【5月10日】はグレアム・グールドマンの誕生日:『恋人たちのこと』(10CC)―をご紹介!

今日は、グレアム・グールドマンの誕生日

グレアム・グールドマンは1946年5月10日、イングランド・マンチェスター生まれのソングライター/ミュージシャンです。
ヤードバーズ「For Your Love」やホリーズ「Bus Stop」など1960年代の名曲を手がけたのち、1972年に10ccを結成。「I’m Not in Love」「The Wall Street Shuffle」などのヒットでバンドの中心的存在として活躍しました。
緻密なメロディ構成とポップセンスに優れ、現在もソロや10cc名義で精力的に活動を続けています。

まずはYoutubeの公式動画をご覧ください。

🎵 クレジット情報(公式音源)
曲名:People In Love(恋人たちのこと)
アーティスト:10cc
作詞・作曲:Eric Stewart, Graham Gouldman
プロデューサー:10cc
収録アルバム:『Deceptive Bends』(1977年リリース)
レーベル:Mercury Records Limited
提供元:Universal Music Group(YouTube による自動生成チャンネル「10cc – トピック」)
初出音源リリース年:1977年
YouTube上の公開日:2018年7月25日
配信形態:YouTube公式音源(Auto-generated by YouTube)

僕がこの曲を初めて聴いたのは

My Age 小学校中学校高校大学20代30代40代50代60才~
曲のリリース年1977
僕が聴いた時期

僕がこの曲を初めて聴いたのは、大学1年生の時。世田谷区東松原のアパートです。

経緯は覚えていませんが、テレビの音楽番組か何かで見たのでしょう。ソフトで優しくて切ない感じの楽曲。当時の僕にはドンピシャでした。他のポップスやロックと違い、10CCには、「10CCワールド」があります。ユニークな曲も多くある半面、以前紹介した「I’m Not In Love」などの至極のバラードもあります。

甘く切ないポップの美学──1977年に響いた「恋人たちの調べ」

10ccの「People in Love」(邦題:「恋人たちのこと」)は、1977年5月にアメリカでシングルとしてリリースされ、同年7月にはイギリスでも発売されました。この曲は、同年5月に発表されたアルバム『Deceptive Bends』に収録されており、アメリカのBillboard Hot 100で最高40位を記録しました。一方、イギリスでは公式チャートにランクインせず、日本やオーストラリア、カナダでも目立ったチャート成績は残していません。

当初「Voodoo Boogie」という仮タイトルで制作されていたこの曲は、アレンジと歌詞の再構成を経て、より繊細で洗練されたバラードへと昇華されました。こうした制作背景を知ることで、この楽曲の完成度の高さがより浮かび上がります。

変革と混沌が交差する1977年の世界

1977年は、政治的・文化的に世界が大きく揺れ動いた一年でした。

国際的な潮流

アメリカでは、ロック界の象徴エルヴィス・プレスリーが8月に死去。イギリスでは、セックス・ピストルズが「God Save the Queen」で国家体制に真っ向から挑み、パンクムーブメントが過熱していました。また、映画『スター・ウォーズ』が世界的ヒットを記録し、SFとポップカルチャーの融合が進みました。

日本の情勢と文化

国内では、成田空港建設をめぐる三里塚闘争が激化。6月には大規模な衝突が発生し、社会に緊張感が漂いました。一方、テレビアニメ『ドラえもん』の放送が始まり、日本の子どもたちに新たなヒーローが登場しました。70年の大阪万博の記憶がまだ残る中で、「東京万博」という表現は誤りであり、1977年に万博は開催されていません。

音楽ジャンルのるつぼ──1977年の音楽地図

1977年の音楽シーンは、ジャンルの境界が曖昧になるほど多様化が進んでいました。

海外の動向

アメリカでは、フリートウッド・マックの『Rumours』が大ヒットし、ピンク・フロイドは『Animals』でプログレッシブロックの奥深さを提示しました。イギリスでは、ディスコとパンクが共存しつつ、エルヴィス・コステロの登場がニューウェーブの幕開けを告げました。

日本の音楽風景

井上陽水の「夢の中へ」、松任谷由実の「翳りゆく部屋」、矢沢永吉の「アイ・ラヴ・ユー、OK」など、独自の表現を追求する楽曲が多数生まれました。ピンク・レディーの「サウスポー」はアイドル文化を刷新し、10ccの音楽はこれらの流れと並行しながら、独自のスタイルでリスナーに深く訴えかけていました。

10ccという名の職人集団──背景と進化

10ccは、1972年にストックポートのストロベリー・スタジオで結成されました。

初期のメンバーと躍進

グレアム・グールドマンはヤードバーズやホリーズなどに楽曲提供を行い、作曲家として名を馳せていました。エリック・スチュワートはマインドベンダーズ出身で、技術面でも中心的存在でした。1973年の「Rubber Bullets」で全英1位を獲得し、1975年の「I’m Not in Love」で国際的な成功を収めました。

転機となった『Deceptive Bends』

1976年にはケヴィン・ゴドリーとロル・クレームが脱退し、残された2人は新たにポール・バージェスらを迎えて再出発。1977年に完成した『Deceptive Bends』は、バンドの新たな方向性を示すアルバムとなりました。「People in Love」は、その中でもとりわけメロディアスで感傷的な楽曲として異彩を放ちます。

精緻な音像が織りなす「恋人たちのこと」

「People in Love」は、穏やかなギターとストリングスのイントロに始まり、スチュワートの柔らかい歌声がリスナーの心を包み込みます。

技術と表現の融合

コード進行はG–D–Em–Cと比較的シンプルですが、重層的なコーラスと豊かな音響処理により、立体感のある音世界が広がります。録音はストロベリー・スタジオ・サウスで行われ、スチュワート自身がエンジニアリングを担当。

ギズモの導入

本作には、ゴドリー&クレームが開発した「Gizmotone(ギズモ)」と呼ばれるギターサスティーン装置も一部導入され、音の余韻を意識的に設計する試みが見られます。これにより、シンプルな構成ながらも実験的な奥行きを持つ仕上がりとなっています。

愛の本質を問う詩世界

「恋人たちのこと」は、恋に落ちた瞬間の恍惚と、その後に訪れる現実とのギャップを対照的に描いた歌詞が印象的です。

たとえば冒頭に登場する:

People in love do funny things / Walk under buses and burn their wings

というラインは、恋をすると人は愚かで大胆な行動に走る──そんな皮肉と真実が交錯する比喩です。またサビでは、

We’re in a dream but the hands on the clock seem to know / Tell me it’s time to go

と、夢のような時間の終わりを察する瞬間が、静かに描かれています。スチュワートはこの曲について「幻想と現実が交錯する恋の儚さを描いた」と語っており、彼の私的体験も下地となっているとされています。

構造はシンプルながらも、繊細な心情描写と含蓄ある表現が並ぶこの曲は、10ccらしい知性と感情が共存する作品といえるでしょう。

日本のリスナーにとっての「夏の記憶」

日本では「People in Love」はオリコンチャートに登場しませんでしたが、FM東京やUSENで頻繁にオンエアされ、輸入盤の愛聴者を中心に静かな人気を得ました。

バンドの軌跡と未来への継承

「People in Love」は、10ccの中期を代表する作品であり、バンドがゴドリー&クレーム抜きでも高い表現力を維持していたことを証明しました。

1978年には「Dreadlock Holiday」で再び全英1位を獲得。1983年に一度活動を停止した後も、1990年代以降は再結成やツアー活動を継続し、2019年にはグールドマン主導のライブで本曲が披露されました。

2025年現在、Spotifyなどのストリーミングでも引き続き親しまれ、時代を超えて聴かれ続ける一曲となっています。

終章──恋人たちが過ごした一夜のように

「People in Love」は、その穏やかで叙情的なメロディーによって、1977年の時代背景や個人の感情と静かに共鳴しています。恋愛の光と影を繊細に描いたこの曲は、今もなお、誰かの心の深い場所で静かに鳴り続けているのかもしれません。


People in Love」-10CC :意訳

恋に落ちた人間は、時に滑稽なほど無防備で、不器用で、現実と夢のあいだをさまよう。
バスの前に飛び出すように無茶をしたり、自ら翼を焼くような選択をしたりしても、それでも誰かを想う気持ちは止められない。
夜更けに天井を見つめながら、言葉にならない思いを空に投げかける。
彼女の微笑みを見た瞬間、自分の中の確信が芽生え、心の奥で何かが静かに回りはじめる。
その眼差しに自分の顔が映るたびに、「正しいのか? 間違っているのか?」と問いながらも、胸の中には蝶が舞っている。

しかし、そんな夢の中にも、時は無情に進む。
闇の中に一人で座り、あなたの気配を感じながら、現実の時計の針が「そろそろ終わりの時間だ」と告げるのを聞く。
恋する者は、時に子どものように空回りし、いつまでも同じ場所をぐるぐる回る。
空想の中では永遠の愛を信じられても、現実ではそれが手に入らない自分を知っている。

それでも、暗闇の中であなたを感じ、夢に逃げ込む。
そしてまた、時計の針が冷たく現実を突きつける。
「もう行かなくちゃ」と――。

by Ken

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