■HSCCについて詳しくは、こちらから➡|HSCCという奇跡のバンドを知っていますか?
🎧 この記事を音声で楽しむ
この記事の要点を、ナレーションで手軽に確認できます。
本文を読む前に、『Glory of Love』とHSCCによるカバーの魅力、記事全体の流れをつかみたい方におすすめです。
🎵 日本語ナレーション
この記事の内容を日本語で紹介する音声です。
🎶 英語ナレーション
この記事の内容を英語で紹介する音声です。
音声を先に聴くことで、『Glory of Love』の魅力とHSCCによるカバーの聴きどころを、よりつかみやすくなります。
今回の「僕の勝手な Cover Selection」は、『Glory of Love』です
今回取り上げるのは、ピーター・セテーラ(Peter Cetera)が1986年に発表した『Glory of Love』です。
ピーター・セテーラといえば、やはりシカゴ時代の歌声を思い浮かべます。『愛ある別れ(If You Leave Me Now)』『素直になれなくて(Hard to Say I’m Sorry)』など、透明感のあるハイトーン・ボイスは、1970年代後半から1980年代のシカゴを象徴する音の一つでした。
1985年にシカゴを離れた翌年、『Glory of Love』が全米1位を記録します。ソロ歌手として新たな一歩を踏み出したピーター・セテーラにとって、最初の大ヒットとなった作品です。

そして今回紹介するのは、ヒンドリー・ストリート・カントリー・クラブ(The Hindley Street Country Club/HSCC)によるカバーです。
原曲のイメージを大切にしながら、単なるコピーには聞こえない。この絶妙な距離感に、僕がHSCCを面白いと思う理由がよく表れています。
ピーター・セテーラの曲を歌う難しさ
『Glory of Love』をカバーするうえで、最大の難関はピーター・セテーラ独特の歌声でしょう。
単に高い音が出ればよいわけではありません。細く透明感がありながら弱さを感じさせず、高音へ上がっても輪郭が崩れない。その独特の声質が、彼のバラードを支えています。
HSCC版でリード・ボーカルを務めるのは、Glenn Cunningham(グレン・カニンガム)です。
彼はピーター・セテーラの声をそのまま再現しようとはせず、自分の声質を生かしながら高音域を滑らかに歌い切ります。

「ピーター・セテーラに似ているか」ではなく、「『Glory of Love』として違和感なく聴けるか」。僕には、その点で非常に完成度の高いカバーに聞こえます。
歌詞:超訳
今、君に伝えておきたい。 僕はいつでも君のそばにいて、決してひとりにはしない。 君を守るためなら、どんなことにも立ち向かう。 君が夢見てきた男になりたい。 それが、僕にとっての愛なのだから。
まずはYouTube動画で、HSCC版をご覧ください
公式動画クレジット
『Glory of Love』(Peter Cetera)カバー
演奏:ヒンドリー・ストリート・カントリー・クラブ(The Hindley Street Country Club/HSCC)
リード・ボーカル:Glenn Cunningham
公開:HSCC公式YouTubeチャンネル
2行解説
ピーター・セテーラの代表的なバラードを、Glenn Cunninghamの伸びやかな歌声とHSCCの緻密な生演奏で再構築したカバーです。原曲の美しい旋律とスケール感を保ちながら、ライブならではの温度を加えています。
シカゴを離れたピーター・セテーラと『Glory of Love』
ピーター・セテーラは1967年にシカゴへ加入し、長年にわたって中心的なボーカリストの一人として活動しました。1985年にバンドを離れ、翌1986年に発表したのが『Glory of Love』です。
作詞・作曲はピーター・セテーラ、デヴィッド・フォスター(David Foster)、ダイアン・ニニ(Diane Nini)。プロデュースはマイケル・オマーティアン(Michael Omartian)が担当しました。
楽曲は映画『The Karate Kid Part II(ベスト・キッド2)』の主題歌に起用され、映画とともに世界へ広がっていきます。

全米1位――ソロ歌手としての大きな成功
『Glory of Love』は1986年8月、Billboard Hot 100で2週連続第1位を記録。英国のOfficial Singles Chartでも最高3位まで上昇しました。
さらに1987年の第59回アカデミー賞では歌曲賞(Best Original Song)にノミネートされ、第29回グラミー賞でも最優秀男性ポップ・ボーカル・パフォーマンスの候補となっています。
シカゴ脱退から間もない時期に生まれたこの成功によって、ピーター・セテーラはソロ歌手としての存在感を明確に示しました。
ピーター・セテーラの原曲をご覧ください
動画クレジット
曲名:Glory of Love
アーティスト:Peter Cetera
収録アルバム:『Solitude/Solitaire』
発表:1986年
作詞・作曲:Peter Cetera、David Foster、Diane Nini
プロデュース:Michael Omartian
映画:『The Karate Kid Part II』
2行解説
シカゴ脱退後のピーター・セテーラを、ソロ歌手として大きく飛躍させた代表曲です。
透明感のある高音と、静かな序盤から壮大なサビへ広がる構成が、1980年代らしいパワー・バラードの魅力を伝えています。
『Glory of Love』で描かれる愛とは
『Glory of Love』という題名を直訳すれば、「愛の栄光」といった意味になります。しかし歌詞で描かれるのは、華やかな恋愛そのものではありません。
主人公が語るのは、愛する人のそばにいること、ひとりにしないこと、必要なら守るために戦うこと、そして相手が夢見てきた存在になろうとすることです。
ここで歌われる愛は、単なる感情ではなく、相手を守ろうとする行動と決意まで含んでいます。
映画の主題歌だからこそのスケール
歌詞には「君を守る」「君のために戦う」「君が夢見てきた英雄になる」という、非常に真っすぐな言葉が並びます。
さらに「輝く鎧をまとった騎士」というイメージまで登場します。恋愛を騎士道的な物語へ重ねることで、普通のラブソングより大きな世界が作られています。
静かに始まった演奏が少しずつ厚みを増し、サビで感情を大きく解放する構成も、その世界観によく合っています。『Glory of Love』には、1980年代の映画音楽とパワー・バラードが持っていた華やかさが凝縮されています。

ピーター・セテーラの声が作る『Glory of Love』
ピーター・セテーラの歌声で特に印象的なのは、高音域へ抜けていく独特の響きです。
太い声で押し切るタイプではありません。明るく透明感があり、少し鼻にかかった特徴的な声質を持ちながら、音域が上がるほど存在感を増していきます。
『Glory of Love』でも、比較的穏やかな序盤からサビへ向かって声が伸び、その変化とともに曲全体のスケールが広がっていきます。
シカゴ時代から続くバラードの魅力
『愛ある別れIf You Leave Me Now』『素直になれなくてHard to Say I’m Sorry』などを聴いてきた人なら、『Glory of Love』にもピーター・セテーラらしさを感じるでしょう。
美しい旋律と切なさを帯びたハーモニー、そして高音へ抜けていくボーカル。所属するバンドは変わっても、彼のバラードを形作ってきた魅力は、この曲にも受け継がれています。
HSCCは原曲をどう受け継いだのか
HSCC版でまず感じるのは、原曲から無理に離れようとしていないことです。
テンポや構成を大きく変えるのではなく、1986年の作品が持つ旋律と展開を尊重し、その上に生演奏ならではの質感を加えています。
Glenn Cunninghamはピーター・セテーラを追いかけない
このカバーの中心にいるグレン・カニンガム(Glenn Cunningham)は、ピーター・セテーラとは異なる声質を持っています。
だからこそ、声そのものを似せるのではなく、自分の歌唱で旋律の高さと伸びやかさを表現しています。特にサビの高音域でも余裕を失わず、曲の勢いを保ったまま歌い切ります。

難しい曲を、難しそうに歌わない。
僕がこのHSCC版で最も惹かれるのは、その自然さです。
歌を支えるためのアンサンブル
演奏陣にも同じ姿勢が感じられます。ギター、キーボード、ベース、ドラム、パーカッションは、それぞれが前へ出るのではなく、ボーカルを中心に一つの流れを作っています。
序盤では音数を抑え、サビへ近づくにつれて厚みを増していくため、テンポを大きく動かさなくても自然な高揚感が生まれます。
演奏者一人ひとりの技術は高い。それでも、聴き終わったあとに残るのは技巧ではなく「歌」です。

原曲を尊重することは、コピーすることではない
カバーには、原曲を大胆に作り替えるものもあります。しかしHSCCの『Glory of Love』は、別の方向を選んでいます。
旋律や構成を尊重しながら、1986年の録音そのものを再現するのではなく、現在の演奏者が同じ空間で音を出し、互いの呼吸を感じながら一曲を組み立てています。
そのため、懐かしい曲でありながら、古い録音をもう一度聴いている感覚にはなりません。
昔から知っている曲を壊さずに、もう一度「現在の音楽」として聴かせてくれる。
『Glory of Love』は、僕がHSCCに感じているそんな魅力が、よく表れた一曲だと思います。
まとめ──40年前の名曲を、現在の演奏で聴く
1986年、『Glory of Love』はBillboard Hot 100の頂点に立ち、シカゴを離れたピーター・セテーラをソロ歌手として新たな舞台へ押し上げました。
透明感のある高音、静かな始まりから壮大なサビへ向かう構成、そして愛する人を守ろうとする真っすぐな歌詞。そのすべてが、1980年代のパワー・バラードらしい世界を作っています。

それから40年。HSCCはGlenn Cunninghamの歌声と生演奏によって、この曲をもう一度現在へ引き寄せました。
原曲の魅力を残しながら、新しい歌い手と演奏者の音楽として成立させる。
僕にとってHSCC版『Glory of Love』は、「カバーする」ということの面白さを改めて感じさせてくれる演奏です。


音楽ファン同士の交流・リクエストはこちら / Connect & Request Songs Here