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今日8月20日は、ロバート・プラント(Robert Plant)の誕生日
今日8月20日は、ロバート・プラント(Robert Plant)の誕生日です。
1948年8月20日、イングランドのウェスト・ブロムウィッチ生まれ。レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)のヴォーカリストとして、ロック史にその名を刻んだ人物です。
鋭く突き抜けるハイトーン、ブルースを基盤とした節回し、そして一声で本人と分かる強烈な個性。ジミー・ペイジのギターと並び、プラントの歌声はレッド・ツェッペリンを決定づける大きな要素でした。

しかし1980年、ドラマーのジョン・ボーナムが死去し、レッド・ツェッペリンは解散。プラントは大きな転機を迎えます。
彼が選んだのは、過去の再現ではありません。1982年に初のソロ・アルバム『Pictures at Eleven』を発表し、翌1983年にはセカンド作『The Principle of Moments(ザ・プリンシプル・オブ・モーメンツ)』へ進みます。
ハードロックの重量感だけに頼らず、ドラムマシンやシンセサイザー、透明感のあるギターを取り込みながら、自分の声を1980年代のサウンドへ置いていく。今回取り上げる『ビッグ・ログ(Big Log)』は、その変化を象徴する一曲です。
1983年、ソロとして大きなヒットとなった『ビッグ・ログ』
『ビッグ・ログ』は1983年7月にシングルとして発売され、同年の『ザ・プリンシプル・オブ・モーメンツ』に収録されました。作曲者はロバート・プラント、ギタリストのロビー・ブラント、キーボード奏者のジェズ・ウッドロフです。
英国Official Singles Chartでは最高11位、10週チャートイン。米国Billboard Hot 100でも最高20位を記録し、プラントにとって初の全米Top40入りとなりました。
解散からまだ3年ほど。ソロとして何を打ち出すのか、大きな注目が集まっていました。
そこで彼が提示したのは、『Whole Lotta Love』や『Black Dog』の再現ではありませんでした。抑制の効いたリズム、ロビー・ブラントの澄んだギター、そして絶叫を前面に出さない歌唱。1970年代のツェッペリンとは明らかに異なる音像です。
『ビッグ・ログ』――夜のハイウェイに重なる愛と距離
超訳
遠く離れた君を想いながら、僕は夜のハイウェイを走り続ける。
流れていく街の灯りも、重なる距離も、君への想いを消してはくれない。
立ち止まりたいほど疲れても、この道を引き返すことはできない。
僕の愛は、果てしなく続くフリーウェイとともに、ただ君へ向かっている。
まずはYouTubeの公式動画をご覧ください。
公式動画クレジット 映像:Robert Plant「ビッグ・ログ(Big Log)」Official Video [HD Remastered] 出典:Robert Plant Official YouTube Channel 2行解説 1983年のセカンド・ソロ・アルバム『ザ・プリンシプル・オブ・モーメンツ』を代表する一曲。 乾いたギターと浮遊感のあるサウンドが、果てしなく続く道を思わせる孤独と旅情を鮮やかに描き出します。
僕がこの曲を初めて聴いたのは
| My Age | 小学校 | 中学校 | 高校 | 大学 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60才~ |
| 曲のリリース年 | 1983 | ||||||||
| 僕が聴いた時期 | ● |
僕がこの曲を初めて聴いたのは、社会人になってまもない頃だったと思います。
最初に耳へ飛び込んできたのは、やはり聞き慣れたロバート・プラントの声でした。
ところが、レッド・ツェッペリン時代の音楽とはかなり違います。激しく押してくるハードロックではなく、繊細に組み立てられた音の中を、あの独特の声が静かに進んでいく。少しジャジーな香りさえ感じました。
大前提として、僕はレッド・ツェッペリン時代からロバート・プラントの声が大好きです。
『ビッグ・ログ』には、大きな起伏で圧倒する派手さはありません。それでも、ギターのフレーズとプラントの歌声がじわじわと身体に入ってくる。この繊細さと色気を両立できるのは、やはり彼だからこそでしょう。

何度聴いても、まず「いい曲だな」と感じる。じっくり、しみじみと聴き入りたくなる、最高の一曲です。
なぜ『ビッグ・ログ』はツェッペリンと違って聴こえるのか
ロビー・ブラントのギターが作る、もう一つのプラント・サウンド
『ビッグ・ログ』がツェッペリン時代と大きく違って聞こえる理由は、まずギターにあります。
ジミー・ペイジがブルースを根に持ちながら、強烈なリフや歪みで曲を牽引する場面が多かったのに対し、ロビー・ブラントは音数を絞り、透明感のある短いフレーズを置いていきます。
冒頭から聞こえるギターも、一気に前へ突進するタイプではありません。夜の道路で街灯が規則正しく後方へ流れていくように、同じ景色の中で少しずつ表情を変えていきます。
ブラントはヴォーカルと競わず、その周囲を描くように演奏します。その抑制が、プラントの声を鮮明に浮かび上がらせます。
TR-808が生み出した独特の脈動
もう一つの鍵がRoland TR-808です。
ジェズ・ウッドロフは後年、このドラムマシンを試しているうちにリズムとハンドクラップのパターンを作り、そこからブラントがコードと印象的なテーマを加えたと振り返っています。

機械的なビートと生っぽさのあるギター。その組み合わせによって、アクセルを一定に保った長距離ドライブのような独特の脈動が生まれました。
ジョン・ボーナムの巨大なドラムとは対照的ですが、重量で圧倒せず、繊細な音を積み重ねて緊張感を保つ。その発想が『ビッグ・ログ』の個性につながっています。
歌詞に描かれる、フリーウェイと愛
歌詞にはフリーウェイ、街、テールライト、夜、時計、鏡など、ドライブを連想させる言葉が並びます。
ただし、単純な旅の歌ではありません。
冒頭から「愛」と「フリーウェイ」が結びつき、街が後方へ消えていくにつれて、前へ進むことそのものが感情の動きと重なっていきます。
目的地へ向かっているのに、心の中では遠くにいる誰かを思い続けている。車は確実に進んでいるのに、気持ちは同じ場所から動けない。その対照が、この曲の切なさを作っています。
「進むこと」と「戻れないこと」
歌詞の途中には、道路脇で少し休もうかと考えるような場面もあります。主人公は疲れていて、目も赤く、長距離を走り続けている。それでも最後には、もう引き返せないという感覚へ向かいます。
道路は現実の風景であると同時に、一度始めた人生や恋愛を簡単には巻き戻せないことの比喩としても読めます。

劇的な展開を抑え、同じ方向へ進み続ける構成も歌詞によく合っています。聴き手まで長い夜のドライブへ乗り込んだような感覚になります。
『Big Log』という不思議な題名
題名の「Big Log」は歌詞に登場しません。直訳すれば「大きな丸太」で、曲の内容とは結びつきにくい不思議な言葉です。
ウッドロフは後年、曲を書いた冬に暖房用の燃料が尽き、外にあった長い倒木の端を火に入れて少しずつ燃やしたという逸話を紹介しています。題名は、歌詞の意味を直接説明する言葉というより、制作時の出来事から生まれたとされています。
歌詞を説明しない題名だからこそ、道路、孤独、愛、旅というイメージを聴き手が自由に広げられるのも、この作品の面白さです。
映像と1983年という時代
映像が広げる『ビッグ・ログ』の世界
公式ミュージックビデオも、この曲を理解するうえで重要です。
映像には、砂漠を貫く道路、ガソリンスタンド、古びた建物、自動車で移動するプラントが登場します。撮影はデス・ヴァレー・ジャンクションやカリコ・ゴーストタウン、ラスベガス周辺など、アメリカ西部で行われました。

見渡す限りの乾いた土地を一本の道路が伸びていく。歌詞に描かれた距離や移動が、そのまま目の前の景色へ変換されたようです。
ロードムービーのような映像表現
監督はストーム・ソーガソンとオーブリー・パウエル。ヒプノシスで数多くの名盤ジャケットを手掛けた二人らしく、単なる歌唱映像ではなく、小さなロードムービーを見るような構成になっています。
プラント自身を派手に見せるよりも、砂漠、道路、車、人気の少ない建物を印象的に配置する。その視覚表現が、サウンドの乾いた質感とよく合っています。
1983年――「聴く音楽」から「見る音楽」へ
『ビッグ・ログ』が登場した1983年という時代も見逃せません。
1981年にアメリカでMTVが放送を開始して以降、音楽は「聴くもの」であるだけでなく、「見るもの」としての性格を急速に強めていました。
デュラン・デュラン、ユーリズミックス、カルチャー・クラブなどが映像を武器に存在感を高め、アーティストの服装や映像世界まで含めて一つの作品として受け取られる時代が始まっていました。

1970年代を代表するロック・スターだったプラントは、ソロ転向と同時に、音楽を取り巻く価値観の変化にも直面していました。
『ビッグ・ログ』は派手な衣装や振り付けに頼らず、西部の風景を主役級に扱って曲の世界を視覚へ広げています。プラントが1980年代の映像文化へ自然に適応した好例でしょう。
ロバート・プラントが選んだ新しい道
「ツェッペリンの続編」を作らなかった強さ
『ビッグ・ログ』の魅力の核心は、ロバート・プラントが「レッド・ツェッペリンの続編」を作らなかったことです。
望めば、もっとツェッペリンに近いハードロックを作ることもできたでしょう。特徴的な声と強烈なギターリフを組み合わせれば、多くのファンは反応したはずです。
しかし彼は、その安全な方法を選びませんでした。
後年、プラント自身も、以前の自分から離れようと強く意識していたと振り返っています。重さではなく、別の方法で強さを作ろうとしていたのです。
『ビッグ・ログ』だから際立つ歌声
その結果、声は紛れもなくプラントなのに、周囲の音はツェッペリンとは異なるという独自のバランスが生まれました。
強烈なリフや絶叫に頼らなくても、あの声が入ればロバート・プラントの音楽になる。バックの演奏を抑えたことで、声の質感、抑揚、色気はむしろ鮮明になっています。

一定のビートが道路を作り、ギターが景色を描き、その上をヴォーカルが進んでいく。劇的な展開が少なくても最後まで引き込まれるのは、曲全体が一つの方向へ統一されているからでしょう。
現在聴いても古びて感じにくいのは、流行だけを追わず、自分の声を新しいサウンドへどう置くかを考え抜いた曲だからだと思います。
Happy Birthday, Robert Plant!
8月20日、ロバート・プラントの誕生日。
今日はレッド・ツェッペリンの名曲ではなく、ソロ時代の『ビッグ・ログ』を聴きたいと思います。
夜のフリーウェイ、流れていくテールライト、遠くへ続く道。そして、その景色の中心に聞こえる、誰にも取り違えようのないロバート・プラントの歌声。

激しく叫ばなくても、この人の声はやはり特別です。
『ビッグ・ログ』は、巨大なバンドを離れたロバート・プラントが、過去をなぞらず、自分の声で新しい道を走り始めたことを感じさせてくれる一曲です。
Happy Birthday, Robert Plant!


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