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さだまさし:僕の勝手なBest15ーさだまさし特別編】-1/2『夕凪』をご紹介!
僕の勝手なBest15ー【さだまさし】編は、昨日無事終了いたしました。・・・・ハズでした?!
僕も意識してなかったのですが、妻が実は大のさだまさしファン!ということをすっかり忘れていまして・・・。何気に昨日会話をしておりました。
こんな感じです。
僕:「お前、さだまさし好きやったっけ?」
妻:『好きどころか、コンサートも何度も観に行ったわぁ!』と速攻の返事。
僕:「今さだまさしのBest15が終わったところ!」
妻:『どんな曲入れたん?』
僕:「・・・5位が「道化師のソネット」で、4位が「関白宣言」で、3位が「主人公」で、2位が「案山子」で、1位が「雨やどり」にした。」
妻:『つまらん! ありきたりやなぁ‼』の一言!
という妻の助言を得て、妻が大好きだという「夕凪」を追加掲載することにしました。正直僕にはあまり記憶にない曲でしたが、「妻の言うとおりにしておけば絶対間違いはない」(我が家の法律です)ので、追加でご紹介することにしました。(;´∀`) (※付け焼刃で申し訳ありませんが、この記事を書くにあたり、7回楽曲を聴いて書き始めています。 確かに穏やかでいい曲です!)
イントロダクション:夕暮れに寄り添う詩情!―「夕凪」
まずは、公式動画からご覧ください。―「夕凪」
【クレジット】
曲名:Yunagi(2016 Remaster)
歌唱:さだまさし
作詞:さだまさし
作編曲:渡辺俊幸
提供元:WM Japan(YouTube自動生成音源)
℗ 1976, 2016 Warner Music Japan Inc.
【2行解説】
1976年に発表された名曲「夕凪」を2016年にリマスターしたバージョン。渡辺俊幸による編曲が、さだの繊細な歌声とともに深い余韻を生んでいる。
夕暮れに寄り添う詩情
「僕の勝手なBest15:さだまさし編」の特別編第1弾として取り上げるのは、1976年発表の「夕凪」です。さだまさしの円熟した感性が結晶となった本作は、夕暮れ時の海辺のような静寂と温かさを湛えた一曲。この楽曲の持つ普遍的な魅力を、さまざまな角度から読み解いていきましょう。
基本情報とリリース背景
楽曲データ:1976年の夏に生まれた静かな名曲
「夕凪」は1976年11月25日にリリースされた、さだまさしのソロ・デビューアルバム『帰去来(ききょらい)』に収録されています。グレープ解散後の初のオリジナル・アルバムであり、フォークから一歩進んだ音楽性と詩情あふれる作品群が詰まった一枚です。作詞・作曲はすべてさだ本人によるもので、「夕凪」もそのひとつ。シングルカットされなかったものの、リスナーの間で長く愛され続ける名曲として位置づけられています。
タイトルに込められた意味
“夕凪”とは、日没時に風がやみ、海面が静まり返る自然現象のこと。この曲の持つ穏やかで切ない旋律は、まさにその現象を音楽で描いたかのようです。風が止まり、波が静かになることで、逆に感情や記憶が押し寄せる――そんな情景が曲の全体を貫いています。

1976年の時代背景と文化的潮流
日本社会の空気感
1976年(僕は高校3年生)の日本は、高度経済成長期の終盤にあり、ベトナム戦争の終結や石油ショックなど、世界的な動きに揺れていた時代です。社会の価値観が変わり始め、物質的な豊かさよりも精神的な豊かさへの関心が高まりつつありました。フォークソングやニューミュージックが若者たちの心を捉え、歌詞の世界に「内省」や「郷愁」といったテーマが頻繁に取り上げられるようになっていきました。
音楽の潮流と「夕凪」の位置づけ
当時の音楽シーンでは、井上陽水、吉田拓郎、中島みゆきなどが台頭し、日本のシンガーソングライター文化が確立されつつありました。そんななか「夕凪」は、静けさと風景描写を用いた独特の詩世界によって、一種の文学作品のように響く存在でした。楽曲の持つ情感の深さは、派手さや流行を超えた価値を持ち続けています。
さらに、1976年という時代はアナログレコードの円熟期でもありました。レコードプレーヤーで音楽を聴くという行為が、当時の人々にとって生活の一部となっていた時代背景の中で、「夕凪」のような音数の少ない、静寂を意識した作品は、深夜に一人で聴く“私的な体験”として多くのリスナーに愛されたのです。

楽曲の誕生と音世界
制作の背景:さだまさしの原風景
長崎出身のさだまさしにとって、海は常に創作の源でした。「夕凪」もまた、彼が少年時代に見た長崎の夏の浜辺、その記憶を呼び起こしながら書かれた作品です。インタビューでも「海辺の静けさが心の声を呼び覚ます」と語っており、この楽曲は故郷との精神的な対話といえるかもしれません。

また、1976年当時のさだはソロデビューから2年足らずでありながら、既に“言葉と旋律を結ぶ詩人”として独自の世界観を築きつつありました。「夕凪」は、その世界観が一つの完成形として結実した作品とも言えるでしょう。
サウンドと歌詞の構造:音と詩の交差点
メロディーの設計:時を止める静けさ
イントロから流れるアコースティックギターとストリングスの繊細な調和。BPMは比較的ゆったりしており、波のリズムを感じさせます。楽器構成も必要最低限に抑えられており、余白を大切にする設計がされています。その分、ひとつひとつの音が際立ち、聴く者の感情を揺さぶるのです。

ボーカル表現:語り部としての姿
さだの歌唱は、語り口とメロディが自然に融合したスタイル。力強さではなく、内側からにじみ出るような感情の温度を重視しています。フレーズの終わりに微かな「間」を挟む歌い方は、聴き手の想像力を刺激し、そこにそれぞれの風景を描かせます。
歌詞の世界観:海と人の記憶
「君の影が揺らいで落ちて 風が止まる」「僕に見えないものが見えたね」などの詩句からは、言葉を超えた感覚の共有が見てとれます。夏の終わり、誰かとの別れ、そして再び風が吹くまでの“静けさ”を、さだは詩的に描いています。
表現者としての視座と影響力
初期作品にして頂点の完成度
「夕凪」は、まださだまさしがソロアーティストとしての道を歩み始めて間もない頃の作品でありながら、その完成度は非常に高いものがあります。言葉選び、構成、情景描写、すべてにおいて洗練されており、のちの代表作にも匹敵する深みを備えています。
フォークとクラシックの融合
本作の特徴のひとつは、フォークソングの持つ素朴な響きに、クラシカルなストリングスアレンジが絶妙に溶け合っている点です。この融合こそが、さだの楽曲に一貫して流れる「音の文学性」を体現しているといえるでしょう。

この楽曲のアレンジを支えたのは、当時の名手である編曲家・渡辺俊幸。彼のストリングスの扱い方は、クラシックの文法と日本的な情緒の融合に成功しており、さだまさしの“語り”を視覚的に補完するような役割を果たしています。
また、歌詞の一節にある「海猫たち もうお帰り」というフレーズは、夕暮れとともに去ってゆく命の象徴のようにも響きます。詩情だけでなく、人生の終わりや別れをも感じさせる奥行きが、「夕凪」という一曲の中に凝縮されています。
現代に響く「夕凪」の価値
時代を超える静けさの表現
AIやSNS、常に情報が飛び交う現代社会において、「静けさ」を真正面から描いた楽曲はむしろ新鮮です。1976年の作品でありながら、いま聴くからこそ意味を持つ。そんな逆説的な魅力が「夕凪」にはあるのです。

また、気候変動や環境意識の高まりといった現代の課題を背景に、“自然の声を聴く”という姿勢が音楽にも求められるようになってきました。その点で、「夕凪」が描く風と波と沈黙は、これからの時代にも深く響くテーマであるといえるでしょう。
総括:風の止まる音楽
「夕凪」は、さだまさしというアーティストの本質を象徴する楽曲のひとつです。騒音の時代にそっと耳元で語りかけるようなその響きは、誰しもの心のなかにある“静けさ”を呼び覚ましてくれるに違いありません。

◆「夕凪」の歌詞は➡こちらのページからどうぞ!
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