■HSCCについて詳しくは、こちらから➡|HSCCという奇跡のバンドを知っていますか?
【新シリーズ開幕】僕の勝手なCover Selection、スタートします!
これまでの「Bestシリーズ」では、アーティスト本人の名曲を中心に取り上げてきました。
今回から始まる「Cover Selection」では、名曲を“再び生まれ変わらせた”カバー演奏に焦点を当てます。
原曲を尊重しながらも、新しい息吹を吹き込むミュージシャンたちの表現力――
その魅力を、1曲ずつ丁寧に味わっていきたいと思います。
記念すべき第1回は、マイケル・ジャクソンの『Billie Jean』を、オーストラリアのHSCCが圧倒的な完成度で再現した名演から。
イントロダクション
1983年に発表されたマイケル・ジャクソンの『Billie Jean』は、ポップス史上でもっとも鮮烈な印象を残した名曲です。
イントロのベースラインが鳴り始めた瞬間に誰もが反応する――それほどまでに普遍的な存在となりました。
スリラー期のマイケルは、音楽・映像・ダンスを完全に融合させた“総合芸術”の頂点にいました。
その中でも『Billie Jean』は、彼のキャリアと時代を象徴する1曲です。
洗練されたリズム、クールなサウンド、そして緊張感のある物語性。
40年以上経った今でも、この曲は驚くほどの鮮度を保っています。
この永遠の名曲を現代に甦らせたのが、オーストラリア・アデレードを拠点とするスーパー・バンド The Hindley Street Country Club(HSCC) です。
彼らは「完璧な生演奏」にこだわり、70〜80年代の名曲を原曲の魂を保ったまま再構築してきました。
その中でも『Billie Jean』は、HSCCの技術力と音楽的センスを象徴する代表的なカバーです。
まずはYoutubeの公式動画からご覧ください。
✅ 公式動画クレジット
The Hindley Street Country Club(HSCC)公式YouTubeチャンネル
🎵『Billie Jean(マイケル・ジャクソン)/カバー:The HSCC(ボーカル:Kat Jade)』
制作:The HSCC
編曲:コンスタンティン・デロ(Constantine Delo)
録音:デイヴ・ロス(Dave Ross)〔オーストラリア・ザ・パークス・センターにて〕
© 2022 The HSCC
💬 2行解説
オーストラリアの人気カバーバンドHSCCによる、マイケル・ジャクソンの名曲『Billie Jean』のカバー。
Kat Jadeの圧倒的なボーカルとタイトなリズムセクションが原曲のグルーヴを新たな形で再現している。
では本家に敬意を表して、マイケルジャクソンの公式動画を掲載します。
✅ 公式動画クレジット
Michael Jackson Official YouTube Channel
🎵『Billie Jean(ビリー・ジーン)』
作詞・作曲・プロデュース:マイケル・ジャクソン
収録アルバム:『Thriller』(1982年)
© 1982 MJJ Productions Inc. / Epic Records
💬 2行解説
マイケル・ジャクソンが世界的スターへと躍進するきっかけとなった代表曲。
革新的なミュージックビデオとムーンウォークの衝撃が、音楽史に新たな時代を刻んだ。
なんとこの動画は、約20億回ほど再生されています。懐かしい映像です。
Billie Jeanの歌詞:超約
映画のヒロインのような女性“ビリー・ジーン”が、自分の子の父親は「あなた」だと主張する。
男は何度も否定しながらも、周囲の視線と疑惑に苦しむ。
虚実が入り混じる中で、「彼女は恋人じゃない、子どもも僕の子じゃない」と繰り返す切実な告白。
スリリングなリズムの中に、名声と孤独、スキャンダルの恐怖が刻まれたマイケル・ジャクソン屈指の名曲。
HSCC版『Billie Jean』の再構成
HSCCの『Billie Jean』は、原曲の緊張感を損なうことなく、生演奏ならではの“息づかい”を加えた見事な再構成です。
電子的な要素を排除しながら、ライブの空気感とアンサンブルの妙で聴かせます。
彼らの目指す「再現」は模倣ではなく、“名曲を現代に生き返らせること”なのです。

リズムセクションの精度とグルーヴ感
まず注目したいのは、リズム隊の緻密さです。
ドラムのスネアは、原曲よりもわずかに“後ノリ”で叩かれています。
その絶妙な遅れが、グルーヴ全体の熱を上げ、リスナーに自然な揺れと高揚感を感じさせます。
マイケルのオリジナルがプログラミングされたリズムで完璧な緊張を保っていたのに対し、HSCCは人間的なズレと呼吸をあえて残し、音楽の“生きている温度”を伝えています。
ハイハットの刻み方にも個性があり、全体のテンポをほんのわずかに押したり引いたりすることで、演奏全体に「ライブ特有のうねり」を与えています。
ベースラインの存在感と音の重心
ベースは、ルイス・ジョンソンの名演をリスペクトしつつ、中域をやや強調したモダンなトーンで再構成されています。
このバランスの取り方が、サウンド全体を支えながらも圧迫感を与えず、「踊れる低音」として機能しているのが特徴です。
特に印象的なのは、サビに向かう瞬間の低音の伸びです。
フレーズ自体は原曲と同じ構成ですが、音の持続をわずかに長くとることで、次の展開への推進力を自然に生み出しています。
細部に宿る“リスペクトと再発見”こそ、HSCCのカバーを特別なものにしている理由です。

ボーカル表現の新しさと感情の設計
HSCCのボーカルは、マイケルの声を真似るのではなく、自分たちの音楽観をもって挑んでいます。
声の高さや発声のタイミング、語尾の処理など、どれも原曲の再現というより“対話”のように聴こえるのです。
サビの「Billie Jean is not my lover」では、押し出すのではなく引くような発声で、緊張感をコントロールしています。
その抑制された表現が、原曲のクールな美しさをより強く際立たせています。
「似せる」ではなく「感じ取る」。
それがHSCCのボーカルスタイルの核心です。
ステージ演出と映像の臨場感

映像からも、バンド全体の呼吸が伝わってきます。
照明は過剰ではなく、音と同期するように変化し、観客を巻き込むような一体感を作り出しています。
演奏中にメンバー同士が視線を交わす一瞬や、リズムに合わせて身体を揺らす自然な動き――
そうした細部が、音楽の“生きている証”として画面に刻まれています。
バンド全体の呼吸とアンサンブルの妙
HSCCの魅力は、メンバー全員が「呼吸」で音を合わせていることにあります。
譜面どおりの再現ではなく、その場の空気を共有しながらリズムを“生き物のように”動かしているのです。
特にキーボードとギターの掛け合いは絶妙で、音数を増やすのではなく、必要な瞬間にだけ音を差し込むようなバランス感覚があります。

演奏中、メンバー同士が目で合図を送り合う姿は、まるで呼吸そのもの。
ライブ演奏でしか得られない一体感を映像越しにも感じ取ることができます。
HSCCが高い評価を得ている理由は、テクニックの精度よりも、この「人と人の間に生まれる間(ま)」の扱い方にあると言えるでしょう。
ライブ演奏の臨場感と観客との一体感
HSCCの映像が他のカバーバンドと決定的に違うのは、単なる演奏動画ではなく、“空間ごと記録された音楽体験” になっていることです。

カメラがメンバーをゆっくりと横切るカットや、観客が自然に体を揺らすシーンが挿入されることで、
視聴者もその場にいるような没入感を得られます。
音楽と映像が有機的に結びついており、「演奏を聴く映像」ではなく「ライブ空間を共有する映像」へと進化しているのです。
また、観客の反応が演奏のテンポやダイナミクスに反映されている点も印象的です。
彼らの演奏は、常に“場”との対話によって完成している。
それがHSCCのライブに宿る最大の魅力です。
音響の立体感と録音技術
HSCCの映像作品では、音響バランスの良さも特筆すべき点です。
各楽器がクリアに分離しながらも、全体が自然に溶け合っており、ミックスの段階で過剰なコンプレッションを避けているのがわかります。
ドラムのキックやベースの低域は豊かに響き、ボーカルが浮き立たずに楽器と調和しています。
これは、ライブ録音でありながらスタジオクオリティを維持するHSCCの大きな強みです。
「完璧な音ではなく、心地よい音を届ける」――
そんな姿勢が、映像全体を通して伝わってきます。

HSCC流カバーの哲学
HSCCが他のカバーバンドと一線を画しているのは、“懐かしさ”ではなく“今ここで生きる音” を表現している点にあります。
彼らの演奏には、原曲へのリスペクトがある一方で、「当時の空気をそのまま再現すること」よりも
「今この瞬間に鳴る音として再生すること」を重視しています。
過去の名曲を“展示する”のではなく、観客とともに“再び体験する”――その姿勢が
世界中のファンの共感を呼んでいるのです。
まとめ
マイケル・ジャクソンの『Billie Jean』は、40年経った今も世界中で愛される永遠の名曲です。
HSCCのカバーは、その偉大な原曲に正面から向き合いながら、現代の空気感とライブの熱気を融合させました。彼らが見せるのは「過去を懐かしむ」音楽ではなく、「今も進化し続ける」音楽の姿です。
そしてその中心にあるのは、テクニックではなく、人と音とのつながり。
だからこそ、聴く人の心に確かな温度を残してくれるのです。

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