今日10月17日は青山テルマの誕生日!
1987年10月17日、奈良県生まれ。日本人の父とトリニダード・トバゴ出身の母を持ち、幼少期から多文化に触れながら育った青山テルマ。
学生時代から洋楽R&Bに傾倒し、独自のリズム感と英語詞の発音センスで注目を集めます。2007年にメジャーデビューを果たし、翌2008年には日本中を席巻する大ヒット曲『そばにいるね』をリリース。
彼女の特徴は、英語と日本語の境界を自然に行き来するヴォーカル・フレージング。そして何よりも、歌声そのものに「現代的な温かさ」があること。音数を詰め込まなくても伝わる存在感が、彼女の最大の魅力です。
超約
離れていても、あなたを思う気持ちは変わらない。
電波越しの声だけが今の絆だけど、信じて待っている。
会えない時間が募るほど、あなたへの言葉は増えていく。
伝えられなかった想いを胸に、今日も「ここにいる」と伝えたい。
今日の紹介曲:『そばにいるね』-青山テルマ feat.SoulJa
まずはYoutube動画(公式動画)からどうぞ!!
🎥 公式動画クレジット
曲名:そばにいるね
アーティスト:青山テルマ feat. SoulJa
レーベル:UNIVERSAL MUSIC JAPAN
リリース:2008年
📖 2行解説
SoulJaの「ここにいるよ」に対する“アンサーソング”として誕生し、2008年の国民的大ヒット曲に。
切ないメロディと携帯メール時代の恋愛観を象徴する歌詞が、時代の記憶として残る代表作となった。
僕がこの曲を初めて聴いたのは・・・♫
My Age | 小学校 | 中学校 | 高校 | 大学 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60才~ |
曲のリリース年 | 1968 | 2008 | |||||||
僕が聴いた時期 | ● | ● |
はじめて聴いたのはテレビ番組だったような気がします。50歳直前期です。
サラリーマンも最終コーナーに差し掛かる直前で、何かいつも癒しを求めていた気がします。仕事もかなりハードで、燃え尽き寸前だったのかもしれません。そんななかで、スーッと僕の中に入ってきた一曲です。
ラブサイケデリコではないですが、英語と日本語の境目のない歌唱。わざとらしくないというか、ネイティブ的な感じ、こういうの大好きなんです。
メロディーも少し切なくて、ささやくような歌い方も気に入っていました。
時代と共鳴した『そばにいるね』
リリース当時の状況
2008年1月23日、『そばにいるね』(SoulJa feat. 青山テルマ)はリリースされました。
前作『ここにいるよ feat. 青山テルマ』(2007年)のアンサーソングとして誕生した本作は、携帯音楽配信(着うたフル)が主流だった時代に、驚異的なダウンロード数を記録します。
当時の音楽業界では、CDよりも「携帯から聴く」という文化が急速に拡大していました。通勤電車や深夜の部屋でイヤホンを通して聴く人が多く、音楽はより「個人的な時間の中のもの」になりつつあった時代。
そんな中で『そばにいるね』は、“心に直接届くメッセージソング”として多くのリスナーの共感を呼びました。

歌詞に込められた「距離」と「信頼」
冒頭に流れるメッセージ
Baby boy わたしはここにいるよ どこもいかずに待ってるよ
You know dat I love you だからこそ 心配しなくていいんだよ
この導入のわずか二行で、曲全体の世界観が完璧に提示されています。
“遠く離れても変わらない心”というテーマを、派手な比喩や誇張を使わず、シンプルに言葉で伝えている点がこの楽曲の核心です。英語のリズムと日本語の情緒が自然に混ざり合い、感情の起伏を丁寧に描く構造になっています。
男性側との往復書簡のような構成
青山テルマのパートに続くSoulJaのラップでは、彼女への想いが具体的な日常描写とともに綴られます。
「電波でしか会えない日々」「髪の香り」などのフレーズは、かつての恋人を思い出す“視覚的な記憶”として機能し、聴き手の心にも鮮やかに残ります。
それぞれのパートが「返信」になっているように構成されており、曲全体が一通の“ラブレターの往復”として完結する仕組み。これが『そばにいるね』を単なる恋愛ソング以上の作品へと押し上げています。

音楽的な構造とボーカル表現
メロディーの設計
全体のテンポはゆったりとしていて、静かに心に届くスピード感です。
曲の中心には、優しく流れるピアノの音があり、その上に青山テルマの声が穏やかに重なります。
メロディーの流れはとても聴きやすく、自然に耳になじむ作りです。
打ち込みのリズムと生演奏のピアノやストリングスがうまく混ざり合い、「デジタルなのに温かい」という独特の雰囲気を生んでいます。
この音のバランスこそが、当時の日本のR&Bシーンに新しさをもたらしました。
青山テルマの歌唱の特徴
青山テルマのボーカルは、技術的なビブラートよりも“息のコントロール”で感情を表現するタイプ。
語尾を強く押さず、あえて余力を残した発声によって、聴き手の想像を広げる余地を与えています。
また、発音の滑らかさと母音の響きを重視する唱法は、英語と日本語が混在するこの曲に最適でした。
一聴すると優しく感じますが、実際には高度なリズムキープと感情抑制の技術が裏側で支えています。

アンサーソングとしての革新
『ここにいるよ』との対話構造
『そばにいるね』のもう一つの魅力は、前作『ここにいるよ』との関係性にあります。
前作ではSoulJaが男性の視点から、遠くにいる女性への想いを語りました。一方、本作では女性である青山テルマが“返信”という形で、同じ情景を別の角度から描き出します。
この“二つの物語がひとつの世界でつながる構造”は、当時の日本のポップミュージックとしては極めて斬新でした。
聴き比べると、歌詞の中に同じキーワードが散りばめられていることに気づきます。たとえば「Letter」「電波」「髪の香り」。それらが男女それぞれの視点で異なる感情として響く点が、この楽曲の文学的な深みを支えています。

当時のリスナーが感じた“リアル”
SNS以前の恋愛の距離感
2008年の日本は、まだスマートフォンが一般化する前。人と人との距離をつなぐのはメールや電話、そして音楽でした。
『そばにいるね』は、そんな時代の“恋の通信手段”そのものでした。
会えない時間の寂しさ、伝えきれない気持ち、届かない言葉。それを一曲の中で昇華させたことが、多くのリスナーに“自分の物語”として響いたのです。
歌詞の「電波でしか会えない日々」「いまじゃ残された君はアルバムの中」という表現は、デジタル化が進む現代にも通じる“距離の痛み”を感じさせます。
青山テルマの存在がもたらした影響
女性R&Bシンガーの新たな地平
『そばにいるね』の成功によって、青山テルマは“R&BをJ-POPの主流に押し上げたアーティスト”のひとりとして語られるようになりました。
それまでR&Bはクラブシーン中心の音楽でしたが、テルマの声と日本語詞の融合が、一般リスナーにも広く受け入れられたのです。
以後、加藤ミリヤやAI、清水翔太などが続き、日本語R&Bの黄金期が到来します。その火付け役となったのが、この曲と言っても過言ではありません。

現代に聴く『そばにいるね』
時を超えるメッセージ
15年以上が経った今も、『そばにいるね』はテレビ番組や配信サービスで繰り返し取り上げられています。
その理由は、この曲が「どんな通信手段よりも、人の気持ちは直接届く」という普遍的なテーマを持っているからでしょう。
青山テルマが歌う“待つ側の静かな強さ”と、SoulJaの“届かない想いを抱える弱さ”が交差する瞬間に、人間らしい正直さが現れます。
この曲を聴くと、連絡の途絶えた誰かの名前をふと思い出す。そんな経験をした人も多いのではないでしょうか。

現代的な再評価の動き
デジタル時代との接点
近年、TikTokやYouTubeショートでは『そばにいるね』のサビ部分を使った“リメイク動画”が再び増えています。
若い世代にとっては懐メロではなく、“新しいエモーショナルな日本語R&B”として再発見されているのです。
リスナーの多くがスマートフォンで音楽を聴く今の時代に、この曲の構造がふたたび現代的に響くのは、ある意味で必然でしょう。

結び ― “Unsent letter”が残したもの
最後の歌詞には「送るUnsent letter(送られなかった手紙)」という印象的な言葉があります。
それは“書いたけれど出せなかった想い”の象徴。
このフレーズがあることで、曲全体が一気に文学的な深みを帯びます。
青山テルマの声が、ただの恋愛ソングを超えて“人が人を想い続けることの尊さ”を描いた瞬間です。
『そばにいるね』は、2000年代のヒット曲でありながら、今も心に残る“記憶の手紙”。
青山テルマの誕生日にあらためて聴くと、あの時代の空気が鮮やかに蘇るようです。

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