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本文を読む前に、T. Rexの歴史とマーク・ボランの歩み、そして「僕の勝手なBest10【T. Rex編】」の背景をつかみたい方におすすめです。
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音声を先に聴くことで、T. Rexの歴史とグラムロック黄金期の流れをつかみやすくなります。
プロローグ――僕の中学時代を駆け抜けたT. Rex
T. Rexは、僕の中学時代と深く結びついているアーティストの一つです。
彼らが最も輝いていた1970年代前半と、僕が中学生として洋楽へ強く惹かれていった時期が、ほとんど重なっています。
1971年、僕は中学校へ入学しました。同じ年、イギリスではT. Rexが『ホット・ラヴ』『ゲット・イット・オン』を相次いで全英1位へ送り込み、アルバム『Electric Warrior』を発表します。
1972年には『テレグラム・サム』『メタル・グルー』『チルドレン・オブ・ザ・レヴォリューション』『イージー・アクション』が相次いでヒットし、1973年には『20センチュリー・ボーイ』が登場します。

僕が中学1年から3年へ進んでいく間に、T. Rexはグラムロックを象徴する存在へ駆け上がっていったのです。
中学生だった僕が夢中になった3曲
なかでも『チルドレン・オブ・ザ・レヴォリューション』 『20センチュリー・ボーイ』 『イージー・アクション』は、本当によく聴きました。半世紀以上が過ぎた今でも、この3曲を聴くと、中学生だった頃の空気が蘇ってきます。
当時の僕が知っていたのは、きらびやかな衣装をまとい、強烈なギターリフを鳴らすマーク・ボランとT. Rexでした。しかし、その姿にたどり着くまでには、まったく異なる音楽を演奏していた時代があります。

マーク・ボランの原点――Tyrannosaurus Rexの誕生
ロックンロールと幻想世界に惹かれた少年
マーク・ボランは1947年9月30日、ロンドンに生まれました。本名はマーク・フェルド。若い頃から音楽だけでなくファッションにも強い関心を持ち、モデルを経験しながらミュージシャンを目指しました。
アメリカのロックンロールに惹かれる一方、詩や幻想文学にも親しみ、その嗜好は後の歌詞に大きく表れます。妖精、魔法、星、宇宙、動物などが入り交じる独特の言葉の世界は、後のT. Rexにも残り続けました。
ジョンズ・チルドレンからティラノサウルス・レックスへ
1960年代半ば、ボランはいくつかのシングルを発表し、ロックバンドのジョンズ・チルドレンにも短期間在籍しました。その後、自分自身の音楽を追求するため、1967年に打楽器奏者スティーヴ・ペリグリン・トゥックとティラノサウルス・レックスを結成します。
この頃の二人は、後のT. Rexとはまったく違います。ボランのアコースティック・ギターと歌、トゥックのボンゴなどを中心としたサイケデリック・フォークで、英国のアンダーグラウンド・シーンに支持を広げました。

ただし、初期の音楽を単に「静かなフォーク」と片づけるのは正確ではありません。独特のリズム感と不思議な言葉遣い、ボランの高く揺れる歌声が組み合わさり、すでに他のフォーク系アーティストとは違う個性を持っていました。後のT. Rexに通じる「一度聴けばボランだと分かる感覚」は、この時代から始まっていたのです。
トニー・ヴィスコンティとの出会い
この時期に重要な役割を果たしたのが、プロデューサーのトニー・ヴィスコンティです。1968年のデビュー・アルバムから制作に携わり、ボランの幻想的な音楽世界をレコードへ定着させていきました。
1970年――T. Rexへの変身
1969年にトゥックが離れ、ミッキー・フィンが加わります。この頃からボランはエレクトリック・ギターを積極的に使うようになり、1970年には長かったグループ名をT. Rexへ短縮しました。
『ライド・ア・ホワイト・スワン』が開いた扉
転機となったのが、1970年の『ライド・ア・ホワイト・スワン』です。アコースティック時代の幻想性を残しながら、エレクトリック・ギターとロックンロールのビートを前面に出したこの曲は、全英2位まで上昇しました。

短いギターリフ、反復するリズム、ボランの独特な歌声。後にT. Rexの代名詞となる「シンプルなのに、一度聴けば忘れられない音」が、ここから明確になっていきます。
1971–1972年――グラムロックの頂点へ
『ホット・ラヴ』とグリッター
1971年、『ホット・ラヴ』がT. Rex初の全英1位となり、その座を6週間守りました。テレビ番組『Top of the Pops』に出演したボランは、頬にグリッターを輝かせ、華やかな衣装で歌います。
ロックンロールのシンプルな音と、中性的で大胆なファッション。この組み合わせは、まもなく英国を席巻するグラムロックの象徴となりました。
『Electric Warrior』と黄金期
続く『ゲット・イット・オン』も全英1位となり、同年には名盤『エレクトリック・ウォリアー』を発表します。『ジープスター』『コズミック・ダンサー』などを収めたこの作品では、ティラノサウルス・レックス時代の幻想性と、ロックスターとなったボランの魅力が自然に共存していました。
この頃にはスティーヴ・カーリーがベース、ビル・レジェンドがドラムを担当し、ミッキー・フィンを含む4人編成が黄金期を支えます。

T. Rexの特別さは、単に派手だったことではありません。ロックンロールの原始的な楽しさを保ちながら、サイケデリック時代の幻想性とポップスの親しみやすさを一つにまとめた点にあります。だからこそ、若いファンには即座に届きながら、今聴いても単なる時代物に聞こえにくいのでしょう。
「T. Rextasy」と呼ばれた1972年
1972年には『テレグラム・サム』『メタル・グルー』が続けて全英1位を獲得。T. Rexは『ホット・ラヴ』『ゲット・イット・オン』と合わせ、計4曲の全英No.1を記録しました。
さらに『チルドレン・オブ・ザ・レヴォリューション』『イージー・アクション』はいずれも全英2位。若いファンの熱狂は、「T. Rextasy(ティー・レクスタシー/T. Rex+Ecstasy=T. Rexへの熱狂)」と呼ばれ、T. Rexは英国を代表するポップスターとなりました。
僕が中学2年生だったのも、この頃です。とりわけ『チルドレン・オブ・ザ・レヴォリューション』『イージー・アクション』は、当時の記憶と切り離すことのできない曲になっています。
1973年以降――頂点の先で模索した新しいT. Rex
『20センチュリー・ボーイ』と中学3年生の僕
1973年には『20センチュリー・ボーイ』が全英3位を記録します。冒頭から響く強烈なギターリフは、半世紀以上が過ぎた今でも色褪せません。
僕はこの年、中学3年生でした。1971年から1973年という僕の中学時代が、そのままT. Rexの黄金期と重なっていたことになります。

変化する音楽とメンバー
『タンクス』以降、ボランはそれまでの成功パターンを繰り返すのではなく、ソウルやファンクなどにも接近しながら新しい音を探しました。しかし、英国の音楽シーンは急速に変化し、全盛期を支えたメンバーやヴィスコンティも次第に離れていきます。
1974年の『ジンク・アロイと朝焼けの仮面ライダー』、1975年の『ボランズ・ジップ・ガン』など、試行錯誤を続けますが、かつての圧倒的なチャート支配は終わりました。
ただし、この時期を単純な「衰退」とだけ捉えるのは適切ではありません。ボランは最後まで、自分の次の音を探し続けていました。
むしろ、この時期の迷いには、成功したアーティストならではの難しさが表れています。全盛期の音を繰り返せば「同じ」と言われ、変化すれば「昔の方がよかった」と言われる。ボランはその板挟みの中で、ソウルやファンクを取り込みながら、自分の音楽を更新しようとしていました。
1976–1977年――復調、そして突然の終幕
『アイ・ラヴ・トゥ・ブギー』で再びチャートへ
1976年の『アイ・ラヴ・トゥ・ブギー』は全英13位まで上昇し、ボランは再び存在感を取り戻します。翌1977年のアルバム『ダンディ・イン・ザ・アンダーワールド』も全英26位を記録しました。
当時の英国ではパンクが台頭していましたが、ボランは新世代を拒みませんでした。ザ・ダムドをツアーの前座に起用するなど、若いミュージシャンとの接点を積極的に持っています。

1977年9月16日――29歳で止まった時間
再び前へ進もうとしていた矢先の1977年9月16日、マーク・ボランはロンドン南西部で交通事故に遭い、29歳で亡くなりました。30歳の誕生日を迎える約2週間前でした。
車を運転していたのはパートナーで歌手のグロリア・ジョーンズ。車は道路を外れて木に衝突し、助手席にいたボランは帰らぬ人となりました。T. Rexはボランを中心に存在していたため、その死によって活動も事実上終わります。
半世紀を越えて残ったT. Rexの音
T. Rexの音楽は、決して複雑ではありません。短いギターリフ、反復するビート、耳に残るコーラス、そしてマーク・ボランの声。けれども、「シンプル」と「誰にでも作れる」はまったく違います。
イントロが鳴った瞬間にT. Rexだと分かる。その強烈な個性が、グラムロックの時代を越えて、パンクやニュー・ウェイヴをはじめ後の世代にも影響を残しました。華やかな衣装やグリッターを取り入れたボランのスタイルも、ロックスターの表現の幅を大きく広げています。
2020年、ロックの殿堂へ
2020年、T. Rexはロックの殿堂入りを果たしました。顕彰されたのは、マーク・ボラン、ミッキー・フィン、スティーヴ・カーリー、ビル・レジェンド。黄金期を作った4人です。

中学生だった僕が、もう一度聴く
今では、ティラノサウルス・レックス時代のことも、グラムロックが生まれた背景も知っています。しかし、知識を得たからT. Rexが好きになったわけではありません。
順番は逆でした。最初に音があり、「なんだ、このカッコいい音は」と感じた。そこから始まったのです。
半世紀以上を経た今、『チルドレン・オブ・ザ・レヴォリューション』『20センチュリー・ボーイ』『イージー・アクション』を聴いても、その感覚は大きく変わりません。むしろ、長い時間を経たからこそ、シンプルなものを誰にも似ていない音へ変えたマーク・ボランの才能が、以前よりよく分かるようになりました。
若い頃には、強いギターリフや派手な姿にまず惹かれました。しかし今は、その奥にある「削ぎ落とす力」にも耳が向きます。少ない音で曲の輪郭を作り、短いフレーズで忘れられない印象を残す。その技術と感覚こそ、T. Rexの音楽が長く生き残った理由の一つなのだと思います。
「僕の勝手なBest10【T. Rex編】」では、そんな中学時代の記憶も重ねながら、僕自身が選んだ10曲を一曲ずつ紹介しています。T. Rexの歴史を知ったうえで聴き直すと、それぞれの曲が生まれた場所も、以前より鮮明に見えてくるように思います。


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