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🎸僕の勝手なBest10【フリートウッド・マック編】第5位は『Second Hand News』です。
1977年、ロック史に刻まれた名盤『Rumours』の幕開けを飾る一曲「Second Hand News」。これが僕の勝手なBest10【フリートウッド・マック編】の第5位です。陽気なリズムと裏腹に、深い感情のひだを繊細に描いたこの楽曲には、当時のバンドの人間模様が色濃く映し出されています。時代を超えて愛される理由を、改めて探ってみましょう。
🎥まずはいつものように、Youtubeの公式動画をご覧ください。
🎼 楽曲詳細(オリジナル版)
✅【公式音源(2004年リマスター版)】
📺 Fleetwood Mac – Second Hand News(2004 Remaster)
🎵 提供:Rhino/Warner Records(ワーナー公式音源)
🔹 2行解説
📌 フリートウッド・マックの不朽の名盤『Rumours』(1977年)に収録。
📌 オープニング曲として軽快なアコースティックリズムと皮肉な歌詞で印象を残す。
🎵 クレジット情報(公式動画)
チャンネル名:Fleetwood Mac(公式マーク付き)
🎼 楽曲名:Second Hand News(セカンド・ハンド・ニュース)
(1977年8月29日 カリフォルニア州イングルウッド「ファビュラス・フォーラム」ライヴ収録)
🎤 アーティスト:フリートウッド・マック(Fleetwood Mac)
💿 アルバム:Rumours Live(『噂』ライヴ)
🏢 レーベル表記:℗ 2018 ワーナー・レコード(Warner Records Inc.)
📡 配信提供元:Rhino/Warner Records により YouTube に提供
📌 2行解説
1977年8月29日、カリフォルニア州イングルウッド「ファビュラス・フォーラム」でのライヴ演奏。『Rumours』冒頭を飾る名曲が、躍動感あふれるステージで蘇る公式ライヴ音源です。
『Rumours』という奇跡のドキュメント
愛と別離に引き裂かれた創作環境
アルバム『Rumours』の制作時、メンバー全員が私生活で大きな岐路に立っていました。リンジー・バッキンガムとスティーヴィー・ニックスの破局、クリスティンとジョン・マクヴィーの離婚、ミック・フリートウッドの家庭崩壊──そのどれもが重なり合い、音楽にリアリティと切実さを与えました。➡(ご参考:🎸『Silver Springs』)

このアルバムは、生々しい「感情の記録映像」とも言える存在です。
物語の入口としての「Second Hand News」
この曲はアルバムの冒頭に配されることで、単なるポップ・チューンにとどまらない意味を持ちます。明るい曲調で始まりながら、そこに込められた複雑な心情は、聴く者に“これは単なるラブソングではない”と予感させる力を秘めています。
陽気なメロディに潜むアイロニー
「軽やかに別れを語る」アプローチ
冒頭からアコースティック・ギターが軽快に鳴り響き、カントリー調の温かみを伴うリズムが続きます。しかし、歌詞に耳を傾ければ、その明るさがいかに意図的に設計されたものかに気づくはずです。
“I know there’s nothing to say / Someone has taken my place”
(何も言うことはないと分かっている / 誰かが私の代わりをしている)
この一節には、恋人を失った者の静かな諦念が滲んでいます。

「second hand」に込められた多層的な意味
タイトルにある「Second Hand」は、「中古」「他人のお下がり」「間接的」といった多義的な意味を持つ言葉です。バッキンガムはこの語に、喪失感や自嘲を込めました。

音楽的アプローチと創意工夫
ギター奏法と録音技術の妙
バッキンガムのギタープレイは、ピックを使わず指で弾くフィンガーピッキングが特徴。リズムの躍動感と柔らかい音色を両立させています。しかも、楽曲に合わせたチューニングで録音されており、独特の響きが生まれています。
また、自宅の椅子を叩いた音をリズムに用いた逸話は、1970年代における大胆な録音手法として語り継がれています。

多層的なコーラスの演出
「ドゥドゥドゥ」というスキャット風のコーラスは、無邪気さの仮面をかぶりながら、実は痛みを隠そうとする“演技”のようにも聴こえます。感情の重さを軽やかさで包み隠すという、逆説的な構造がこの曲の核心です。
歌詞に見る詩的構造と反復の美学
この曲の歌詞構造には、意図的な反復と音の響きの工夫が見られます。
特に、「I’m just second hand news」というフレーズが何度も繰り返されることで、軽妙なメロディと共に聴き手の記憶に残ります。
詳細な説明を避け、リズムや言葉の断片で感情の機微を伝える作風は、まさにバッキンガムらしい作詞術の一端を感じさせます。

バンドメンバーから見たこの曲
ミック・フリートウッドは後年、「この曲を1曲目に置く以外の選択肢はなかった」と語っています。その軽快さとは裏腹に、感情のざらつきを抱えたバッキンガムの歌詞は、アルバム『Rumours』全体のトーンを象徴するような役割を果たしていました。メンバーたちも、この曲が持つ異質な魅力と導入としての力強さを認識していたことがうかがえます。
スティーヴィー・ニックスとの断絶の表現
涙ではなく、ステップで別れを踊る
この曲には、ニックスとの決別が影を落としていますが、バッキンガムは感傷的にならず、あえて明るさでそれを包んでいます。「未練がましさ」を排し、颯爽と別れを告げるその姿勢には、ある種の美学すら感じられます。

アルバム内での位置づけ
『Rumours』には、互いの心情をぶつけ合う「Go Your Own Way」や「Dreams」などが並ぶ中、「Second Hand News」はむしろ淡々としながらも、最も鋭い断絶を提示しているともいえるのです。
音楽シーンと1977年の風景
パンク、ディスコ、AORに囲まれて
1977年の音楽界は多様性に満ちていました。パンクが台頭し、ディスコがブームを巻き起こし、AORがメインストリームとなる中で、フリートウッド・マックは「大人のロック」として絶妙な立ち位置を築きました。
「Second Hand News」はその象徴であり、ジャンル横断的な音作りによって時代の空気を反映しています。
日本での受容と支持
当時の日本では、FMラジオや音楽雑誌が音楽情報の主な手段でした。英語詞ながらも、哀愁を帯びたメロディと控えめな情感は、日本人の感性に自然と溶け込んだのです。
再評価と現代への橋渡し
『The Dance』ツアーでの再演
1997年、再結成されたフリートウッド・マックはアルバム『The Dance』でツアーを開始。「Second Hand News」は再びセットリストの先頭に置かれ、円熟味を増したバッキンガムの歌唱と演奏が、新たな感動を呼びました。


カバーと影響の広がり
この楽曲は、Bon IverやIron & Wineといったインディ系アーティストをはじめ、さまざまなミュージシャンに影響を与えてきました。失恋ソングでありながら、リスタートの象徴としても機能し、多くの映像作品で使われることもあります。

『Rumours』録音現場の緊張と創造
「Second Hand News」を含む『Rumours』の制作は、単なるアルバム録音というより、感情がぶつかり合う“心理劇”のような現場でもありました。バンド内での人間関係の崩壊は避けられず、それぞれがスタジオで顔を合わせるたびに微妙な空気が流れたといいます。(この状況でアルバムを完成させるのがすごいですよ!)
しかし、そうした張りつめた空気が逆に創作エネルギーへと転化されたのも事実。特にバッキンガムは、曲順や音の配置にまで徹底的にこだわり、作品全体の構成を自ら主導しました。「Second Hand News」が1曲目に置かれたのも、彼の“意図ある配置”の成果なのです。
軽やかに聴こえながらも、背景に重厚なドラマを秘めたこの曲が、人々の記憶に深く刻まれるのは、決して偶然ではありません。
終章──痛みを踊るという美学
「Second Hand News」は、別れの痛みを、笑いながら歌い飛ばすような不思議な魅力を持っています。決して泣かず、語らず、ただステップで過去を踏み鳴らす──その美学が、聴く者の心に深く染み渡るのです。

『Songbird』(Fleetwood Mac)―:意訳
もう言葉なんて、何も残っていない。
誰かが僕の代わりを務めている…それだけのこと。
時間が悪くなるときもある。
状況が、荒れることもある。そんなときは、静かな草の上に寝転んで、
ただ、自分の時間に身を委ねたくなるんだ。僕には、もう君に与えられるものなんてない。
何かを変えられる力も、もう残ってない。
でも、それでも君は、満たされないままに、
まだ何かを求めている。だったらせめて、
僕をそっと草の上に寝かせてくれないか。
何も言わず、何もせず。
僕の「やるべきこと」をさせてほしい。ひとつだけ言わせてほしい。
君が去っても、僕はきっと寂しくない。
もう、十分に長く落ちてきたから。
もう、何度も何度も揺さぶられてきたから。ねえ、それでも…
君はちょっとくらい、優しくできなかったのか?それでもいいさ。
もう十分、わかってる。君は、安らぎをくれる誰かを探してる。
僕は、君にとって…
「ついで」だったんだろう。僕は、ただのニュースの“お古”。
いつか誰かが見て、すぐに忘れるような…
そんな存在。でもいいさ。
僕は僕のままで、
草の上に寝そべり、
静かに、自分の役目を果たすだけさ。うん、ただそれだけなんだ。
by Ken
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