【8月31日】は、ボブ・ウェルチの誕生日『エボニーアイズ』をご紹介!

8月31日:ボブ・ウェルチの誕生日に捧ぐ-エボニーアイズ

8月31日は、ギタリストでありシンガーソングライターの ボブ・ウェルチ(Bob Welch, 1945–2012) の誕生日です。
彼は1971年から1974年までフリートウッド・マックに在籍し、ブルースロックの影響が濃かった初期のスタイルから、よりメロディアスでポップな方向性へと舵を切る過程に大きな役割を果たしました。アルバム『Bare Trees』(1972年)や『Mystery to Me』(1973年)に収録された楽曲には、すでに後のフリートウッド・マック黄金期へと繋がるポップ・センスが息づいています。

バンド脱退後はソロアーティストとして活動し、1977年に発表したアルバム 『French Kiss』 が大ヒット。その中でもシングルカットされた 『Sentimental Lady(邦題:悲しみのセンチメンタル)』『Ebony Eyes(エボニー・アイズ)』 は、彼の名を決定的にした代表作です。特に『エボニー・アイズ』は、アメリカのビルボード・シングルチャートでトップ20入りを果たし、ラジオやクラブでも長く愛され続けてきました。

今日の紹介曲:『エボニーアイズ』

まずは、公式動画(音源)からご覧ください。

🎥 公式動画クレジット(公式音源)
曲名:Ebony Eyes
アーティスト:Bob Welch
アルバム:French Kiss
著作権表記:© 1977 Capitol Records, LLC
配信元:Universal Music Group
📖 2行解説
1977年リリースのアルバム French Kiss に収録された代表曲のひとつで、Bob Welch のソロ時代を象徴するナンバー。キャッチーなメロディと柔らかなボーカルが、当時のAORシーンを代表するスタイルとして今も人気を集めている。

僕がこの曲を初めて聴いたのは・・・♫

My Age 小学校中学校高校大学20代30代40代50代60才~
曲のリリース年1977 
僕が聴いた時期

僕がこの曲を初めて聴いたのは、大学1年生の時。
久しぶりの登場ですが、当時住んでいた世田谷区東松原のアパートにいた時です。

メロディーがいいとかは、もちろんですが、一言でこの曲を表現すると「センスが良すぎる!」ということですね。解説を読んでいただくと、その意味が分かると思います。大好きな一曲です。

耳にした経緯は記憶にないですが、これまでのご案内の通り、音楽三昧できる生活だったので、ラジオやテレビなど機会は幾らでもあったと思います。ただ、現在のようなインターネットもない時代ですから、かなり限られた情報源ではあったと思いますね。

余談ですが、
当時奨学金の手続や制限などあったみたいで、受取り始めたのは、入学したての4月ではなく、確か半年後にまとめて振り込まれてきました。

記憶では、月4万円~5万円程度だっとと思いますが、半年分なので25万前後振り込まれた記憶があります。
仕送りをしていた親は、僕の当分の生活費として当てにしていたのを後で知ることになるのですが、何と僕はそのお金をもってそのまま秋葉原へ直行し、ステレオ一式を購入してしまったのです。(;”∀”)(ほぼ全額使いました。)・・・・親不孝者です。

今回この記事を書くにあたり、色々と調べました。ボブ・ウェルチがフリートウッド・マックに在籍していたことは知っていましたが、エピソードは何一つ知りませんでした。フリートウッド・マックは大好きなバンドですし、このブログでも、「僕の勝手なBest10」でも取り上げています。

自慢ではないですが、これまで取り上げたミュージシャンのなかでも、Best10全体のトータルクウォリティーはNO1だと自負しています。ぜひ記事一覧Youtubeプレイリストをご覧になってください。本当にBestバランスの10曲です。

1977年という時代背景──AORの波と巨大アルバム『噂』

ポピュラー音楽史の転換点

『エボニー・アイズ』が世に出た 1977年 は、音楽史において重要な転換期でした。
プログレッシブ・ロックやハードロックの全盛が一段落し、都会的で洗練された大人向けの音楽、すなわち AOR(Adult Oriented Rock) が台頭してきます。前年にボズ・スキャッグスの『Silk Degrees』(1976年)が成功を収め、スティーリー・ダンがアルバム『Aja』(1977年)で緻密なサウンドを追求していたまさにその頃、ボブ・ウェルチもまたAORの波に乗り、自身の方向性を確立しました

古巣フリートウッド・マックの大成功

同じ年、フリートウッド・マックはアルバム 『Rumours(邦題:噂)』 をリリース。全世界で4000万枚以上を売り上げ、音楽史に残る大記録を打ち立てました。ウェルチが脱退してわずか数年後、古巣は世界最大級の成功を収めることになります。
この皮肉な状況は、彼に少なからず複雑な感情を抱かせたでしょう。しかしウェルチは、AORという新しい土俵で勝負し、「フリートウッド・マックとは異なる成功」 を自らの手で示しました。『エボニー・アイズ』は、まさにその証拠のひとつです。


サウンドの魅力──計算されたシンプルさ

忘れられないギターリフ

『エボニー・アイズ』の冒頭を飾るシンプルなギターリフは、技術的に難しいわけではありません。しかし、そのわかりやすさと中毒性は絶大で、誰もが一度聴けば口ずさめるほど印象的です。まさに「誰にでも弾けそうで、誰も思いつかなかった」フレーズであり、この曲の最大の武器になっています。

豪華なゲスト参加

この楽曲には、フリートウッド・マックのメンバーがゲスト参加しています。

  • ミック・フリートウッド(ドラム)
  • クリスティン・マクヴィー(コーラス)

特にクリスティンの透き通るようなハーモニーは、ウェルチのクールで乾いた歌声に温かみを与え、楽曲の空気感を決定づけています。この二人の存在があったからこそ、『エボニー・アイズ』は独自の輝きを放つことができたのです。(この事実を知った時には、ちょっと涙が出ました)

サウンド・プロダクション

録音はアナログ・マルチトラックによる太く温かい音質で、西海岸特有のウェストコースト・ロックの要素を色濃く感じさせます。エレクトリック・ピアノのきらめき、タイトで響きすぎないドラム、そして伸びやかなコーラスワーク。すべてが1977年という時代の空気をそのままパッケージングしたような完成度を誇ります。

鎖を解き放ちたいという願望

『エボニー・アイズ』の歌詞は、直訳するとシンプルですが、そこに込められた物語性は豊かです。主人公の男が、ある女性に強く惹かれていく過程を描きつつ、彼女の内面に秘められた「炎」にも触れていきます。

冒頭のフレーズ
“Well have you seen that girl in the corner / I’d like to take her out of her chains”
(街角に立っているあの娘を見たかい? あの娘を縛る鎖を解き放ってやりたい)

この「chains(鎖)」という言葉が象徴的です。文字通りの束縛ではなく、彼女が抱える生きづらさや環境、あるいは心の重荷を示唆していると解釈できます。主人公は彼女をただ「美しい存在」として消費的に眺めるのではなく、そこから救い出したいという強い欲求を抱いているのです。

瞳に映るすべて

サビ部分では繰り返し Your eyes got me dreamin / Your eyes got me blind” と歌われます。
直訳すれば「おまえの瞳が俺に夢を見させ、何も見えなくさせる」ということですが、実際には「彼女の瞳に全存在を奪われてしまう」という心境が込められています。

ここで強調されているのは「Ebony Eyes(漆黒の瞳)」というフレーズ。瞳の色そのものが比喩的に使われ、彼女の神秘性と危うさを象徴しています。この繰り返しが曲全体のリフレインとして作用し、聴き手に強い印象を残します。


臆病さと大胆さの同居

「夜の猫」の比喩

中盤に登場する表現が印象的です。
“So it looked like I had to move slowly / Like a cat at night in the trees”
(だから俺はゆっくり近づかないといけない。木々の間を歩く夜の猫のように)

彼は一目惚れしながらも、勢い任せで飛び込むのではなく、慎重に近づこうとします。夜の猫のように音も立てず、相手を驚かせない。これは彼女の「秘められた炎(secret fire)」を直感的に感じ取り、無理に迫れば「火傷する」と悟っているからです。

恋愛における大胆さと臆病さ、その両方を抱える主人公の姿は、聴く人に共感を呼びます。

「彼女に教えてもらう」姿勢

歌詞にはこうもあります。
“Cause I was waiting for her to show me / The way that she like her love to feel”
(彼女が愛を感じる方法を教えてくれるのを、俺は待っている)

これは、支配的な関係ではなく、彼女自身がどう愛を表現するかを尊重する姿勢を示しています。単なる口説き文句ではなく、相手を理解したいという真剣さがにじみ出ています。


サビのリフレイン──恋の中毒性

「Your eyes」の魔力

曲中で最も繰り返されるのがサビです。

“Your eyes got me dreamin”
“Your eyes got me blind”
“Your eyes got me hopin”

この三段リズムは、単純ながら強烈に耳に残ります。しかも「dreamin」「blind」「hopin」と韻を踏みながら並列されることで、聴き手の記憶に焼きつくフレーズとなっています。

繰り返しの多い歌詞ですが、そのリフレインは単調ではなく「夢 → 盲目 → 希望」と段階的に感情の強度を高めています。これが曲の高揚感を演出しているのです。


シンプルさの奥に潜むドラマ

一見すると「女性に惹かれた男のラブソング」ですが、その描写は直球ではなく比喩を交えた語り口で構成されています。鎖、炎、夜の猫、漆黒の瞳──どれも抽象的ながら、聴き手の想像力をかき立て、主人公の内面を映し出しています。

歌詞が過剰に説明的でないからこそ、聴く人によって自由に解釈できる余地が残されています。この適度な余白が『エボニー・アイズ』を普遍的なラブソングとして成立させているのです。

孤高の才能──ボブ・ウェルチという存在

フリートウッド・マックでの役割

ボブ・ウェルチがフリートウッド・マックに在籍したのは1971年から1974年までの約3年間です。この時期は、ブルース色が強かったバンドがメロディアスなロックへと方向性を変える過渡期でした。
アルバム『Bare Trees』(1972年)、『Penguin』(1973年)、『Mystery to Me』(1973年)、『Heroes Are Hard to Find』(1974年)で彼が手掛けた楽曲は、バンドに叙情性や都会的な雰囲気を与え、後の黄金期への橋渡しを果たしました。実際に後年のメンバーも「ウェルチがいなければ『Rumours』は存在しなかった」と語っており、彼の功績は決して小さくありません。

ソロでの成功と独自の色

バンドを脱退した後のウェルチは、すぐにソロ活動を本格化させました。1977年のアルバム『French Kiss』は商業的に大きな成功を収め、全米チャート5位を記録。シングル『Sentimental Lady』は全米8位、『Ebony Eyes』も全米14位と連続ヒットを飛ばしました。
フリートウッド・マックがバンド内の愛憎劇を軸にした生々しい作品を発表していた一方で、ウェルチはよりスタイリッシュで普遍的なラブソングを描き出し、ソロアーティストとしてのアイデンティティを確立したのです。


ロックの殿堂に名を連ねなかった理由

不可解な「不在」

1998年、フリートウッド・マックは「ロックの殿堂」入りを果たしました。しかしそのメンバーリストに、なぜかボブ・ウェルチの名前はありませんでした。初期ブルース期のギタリストや黄金期のメンバーが選ばれたにもかかわらず、バンドを繋いだ重要な時代を支えたウェルチは外されてしまったのです。
この決定はファンや音楽関係者の間で議論を呼び、本人にとっても大きな失望となりました。彼の功績が正当に評価されなかったことは、後年の精神的な負担となったと考えられます。

晩年とその影

ウェルチは晩年、健康問題や経済的困難に悩まされていました。2012年に67歳でこの世を去った際、多くの音楽誌は彼の死を報じながらも、そのキャリアの「不遇さ」に言及しました。
しかし、彼が残した楽曲は今もなお聴かれ続けています。特に『エボニー・アイズ』は、彼の音楽的才能とセンスを象徴する代表作として再評価されています。

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