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🎸【エリック・カルメン編】第10位『That’s Rock ‘n Roll』
では、本日より『僕の勝手なBest10【エリック・カルメン編】』を始めます。
ラズベリーズは知っていましたが、ボーカルの名前が”エリック・カルメン”ということは、大学に入学後、ある曲と出会うまで知りませんでした。そのある曲については、Best10で登場した時に詳しく話ます。
【歴史】・・・にも書いていますが、エリック・カルメンは2024年に亡くなられています。74才。
今では早世と言えます。そのことを知ったのも、恥ずかしながら昨日の事。エリックカルメンの紹介をしようと、情報収集していて知りました。( ;∀;)
僕らが若いころ、熱狂したアーティストたちはほぼ70才以上。亡くなられて人も沢山いますが、僕のブログで紹介している様に、音楽は永遠になくなりません。それってすごいことだと思いませんか?
哀悼の意を込めて、10曲しっかりと紹介させていただきます。まずは、第10位『That’s Rock ‘n Roll』からスタートです。
🎥まずはいつものように、Youtubeの公式動画をご覧ください。
🎬 公式動画クレジット
曲名: That's Rock 'n Roll
アーティスト: Eric Carmen
提供元: Arista/Legacy(© 1975 Arista Records Inc.)
動画公開日: 2017年8月10日
📖 2行解説:
エリック・カルメンのソロ・デビューアルバムからの1曲。
グラマラスなロック・スピリットとポップな親しみやすさが融合した名作です。
🎬 公式動画クレジット( 公式ライブ映像)
曲名: That's Rock 'N' Roll(Live at the Bottom Line, NY - April 1976)
アーティスト: Eric Carmen
提供元: Arista/Legacy(RCA Records/Sony Music)
動画公開日: 2014年11月7日
📖 2行解説
1976年、ニューヨークの伝説的ライブハウスで披露された熱気あるパフォーマンス。
ロックンロールの原点に立ち返るような、生々しく力強いサウンドが魅力です。
エリック・カルメン=バラード? それだけではありません
もうひとつの顔、「ロックンローラーとしての本能」
エリック・カルメンといえば、真っ先に思い浮かぶのは『All By Myself』や『Never Gonna Fall in Love Again』などのピアノバラードでしょう。
しかし、それは彼の音楽的アイデンティティの一側面にすぎません。
実際には、彼のルーツは50年代ロックンロールやブリティッシュ・ビートの強い影響を受けており、ラズベリーズ時代からビートルズやバディ・ホリーへの深い愛情を公言しています。
そんな彼のもう一つの本能――ロックンローラーとしての魂――が全開で表現されている楽曲が、この『That’s Rock ‘n Roll』です。
ソロデビュー作に刻まれた“原点回帰”の衝動
『Eric Carmen』(1975)という分水嶺
本作は、1975年に発表されたソロデビューアルバム『Eric Carmen』に収録されています。
このアルバムは、ラフマニノフの旋律を引用した『All By Myself』の大成功により、カルメンの代表作として広く知られています。

しかしアルバム全体に耳を傾けてみると、ピアノ主体の抒情的なバラード群に混じって、原色のような衝動的ロックンロールが潜んでいます。
『That’s Rock ‘n Roll』はその象徴的存在であり、叙情派の顔とは裏腹に、エネルギーをストレートにぶつける一面を持つことを証明しています。
アーティストの二面性が交錯する1曲
シャウトと繊細さの両立
バラードのように内面を深掘りする作詞作曲能力と、感情を剥き出しにしたロックンロールの叫び。
この両面性は、一見すると矛盾しているように見えますが、実は彼の音楽人生の核となる部分です。

『That’s Rock ‘n Roll』では、計算された美しさではなく、衝動と勢いに任せた叫びが中心にあります。それこそがエリック・カルメンというアーティストの“もうひとつのリアル”なのです。
ショーン・キャシディによって広まったロック賛歌
1977年にカバーされ、ヒットチャートを席巻
意外にも、この楽曲が大きな注目を浴びたのは、エリック自身ではなくショーン・キャシディによるカバーバージョンでした。
1977年、アイドルとして人気急上昇中だったキャシディの手によってこの曲は新たな命を吹き込まれ、全米ビルボードHot 100で3位、カナダでは堂々の1位を獲得します。
🎧 補足:このときカナダでは『スター・ウォーズ』のテーマを押さえての1位でした。
これは当時としても異例のヒットであり、オリジナルの力を世代と市場を超えて証明する出来事となりました。
歌詞に刻まれた“ロックとの出会い”のリアル
少年時代の衝動をそのまま刻んだ1節
Well I was sixteen and sick of school
I didn’t know what I wanted to do
I bought a guitar, I got the fever
That’s rock’n roll
16歳で学校にうんざりし、何をしたらいいかわからなかった――そんな少年がギターを手に取り、夢中になった瞬間を描いた歌詞。
この冒頭部分には、ロックンロールと出会う原風景がありありと描かれています。

この“何者でもなかった若者”の感情こそ、あらゆるロックファンが一度は抱いたであろう普遍的な経験ではないでしょうか。
ロックとは何かを描いた“入門書”としての機能
若きキャシディに託したカルメンの理想
この楽曲は、エリック・カルメンが自身の体験をベースに、「ロックンロールとは何か?」をストレートに書き下ろした“教科書”でもあります。
ティーンアイドルであるショーン・キャシディがこれを歌ったことで、若いリスナーにもその感覚が共有されることとなりました。

そしてそれは、楽曲が単なるノスタルジーではなく、時代を超えて“ロックと出会う瞬間”を再現する手段となった証拠でもあります。
衝動とグルーヴが支配する音の構造
シンプルだからこそ伝わる、初期衝動の強さ
『That’s Rock ‘n Roll』は、跳ねるピアノ、刻むギター、ドライブ感のあるドラム――そのすべてが直感的に身体を揺さぶってきます。
ロックンロールの本質は、理屈よりも「興奮」が先にくること。この曲は、その感覚をストレートに表現しています。

1970年代中盤の音楽シーンには、プログレやAORのような複雑な構築美が増えていましたが、この曲はむしろ1950年代のロックンロールの衝動性に立ち戻るような潔さを持っています。
ボーカルが引き出す、感情の瞬発力
声が語る“ロックの楽しさ”と“夢中になる理由”
エリック・カルメンの歌声は、ここでは繊細な抑揚よりも“勢い”を優先しています。
Aメロでは語りかけるように始まり、サビでは一気に感情を爆発させます。
たとえば、
“I screamed my heart out”(心から思いきりシャウトした)
というラインでは、その言葉どおり、まさに叫ぶようなボーカルが展開されます。

これは表現というより“実演”です。言葉と声が完全に一致していて、聴き手の鼓動と共鳴していきます。
ロックンロールは理屈じゃない
抗わず、興奮を受け入れる
この曲が伝えているのは、「考える前に感じろ」という明快なメッセージです。
“Don’t try to fight it / Just get excited”(抗うな、ただ興奮しろ)というフレーズは、ロックンロールの本質をひとことで表しています。
この曲を聴いていると、意味やメッセージを追うよりも先に、自然と体が動いてしまう。それがロックンロールであり、それでいい――そんな開き直りすら感じさせてくれます。
誰もがロックンロールの一員になれる
ローディーも、バンドも、観客も
“It’s the roadies and the crowd / It’s when the band’s playin’ way too loud”(ステージ裏のスタッフも、観客も、バンドの爆音も)
という表現は、単なる描写ではありません。

ロックンロールは「誰かを見上げるための音楽」ではなく、「みんなで同じ熱に包まれる音楽」なのだという考え方が、ここには凝縮されています。
カルメンは、全員参加型の文化としてのロックンロールを見事に歌い切っています。
エリック・カルメンの“もう一つの肖像”
バラードだけでは伝わらない人物像
エリック・カルメンの代名詞がバラードであることは、誰もが認める事実です。
しかし、彼の音楽的背景には、明確なロックンロールの影響が根を張っており、バディ・ホリー、エヴァリー・ブラザーズ、ビートルズといったアーティストの存在は、彼の作曲スタイルや演奏姿勢に色濃く反映されています。
『That’s Rock ‘n Roll』は、その源流に正面から向き合った作品であり、「ロックンロール少年」としてのエリック・カルメンが顔を覗かせる貴重な1曲です。
まとめ:これはカルメンから“あなた”へのメッセージ
ロックンロールは、あなた自身の体験として蘇る
『That’s Rock ‘n Roll』は、エリック・カルメンが自身のルーツに真正面から向き合い、その情熱をぶつけた楽曲です。
同時にそれは、“これから夢中になる誰か”へのエールでもあります。
この曲を聴いたとき、あなたがかつてギターを買った瞬間を思い出すかもしれません。
ライブで拳を突き上げた夜を思い出すかもしれません。
あるいは、まだ何者でもなかったあの頃の気持ちを思い出すかもしれません。
ロックンロールとは、そうした“記憶と興奮”が交差する瞬間。
カルメンはそれを、難しい理屈を一切抜きにして、3分弱の音楽に封じ込めたのです。
『That's Rock 'n Roll』―Eric Carmen:意訳!
十六の春、行き場もなく
ギターを手にしたあの日
火がついたんだ、心の奥に
叫ぶように弾いた 夜のバーで
ギターを抱いて夢を燃やした
それがロックン・ロールの始まりだった
煙と熱気が胸を打ち
音に合わせて鼓動が踊る
抑えるな、感じるままに
爆音の中で魂が目覚める
誰かになる必要なんてない
その場にいれば もう仲間さ
腰を揺らして 声を上げて
汗を飛ばし バンドを讃えよう
手を叩け 心の叫びを響かせろ
それがロックン・ロール――
自由で 熱くて 誰にも止められないんだ
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