眺めていた
消えてゆく雪も 老いてゆく命も 同じ場所にはとどまらない
大切にしていた夢さえ ある日突然かたちを失う
そして少女は 自分にもいつかここを離れる日が来ると知っていた
💡 あわせて読みたい: 公式の原曲歌詞はこちら(外部サイトへ移動します)
まずは、YouTube動画(公式)をお聴きください。
【公式動画クレジット】 動画:五輪真弓「少女」Official Video 映像:「五輪真弓 Concert Tour '92~'93」より 作詞・作曲:五輪真弓 提供:MUSIC Liverary 発売:1972年10月21日 【2行解説】 五輪真弓のデビュー曲『少女』を、後年のコンサート映像で味わえる公式動画です。 ギターを手に歌う姿を通して、若き日に書かれた作品が年月を経ても揺らがないことを実感できます。
『少女』という題名から想像する歌とは、かなり違う
恋も青春も、物語の中心にはない
『少女』という題名を初めて見れば、若い女性の恋や青春を描いた歌を想像しても不思議ではありません。ところが、ここに置かれているのは真冬の縁側、陽射し、溶けていく雪、年老いていく犬、木枯らし、そして遠くを見る一人の少女です。
恋人との会話もなければ、若さを謳歌する場面もありません。主人公は誰かへ感情をぶつけるのではなく、身の回りで起きている変化をじっと受け止めています。

若い人物を描きながら、その視線の先に老いと消失を置く。1972年のデビュー曲として考えると、かなり大胆な発想です。題名が示す年若さと、作品が扱う主題との落差が、最初からこの歌を独特なものにしています。
少女は「何も知らない子ども」ではない
主人公を無邪気な子どもとして読むと、この作品の重要な部分を見落としてしまいます。彼女は目の前の雪が消える様子だけでなく、かわいがっている命が老いることも、抱いていた夢が壊れることも知っています。
さらに最後には、自分自身にもいつか現在の場所を離れる日が来ると分かっている。未来を知らない存在ではなく、まだ若いのに「永遠ではないもの」の存在に気づいてしまった人物として描かれているのです。
真冬の暖かさが、かえって「消失」を際立たせる
明るい陽射しの中で雪が消えていく
この歌の巧さは、寒さだけで冬を描いていないところにもあります。舞台は真冬ですが、縁側には陽が当たり、そこには人が座っていられるほどの穏やかさがあります。
その暖かさによって起きているのが、積もった雪の融解です。陽射しは心地よい一方で、それまでそこにあった白い景色を少しずつ消していく。心地よさと喪失が、一つの出来事の中に存在しています。
春へ近づくことを単純な希望として扱わないところが面白い。季節が動けば新しいものが生まれますが、そのためには今ある風景が終わらなければならない。少女はその変化を目の前で見ています。
木枯らしが境界線を越えていく
やがて木枯らしが登場すると、景色の性格が変わります。穏やかな陽射しとは対照的に、風は立ち止まらず、目の前を通過していきます。

そこにあるのは、少女が自分の意思で止めることのできない動きです。雪も命も夢も、同じ形のまま保存することはできない。自分では支配できない変化が世界にはあるという事実を、この歌は大げさな言葉を使わずに示しています。
「かわいい仔犬」に老いを重ねた21歳の視線
生命を愛らしさだけで描かなかった
僕が『少女』で特に気になるのが、犬たちの存在です。少女と仔犬という組み合わせだけなら、いかにも穏やかで愛らしい場面になります。ところが五輪真弓は、その命にも老いが訪れることを歌の中へ持ち込みました。
現在かわいいからといって、その姿が永久に続くわけではない。それは当たり前の事実ですが、青春期の主人公を描くデビュー曲にわざわざ置く発想は珍しいと思います。
しかも五輪真弓自身、この作品を世に出した時は21歳でした。人生の晩年から過去を振り返って書いた歌ではありません。音楽活動の出発点で、すでに生命の有限性を作品の中へ取り込んでいたことに、僕は作家としての早熟さを感じます。
海外録音で生まれた、日本の縁側の風景
L.A.という制作環境と、身近な生活風景
『少女』の制作背景には、もう一つ興味深い対照があります。録音が行われたのはL.A.でしたが、表題曲に現れるのはアメリカ西海岸を思わせる景色ではありません。
描かれているのは、真冬の縁側という日本の日常に近い場所です。海外のミュージシャンとともに録音したからといって、海外風の題材へ合わせるのではなく、自分の内側にある景色を日本語で歌っています。

僕はこの組み合わせに、デビュー時から五輪真弓が単純な模倣に向かわなかった理由を見る気がします。外から受けた音楽的刺激と、自分が知っている生活の景色を別物にせず、一つの作品に成立させている。そこに『少女』の個性があります。
大きな夢が壊れる――青春歌として異例の地点
未来への期待だけを語らない
若者を主人公にした歌では、夢はこれから実現するものとして扱われることが少なくありません。しかし『少女』では、夢そのものにも壊れる可能性があることを早い段階から認めています。
だからといって、この作品は夢を持つことを否定しているわけではないでしょう。大切だからこそ失ったときの衝撃が大きい。その両方を少女の中に置いています。
夢を持つことと、夢が永遠ではないと知ることは両立する。若さを無敵の時間として美化せず、希望と挫折が同じ人生の中にあることを認めている。この視点が『少女』を年齢の枠を越えて聴ける歌にしています。
遠くを見る少女が最後に知っていること
物語は「いつか自分も」という地点へ向かう
ここまでに登場した雪、犬、夢には、一つの共通点があります。いずれも少女の前で変化するものであり、その姿を永久に保つことはできません。

そして物語の最後で、その法則は少女自身にも及びます。他人や動物だけが変わるのではなく、自分も例外ではない。現在座っている縁側も、いつか離れる場所になることを彼女は知っています。
ここで初めて、これまで少女が見てきたものが一つにつながります。雪の融解、生命の老い、夢の崩壊は、最後に「自分も変わっていく」という認識へ集約される。この構成があるため、風景を並べただけの歌にはなっていません。
『少女』から始まった五輪真弓という作家
このBest10では、別れを扱った曲、過去を振り返る曲、海を越えて広がった歌、悲しみから先へ進もうとする作品など、五輪真弓のさまざまな表情を見てきました。
その流れをさかのぼってデビュー曲へ戻ると、後年にもつながる作家としての特徴が見えてきます。それは感情を長く説明するのではなく、人物の周囲に具体的な景色を置き、その景色から人間の内面を浮かび上がらせる方法です。
『少女』では、縁側に座る一人の人物と、その目に入る限られたものだけで世界が作られています。小さな生活風景から人生そのものへ視野を広げる力が、すでに最初の一曲に現れていた。ここは五輪真弓の出発点を考えるうえで見逃せません。

終わりに
『少女』は、真冬の縁側に一人の少女が座り、身の回りで起きている変化を眺めています。
しかし、その視界には雪の融解があり、生命の老いがあり、夢の挫折があります。そして最後には、自分自身にも現在の場所を離れる時が来ると分かっている。
1972年、五輪真弓はこの歌からプロとしての歩みを始めました。華やかな成功を宣言する曲ではなく、一人の少女が変わりゆく生命と自分の行く先を見ている歌を最初に選んだ。その事実まで含めて、『少女』は五輪真弓という作家の原点を鮮明に伝える一曲だと思います。

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