僕の勝手なBest15:【さだまさし】編-第11位『防人の詩』をご紹介!

さだまさし」の歴史はこちら語り続けて50年――さだまさしという生き方

【さだまさし】編―第12位は・・・

『防人の詩』です。ちょっと真面目過ぎますか?型ぐるしいですか?他の曲はどうですか?教えてください? 

というくらい、結構重い歌です。それだけ味わい深くもあり、また味わうだけの価値のある楽曲です。観られる方は、是非映画『二百三高地』をお勧めします。楽曲のイメージが鮮明になりますよ。U-NEXT、Hulu、Amazon Prime Video、Apple TVなどで観ることができます。

まずはYoutube公式動画でお聴きください。

🎵 クレジット(公式情報より)
楽曲名:防人の詩
アーティスト:さだまさし(Masashi Sada)
提供元:Space Shower FUGA(公式配信ディストリビューター)
収録アルバム:『さだまさしベスト』
著作権表記:© 2021 U-CAN
初出リリース日:2008年6月25日(※配信元による表記)

✏️ 2行解説(概要)

自衛隊の若者たちを想って書かれた名曲で、1980年の映画『二百三高地』の主題歌としても知られています。深い愛国心と静かな覚悟を宿すこの作品は、今も世代を超えて聴き継がれる“語りの歌”の代表作です。

🎵 クレジット情報(動画より)
楽曲名:防人の詩
アーティスト:さだまさし
公演:ソロ通算3333回目記念コンサート「3333 in 日本武道館」より
公開日:2019年10月16日
映画使用:映画『二百三高地』(1980年)主題歌
配信元:さだまさしオフィシャルYouTubeチャンネル
DVD/CD販売元:ユーキャン
✏️ 2行解説(概要)

1980年の戦争映画『二百三高地』(※❶)のために書かれた代表曲で、兵士の心情と時代の葛藤を詩情豊かに描いています。3333回記念公演という特別なステージでの演奏は、深い感動とともに観客の胸に響く名演となっています。

古代の記憶を現代に届けた一曲──さだまさし「防人の詩」の静かな衝撃

さだまさしが1980年に発表した「防人の詩(うた)」は、時代の喧騒に抗うかのように、静かに日本列島を包み込んだ一曲です。同年7月10日にシングルとして発売され映画『二百三高地』の主題歌としても用いられました。演奏時間5分強というシングルとしてはやや長尺の本作は、オリコン週間チャートで2位を獲得し、年間ランキングでも18位に食い込む大ヒットを記録しました。

「馴れ親しんだ妻を遠くに残して旅に出てきたが、旅の道中でその妻のことを思い続けている」
「馴れ親しんだ妻を遠くに残して旅に出てきたが、旅の道中でその妻のことを思い続けている」

万葉集に残された防人(さきもり)の歌に着想を得て、現代のリスナーへと語りかけるその詞と旋律には、さだまさし独自の「語りと歌の境界を超えた」芸術性が濃密に刻まれています。


時代のはざまで歌われた“個の哀しみ”

1980年という年は、世界的にも転換期にありました。前年のソ連によるアフガニスタン侵攻を受け、モスクワ五輪は日本を含む西側諸国の多数がボイコット。アメリカではその年の11月にロナルド・レーガンが大統領に選出され、保守的な価値観への揺り戻しが始まります。

日本国内に広がる明と暗

日本国内では、高度経済成長の果実を手にした企業が世界市場で躍進する一方、5月の三宅島噴火では自然の脅威が突きつけられ、防災への関心が一気に高まりました。7月には『オレたちひょうきん族』の放送がスタートし、お笑いの新潮流がテレビ界を席巻。軽妙な笑いと重厚なテーマが同時進行する時代に、「防人の詩」はどこか異質で、なおかつ鮮烈な印象を残しました。


フォークからの進化──歴史と旋律が交差する場所

さだまさしは1970年代前半から一貫してフォークを土台としながらも、独自の感性でジャンルの境界を飛び越える表現者でした。「防人の詩」においてもその傾向は顕著です。

和楽器と西洋音楽の融合による音世界

本作ではアコースティックギターを中心に、尺八と和太鼓が加わることで、和風の情緒を立体的に構築。イントロの静寂な旋律が聴き手を物語の入り口へ誘い、BPM約80という緩やかなテンポが時の流れを噛み締めるように進行します。編曲は渡辺俊幸が担当し、叙情性と緊張感を巧みに調和させました。

ライブで語り継がれる「語り」と「歌」

さだのライブでは、この曲を歌う前に防人の歴史的背景を語るのが定番となっています。静かに語り始め、旋律に乗せて語るように歌う構成は、聴衆を物語の登場人物にしてしまう力を持っています。その姿勢は、単なる歌手という枠を超えた語り部としての存在感を際立たせています。


歌詞に刻まれた“離別”と“責務”の狭間

“防人の詩”という表現は万葉集の防人歌にも、さだまさしの現代詩にも共通する“離別と愛情”の主題が込められています。

防人歌の継承と現代への置き換え

この表現は万葉集に見られる防人歌の構造を踏襲しながらも、現代語の口語リズムを巧みに組み合わせており、古典詩の香りを持ちながらもリスナーの胸にすっと入る言葉遣いとなっています。「命を賭けて」と表現される使命感の描写には、単なる愛の歌にとどまらない「集団と個人」「国と家庭」のテーマが潜んでおり、社会的責任と個人の哀しみという構図が浮かび上がってきます。

戦争ではなく“別れ”を描くという視点

「防人の詩」は戦争を讃える歌ではありません。むしろ、「国を守るため」という大義に従いつつ、そこに生まれる心の痛み、置いてきたものの存在を描き出しています。だからこそ、過去の戦争体験世代のみならず、現代の若者や学生にも共感される普遍性があるのです。


多様化する音楽の中で際立った叙情

1980年の音楽は、フォークだけでなくニューミュージック、シティポップ、ハードロックなど多彩なジャンルが交錯していました。松田聖子が「青い珊瑚礁」でデビューし、サザンオールスターズは「ジャズマン」や「わすれじのレイド・バック」で新境地を開拓。オフコースの「Yes-No」、山下達郎の「RIDE ON TIME」など、ジャンルの垣根を越えた名曲が次々と生まれていた時代です。

その中での異質性こそが存在意義

そんな中にあって、「防人の詩」はまるで時間の流れから取り残されたような一曲として耳に残ります。電子音もディスコリズムも排した本作は、「なぜこの時代にこのテーマを?」という逆説的な問いを私たちに投げかけているようです。

“春に聴く歴史のうた”という体験

さだまさしが語る物語には、いつも風景が伴います。「防人の詩」もまた例外ではなく、春にこの曲を耳にしたリスナーたちは、自然と桜や海辺の風景を思い浮かべたと言います。

三宅島と“防災”の記憶

1980年の三宅島噴火は、日本人にとって「防ぐ」という意識を改めて突きつけた出来事でした。自然災害という現実と、国を守るという象徴的な行為が、意図せずリンクする中で、本作はただのバラードではなく「時代の記録」としての重みを帯びていきました。

新たな時代とともに歩む詩──再評価とデジタル時代の“語り継ぎ”

「防人の詩」は、1976年の発表以来、世代を越えて歌い継がれてきた名曲です。
近年では、SpotifyやYouTubeといった配信プラットフォームで“歴史を感じる日本語曲”として若いリスナー層にも再発見される機会が増えています。
特に、2024年に行われたさだまさしデビュー50周年記念コンサートでは、本人がこの曲を披露し、時代を超えた語りの力があらためて注目を集めました。
また、NHKなどの番組で古代の防人や万葉集が取り上げられるなかで、本曲が持つ歴史的背景に光が当たることも多くなっています。

まとめ──歴史と個人を繋ぐ“さだまさし的叙情”

「防人の詩」は、1980年という時代の最中に、古代と現代を繋ぐ詩として登場しました。愛する人と離れる痛み、社会に生きる人間の責任、そしてそのすべてを音楽で包み込む優しさ。その全てが、この楽曲には凝縮されています。

春の夜、あるいは秋の夕暮れ、波の音に耳を澄ませながらこの曲を聴くとき、人はきっと「いま自分が何を守り、何を想っているのか」に気づかされるのかもしれません。

歌詞はこちらのページからどうぞ➡
【歌ネット(Uta-Net)】 URL:https://www.uta-net.com/song/2042/


※❶映画『二百三高地』が描いた近代日本の苦闘

1980年に公開された映画『二百三高地』は、日露戦争中の激戦として知られる旅順(りょじゅん)攻囲戦、とりわけ「二百三高地」の攻防を描いた歴史戦争映画です。監督は舛田利雄(ますだとしお)、脚本は笠原和夫。主演は**仲代達矢(乃木希典役)**を中心に、丹波哲郎、あおい輝彦、夏目雅子などが出演し、当時の東映映画としては異例の大ヒットを記録しました。


二百三高地とは何か?

「二百三高地」とは、中国・遼東半島の旅順港(現在の大連市)近郊に位置する標高203メートルの丘陵地帯のことを指します。この地を巡って、1904年から1905年にかけて繰り広げられた日露戦争の旅順攻略戦は、陸軍史上まれにみる熾烈な消耗戦でした。

日本陸軍はロシア軍の重砲陣地を壊滅させるため、地形的要衝である二百三高地の占領を試みます。ですが、ロシア軍の鉄壁の防御と劣悪な戦況の中で、数万の死傷者を出しながらも、最終的にこの高地を奪取。この勝利によって、旅順港内のロシア艦隊を一掃することが可能となり、戦局が大きく日本優位に傾いたとされています。


映画が描いた“戦争の代償”

映画『二百三高地』は、この戦いを通じて、「戦争の勝利がもたらすものは何か」「犠牲と忠誠の意味は何か」を鋭く問いかけています。乃木希典大将の息子が戦死し、自身も責任を感じて後に殉死する史実も描かれ、日本軍上層部の命令と兵士たちの過酷な現実とのギャップが強調されました。

なお、この映画の主題歌に採用されたのが、さだまさしの「防人の詩」であり、物語のラストに重なるように流れるその旋律は、観客の心に深い余韻を残しました。


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