🎸僕の勝手なBest10【スティング(Sting)編】第3位『Fields of Gold』をご紹介!

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僕の勝手なBest10【スティング編】第10にもプロフィールを記載してます。

🎸僕の勝手なBest10【スティング(Sting)編】第3位『Fields of Gold』をご紹介!!

いよいよ、スティングのBest10も残すところあと3曲です。スティングの楽曲は、単純なロックやポップスではなく、レゲエや他の要素と複雑な哲学的意味合いなどもあり、ある意味わかりにくくもあります。

ということで、結構好みが分かれるミュージシャンだろうと当初から予想していました。そしてここまでの7曲のPVは予想通り、というか多くありません。
これまでの楽曲も「僕の勝手な・・・」ではお勧めの楽曲ではあるものの、好みが分かれるのも事実。
しかしここからの3曲は間違いなく本物です。(4位までもですが(>_<))
どの角度から聴いても、センスの良さ、歌詞の重み、楽曲の輝きは天下一品です。

ということで、本日、僕の独断と偏見でお届けする「勝手なベスト10」、その栄えある第3位に選出したのは、1993年にリリースされたアルバム『Ten Summoner’s Tales』からの珠玉の一曲、『Fields of Gold』です。

🎥まずはいつものように、Youtubeの公式動画をご覧ください。

🎬 公式動画クレジット
タイトル: Fields Of Gold(Remastered)
アーティスト: Sting
公開元: Sting公式YouTubeチャンネル(@Sting)
公開日: 2011年9月21日
視聴回数: 約1億3900万回(2025年6月現在)
音源出典: 1993年 A&M Records, from the album “Ten Summoner’s Tales”

📌 解説(2行)
1993年に発表されたスティングの代表曲を高画質でリマスターした公式ミュージックビデオ。金色の麦畑をモチーフに、愛と記憶の儚さを穏やかに描いたバラードの傑作です。
🎬 公式動画クレジット
アーティスト: Sting
公開元: Sting公式YouTubeチャンネル(@Sting)
公開日: 2023年6月3日

📌 解説(2行)
1993年、ウィルトシャー州の自宅「Lake House」で収録された、スティングの貴重なライブ映像。穏やかなアレンジと自然の風景が織りなす映像美が、『Fields Of Gold』の詩情を際立たせています。

はじめに ― 音楽史に咲く静かな名花

数多の星が輝く音楽の夜空において、ひときわ静謐で、それでいて強烈な光を放ち続ける星があります。その名はスティング。ザ・ポリスのフロントマンとして世界を席巻し、ソロアーティストとしてはさらに深遠な音楽の旅を続ける、現代最高のシンガーソングライターの一人です。彼の輝かしいキャリアについては過去の記事(特に第10位)で触れましたので、ここでは最小限に留めましょう。

『Fields of Gold』——これは、単なるラブソングではありません。
それは、イングランドの古き良き風景画であり、魂に響くケルトの詩であり、そして時間という概念そのものに挑む、静かで深遠な哲学的問いかけでもあります。

1993年にリリースされたスティングのアルバム『Ten Summoner’s Tales』に収録されたこの楽曲は、全英シングルチャートで16位、アメリカのアダルト・コンテンポラリー・チャートでは2位を記録するなど、派手さはなくとも着実に評価され、長く愛されるスタンダードへと成長していきました。
その後、数々の映画・テレビCM・セレモニーなどで用いられ、特にエヴァ・キャシディによるカバーが世界中に広まったことで、この曲は単なるヒットを超えた“人生の節目に寄り添う楽曲”として定着しました。

なぜ『Fields of Gold』は、リリースから30年以上経った今もなお、結婚式で流れ、CMで使われ、世界中の人々の心の琴線に触れ続けているのでしょうか。
その秘密を、黄金色に輝く麦畑をゆっくりと散策するように、ひとつずつ紐解いていきましょう。

曲の背景と誕生 ― イングランドの風景から生まれた歌

音楽は、それが生まれた場所の空気や光、匂いを纏っています。『Fields of Gold』ほど、その土地の魂を色濃く反映した曲は稀かもしれません。この曲のルーツは、スティングが居を構えるイングランド南西部ウィルトシャー州の、ある壮麗な風景にあります。

イングランドの古城と大麦畑が生んだインスピレーション

スティングは、エリザベス朝時代に建てられたマナーハウス「レイク・ハウス」とその広大な敷地に住んでいます。(画像はイメージです(>_<)) その家の窓から、あるいは敷地を散策していると、目の前に広がるのは雄大な大麦畑。初夏には青々と、そして収穫期が近づく秋には、その名の通り、太陽の光を浴びて黄金色に輝くのです。

彼はあるインタビューでこう語っています。「僕の家の近くには大麦畑が広がっていて、夏になると風にそよぐその景色は本当に素晴らしいんだ。まるで黄金の海みたいでね。その光景が、この曲を書かせたんだ」。

この曲のイントロを聴いただけで、多くの人が思い浮かべるのは、穏やかな西風が吹き抜け、金色の穂がさざ波のように揺れる、牧歌的な情景ではないでしょうか。それは偶然ではありません。スティングは、自身が日常的に目にし、心動かされた原風景を、音とメロディで見事にスケッチしてみせたのです。彼は都会の喧騒から離れた田園生活の中で、自然が持つ根源的な美しさと、そこに流れるゆったりとした時間の中から、この普遍的な名曲の種を見つけ出したのです。

妻トゥルーディ・スタイラーへの誓いという名の物語

そして、この美しい風景画の中心に描かれている人物こそ、彼の長年のパートナーであり、妻であるトゥルーディ・スタイラーです。この曲がリリースされた1993年は、彼らが10年以上の交際期間を経て、前年の1992年に正式に結婚した直後でした。つまり、『Fields of Gold』は、単なる空想のラブストーリーではなく、スティングからトゥルーディへ捧げられた、深く、そして誠実な愛の誓いそのものなのです。

歌詞の中の
"I never made promises lightly / And there have been some that I've broken / But I swear in the days still left / We'll walk in fields of gold"
(僕は軽々しく約束はしなかった/そして破ってしまった約束もいくつかあった/でも誓うよ、残された日々の中で/僕らは黄金の畑を歩いていくだろう)
という一節に、その想いが凝縮されています。

これは、若さゆえの過ちや未熟さをも認め、過去を正直に見つめた上で、これからの未来を「共に歩む」と宣言する、成熟した大人の愛の形です。燃え上がるような情熱だけでなく、穏やかで、揺るぎない、信頼に満ちた関係性。レイク・ハウスの窓から見える黄金の麦畑は、彼らが共に築き上げてきた愛の歴史と、これから重ねていく未来の豊かさを象徴する、パーソナルで神聖な場所となったのです。

サウンドスケープの構築美 ― 音で描く情景

『Fields of Gold』の魅力は、その詩的な背景だけに留まりません。スティングという音楽家が、いかに緻密な計算と深い音楽的素養を持った「音の建築家」であるかを、この曲は雄弁に物語っています。

ケルト文化の響きを織り込む、スモールパイプの導入

この曲のサウンドを決定づけている最も特徴的な要素は、間奏で聴こえてくる、どこか懐かしく、物悲しい笛の音でしょう。これは「ノースアンブリアン・スモールパイプ」という、スティングの故郷であるイングランド北東部(ノースアンブリア)の伝統的な楽器です。スコットランドのバグパイプとは異なり、ふいごを使って空気を送り込むため、より繊細で柔らかな音色を奏でます。

この楽器を演奏しているのは、この地方の伝統音楽の第一人者であるキャスリン・ティッケル。スティングは、自身のルーツであるケルト文化の響きを、現代的なポップソングの中に持ち込むことで、曲に唯一無二の深みと郷愁を与えました。それは、単なる異国情緒の演出ではありません。彼自身のアイデンティティの表明であり、風景の描写に「土地の記憶」という時間軸を織り込む、魔法のような仕掛けなのです。この土着的なサウンドが、洗練されたポップスの構造と違和感なく溶け合っている点に、プロデューサーとしてのスティングの手腕が光ります。


歌詞に織り込まれた時間と永遠 ― スティングの詩的世界

スティングを語る上で欠かせないのが、文学的で思索的な歌詞の世界です。彼は単なる作詞家ではなく、「詩人」と呼ぶにふさわしい言葉の使い手です。『Fields of Gold』は、彼の詩作の頂点の一つと言えるでしょう。

黄金の麦畑が象徴する3つの意味層

この曲の核心である「Fields of Gold(黄金の麦畑)」は、実に多層的な意味を持つ、巧みなメタファー(隠喩)です。

① 愛の記憶が宿る場所

もっとも素直な解釈として、歌詞の中で二人が出会い、恋に落ち、愛を育む特別な場所として描かれています。風が麦畑を渡るたびに、かつての幸福な記憶が呼び覚まされる。「記憶の器」としての風景です。

② 豊穣と愛の成熟の象徴

麦が育ち、実り、やがて黄金色に輝く様子は、時間をかけて深まる愛の過程そのものです。青く未熟だった恋が、信頼と尊敬に満ちた関係へと成熟していく姿が重なります。

③ 生命のサイクルと永遠性

麦は刈り取られても、その種からまた命が芽吹き、来年も黄金の畑が広がります。このサイクルは、生命の循環、つまり死と再生を暗示します。たとえ姿は消えても、愛の記憶は風景の中で生き続ける――そうした永遠へのまなざしが込められているのです。

“Jealous sky” という謎めいた詩句の解釈

この曲でもっとも詩的で象徴的な一節がこちらです。

You’ll forget the sun in his jealous sky / As we walk in fields of gold”
(黄金の畑を歩けば、嫉妬深い空にいる太陽のことさえ忘れてしまうだろう)

「Jealous sky(嫉妬深い空)」とは何を意味しているのでしょうか。

ひとつの解釈として、これはギリシャ神話に登場するような、人間の愛に嫉妬する神々の視点を表しているとも言えます。あるいは、「運命」や「時間」といった超越的な存在の擬人化とも取れるでしょう。

けれどもその意味するところは明快です。たとえどんな力が空から見下ろしていようとも、二人が麦畑を歩くその瞬間は、あまりに幸福で完全な時間であるため、太陽の存在すら霞んでしまう。神すら嫉妬するような、圧倒的な愛の輝き。それは、人間の愛が時に神の領域をも凌ぐことを示す、壮大な愛の賛歌なのです。

子供たちが駆け抜ける麦畑 ― 命の継承と未来へのまなざし

『Fields of Gold』の終盤、スティングはこう歌います。

“See the children run as the sun goes down / Among the fields of gold”
(子どもたちが走っているのを見てごらん、太陽が沈む頃に/黄金の麦畑の中で)

ここでは、かつて二人の愛が芽生えた「麦畑」という舞台に、次の世代――子供たちが登場しています。恋人たちの時間が過ぎ去り、日が沈むように、やがて人生も終わりを迎えます。けれどもその風景には、新たな命が駆け出しているのです。

これは、「記憶は風景に宿る」という詩のテーマが、次なるフェーズへと進化して描かれています。今を生きる誰もが、過去に愛し合った日々を、そしてそれが生み出した命を、風景の中に見出せる――そんなメッセージが静かに込められているのです。


時代背景と普遍性 ― グランジの嵐の中で咲いた一輪の花

最後に、この曲が置かれた時代背景と、それがどのようにして普遍的なスタンダードナンバーへと昇華していったのかを見てみましょう。

なぜ結婚式の定番曲になったのか? ― エヴァ・キャシディという奇跡

『Fields of Gold』が「スタンダード」となった背景には、もうひとつの奇跡がありました。それは、アメリカのシンガー、エヴァ・キャシディによる名高いカバーです。

生前はほとんど知られていなかった彼女の歌声が、1996年の死後、イギリスのラジオで紹介されたことで注目を集めます。彼女の『Fields of Gold』は、スティングの原曲にある静謐さに、魂の透明感と敬虔な美しさを加えたもので、多くの人の心を震わせました。

永遠の愛を誓う歌詞、優しく豊かな旋律、そして人生の深みを感じさせるテーマ。そうした要素が、結婚式という場に自然に溶け込んだのです。スティングの原曲とエヴァ・キャシディのカバーが補い合うことで、この曲は人生の節目を彩る名曲として広く定着していきました。


結びにかえて ― 僕がこの曲を第3位に選んだ理由

僕が『Fields of Gold』を第3位に選んだ理由。それは、この一曲の中に、風景、音楽、詩、そして愛と人生の哲学という、スティングの芸術性のすべてが、最も美しい形で結晶化しているからです。

それは、スティングとトゥルーディという二人のための極めてパーソナルな歌でありながら、聴く者一人ひとりが、自身の愛する人との記憶や、故郷の風景、そして自らの人生を重ね合わせることができる、驚くべき普遍性を持っています。黄金色の麦畑は、スティングの家の窓の外にあるだけでなく、私たちの心の中にも存在するのです。

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