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僕の勝手なBest15:【ユーミン】編-第2位『守ってあげたい』〜ノスタルジーと未来が交差する、優しき音の毛布〜


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第2位は『守ってあげたい』です

「僕の勝手なBest15」も、いよいよ頂点に近づいてまいりました。第2位に選ばせていただいたのは、1981年にリリースされた『守ってあげたい』です。

ちょうど僕が学生時代を終え、社会人となった、正にその年であります。

ユーミン(松任谷由実)の長いキャリアの中でも、この曲が果たした役割は計り知れません。1970年代の「荒井由実」時代の天才的なきらめきから、80年代以降の国民的ポップスター「松任谷由実」へと完全に扉を開いた、まさに記念碑的な一曲。

当時、角川映画『ねらわれた学園』の主題歌として街中に溢れていたこのメロディは、世代を超えて多くの人の心に「無償の愛」の形を刻み込みました。

今回は、この楽曲が放つ圧倒的な「包容力」の正体を、松任谷正隆氏による魔法のようなサウンドスケープ(音像)と、僕自身の記憶の引き出しを交えながら語らせていただきます。

まずは公式音源でお聞きください

■ 日本語クレジット
「You Don't Have To Worry / Mamotte Agetai」
歌:松任谷由実
作詞・作曲:松任谷由実
編曲:松任谷正隆
提供:Universal Music Group(公式音源)
■ 2行解説
1980年代の松任谷由実を代表する楽曲のひとつで、優しく相手を包み込むようなメッセージが特徴のポップス。
英語タイトル版としても知られ、安心感と都会的サウンドが融合したユーミンらしい名曲。

時代を優しく包み込む、緻密で温かなサウンドスケープ

この楽曲を語る上で絶対に外せないのが、再生した瞬間に空気を一変させる、あのイントロのサウンドです。今回は少し専門的な視点も交えつつ、この曲が持つ「音の風景」に迫ってみたいと思います。

記憶の扉を開く、あのシンセサイザーの響き

『守ってあげたい』のイントロは、日本のポップス史に残る完璧な導入部の一つだと僕は確信しています。キラキラとした、それでいてどこか切なさを帯びたシンセサイザーの音色。それはまるで、遠い夏の日の陽炎(かげろう)や、夕暮れ時に輝く一番星を音符に変換したかのようです。

当時の音楽シーンは、アナログからデジタルへと移行していく過渡期にありました。松任谷正隆氏のアレンジは、最新の電子楽器(シンセサイザー)を使いながらも、決して冷たい機械的なサウンドにはしていません。むしろ、アコースティックな温もりと絶妙にブレンドさせることで、聴く者を「誰もが心の奥底に持っている懐かしい風景」へと優しく誘うのです。

リズム隊(ベースとドラム)は決して前に出過ぎず、まるで主人公の確固たる決意を支える力強い鼓動のように、安定したテンポを刻み続けます。そして、間奏で響き渡るギターの音色は、夕暮れの土手に座って夢を語り合ったあの日の風のように、私たちの頬を優しく撫でていくのです。この緻密に計算された「音の毛布」があるからこそ、ボーカルの素朴で真っ直ぐなメッセージが、スッと胸の奥まで届くのでしょう。

東京でのの学生時代から、現役時代の心の支えへ

社会人になりたての頃の僕は、自分の夢や未来のことで頭がいっぱいで、「誰かを守る」という感情の本当の重さを、まだ理解できていなかったのだと思います。
遠い夏、トンボを追いかけ、夕暮れまで土手で無邪気に遊んだ記憶の延長線上で、ただ純粋にこの美しいメロディを楽しんでいました。

しかし、ひとたび社会に出ると、夢物語だけでは通用しません。若さも手伝って、忙しさや厳しさに疑問を抱くこともなく、時間だけが静かに過ぎていきました。

そんな折、僕はひとりの年上の女性と出会いました。
こう書くと何か特別な意味がありそうですが、実際には「出会い」があった、それだけのことでした。

彼女はしとやかで謙虚な人でした。そして、おそらく僕に好意を寄せてくれていたのだと思います。恋人になるわけでもなく、仲間たちと一緒に出かけたり、ときどき二人で時間を過ごしたりする、穏やかな関係でした。

詳しい経緯は覚えていませんが、一度、彼女の実家で夕食をごちそうになったことがあります。
その帰り、二人で大分市内へ車を走らせた夜のことを、なぜか今でも覚えています。何かを伝えたそうにしながら、言葉にしないまま隣に座っていた彼女の気配だけが、記憶に残っています。

当時の僕は学生時代の別れを引きずっており、新しい関係を築く余裕がありませんでした。それでも彼女は、いつも変わらず優しく接してくれました。

今振り返ると、あの頃の情景が「守ってあげたい」という楽曲と重なって思い出されます。
もしもう少し時間をかけて向き合えていたなら、関係は違う形になっていたのかもしれません。しかし当時の僕は、恋人がいない自由をどこかで満喫しており、彼女の想いに気遣う余裕すら持てなかったのだと思います。
遠くから何も言わずに静かに見守ってくれるような存在は、後にも先にも、彼女だけだったような気がします。

「何もできなくてもいい」という究極の肯定力

この『守ってあげたい』が、単なるラブソングの枠を超えて、僕の、そして多くの人の人生のサウンドトラックとなっている理由は、その根底に流れる「究極の肯定力」にあります。

守ることは、信じ続けること

この楽曲の主人公は、大切な人が何かに悩み、沈んだ顔を見せていることに気づき、自分までブルーな気持ちになってしまいます。しかし、そこで安易な解決策を提示したり、無理に元気づけようとしたりするわけではありません。「あなたを苦しめるすべてのものから守りたい」と強く願いながらも、同時に「他には何ひとつできなくてもいい」と歌い上げるのです。

初めて言葉を交わした日の、あの真っ直ぐで輝いていた瞳。少し不器用でいい加減だった自分を、優しく包み込んでくれたあの頃の姿。主人公は、目の前で落ち込んでいる相手の「現在」だけでなく、その人が本来持っている「輝かしい過去」と「本来の魅力」を丸ごと肯定し、ただ静かに寄り添い続けます。

物理的に問題を解決してあげることだけが「守る」ことではない。離れて会えない時であっても、心の中にその人の存在を抱いて歩き続けること。そして、相手が再び自分自身の足で立ち上がり、かつてのように夢を形にできる日が来ると信じて待ち続けること。これこそが、ユーミンがこの曲に込めた「守る」という行為の真髄なのだと深く理解できるのです。

コーラスワークが描く「無償の愛」の立体感

こうした深い精神性を、音響面から見事に支えているのが、後半に向かって厚みを増していく重層的なコーラスワークです。

「心配しなくていい」という語りかけや、ストレートな愛情表現が繰り返されるたび、バックコーラスはまるで幾重にも重なる波のように、聴く者を優しく、しかし力強く包み込んでいきます。それは、たった一人の人間からのメッセージを超えて、世界全体が「君は君のままでいいんだよ」と祝福してくれているような、ある種の神聖さすら帯びています。

松任谷正隆氏の編曲は、ここで決して過剰なオーケストレーションに走ることはありません。あくまでボーカルとコーラスの「声の力」を前面に押し出しながら、リズム隊がしっかりと大地に足をつけるようにビートを刻む。この音の立体感が、「何もできなくてもいい」という究極の肯定に、揺るぎない説得力を与えているのです。

世代を超えて響き続ける「魔法の言葉」

楽曲の随所に散りばめられた、ノスタルジックな風景描写も秀逸です。

遠い夏の記憶と、現在地を繋ぐもの

息をひそめてトンボを追いかけた遠い夏の日の記憶。あるいは、日暮れまで土手に座り、時間を忘れてレンゲの花を編んだ無邪気な午後。

あの頃の純粋な気持ちでもう一度、夢を捕まえてほしい。その願いは、大切な誰かに向けられたものであると同時に、社会の波に揉まれて立ち止まりそうになる僕たち皆に向けられた祈りでもありました。大人の複雑な悩みの中で息詰まった時、ユーミンは「トンボ」や「レンゲ」といった誰もが共有できる無垢な原風景のモチーフを使うことで、僕たちの心を一瞬にして「あの頃」へとタイムスリップさせ、凝り固まった感情を解きほぐしてくれるのです。

永遠に続くフェードアウトの余韻

そして、この曲の最後は、劇的なエンディングを迎えるのではなく、美しいコーラスとバンドサウンドがリフレインしながら、ゆっくりとフェードアウトしていきます。

この終わり方にも、僕は深い意味を感じずにはいられません。それは、「守ってあげたい」という願いが、曲が終わった後もずっと永遠に続いていくことの暗示のように思えるからです。僕たちが日常の業務に戻り、再び何かに躓きそうになった時でも、心の耳を澄ませば、あの温かいコーラスがどこからか聴こえてくる。このフェードアウトは、そんな「終わりのないお守り」を僕たちに手渡してくれているようです。

結びにかえて:僕たちの中にある「守るべきもの」

僕の勝手なBest15、第2位に輝いた『守ってあげたい』。

リリースから長い月日が流れても、この曲が全く色褪せないのは、誰かを思いやり、信じ抜くという「人間の根源的な優しさ」を、完璧なメロディと緻密なサウンドスケープで結晶化させているからです。

社会に出たばかりで必死だったあの頃の心の支えから、今の僕へ。改めてこの曲を聴き返すと、自分がこれまでいかに多くの人に「守られてきた」かという深い感謝の念が湧き上がってきます。同時に、これからの人生で、僕は誰のブルーな気持ちを和らげ、誰の夢を信じ続けてあげられるだろうかと、静かに問いかけられているような気もするのです。

音楽が持つ「包容力」の到達点。何度聴いても、そのたびに違う温度で心に寄り添ってくれるこの名曲を、第2位として皆様と共有できたことを嬉しく思います。

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