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9月17日は、ちあきなおみの誕生日:『喝采』をご紹介!
9月17日は、ちあきなおみの誕生日です。1947年、東京都板橋区生まれ。
母親の影響で4歳からタップダンスを習い、5歳で日劇のステージに立ちました。その後は米軍キャンプを回りながら歌と踊りを磨き、13歳から本格的に歌手として活動。1969年、『雨に濡れた慕情』でレコードデビューしました。
歌謡曲や演歌にとどまらず、ジャズ、シャンソン、ファド、日本の流行歌まで幅広い作品に取り組んだちあきなおみ。その歌唱には、単に「歌がうまい」という言葉だけでは説明できない独特の世界があります。
歌っているというより、一つの物語を演じている。

そんな表現がよく似合う歌手です。
僕にとって、ちあきなおみといえば、やはり最初に浮かぶのが『喝采』です。
1972年9月10日に発売され、同年の第14回日本レコード大賞を受賞。ちあきなおみの代表曲であると同時に、昭和歌謡を語るうえで欠かせない一曲になりました。
作詩は吉田旺、作曲は中村泰士、編曲は高田弘。舞台で歌う現在、届いた訃報、3年前の別れ、そして喪服で教会にたたずむ場面が、映画のカットをつなぐように描かれていきます。
超訳
今日も私は、いつものように舞台に立って歌っている。 けれど、届いた知らせが、忘れたはずのあなたとの時間を呼び戻す。 あの日、あなたを駅に残して、私はひとり汽車に乗った。 そして今、喪服でたたずむ私の前に、もうあなたはいない。 華やかな舞台の記憶と深い喪失だけが、胸の中で静かに重なっていく。
💡 あわせて読みたい: 公式の原曲歌詞はこちら (外部サイトへ移動します)
まずはYouTubeの公式動画をご覧ください。
公式音源クレジット
ちあきなおみ「喝采」
作詩:吉田 旺
作曲:中村泰士
編曲:高田 弘
オリジナル・リリース:1972年9月10日
第14回日本レコード大賞受賞曲
音源:ちあきなおみ / 喝采 [オフィシャルオーディオ]
出典:ちあきなおみ Official YouTube Channel
2行解説
舞台で歌う現在と、別れた人の死を知った女性の記憶を交錯させながら描く1972年の名曲。
感情をむき出しにしないちあきなおみの歌唱が、かえって深い喪失感を浮かび上がらせます。
僕がこの曲を初めて聴いたのは
| My Age | 小学校 | 中学校 | 高校 | 大学 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60才~ |
| 曲のリリース年 | 1972 | ||||||||
| 僕が聴いた時期 | ● |
僕がこの曲を初めて聴いたのは、リリースされた1972年、中学二年生くらいの時です。
テレビの歌謡番組でよく流れていたと記憶しています。
いま改めて聴くと、とても重い内容ですが、当時は歌詞の意味を深く考えることもなく、まずメロディーに惹かれて聴いていたように思います。当時から僕は歌謡曲をそれほど聴いていませんでしたし、音楽仲間の間にも、歌謡曲はちょっとダサいといった空気がありました。
しかし、『喝采』はそんなジャンル分けとは関係なく、ただ好きでした。
透明感のある声というより、少しだけざらついた声。そして感情をむき出しにするのではなく、しっとりと抑えて歌うちあきなおみ。その歌い方に惹かれていたのだと思います。

中学生には分からなかった『喝采』の重さ
もちろん、中学生だった僕が、この歌の世界を本当の意味で理解していたとは思えません。
人との永遠の別れも、二度と戻らない時間というものも、まだ自分の人生と結びつけて考えられる年齢ではありませんでした。
それでも曲は耳に残りました。メロディー、編曲、そして何よりちあきなおみの声。その組み合わせだけで、言葉の意味を十分に理解できなくても、何か深い悲しみを抱えた歌だということは感じ取っていたのでしょう。
『喝采』――舞台の光と、心の中の暗闇
現在と過去が交錯する物語
『喝采』をいま聴き直して興味深いのは、物語が一直線に進んでいかないことです。
幕が開き、いつものように恋の歌を歌う現在。そこへ黒い縁取りのある知らせが届き、物語は3年前へ戻ります。駅に残した人、動き始めた汽車、そして再び場面が変わり、喪服で教会の前に立つ女性が描かれる。

わずかな時間の中で現在と過去が行き来し、いくつもの情景が浮かんでは消えていきます。
舞台の華やかさと、誰にも見せられない喪失。その落差が『喝采』の世界をつくっています。
悲しみを叫ばないからこそ伝わってくる
そして、この物語を決定的なものにしているのが、ちあきなおみの歌唱です。泣き崩れるように歌うのではなく、むしろ感情を抑えている。その抑制が、歌の中の女性が抱える悲しみを際立たせています。
声を張り上げて説明しないからこそ、聴き手はその奥にある感情を想像することができる。
悲しみを見せすぎないことで、かえって悲しみが深くなる。
『喝采』を何度聴いても重く感じる理由の一つは、ここにあるのだと思います。
「喝采」というタイトルが生む対照
そして改めて考えると、『喝采』というタイトルも実に印象的です。
喝采という言葉から連想するのは、舞台、観客、拍手、華やかな成功です。しかし歌の中で描かれるのは、それとは正反対ともいえる個人的な喪失です。
人前では歌手として舞台に立つ。その一方で、心の中には他人には見えない悲しみがある。
外から見える人生と、その人の内側にある人生は、必ずしも同じではない。
華やかさを意味する「喝采」という二文字を題名に置いたことで、その対照がより鮮明になっているように感じます。

ちあきなおみという歌手の凄さ
歌うのではなく、物語の人物になる
ちあきなおみの魅力を考えるとき、やはり外せないのが表現力です。
音程や声量といった歌唱技術だけではありません。曲によって声の表情まで変わり、歌の主人公が目の前に現れるように感じられます。
自分の感情を歌に乗せるというより、歌の中の人物になってしまう。
そこに、ちあきなおみという歌手の際立った個性があるのでしょう。
一つのジャンルに収まらなかった歌手
ちあきなおみを「演歌歌手」あるいは「歌謡曲の歌手」という一つの言葉だけで説明することはできません。
13歳で本格的に歌手活動を始めた頃には、主にロカビリーなどの洋楽を歌っていました。その後、日本の流行歌へレパートリーを広げ、1980年代以降はシャンソン、ジャズ、ファドなどにも取り組んでいます。

『喝采』にも、いわゆる演歌の枠だけには収まらないドラマ性があります。だから僕自身も、中学生の頃に歌謡曲から少し距離を置いていたにもかかわらず、この曲には自然に惹かれたのかもしれません。
1972年――発売から約3か月で日本レコード大賞へ
『喝采』が発売されたのは1972年9月10日。そして同年12月31日、第14回日本レコード大賞を受賞しました。
作詩・吉田旺、作曲・中村泰士、編曲・高田弘。三人によって生み出された作品と、ちあきなおみの歌唱が結びつき、発売からわずか3か月余りでその年を代表する一曲になりました。
1972年は、宮史郎とぴんからトリオの『女のみち』が大ヒットし、天地真理、小柳ルミ子、南沙織、沢田研二など、多くの歌手が活躍していた時代です。
僕自身はその頃、洋楽やフォーク、ロックへ少しずつ関心を広げていました。それでも『喝采』は、中学生だった僕の耳にしっかりと残りました。
50年以上を経て、もう一度聴く『喝采』
1972年、中学生だった僕が聴いた『喝采』と、50年以上を経たいま聴く『喝采』。録音は同じなのに、受け取るものはずいぶん変わりました。
当時好きだったのは、まずメロディーとちあきなおみの声でした。歌詞に描かれた人生まで、自分のこととして考えていたわけではありません。
しかし年齢を重ねたいまでは、「もう会うことのできない人」や「戻ることのできない時間」が、以前より現実味を持って伝わってきます。
そして音楽には不思議な力があります。普段は思い出さなくなった昔の出来事でも、一曲を聴いた瞬間に、その頃の景色や空気までよみがえることがあります。

僕にとって『喝采』も、そんな一曲になりました。
イントロが流れると、1972年のテレビの歌謡番組と、それを見ていた中学生の自分が、50年以上の時間を越えてつながります。
音楽そのものは変わらなくても、聴く側の人生が変われば、曲の聞こえ方も変わっていく。
昔から知っている曲を何十年後かに聴き直す面白さは、そこにあるのでしょう。
1992年から続く長い沈黙
ちあきなおみは1992年、夫の他界を機に芸能活動を休止しました。その後、公の場で歌うことから離れています。
それでも、その歌が忘れられることはありませんでした。2024年のデビュー55周年には、コロムビア、ビクター、テイチクの3社から300曲以上がデジタル配信され、オフィシャルYouTubeチャンネルも開設されています。
新しい歌唱が発表されなくても、残された作品は世代を越えて聴き継がれている。『喝采』もまた、「懐かしい昭和歌謡」という枠には収まらない一曲なのでしょう。
Happy Birthday, ちあきなおみ!
9月17日、ちあきなおみの誕生日。
中学生だった僕が、歌謡曲というジャンルを意識することなく好きだった『喝采』。50年以上が過ぎたいまでは、当時には分からなかった歌の深さまで感じるようになりました。
音楽そのものは変わらなくても、聴く側の人生が変われば、曲の聞こえ方も変わっていく。
『喝采』は、1972年の14歳の自分と現在の自分をつないでくれる一曲です。


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