僕の勝手なCover Selection:『Money For Nothing』(Dire Straits)─Cover by The HSCC──原曲の視線を、ライブの推進力で更新する

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今回の『僕の勝手なCover Selection』の楽曲は・・・

『Money For Nothing』は、1985年に発表されたディア・ストレイツのアルバム『Brothers in Arms』 に収録された代表曲です。

全米・全英ともに大ヒットを記録し、MTV時代を象徴する楽曲として世界的に知られています。

シンプルなリフと辛辣な視点を併せ持ち、ロックが「社会を観察する装置」として機能していた時代の空気を、そのまま音に刻み込んだ一曲と言えるでしょう。

リード文

ディア・ストレイツの代表曲として、80年代MTV時代を象徴する『Money For Nothing』。
この楽曲を HSCC(Hindley Street Country Club) が取り上げると、スタジオ作品とは異なる「ライブならではの解像度」が前面に立ち上がります。

今回のカバーは、原曲のアイコン性を尊重しながらも、演奏そのものの力で楽曲を現在へと引き寄せた好例です。

歌詞:超約

テレビの向こうで成功を手にするスターたちを、現場で汗を流す語り手が皮肉混じりに眺めている。
努力と報酬が釣り合わない現実への苛立ちと、MTV時代の華やかさへの違和感が交錯する。
軽口の裏に、働くことの虚しさと欲望が透けて見える。

まずはYoutubeの公式動画からご覧ください。

✅ 公式動画クレジット
曲名: Money For Nothing
オリジナルアーティスト: Dire Straits
カバー演奏: The Hindley Street Country Club
フィーチャリング: Constantine Delo
公開チャンネル: The Hindley Street Country Club(公式)
公開日: 2022年11月25日
© The Hindley Street Country Club
公式サイト: https://www.thehscc.com

💬 2行解説
ディア・ストレイツの代表曲を、HSCCがライブならではの厚みとグルーヴで再構築したパフォーマンス。
原曲のアイコン性を尊重しつつ、バンド全体の推進力で現代的な躍動感を与えている。

イントロダクション

この曲が生まれた背景には、急速に拡大していたMTV文化への違和感があります。

演奏技術や音楽性よりも、映像・見た目・消費のスピードが優先される状況を、あえて“現場で働く側の視点”から描いたことで、この曲は当時の空気を生々しく切り取ることに成功しました。

だからこそ『Money For Nothing』は、単なるヒット曲ではなく、時代を切り取った記録として今も語られ続けています。


では、本家の公式動画をご覧ください

✅ 公式動画クレジット
曲名: Money For Nothing
アーティスト: Dire Straits
ライブ演奏: Live at Knebworth
公開チャンネル: Dire Straits(公式)
公開日: 2016年11月8日
YouTube表記: The official live video(公式ライブ映像)

🎸 2行解説
ディア・ストレイツ全盛期のステージを記録した、圧倒的スケールの公式ライブ映像。
巨大な観衆を前に鳴らされるギターリフが、この曲の象徴性と時代性を強烈に刻み込んでいる。

このKnebworth映像では、エリック・クラプトンとフィル・コリンズがゲスト参加している点も見どころです。

原曲の世界観──MTV時代の皮肉と視線

『Money For Nothing』の核にあるのは、成功そのものではなく「成功を眺める側の視線」です。
軽快なフレーズとは裏腹に、語り口はどこか投げやりで、羨望と諦観が入り混じった温度を保っています。
この距離感があるからこそ、楽曲は単なる批評に終わらず、今も多様な解釈を許容し続けているのです。


時代背景とサウンドの特徴

80年代中盤は、デジタル機材とアナログ感覚が同居していた時代。

本曲では、

  • 強烈なギターリフ
  • 無駄を削ぎ落としたリズム
  • 語りに近いボーカル

が組み合わされ、派手さとは別方向の説得力を生み出しています。アルバム『Brothers in Arms』自体も、ロックが次の段階へ進むための重要な分岐点に位置する作品でした。


HSCC版の魅力──ライブで甦るグルーヴ

イントロ/冒頭の印象

HSCC版では、あの象徴的なギターリフがスタジオ版よりも“太く”鳴ります。

音が立ち上がる瞬間から、この演奏が「その場で鳴っている」ことを強く意識させる構成です。


リズムセクション(ドラム・ベース)

HSCCの真骨頂は、リズムセクションの安定感にあります。

ドラムは前に出すぎず、しかし決して引かない位置取り。
ベースは低域を支えながら、全体の推進力を静かにコントロールしています。

結果として、曲全体が自然に前へ進んでいきます。


ボーカルとコーラスワーク

リードボーカルは、原曲の語り口を踏襲しつつ、HSCCならではの温度で再構築されています。
コーラスは厚みを加える役割に徹し、サビで一気に視界を広げる効果を生んでいます。


アレンジの構造と音の配置

HSCC版のアレンジは、「足す」のではなく「整理する」方向。
ギター、キーボード、コーラスがそれぞれ明確な居場所を持ち、音が混濁しません。
原曲の骨格を崩さずに、ライブ仕様へと最適化された構造です。


映像・ステージングの特徴

固定カメラと寄りすぎない画角が、演奏そのものへの集中を促します。
メンバー同士の視線やタイミングから、このバンドが“呼吸”で演奏していることが自然と伝わってきます。


HSCCによる「Money For Nothing」の再解釈

原曲との対話──リスペクトと更新

HSCCのカバーは、コピーでも模倣でもありません。 原曲が持っていた「語る位置」「視線の高さ」を理解したうえで、 現代のライブ空間に置き直しています。 それが、この演奏に無理のない説得力を与えています。

HSCCが示すカバーの意義

HSCCは、名曲を保存するだけの存在ではありません。

スタジオ音源とは異なる形で、楽曲を“再び機能させる”役割を担っています。 それは、ライブという文化を通じて、音楽を現在進行形に保つ行為でもあります。

終章──「Money For Nothing」が今も鳴り続ける理由

『Money For Nothing』が今も聴かれる理由は、 時代批評としての鋭さと、ロックとしての強度を併せ持っているからでしょう。

HSCCは、その両方を理解したうえで、この曲を現代のライブ空間に置き直しました。 結果として『Money For Nothing』は、 過去のヒットではなく、いまも機能するロックナンバーとして鳴り続けています。

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