🎸僕の勝手なBest10【サイモン&ガーファンクル編】第3位『スカボロー・フェア/カンティクル』―美しい歌に潜む二つの物語

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音声を先に聴くことで、『スカボロー・フェア/カンティクル』の世界観と記事の要点をよりつかみやすくなります。

第3位は『スカボロー・フェア/詠唱』です。

サイモン&ガーファンクル版の『Scarborough Fair/Canticle』は、1966年10月10日に発売された3作目のアルバム『Parsley, Sage, Rosemary and Thyme(パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム)』の冒頭に収録されました。

同作は全米アルバムチャート4位を記録し、二人にとって初めてトップ10へ入ったオリジナル・アルバムとなりました。この曲も映画『卒業』で広く知られ、1968年のシングル発売時には全米11位まで上昇しています。

僕が最初に惹かれたのは音でした。古い英国民謡の旋律、細やかなギター、アート・ガーファンクルの澄明な歌声、そこへ加わる別の旋律。その響きが、見たことのない遠い土地を思わせたのです。

後年、歌詞と制作背景をたどると、優美な音の内側で、失われた恋と戦争をめぐる二つの物語が同時に進んでいたことが見えてきました。

超訳

あの人に伝えてほしい、僕が今も覚えていると。
けれど、もう一度恋人になるために残されたのは、叶えられない願いばかり。
スカボローへ向かう道に、終わった恋の記憶だけが何度もよみがえる。

🎥まずはいつものように、YouTubeの公式動画をご覧ください。

共通クレジット
曲名:Scarborough Fair/Canticle(スカボロー・フェア/詠唱)
アーティスト:Simon & Garfunkel(サイモン&ガーファンクル)
原曲:イングランドに伝わるトラディショナル・バラッド
編曲:Paul Simon/Art Garfunkel
ボーカル:Paul Simon/Art Garfunkel
公式チャンネル:Simon & Garfunkel

作者不詳の伝承歌「Scarborough Fair」に、ポール・サイモンの旧作「The Side of a Hill」を改作した「Canticle」を対旋律として重ねた作品です。
① スタジオ音源
動画タイトル:Simon & Garfunkel - Scarborough Fair/Canticle (Audio)
収録アルバム:『Parsley, Sage, Rosemary and Thyme(パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム)』
アルバム発売日:1966年10月10日
プロデュース:Bob Johnston
音源形式:公式スタジオ音源
2行解説
英国の伝承歌と反戦的な対旋律を組み合わせ、二つの物語を一つの音楽へ織り込んだスタジオ作品です。
繊細なギターと幾層もの歌声が、古い恋歌の背後に別の時代の影を映し出します。
② セントラルパーク・ライブ
動画タイトル:Simon & Garfunkel - Scarborough Fair (from The Concert in Central Park)
公演名:The Concert in Central Park
収録日:1981年9月19日
収録場所:セントラルパーク/ニューヨーク
収録作品:『The Concert in Central Park』
観客数:約50万人
音源形式:公式ライブ映像

2行解説
約11年ぶりに二人が同じ舞台へ立った歴史的公演で、年月を経た歌声の深まりが味わえます。
精巧なスタジオ版とは異なり、大観衆の気配を含みながら旋律の美しさをまっすぐ伝える演奏です。

古い伝承歌を、二人の音楽へ

『スカボロー・フェア』の旋律は、はっきりとした頂点へ向かわず、同じ場所を巡るように進みます。大きな起伏を設けない流れが、聴き手をゆっくりと曲の内側へ導きます。

指先が刻むアコースティックギター

ポール・サイモンのギターは、強いビートを押し出すのではなく、一音ずつ弦をつま弾くフィンガーピッキングで旋律を支えます。一定のリズムを保ちながらも機械的ではなく、弦の振動が歌声の間を縫うように動きます。

伝承の旋律とレコード制作の精密さ

曲の骨格には古いバラッドの趣がありますが、録音は素朴な再現ではありません。ギター、歌声、背景の楽器を細かく配置し、サイモン&ガーファンクルの作品として組み立て直しています。

アート・ガーファンクルの声が作る距離

主旋律を担うアート・ガーファンクルの声は、高音域まで滑らかに伸びながら、感情を強く押し出しません。目の前の相手へ訴えるというより、遠くの人へ言葉を届けようとする響きです。

歌声はギターの上へ乗るのではなく、弦の音と一緒に流れていきます。人の声と楽器の境目が薄くなり、古い物語が遠方から聞こえてくるような感覚を生んでいます。

歌詞を知ると変わる声の表情

最初は、その歌声の美しさに耳を奪われます。しかし内容を知った後では、手の届かない相手を呼ぶ声にも聞こえてきます。音は同じでも、聴き手の理解によって受け取り方が変わるのです。

「Scarborough Fair」と「Canticle」

サイモン&ガーファンクル版を特徴づけているのは、古い恋歌へ別の歌を重ねた構造です。「Canticle」は、ポール・サイモンが以前に発表した反戦歌「The Side of a Hill」を基に作られました。

前面の恋歌、後方の反戦歌

前面では、スカボローへ行く旅人に昔の恋人への伝言を頼む物語が進みます。その後方では、兵士や戦争をめぐる「Canticle」の言葉が、別の旋律によって歌われます。

  • 主旋律では、離れて暮らすかつての恋人への思いが語られる。
  • 対旋律では、戦場へ向かう兵士と命令を下す側の姿が描かれる。
  • 二つの歌を、自分の願いだけでは変えられない現実が結んでいる。

恋歌と反戦歌を交互に並べるのではなく、同じ時間の中で進める。二つの声が近づくにつれ、個人的な別れと戦争による喪失が響き合います。

調和しながら異なる方向を向く二人

一般的なデュエットとは異なり、二人は別々の言葉と旋律を同時に歌います。音としては結びついているのに、描かれる世界は同じではありません。この一致と不一致が、曲にかすかな緊張を与えています。

耳を向ける場所で印象が変わる

最初は主旋律を追い、次にポール・サイモンの対旋律へ意識を移す。さらに全体を聴き直すと、二つの歌が互いの意味を変えていることに気づきます。

録音が生み出した立体感

スタジオ版では、主旋律、対旋律、ギター、背景の楽器が異なる位置から聞こえるように設計されています。複雑な構造でありながら、それを意識しなくても一つの美しい歌として味わえるところが見事です。

スタジオ版とセントラルパーク版

今回の二本の動画には、1966年のスタジオ音源と1981年のライブ映像が収められています。同じ曲を異なる時代の演奏で聴くと、変わらない部分と、年月によって加わったものが見えてきます。

若い二人が完成させたスタジオ版

スタジオ版は、二つの旋律が絡み合う過程を細部まで設計しています。ギターと声の距離も近く、一つひとつの音が鮮明です。若い二人が録音技術を使い、自分たちにしか作れない音楽を求めた成果でしょう。

約50万人を前にしたライブ版

1981年9月19日のセントラルパーク公演には、約50万人が集まりました。大規模な野外公演でありながら、二人は曲を華やかなショーへ変えず、旋律と歌声を中心に演奏しています。

アート・ガーファンクルの声には若い頃とは異なる厚みが加わり、ポール・サイモンのギターも歌の流れを堅実に支えます。

再会した二人が歌う意味

スタジオ版が若い二人による精密な共同制作だとすれば、ライブ版には、別々の道を歩んだ二人が再び並んだ事実が刻まれています。曲は同じでも、そこへ十五年の時間が新たな重みを加えています。

音の後から見えてくる歌詞の世界

僕は長い間、この曲を旋律とハーモニーの美しさによって聴いてきました。日本語で意味をたどると、その中に、容易には結ばれない男女の物語が隠れていたことが分かります。

スカボロー・フェアとは何か

スカボローは、イングランド北東部の海辺にある町です。そこで開かれていた定期市は、1253年に国王ヘンリー3世の勅許を受け、各地から商人が集まる催しとして発展しました。

歌の語り手は、その市へ向かう旅人に、現地で暮らすかつての恋人へ自分のことを伝えてほしいと頼みます。市場の情景ではなく、遠く離れた相手への伝言から始まる歌なのです。

実現できない三つの課題

語り手は相手に、縫い目のないシャツを作ること、海水と浜辺の間に一エーカーの土地を見つけること、革の鎌で刈り取りをすることを求めます。

  • 針仕事をせず、縫い目のないシャツを作る。
  • 海と陸の間に土地を見つける。
  • 刃物にならない革の鎌で作物を刈る。

いずれも現実には果たせそうにありません。すべてを成し遂げれば再び恋人になれるという条件は、復縁への希望というより、二人の隔たりを表す言葉のようにも受け取れます。

一つに決められない歌の意味

伝承歌には異なる歌詞や解釈があり、語り手の真意を一つに決めることはできません。相手を試しているとも、終わった恋を諦めきれずにいるとも考えられます。僕には、叶わない条件によって、戻れない関係を確かめているように聞こえます。

四つのハーブが耳に残る理由

繰り返される「パセリ、セージ、ローズマリー、タイム」は、意味を理解する前から耳に残る言葉でした。四つの植物には愛や記憶などを関連づける解釈がありますが、過去の恋を呼び戻す合言葉のようにも感じられます。

僕が第3位に選んだ理由

一度では聴き尽くせない

最初は旋律と歌声に惹かれ、次にギターと録音の細部へ耳が向かい、その後で「Canticle」と歌詞の意味が見えてきます。一曲の中に複数の入口があり、どこから入っても別の魅力へつながります。

英国民謡と1960年代の反戦歌を組み合わせながら、難しい作品として構えさせず、まず美しい歌として聴かせる。その完成度は、二人の作品群の中でも際立っています。

長く聴くほど深まる一曲

何十年も前から知っている曲であっても、聴き直すたびに別の声や音が見つかります。一度の衝撃だけで残るのではなく、聴いてきた時間そのものが価値を増していく。そこに、僕が第3位に置いた最大の理由があります。

終わりに

『スカボロー・フェア/詠唱』には、英国の伝承歌、繊細なギター、アート・ガーファンクルの歌声、ポール・サイモンが加えた反戦的な対旋律があります。

歌詞を知らなくても、音楽として十分に心を捉える作品です。その後で言葉をたどると、かつての恋人への伝言と、戦争に翻弄される人々の姿が、同じ曲の中に置かれていたことが分かります。

まず音楽を好きになり、長い時間を経てから何が歌われていたのかを知る。僕にとって『スカボロー・フェア』は、洋楽を聴き続ける面白さを改めて教えてくれる一曲です。

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