今日は堀内孝雄の誕生日
1949年10月27日、大阪府生まれです。フォークグループ・アリスのボーカル&ギターとしてデビューし、1970年代後半の音楽シーンを支えました。よく伸びる高音と、言葉を丁寧に運ぶ歌い方が持ち味です。ソロとしても『君のひとみは10000ボルト』『恋人よ』などの大ヒット曲があり、ドラマの主題歌でも大勢に親しまれてきました。半世紀以上にわたり第一線で歌い続けている、貴重な存在です。
まずは公式音源でお楽しみください。
🎵 クレジット(公式情報)
曲名: Tooku De Kiteki Wo Kikinagara (Remastered 2024)
アーティスト: Alice(アリス)
提供: Provided to YouTube by Universal Music Group
収録アルバム: Alice 5
リマスター年: 2024年
💬 2行解説
1970年代のアリスを代表する名曲「遠くで汽笛を聞きながら」を、最新音源で再構築した2024年リマスター版。オリジナルの哀愁をそのままに、音の輪郭と深みがより鮮明になった現代的なリマスタリングです。
僕がこの曲を初めて聴いたのは
| My Age | 小学校 | 中学校 | 高校 | 大学 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60才~ |
| 曲のリリース年 | 1976 | ||||||||
| 僕が聴いた時期 | ● |
僕が高校3年生の時にリリースされた曲です。
このブログでも何度か登場していますが、僕の通っていた高校は隣町の佐伯市にありました。校風もよく、秀才ぞろいで非常に刺激を受けた学生時代でした。何一つ嫌な思い出などありませんが、この「遠くで汽笛を行きながら」を聴くと、歌詞ではなく曲のイメージが高校時代と被り、つい佐伯市を、鶴城高校を思い出します。
アリスの楽曲はデビュー曲の「走っておいで恋人よ」から知っていますし、長い間このデビュー曲が一番好きでした。しかしこの「遠くで汽笛を行きながら」が出てからは断トツ1位の座を不動のものとしています。

僕が汽車通学をしていたころは、まだ蒸気機関車がありました( ;∀;)
堀内孝雄の誕生日まで紹介をせずに、溜めておりました。谷村新司の誕生日には、2番目に好きだった「雪の音」を紹介しています。よかったらこちらも聴いてみてください。
『遠くで汽笛を聞きながら』とは
1976年にリリースされたアリスの代表曲です。作詞は谷村新司、作曲は堀内孝雄です。くじけそうになりながらも、前へ進もうとする若者の思いが描かれています。のちの『冬の稲妻』『チャンピオン』へと至るアリスの人気上昇期において、表現の幅が決定づけられた重要な一曲です。

タイトルが生む情景
曲名にある「汽笛」は、遠くに広がる世界へと気持ちが向かっていく、象徴的なモチーフです。その音を聞きながら、「何もいいことがなかったこの街」で立ち止まっている主人公の気持ちが、すっと浮かび上がります。視界には日常の景色しかないのに、耳は遠くの未来へと向いている――そんな状況を的確に描いていると思います。
当時の時代背景
1970年代半ばの日本では、オイルショック後の不安がまだ残っていました。地方から都市へ移動する若い世代が多く、仕事も恋も簡単には手に入らない現実がありました。フォークソングは政治性よりも、日々を懸命に生きる感情にフォーカスする傾向が強まり、ニューミュージックへと移行していた時期です。
アリスの立ち位置
そのなかでアリスは、フォークの語りと歌謡曲のメロディを見事に融合させ、多くの聴き手をつないだグループでした。ラジオを中心に人気を広げ、コンサートの動員も増え、若者たちの生活に寄り添った作品を次々に届けました。
歌詞のテーマと魅力
歌詞は、一人の若者の胸のうちを静かに追いかけています。「悩みつづけた日々」「むなしい涙」という言葉の選び方が、暗すぎない範囲で心の重さを示しています。そして主人公は、嘘をつかない、裏切らない、生きていきたいと、小さくても確かな決意を見せます。

言葉の輪郭を保つ表現
谷村新司の詞は、無駄な比喩に頼らず、名詞と動詞がはっきりと立っています。「遠くで汽笛を聞きながら」というフレーズは、主人公が立ち止まりながらも、思いだけは前に進もうとする姿を示しているように感じます。
メロディとアレンジ
アコースティックギターを軸に、慎ましいバンドアレンジで進んでいきます。サビに向けて音域が上がり、主人公の気持ちが整理されていくような流れが生まれています。ピアノやストリングスが重くなりすぎない程度に彩りを添え、歌詞の輪郭が埋もれないように工夫されている点も魅力です。
堀内孝雄のボーカルの存在感
堀内孝雄の歌声は、言葉の端々まで素直に届ける力があります。感情を押しつけず、それでも意思が感じられる。そのバランスが、この曲の主人公像ととても相性が良いのだと思います。作曲者本人が歌うことで、旋律に込めた意図がしっかり伝わる点も大きな強みです。
ライブで育まれた“この曲らしさ”
『遠くで汽笛を聞きながら』は、アリスのライブで必ずと言っていいほどセットリストに入っていました。派手な照明ではなく、淡いライティングで歌われることも多く、広い会場の空気を自然と静める役割を担ってきました。
派手な盛り上がりではないのに、サビの「この街で」という一行が観客の胸に残る――そんな体験が、多くのファンの記憶に積み上がっています。

ライブアレンジの工夫
堀内孝雄のギターを基点に、矢沢のドラムが寄り添い、必要以上に音を増やさない構成が続いています。少しテンポを落とす会場もあり、言葉が一つひとつ明瞭に届くように設計されてきました。それが、今日まで長く歌い継がれている理由の一つだと感じます。
カバーやセルフカバーの広がり
この曲は、多様なアーティストが取り上げてきました。キーやテンポを変えても成立するほど、メロディの芯が強く、歌詞の普遍性も大きいといえます。世代やジャンルを越えて共感できる曲だからこそ、今も多くの歌い手に愛されているのだと思います。
映像化・メディアとの相性
ドラマやバラエティで、切ないシーンに選ばれることもあります。音が鳴った瞬間に“人生の午後”のような景色が浮かぶ。作品の空気を切り替える力がある曲です。
“汽笛”というモチーフの強さ
この曲を象徴するのは、やはりタイトルにもある「汽笛」です。
汽笛は、旅立ちだけでなく、今いる場所と外の世界を結ぶ音でもあります。目の前の景色は変わらなくても、耳から未来が差し込んでくる。そんな状況は、誰の人生にも一度や二度、あるのではないでしょうか。

時代を越えて共感を呼ぶ理由
SNSや通信が発達した今でも、「今ここにいながら、どこかへ行きたい」という思いは変わりません。
だからこそ“遠くで響く音へ意識が向かう”という構造は、現代の心情にも自然に重なります。
前へ進みたい。でも、まだ準備が足りない。
それでも、耳は未来の気配を捉えている。
この微妙な揺れを、汽笛という一つの音で表現している点が見事だと思います。
歌に刻まれた「敗北後の希望」
物語は勝利では終わりません。
主人公は成功を手にしたわけでも、新しい恋に出会ったわけでもない。
それでも、たった一つ
「自分の言葉に嘘はつくまい」
と決めます。
小さな誓いですが、一度口にすれば明日へ続く力になる。
背伸びしない人生の再出発
歌詞の中で語られるのは、高い理想ではなく、生活の中で守れる基準です。だから聴き手は、自分の暮らしの中にすぐ持ち帰ることができます。
このリアリティが、多くの人を励ましてきたのでしょう。
アリスの楽曲全体の中で
アリスにはドラマチックで声を張り上げる曲もありますが、この曲は違います。
静かで、自分の呼吸に近いテンポ。
人生の折り返しでも、多くを語らずに自分を立て直す場面に寄り添う曲です。

“人生の節目に思い出す一曲”
卒業、失恋、転職、引っ越し。
何かを終え、何かを始めるとき――この曲がそっと浮かぶ人は少なくないはずです。
今あらためて聴きたい理由
長い時間がたっても、この曲は色褪せません。
それは、時代に依存しすぎない言葉で綴られているからだと思います。
悩んだ過去は消えない。
でも、少しだけ前に進む。
そうした“程よい現実感”が、かえって強い励ましになる。
大きな声で鼓舞するわけではないのに、背中が自然と上を向く――
そんな作用が、この曲には宿っています。
おわりに
堀内孝雄の誕生日に改めて聴く『遠くで汽笛を聞きながら』は、年齢を重ねるほど違う響き方をしてくれる曲だと思います。若かった頃には見えなかった歌詞の行間が、今では自分の人生とつながる。
アリスが刻んだ名バラードは、今日もどこかで誰かの“次の一歩”を支えているのではないでしょうか。


コメント