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本文を読む前に、スタイリスティックスの『オンリー・ユー』の魅力や、記事全体の流れをつかみたい方におすすめです。
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音声を先に聴くことで、『オンリー・ユー』の歌声や原曲との違いなど、記事の注目点をよりつかみやすくなります。
第10位は『オンリー・ユー』です。
僕の勝手なBest10【スタイリスティックス編】第10位は、『オンリー・ユー(Only You And You Alone)』です。
1976年発表のアルバム『ワンス・アポン・ア・ジュークボックス(想い出のジュークボックス)』に収録された、1950年代の名曲のカバーです。
オリジナルは、プラターズが1955年に発表した録音です。アメリカのR&Bチャートで7週間にわたり第1位を獲得し、ポップ・チャートでも第5位を記録しました。スタイリスティックスは、その約20年後に独自の歌唱で取り上げています。

スタイリスティックス版は、彼らの黄金期を代表する大ヒット曲ではありません。しかし、聴き慣れた旋律をラッセル・トンプキンス・ジュニアの声で味わうと、原曲とは異なる魅力が感じられます。
僕がこの曲をBest10に加えたのは、知名度や売上記録とは別に、純粋に聴いていて心地よいと感じるからです。
超訳
あなたがいるだけで、私の世界は明るく輝き、暗闇さえも光に変わる。
あなたの手に触れるたび、言葉では言い表せない幸せが胸に広がる。
こんなにも私の心を変えてくれた人は、ほかにはいない。
あなたこそ、運命が巡り合わせてくれた、夢にまで見た人。
この世界で、私が愛するたった一人の人。
まずは、YouTube動画(公式)からお聴きください。
クレジット
スタイリスティックス(The Stylistics)
『オンリー・ユー(アンド・ユー・アローン)』
公式YouTubeチャンネル公開映像(2020年1月9日公開)
楽曲解説
1955年にプラターズがヒットさせた名曲『オンリー・ユー』を、スタイリスティックスがカバー。
ラッセルの特徴的な歌声とグループのハーモニーによって、親しみ深い旋律に新たな表情が生まれています。
1955年の名曲が、1976年に再び生まれる
『オンリー・ユー』が発表された1955年は、リズム・アンド・ブルースやドゥーワップが、より幅広い聴衆へと浸透し始めた時代でした。プラターズは、その流れの中で成功を収めたヴォーカル・グループの一つです。
『オンリー・ユー』は彼らの出世作となり、続く『ザ・グレート・プリテンダー』とともに、グループの名を広く知らしめました。

プラターズが築いた原曲の魅力
プラターズ版で印象的なのは、リード・ヴォーカルを務めたトニー・ウィリアムズの歌唱です。張りのある声で旋律を明瞭に描き、恋する相手への思いを堂々と歌い上げています。
この曲の構成は比較的簡潔です。覚えやすいメロディーに、愛する人への率直な言葉が重なり、冒頭から曲の主題が明確に伝わります。
それだけに、歌い手の表現力が作品の印象を大きく左右します。トニーの伸びやかな声は、恋愛の喜びを高らかに伝える原曲の性格とよく合っています。
スタイリスティックスが取り上げた時代
1976年のスタイリスティックスは、トム・ベルとリンダ・クリードによるヒット曲を次々と発表した時期を経て、ヒューゴ&ルイージの制作体制で活動していました。

初期の代表曲では、フィラデルフィア・ソウルを象徴する華麗なストリングスと、ラッセルのファルセットが大きな魅力でした。その後、グループは制作陣を変えながら、さまざまな作品を発表していきます。
『オンリー・ユー』は、そうした活動の中で録音されたカバーです。すでに評価の定まった名曲を取り上げることで、彼らの歌唱を別の角度から楽しめる作品となっています。
ラッセルの歌声が変える『オンリー・ユー』の印象
高音の美しさだけではない魅力
スタイリスティックスの音楽を聴くとき、僕が最も注目するのはラッセル・トンプキンス・ジュニアの声です。男性ヴォーカルとしては非常に高い音域を持ちながら、耳に鋭く響くことが少なく、柔らかな質感を保っています。

ただし、その魅力は高音が出るという技術的な特徴だけではありません。旋律の上昇に合わせて声を自然に運び、音を伸ばす場面でも、歌の流れを途切れさせないところに独特の味わいがあります。
特に、フレーズの終わり方に惹かれます。声を必要以上に張らず、次の旋律へ滑らかにつないでいく歌唱には、ラッセルならではの品の良さがあります。
原曲とは異なる親密な響き
プラターズ版が恋人への思いを力強く伝える歌唱だとすれば、スタイリスティックス版は、もう少し身近な相手に語りかけるような印象を受けます。
原曲の旋律を大きく変えているわけではありません。それでも、声質や言葉の運び方が異なることで、同じ曲が別の雰囲気を持つようになります。
僕は、カバー作品の面白さは必ずしも大胆な編曲にあるとは考えていません。歌い手が変わるだけで、聴き手が受け取る感情も変化する。そのことを実感させてくれる録音です。
『想い出のジュークボックス』というアルバム
『オンリー・ユー』が収録された『ワンス・アポン・ア・ジュークボックス(想い出のジュークボックス)』は、1976年に発表されたカバー・アルバムです。ヒューゴ&ルイージがプロデュースを担当し、ホレス・オットが編曲と指揮を手がけました。

アルバムには『ザ・グレート・プリテンダー』『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』『アンチェインド・メロディ』なども収録されています。ドゥーワップのヒット曲、ジャズのスタンダード、映画の主題歌など、異なる背景を持つ楽曲が選ばれています。
幅広い選曲に見るグループの方向性
このアルバムで興味深いのは、選曲が特定の音楽様式に限定されていないことです。さまざまな時代に生まれた作品を、スタイリスティックスのヴォーカルで統一しています。
1970年代前半の彼らは、『ユー・アー・エヴリシング』や『誓い』など、自分たちのために制作された楽曲で成功を収めました。しかし、このアルバムでは、すでに親しまれていた作品を歌うことに重点を置いています。
そのため、聴きどころも通常のオリジナル・アルバムとは異なります。楽曲そのものの新しさより、スタイリスティックスが既存の旋律をどう表現するかが中心になります。
『オンリー・ユー』が持つ親しみやすさ
収録曲の中でも『オンリー・ユー』は、比較的覚えやすいメロディーを持つ作品です。原曲を知っている人なら、スタイリスティックスの歌唱による変化をすぐに感じ取れるでしょう。
僕は、このアルバムを通して、彼らの魅力がフィラデルフィア・ソウルの華やかな編曲だけに依存していないことを感じます。よく知られたスタンダード曲でも、歌声そのものに耳を傾ける楽しさがあるのです。
歌詞に描かれた、迷いのない愛情
『オンリー・ユー』の歌詞には、複雑な恋愛模様は登場しません。愛する相手の存在によって世界の見え方が変わり、その人が自分にとってかけがえのない存在になったことを伝えています。

二人がどのように出会い、どんな時間を過ごしてきたのかは説明されていません。語り手が伝えようとしているのは、恋愛の経緯ではなく、現在抱いている幸福感なのです。
「運命」という言葉に込められた思い
歌詞の中で印象的なのは、愛する相手を自分の運命だと受け止めていることです。相手と出会ったことで、それまでとは違う世界が見えるようになった。その喜びが、曲全体を貫いています。
こうした表現に1950年代のラブソングらしい素直さを感じます。複雑な心理描写に頼らず、一人の相手を心から愛しているという気持ちを、明快な言葉で伝えているからです。
なお、歌詞には語り手の性別を特定する表現がありません。男性ヴォーカルによる歌唱が広く知られていますが、内容そのものは、性別を問わず受け止められるものです。
率直な言葉を自然に聴かせる歌唱
愛情を直接的に表現する歌詞は、歌い方によっては大げさに聞こえることがあります。しかし、スタイリスティックス版では、甘い言葉が旋律に自然になじんでいます。
冒頭の超訳で表現したかったのも、相手を独占したいという願望ではありません。愛する人が存在することで、日常の景色まで違って感じられる。その幸福感こそ、この曲の中心にあると思います。

僕が『オンリー・ユー』に惹かれる理由
『オンリー・ユー』を聴いていて面白いのは、次にどんなメロディーが続くのか、ほとんど分かっていることです。それほど親しまれている曲でありながら、スタイリスティックスの歌唱には、思わず耳を傾けたくなる瞬間があります。
特に好きなのは、ラッセルの高音がメロディーになじんでいくような感覚です。声を張り上げて感情を訴えるのではなく、自然な歌い回しの中に、彼ならではの美しさが現れています。
プラターズ版とどちらが優れているかを決めようとは思いません。原曲には原曲の魅力があり、スタイリスティックス版には別の良さがあります。一つの作品を異なる歌唱で楽しめること自体が、音楽の面白さなのでしょう。
そして、この曲を好む理由は、決して複雑ではありません。メロディーが美しく、歌声が心地よい。聴き終えたあと、もう一度再生したくなる。『オンリー・ユー』は、そんな素直な気持ちで楽しめる一曲です。
終わりに
1955年にプラターズが発表した『オンリー・ユー』は、1976年、スタイリスティックスによって新たな録音として生まれ変わりました。約20年という時間の隔たりがありながら、楽曲の中心にある愛情表現は変わっていません。
スタイリスティックス版の魅力は、ラッセルの特徴的な歌声によって、親しみ深い名曲を違った気持ちで聴けることです。オリジナルのヒット曲とは異なる楽しさを持った作品として、これからも聴き続けたいと思います。
僕の勝手なBest10【スタイリスティックス編】は、この『オンリー・ユー』から始めることにしました。次回は第9位をご紹介します。


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