僕の勝手なBest10【コブクロ編】第7位『YELL~エール~』―旅立つ背中に春を灯す歌

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音声を先に聴くことで、『YELL~エール~』に込められた門出への思いと、記事の要点をよりつかみやすくなります。

第7位は『YELL~エール~』です

2001年3月22日に発売されたコブクロのメジャーデビュー曲『YELL~エール~』を、僕の勝手なBest10の第7位に選びました。

この曲には、僕の中で忘れられない二つの場面があります。

最初に意識したのは、20年以上前、母方の祖母を中心とする「親族のあつまり」でした。祖母の子どもや孫、その配偶者や子どもたちまで、総勢49人が一堂に会しました。

その席で、いとこの中では年下にあたる兄弟二人が歌ったのが、『YELL~エール~』でした。
当時の僕は、思いがけず耳にしたこの曲を、「いい曲だな」と少し興味を持った記憶があります。

しかし、その兄弟の長兄は数年前に病気で亡くなりました。
母の兄弟も、一番下の弟を残して皆旅立ちました。

親戚づきあいは、世代が移るにつれて薄くなっていきます。今振り返ると、あの日、49人が同じ場所に集まれたことには、大きな意味があったと思います。

本当に、歳月は残酷です。

それでも、『YELL~エール~』を耳にすると、兄弟二人の歌声や、周囲で笑っていた親族の姿が鮮明によみがえります。


もう一つの記憶は、長年勤務した銀行を離れ、福岡の病院(出向)へ向かった朝です。

大分を一人で出発し、高速道路に乗って最初に流した曲が『YELL~エール~』でした。気持ちは意気揚々としていましたが、まったく異なる世界へ入る心細さも抱えていました。

その朝、この歌は初めて、誰かの門出を歌う曲ではなく、僕自身に向けられた言葉として聞こえました。

僕にとって『YELL~エール~』は、単なる卒業ソングでも、若者だけの応援歌でもありません。親族が集まった日の歌声と、一人で新しい場所へ向かった朝を、今も結んでいる曲なのです。

超訳

君はいま、新しい人生の入口に立っている。
その先には、まだ見ぬ出会いと、君だけの夢が待っている。
迷いも不安も抱えたままでいい。胸を張って歩き出せ。
いつか振り返ったとき、今日の一歩が未来を開いたと気づくだろう。

💡 あわせて読みたい: 公式の原曲歌詞はこちら(外部サイトへ移動します)

まずはYouTube動画でお聞きください

共通クレジット
楽曲名:YELL~エール~
アーティスト:コブクロ
作詞・作曲:小渕健太郎
編曲:笹路正徳
レーベル:ワーナーミュージック・ジャパン

『YELL~エール~/Bell』は、2001年3月22日に発売されたコブクロのメジャーデビューシングルです。
個別クレジット
映像種別:公式ミュージックビデオ
収録シングル:『YELL~エール~/Bell』
タイアップ:フジテレビ系『ウチくる!?』エンディングテーマ


2行解説
小さな蕾が冬を越えて花開く姿に、新しい道へ踏み出す人の可能性を重ねたコブクロのメジャーデビュー曲。
黒田俊介の力強い主旋律と小渕健太郎の伸びやかなハーモニーが、別れの寂しさを明日へ進む力に変えていきます。
個別クレジット
映像種別:公式ライブ映像
収録公演:KOBUKURO LIVE TOUR ’06 “Way Back to Tomorrow” FINAL
収録日:2006年12月3日
収録会場:名古屋レインボーホール
映像作品発売日:2007年6月13日
収録作品:『LIVE TOUR ’06 “Way Back to Tomorrow” FINAL』


2行解説
全国14都市23公演を巡ったツアーの最終公演で、締めくくりに披露されたメジャーデビュー曲。
二人の堂々とした歌声に観客の声も重なり、路上時代から積み上げてきた歩みを鮮明に伝えます。

冬を越えて初めて見える春

まだ咲いていない蕾を見つめる

『YELL~エール~』で描かれる春は、単なる季節の変化ではありません。

長い冬を越えた者だけが迎えられる、新しい出発の象徴です。寒さの中で耐えてきた日々も、迷いながら刻んだ足跡も、花を咲かせるために必要だったのだと、この曲は語りかけます。

寒い季節を越え、春の光の中で開こうとする蕾

この曲が見つめるのは、すでに美しく咲き誇っている花ではなく、これから咲こうとする蕾です。

蕾の段階では、その先にどのような花が開くのか分かりません。冷たい風に耐えきれるという保証もありません。それでも、内側には次の季節を迎えるための力が蓄えられています。

まだ結果を出していなくても、今日まで重ねた時間は失われない。
今が厳しい季節であっても、その人の中には明日へ向かう力が残っている。

成功した人を称賛するのではなく、結果が見えない段階で一歩を選ぶ人を認める。そこに、『YELL~エール~』の誠実さがあります。

不安を消さずに送り出す

「大丈夫」と断言しない応援歌

誰かを励ますとき、僕たちはつい「大丈夫」「きっとうまくいく」と言ってしまいます。しかし、新しい環境へ向かう人の先に何が待っているのかは、誰にも分かりません。

進学、就職、転居、転職。どの選択にも期待がありますが、慣れ親しんだ場所を離れる寂しさや、思いどおりにならないかもしれない怖さも伴います。

『YELL~エール~』は、そうした感情を無理に消そうとはしません。ためらいを抱えたままでも、自分が思い描いた姿へ向かって進めると伝えています。

新しい道の先へ歩き始める人物

この歌が認めるのは、成功の確約ではなく、門を出ようとする決意です。自信に満ちた人だけでなく、心を揺らしながら出発する人にも同じ声を送っています。

勇者とは、迷わない人ではない

曲の中では、新しい一歩を踏み出す人の姿が、勇者に重ねて描かれています。

勇者という言葉からは、強く、堂々と前進する人物を想像しがちです。しかし、この作品が描くのは、恐れを知らない人ではありません。

大切な場所を離れる寂しさを知り、それでも自分の足で境界を越える人です。

慣れ親しんだ場所を離れ、新天地へ向かう人物

勇気とは、怖さがないことではなく、怖さに自分の選択を明け渡さないことなのでしょう。『YELL~エール~』は、その小さくも確かな決断を「勇者」という言葉でたたえています。

一人を励ます歌が、二人の歌声で広がっていく

『YELL~エール~』は、一人の主人公へ向けて言葉を送る歌です。しかし、コブクロが歌うことで、その声は一方向から届くものではなくなります。

黒田俊介が主旋律を担い、小渕健太郎の声が重なると、旅立つ人の背後に複数の存在が立っているように聞こえます。家族、友人、かつて同じ場所で過ごした人たち。それぞれが別の場所から、同じ人の門出を見送っているようです。

ここで重要なのは、二人の声質の違いそのものではありません。

一人に向けられた励ましが、二人の歌声によって、多くの人から託された言葉へ変わることです。

だからこの曲は、卒業式や送別の場でも歌われてきたのでしょう。聴き手は歌詞の主人公になるだけでなく、誰かを見送る側にも回ることができます。

『YELL~エール~』は、旅立つ人だけの歌ではありません。去る人と残る人を、同じ旋律の中に立たせる歌なのです。

二つの映像が見せるコブクロの歩み

出発点を記録したミュージックビデオ

最初のミュージックビデオには、メジャーデビュー期のコブクロが持つ真っすぐな緊張感があります。

後年の大規模ライブで見せる風格とは異なり、自分たちの歌を信じ、目の前の人へ届けようとする姿が前面に出ています。これからどのような道が待つのか、二人にもまだ分からなかった時期の映像です。

完成された成功者が若者を励ましているのではありません。コブクロ自身も新しい門の前に立ち、同じように踏み出そうとする人へ声を送っていました。

積み重ねた時間を刻むライブ版

2006年のライブ音源では、この曲がまた違った重みをもって響きます。

メジャーデビューから約5年。多くの観客を前にした二人が、ツアーファイナルの最後に原点の歌を披露します。かつて先の見えない場所から掲げた言葉を、実際にその先まで進んできた二人が歌っているのです。

観客から返る声も、この演奏の重要な一部です。コブクロが客席を励ますだけでなく、客席も二人の歩みをたたえる。歌い手から聴き手へ向かっていたエールが、会場全体を往復しています。

ミュージックビデオが出発時の決意を映したものなら、ライブ版は積み重ねた歳月からの回答です。二つを続けて見ることで、一曲の中に刻まれたコブクロの変化まで感じられます。

なぜ第7位なのか

『YELL~エール~』は、コブクロの原点を語るうえで欠かせない曲です。

メジャーデビュー曲としての意味、二人の声の個性、門出を迎える人に届く分かりやすさ。どの面から見ても、代表作の一つに数えるべきでしょう。

それでも、第1位ではなく第7位に置きました。このBest10では、知名度や売上だけでなく、僕が各曲から受け取ったもの、コブクロの歩みの中で担う役割、聴き返すたびに見えてくる深さを合わせて順位を決めています。

『YELL~エール~』は、二人の音楽が広く世の中へ踏み出した場所です。その後のコブクロは、愛する人との別れ、喪失、家族、記憶などを、さらに深く描く作品を生み出していきました。

第7位という順位は、この曲を低く評価した結果ではありません。ここから始まった道の先に、僕の心をさらに強く動かした曲があるということです。

終わりに

『YELL~エール~』は、聴く人の境遇に合わせて意味を変える曲です。

僕にとっては、親族が一堂に集まった日と、一人で新天地へ向かった朝が、この歌の中でつながっています。にぎやかな記憶と孤独な出発が、同じ旋律に刻まれているのです。

歳月は、かつての景色をそのまま残してはくれません。しかし音楽は、そのときの声や表情を、現在の自分の中へ呼び戻してくれます。

『YELL~エール~』は、新しい道へ向かう人を励ますだけの歌ではありません。

過ぎた日々と別れた人を胸に刻みながら、今を生きる者が再び前を向くための歌でもあります。冬の寒さを知る人の背中に、次の春を静かに灯してくれるのです。

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