🎸僕の勝手なBest15【ビリー・ジョエル編】- 第11位『New York State of Mind』をご紹介!

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🎸【ビリー・ジョエル編】第11位『New York State of Mind』

ビリー・ジョエル編の第11位は『New York State of Mind』です。ジャズの香りを漂わせながらも、彼らしい温かさに満ちた一曲。大都会の夜の情景を鮮やかに想起させてくれる、僕にとって特別な楽曲です。

🎥まずはいつものように、Youtubeの公式動画をご覧ください。

🎬 公式動画クレジット(公式音源)
アーティスト: Billy Joel
楽曲: New York State of Mind
収録アルバム: Turnstiles
発売年: 1976年
Label(レーベル): Columbia Records / Sony Music Entertainment
作詞・作曲: Billy Joel
ジャンル: Pop Rock / Jazz-influenced Ballad

📖 2行解説
1976年のアルバム『Turnstiles』に収録された楽曲で、ジャズとポップを融合させたBilly Joelの代表的バラード。ニューヨークの街並みや空気感を音楽に落とし込み、都会のアイデンティティを象徴する一曲となっています。

超約

西海岸での生活に区切りをつけ、ニューヨークへ戻った若いビリー・ジョエルが、日常の景色から「ここで生きる」と静かに定めるバラードです。名所を並べるのではなく、移動手段や紙面の手触りを通して、自分の視点を取り直す歌として響きます。

リリースと基本データ

本曲は1976年発表のアルバム『Turnstiles』に収録されています。ロサンゼルスで録った素材をあえて採用せず、ニューヨークでバンドと再録音したエピソードはよく知られています。制作の舵取りはビリー自身。リッチー・カナータのサックス、ダグ・ステグマイヤーのベース、リバティ・デヴィットのドラムといった面々が、のちの黄金編成の原型を形作りました。シングル化はされなかったものの、ライブでは早くから定番となり、いまや“都市を歌うスタンダード”として位置づけられています。

当時の背景とアルバムとの関係

『Turnstiles』は「行き来する人々」を象徴するタイトルの通り、移動と選択が通奏します。西へ行った主人公が東へ戻り、足場を据え直す本曲は、その主題を最も素直な言葉で提示する章と言えます。

ニューヨークで録り直した必然

バンドの呼吸、街の密度、リズムの粒立ち——それらを体に刻み直すためには、ニューヨークで演奏すること自体がアレンジの一部でした。結果として、演奏の隅々まで“現地の重み”が宿ります。

なぜ11位に置いたのか・・・そんな大業な話でもないですが!

シリーズ全体の流れを俯瞰すると、社会的な視線の強い「Goodnight Saigon」や、辛辣な風刺の「Big Shot」のような“外へ向かう圧”の強い曲が続きます。その狭間に本曲を置くと、あなたは一度視野を自分の足元へ戻せます。強いメッセージに頼らず、生活の温度で説得する曲をここに据えることで、ランキング全体の濃淡がはっきりし、次章以降の推進力も損なわれないと思います。

暮らしを描く普遍性

『New York State of Mind』は戦争や虚飾のような強烈な題材を扱うのではなく、日常をそのまま描く点に独自性があります。聴き手はそこに自分の暮らしを重ね合わせやすく、世代や場所を超えて共感が持続するのです。

歌詞の要所と意味

冒頭の
“Took a Greyhound on the Hudson River line” (ハドソン川沿いを走るグレイハウンド・バスに乗った)
というフレーズは、観光客の高揚ではなく、生活者の移動を置きます。長距離バスと川沿いの車窓が、主人公を最初から現実の地面へ着地させる装置になっています。

続く
“I don’t have any reasons, I left them all behind” (理由はもういらない、すべて置いてきた)
では、理屈の列挙を退けることで、むしろ決断の重みが浮かびます。必要なのは説明ではなく一致感であり、身体が先に納得しているというニュアンスが、曲全体の芯を太くします。

そしてサビの
“I’m in a New York state of mind” (ニューヨークの気分でいる/ニューヨークの心持ちでいる)
という反復は、一時の気分表明ではなく、物の見方を更新した宣言です。言い切ったのちに、また日常の描写へ戻る往復運動が、判断の確かさを重ね書きしていきます。

言葉の選択がもたらす密度

派手な形容を避け、移動、部屋、紙面といった具体を少しずつ置く。過不足のない散布によって、聴き手は自分の経験と自然に重ね合わせられます。説明で押し切らない節度が、再聴性を高めています。

最小限の引用で最大の含意

短い英語句の引用に絞るのは、本曲の設計にも合致します。物語の隙間は聴き手の記憶が埋める——その余地こそが、長寿命の理由です。

聴きどころ

冒頭の和音が響いた瞬間、空気の質感がふっと変わり、そこから自然に物語が立ち上がっていきます。

歌い出し

歌声は子音を突き出さず、語尾も引きずらないため、都会の風景へそのまま入り込むような軽やかさがあります。場面の切り替えが淀まず、聴き手は自然に歌の世界へ導かれていきます。

サックス・ソロ

リッチー・カナータのソロは決して前面に出過ぎず、全体を落ち着かせながら終盤へつなぎます。熱を過度に盛り上げるのではなく、夜の湿度をほんの少し加えて歌の温度へ戻していく。その抑制があるからこそ、曲はすっと定常運転に落ち着き、「もう一度聴きたい」という循環を自然に生み出しているのです。

呼吸が作るテンポ

メトロノームの正確さよりも、語りに寄り添う揺れが大切に扱われています。これが、歌詞にある「戻る」という行為の時間感覚と響き合います。

聴きどころの地図

冒頭の和音で空気が変わり、歌声とサックスが自然に呼吸を重ねていく。その流れが最後まで無理なく続き、聴き終えた瞬間に「もう一度最初から聴きたい」と思わせる循環を作り出しているのです。

カバーと継承の広がり

『New York State of Mind』は、当初はシングルにならなかったにもかかわらず、多くのアーティストに取り上げられました。バーブラ・ストライサンドやトニー・ベネット、さらにはシンディ・ローパーなどもレパートリーに加え、世代を超えた支持を集めています。

シンプルな構造ゆえに、ピアノと声だけの最小編成から、大編成オーケストラまで自在に形を変えられます。だからこそ、ジャズクラブでも、野外イベントでも、あるいはチャリティの舞台でも、都市を象徴する歌として響き渡るのです。

ニューヨークを代表する“顔”

この曲はやがて「ニューヨークの自己紹介」のような役割を担うようになります。スポーツイベントや記念行事で歌われるたびに、単なる個人の作品を超えて、街そのものを代弁する存在へと広がっていきました。


制作のエピソード

『New York State of Mind』は当初、ロサンゼルスで録音されました。しかし、ジョエル自身が「ニューヨークでなければこの曲は完成しない」と直感し、地元に戻って再録音を決断します。

そこで起用されたのが、サックス奏者リッチー・カナータでした。まだ無名に近かった彼の演奏は、ジョエルにとって“街の湿度をそのまま音にした”かのように響き、すぐに採用が決まったと伝えられています。結果として、カナータはその後のジョエルの黄金期を支える重要メンバーとなりました。

この判断は、単なる録音テイクのやり直しにとどまらず、「バンドを自らの手で築き上げる」という方向転換の出発点でもありました。すなわち『New York State of Mind』は、ニューヨークへの帰還だけでなく、“仲間と作る音楽”への帰還も象徴しているのです。


同時代背景との接点

1970年代半ばのニューヨークは、財政破綻寸前で犯罪や失業の問題も深刻でした。新聞の一面を飾るのは暗いニュースばかり。それでもジョエルは、この街に戻ることを選びました。

歌詞に出てくる
“It was so easy living day by day” (一日一日を過ごすのは簡単だった)
という一節は、かつての西海岸での生活を指しています。便利で安定した環境に身を置いても、心は満たされない。だからこそ、矛盾を抱えるニューヨークにこそ自分の居場所があると気づいたのです。

続く
“Out of touch with the rhythm and the blues” (リズム&ブルースから離れていた)
では、音楽の根源と切り離された感覚を告白します。都会の雑踏にこそ自分のリズムがあり、ジャンルの原点に触れられるという自覚がここに込められています。

矛盾を受け入れる肯定

この歌は、街を美化するわけでもなく、欠点を糾弾するわけでもありません。問題を抱えたままの都市を、そのまま受け入れて「ここで生きる」と言い切る態度が、今も共感を呼びます。

現代的な受け止め方

インターネットやリモートワークで場所を選ばなくても生きられる時代においても、この歌が支持されるのは、「居心地の良さ」ではなく「心の納得」で場所を決める視点を示しているからでしょう。


『Turnstiles』における立ち位置

『Turnstiles』というアルバムは改札口を意味し、人の往来や人生の岐路をテーマに据えています。『Say Goodbye to Hollywood』のような別れの歌もあれば、『Miami 2017』のような未来の幻影も描かれています。

その中で『New York State of Mind』は、移動と選択の物語を束ねる要石となっています。
主人公が「ここに戻る」と宣言することで、アルバム全体は単なる寄せ集めではなく、“帰還と定着”のストーリーとしてまとまるのです。

黄金バンドとの始まり

ここで確立されたバンド編成は、その後の80年代の黄金期を支える屋台骨となります。アルバムの中での役割は、音楽的実験ではなく、「基盤」を形にすることでした。

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