■【アルバート・ハモンド】について詳しくはこちらから!➡Wikipedia
- 僕の勝手なBest10:第6位は『I Don’t Wanna Lose You』です。
- 夜に囁く〈失いたくない〉──ハモンドが描く永遠のラブバラード
- 世界を揺らしたバブルの裏側──1988年、ポップカルチャーの光と影
- 華やぐ東京の夜に潜む不安──日本バブル絶頂の光と翳り
- 国境を越える感性──ハモンドが歩んだ創作の軌跡
- シンセと弦が紡ぐ切々たる想い──「I Don’t Wanna Lose You」の音楽的魅力
- “戻らない時間”を抱きしめて──歌詞に宿る喪失と再生のドラマ
- ポップ×ロックの交差点──1988年、音楽シーンを染めた多彩なうねり
- 夜のドライブに映える一曲──日本の若者を包んだ「I Don’t Wanna Lose You」
- Spotify世代にも刺さる古典──ハモンドが残した不滅のメロディ
- 心をつなぐ永遠のバラード─“I Don’t Wanna Lose You”が語り続けるもの
僕の勝手なBest10:第6位は『I Don’t Wanna Lose You』です。
アルバート・ハモンド編第6位は、『I Don’t Wanna Lose You』です。
80年代の名バラードを、円熟味を帯びた歌声で届ける公式ライブ映像でお届けした後、解説していきます。
🎥🎼まずはいつものように、Youtubeの公式動画をご覧ください。
🎬 クレジット: 出典:YouTube – Albert Hammond Official 映像:Albert Hammond – I Don't Wanna Lose You (Songbook Tour, Live in Berlin 2015) 収録:2015年11月30日/ベルリン・SchwuZ 公開:2019年3月22日 📝 解説: 80年代の名バラードを、円熟味を帯びた歌声で届ける公式ライブ映像。
夜に囁く〈失いたくない〉──ハモンドが描く永遠のラブバラード
1988年にリリースされたアルバート・ハモンドの「I Don’t Wanna Lose You」は、80年代の終盤にあってひときわ静謐で情感豊かなラブバラードです。きらびやかだった時代の裏側で、真実の愛を求める一人の心の叫びが、シンセサイザーのやわらかな音色と共に響きます。本稿では、楽曲の背景、当時の時代性、アーティストとしてのハモンドの足跡、そして歌詞やサウンドの深層に迫りながら、この名曲がなぜ時代を超えて共感を呼び続けるのかを探っていきます。

世界を揺らしたバブルの裏側──1988年、ポップカルチャーの光と影
国際情勢とアメリカの音楽風景
1988年、アメリカではジョージ・H・W・ブッシュが次期大統領に選出され、レーガン政権からの転換期を迎えました。冷戦構造が揺らぎ、ソ連のゴルバチョフ書記長によるペレストロイカが進展するなかで、国際情勢は不安定さと希望が交錯する時代となります。
MTVとスタジアムロックの台頭
映画『レインマン』が公開され、ダスティン・ホフマンとトム・クルーズの共演が話題に。MTVではミュージックビデオが黄金期を迎え、ガンズ・アンド・ローゼズの「Sweet Child O’ Mine」、ボン・ジョヴィの「Bad Medicine」がチャートを賑わせていました。マイケル・ジャクソンの『Bad』ツアーやU2の『Rattle and Hum』など、大規模なライブパフォーマンスが世界中を魅了していた時代です。

華やぐ東京の夜に潜む不安──日本バブル絶頂の光と翳り
経済の活況と社会的陰影
1988年の日本はバブル経済の頂点にあり、株価と地価は空前の上昇を見せました。企業は社員旅行や接待に潤沢な予算を費やし、若者たちは高級ブランドを身にまとい、夜の街に繰り出しました。しかし、その裏では過労死問題やリクルート事件の発覚といった社会の歪みが明るみに出ていきます。

邦楽ロックとポップの拡がり
音楽シーンではBOØWYが東京ドームでの「LAST GIGS」で解散、プリンセス プリンセスの「Diamonds」が女性ロックバンドの可能性を示し、浜田省吾の『Father’s Son』がリリースされるなど、ジャンル横断的な盛り上がりを見せました。洋楽と邦楽が混じり合い、音楽の多様性が開花した一年でもありました。
国境を越える感性──ハモンドが歩んだ創作の軌跡
ジブラルタルという出発点
アルバート・ハモンドは、イギリスとスペインの文化が交錯するジブラルタルで育ちました。彼の音楽には、その多言語環境で培われた感受性と柔軟な発想が色濃く反映されています。スペインのマドリードで音楽活動を開始し、1969年には「The Family Dogg」に参加して本格的な音楽活動を開始しました。

世界的ソングライターとしての飛躍
1972年に「It Never Rains in Southern California」が全米5位となりブレイク。さらに「I Need to Be in Love」「Nothing’s Gonna Stop Us Now」など、他アーティストへの楽曲提供によって国際的な評価を確立しました。バラードの名手として、成熟したハモンド像を象徴するのが本作「I Don’t Wanna Lose You」と言えるでしょう。
シンセと弦が紡ぐ切々たる想い──「I Don’t Wanna Lose You」の音楽的魅力
洗練された西海岸サウンド
「I Don’t Wanna Lose You」は、アルバム『Somewhere in America』に収録された1988年の作品です。TOTOのジェフ・ポーカロ(ドラム)とジェイ・グレイドン(ギター)による演奏・アレンジが施され、洗練されたサウンドに仕上がっています。
音響構造と機材の妙
ヤマハDX7によるシンセ・パッド、アコースティックギターの繊細なストローク、そしてサビのストリングスが織りなすサウンドスケープは、静寂の中に熱を秘めたような感情のうねりを見事に表現しています。空間系エフェクトによっても奥行きが与えられ、リスナーの心に余韻を残します。

“戻らない時間”を抱きしめて──歌詞に宿る喪失と再生のドラマ
共感と痛みの交錯する言葉
歌詞は、大切な人を失いたくないという切実な思いを繰り返し伝えながら、関係修復への願いが一貫して込められています。「I don’t wanna lose you」「We’ve been through so much, don’t let it slip away」といったフレーズに、過去と未来をつなぐ感情が込められています。
ハモンドの筆致の魅力
アルバート・ハモンドは、等身大で飾らない言葉を用いて、リスナーの実感と共振する詩世界を築きます。この楽曲でも、“傷つきながらも守りたい愛”という普遍的なテーマを真摯に描き出しています。

ポップ×ロックの交差点──1988年、音楽シーンを染めた多彩なうねり
内省的バラードの存在感
「I Don’t Wanna Lose You」は、ジョージ・マイケルの「One More Try」やシンディ・ローパーの「Time After Time」など、当時流行していた感情表現の豊かなバラード群の中でも特に静謐な佇まいを保っています。
シンセポップとの差異化
ニュー・オーダーやデペッシュ・モードがエレクトロニクスの冷たさとダークネスを探求していたのに対し、ハモンドは温かみと誠実さに重きを置いた作風で独自の立ち位置を確立していました。
夜のドライブに映える一曲──日本の若者を包んだ「I Don’t Wanna Lose You」
日本では、深夜ラジオや有線でこの曲が静かに広まり、リスナーの心に寄り添う存在として受容されました。「都会の夜の孤独」を抱える人々の心を癒やす音楽として、多くの共感を得たのです。

邦楽との共鳴
同時期には、氷室京介の「KISS ME」や山下達郎の「GET BACK IN LOVE」など、“夜の感傷”をテーマにした楽曲がヒット。洋楽と邦楽が、それぞれの文脈で夜の情緒を歌った好例として並び立ちます。
Spotify世代にも刺さる古典──ハモンドが残した不滅のメロディ
2020年代に入り、アルバート・ハモンドの楽曲は再評価されつつあります。特に「I Don’t Wanna Lose You」は、YouTubeやSpotifyなどのプラットフォームでの視聴が続いており、新たなリスナー層との接点を生んでいます。
歌声の“温度”が魅力
飾らない中低域の声、過剰に作らないアレンジ。こうした美学が、現代の音楽リスナーにも“本物”として届いているのです。
心をつなぐ永遠のバラード─“I Don’t Wanna Lose You”が語り続けるもの
「I Don’t Wanna Lose You」は、ただのラブソングではありません。それは「大切な人と共にいる」というシンプルなことの難しさと美しさを、そっと教えてくれる音楽です。劇的でないからこそ、現実の愛に寄り添い、聴く人の記憶に静かに残り続けるのでしょう。

✨『I Don’t Wanna Lose You』by(アルバート・ハモンド):意訳
失いたくない——ほんとうの愛を知った今だから
ある年齢を重ねた女性たちは、もはや恋の駆け引きには疲れ、誠実さだけを求めている。
そんな彼女に出会い、まだ深く知り合っていないのに、彼女と心が通じた気がしてしまう。
別れの言葉なんて言いたくない。ただ、この気持ちを握りしめていたい。
これはきっと、本物の愛、真実の愛。過去に傷ついた彼女は、新たな一歩を踏み出すことに臆病だ。
それでも、他の誰でもなく、僕だけを見つめてくれる。
理屈ではなく、心の奥に確かな灯がともったような気がする。
彼女を失いたくない。この想いを、失いたくない。「現実なの?」と尋ねる僕に、彼女は偽りなく応えてくれる。
約束なんていらない。ただ一緒にいること、その時間のなかに、揺るがない真実の愛がある。
これが、ずっと探していたもの。
僕はようやく見つけた。だから、もう二度と離したくない。
by Ken
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