僕の勝手なBest10:【ジャーニーJourney】編-第9位『I’ll Be Alright Without You』〜洗練されたサウンドに隠した、男の未練と強がり〜


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第9位は『I’ll Be Alright Without You』です

僕の勝手なJourneyベスト10、第9位は『I’ll Be Alright Without You』です。

今回選んだのは、1986年のアルバム『Raised on Radio〜時を駆けて』からの一曲です。
Journeyといえば、スタジアムを熱狂させるような力強いロック・アンセムのイメージが強いかもしれません。(もちろん、そうした王道の名曲たちも今後のランキングでしっかりと登場する予定です!)

しかし、彼らのディスコグラフィを語る上で外せないもう一つの魅力、それは「大人のための洗練された哀愁」を表現できる懐の深さにあります。この曲は、まさにその魅力が頂点に達した、極上のAOR(Adult Oriented Rock)ナンバーと言えるでしょう。今回は、心地よいサウンドの裏に隠された「強がりと未練」という視点から、この曲の奥深い世界へと皆さんをご案内したいと思います。

1986年、洗練を極めたアルバム『Raised on Radio』

この曲は同年秋にシングルカットされ、全米ビルボードチャートでもトップ20入り(最高14位)を果たすヒットとなりました。

1980年代半ばのこの時期、バンドは大きな転換期を迎えていました。アルバム制作の過程でリズム隊のメンバーチェンジが起こるなど、内部的には激動のタイミングでしたが、その分スティーヴ・ペリーの音楽的な主導権が強く反映された作品だと言われています。

これまでの躍動感あふれる力強いスタジアム・ロック路線から一歩踏み出し、より緻密で都会的なAORサウンドへと大きく舵を切ったこのアルバムの中で、本作は彼らが辿り着いた「洗練された大人の魅力」を最も色濃く表現した一曲となっています。

しかし、Journeyというバンドが持つもう一つの魅力、それは「大人のための洗練された哀愁」を表現できる表現力の深さにあります。この曲は、まさにその魅力が頂点に達した、極上のAOR(Adult Oriented Rock)ナンバーと言えるでしょう。今回は、心地よいサウンドの裏に隠された「強がりと未練」という視点から、この曲の奥深い世界へと皆さんをご案内したいと思います。

まずは公式音源でお聞きください

日本語クレジット
アーティスト名:Journey(ジャーニー)
楽曲名:「I'll Be Alright Without You」
収録アルバム:Raised on Radio(1986年)
レーベル:Columbia / Legacy Recordings
動画種別:Official Audio(公式音源配信)
2行解説
アルバム『Raised on Radio』からシングルカットされた、スティーヴ・ペリーの情感豊かなボーカルが際立つバラード。シンセ主体の洗練された80年代AORサウンドで、Journey後期を象徴するヒット曲として知られる。
日本語クレジット
アーティスト名:Journey(ジャーニー)
楽曲名:「I'll Be Alright Without You」
収録アルバム:Raised on Radio(1986年)
公開年(映像表記):1986年
動画種別:Official HD Video(公式ミュージックビデオ)
2行解説
1986年発表のアルバム『Raised on Radio』収録のバラードで、スティーヴ・ペリー期後半の代表的なメロウナンバー。シンセ主体の80年代サウンドと切ない歌詞が特徴で、全米ビルボードHot100で最高14位を記録したヒット曲。

洗練されたメロディに隠された「男の未練」

AOR全盛期の空気感

1980年代半ば、音楽シーンはより洗練された、都会的なサウンドへとシフトしていました。Journeyもまた、この『Raised on Radio』というアルバムで、かつての泥臭いハードロック路線から、より研ぎ澄まされたアダルトな音作りへと変化を遂げています。

耳障りの良いサウンドの罠

この『I’ll Be Alright Without You』のイントロを聴いた瞬間、誰もがその滑らかでメロウな雰囲気に心地よさを覚えるはずです。ベースラインは都会の夜のハイウェイを流れるように滑らかで、シンセサイザーの音色はあくまで透明。ニール・ショーンのギターも、決して前に出過ぎることなく、抑制の効いた大人のトーンで泣いています。

しかし、この「耳障りの良さ」こそが、この曲が仕掛けた最大の罠なのです。サウンドが洗練されていればいるほど、スティーヴ・ペリーが歌い上げる歌詞の「情けなさ」とのコントラストが浮き彫りになっていきます。

歌詞に透けて見える「痛々しいほどの強がり」

ここで歌われているのは、一言で言えば「捨てられきれない男の未練」です。

主人公は、去っていった相手に対して「君がいなくても僕は大丈夫だ」「他にいい人が見つかるさ」と、何度も何度も自分自身に言い聞かせています。

しかし、その言葉の裏には、「本当は君のことが頭から離れない」「どうしていいか分からない」という本音が痛いほどに張り付いています。周囲の人々は二人が円満な関係だったのになぜ別れたのかと不思議に思っているようですが、主人公はここでも「大ぼら吹き(The great pretender)」を演じ、平気なフリをして見せるのです。

愛なんて虚しいものだとうそぶきながらも、結局は君を抱きしめたいだけだったと独りごちる。この行き場のない感情の揺れ動きは、美しく整えられたメロディに乗ることで、かえってその切実さを増幅させて聴き手の胸に迫ってきます。

大人になるということ、感情を隠すということ

「大ぼら吹き」を演じざるを得ない日常

社会人として日々を過ごす中では、心の中にどれほどの喪失感や痛みを抱えていようとも、翌朝には何事もなかったかのように笑顔で人と接し、役割を全うしなければならない場面が多々あります。

周囲に心配をかけまいとする配慮や、自分の弱さを認めたくないというプライドが、いつしか僕たちを「The great pretender(大ぼら吹き)」へと仕立て上げていくのです。

『I’ll Be Alright Without You』の主人公が、洗練された都会の情景の中に溶け込むようにして自分の本当の感情を隠している姿は、そのまま、社会という舞台で平気な顔を作って生きている大人たちの姿に重なります。

スティーヴ・ペリーのボーカルが時折見せる、まるで泣き出しそうなほどの悲痛なかすれ声は、僕たちが分厚い心の鎧の下に隠し持っている、生身の感情そのものなのです。

泣きのギターが代弁する「言葉にできない想い」

この曲のもう一つの大きな聴きどころは、間違いなくニール・ショーンのギタープレイにあります。Journeyの代名詞とも言える、天高く突き抜けるようなエモーショナルなギターソロももちろん素晴らしいですが、この『I’ll Be Alright Without You』で聴ける彼のギターは、それらとは全く異なるアプローチをとっています。

決して弾きすぎることはなく、どこか押し殺したような、すすり泣くようなトーン。それはまるで、ボーカルのスティーヴ・ペリーが「僕は大丈夫だ」と強がる裏で流している、目に見えない涙をギターの音色が代弁しているかのようです。言葉では取り繕えても、サウンドに乗せた感情までは誤魔化しきれない。そんな音楽の魔法が、この短いソロフレーズに凝縮されています。

洗練されたリズム隊とシンセが生む都会的な孤独感

さらに、ジョナサン・ケインによる透明感のあるシンセサイザーの音色と、このアルバムから参加した新しいリズムセクションが作り出す洗練されたグルーヴも特筆すべきでしょう。タイトでありながらふくよかなベースラインと、空間を贅沢に活かしたドラムのビートは、夜の都会をあてもなく車で流しているような、深く静かな孤独感を見事に演出しています。

この極めて洗練されたサウンドスケープの土台があるからこそ、主人公の「情けないほどの未練」が決して泥臭い愚痴にならず、極上のAORとして美しく成立しているのです。

記憶の中の風景と、音楽がもたらすカタルシス

現役時代の孤独と共鳴

鎧を脱ぎ捨てるための3分半

この曲の素晴らしいところは、無理に前を向かせようとしたり、安易な励ましの言葉をかけたりしない点にあります。ただただ、「大丈夫だと言い聞かせているけれど、本当は辛いんだ」という生身の感情に、美しいメロディを添えて寄り添ってくれるのです。

強がることに疲れた夜、この曲を聴く3分半だけは、分厚い心の鎧を脱ぎ捨てて、自分の情けなさや未練と素直に向き合うことができました。音楽が持つカタルシス(精神の浄化)とは、まさにこういうことなのだと、年齢を重ねるごとに深く実感しています。

Journeyの多面性を象徴する、堂々の第9位

輝かしいアンセムを引き立てる「陰」の美学

僕の勝手なJourneyベスト10、第9位にこの『I’ll Be Alright Without You』を選んだ理由。それは、この曲がJourneyというバンドの持つ「表現の豊かさ」と「大人の陰影」を、最も美しく切り取った作品だと思うからです。

今後、ランキングの上位に進むにつれて、皆さんもよくご存知の、あのスタジアムを熱狂させる力強いロック・アンセムたちが続々と登場します。しかし、光が強ければ強いほど、そこに落ちる影もまた深く、濃くなるものです。

Journeyの音楽が単なる「元気の出るロック」に留まらず、時代を超えて多くの人の心に深く突き刺さるのは、彼らがこうした「人間の脆さ」や「哀愁」を表現できる確かな実力を持っているからに他なりません。この極上のAORナンバーは、彼らのディスコグラフィの中で、そして僕の心の中で、かけがえのない輝きを放ち続けています。

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