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僕の勝手なBest10:第2位は『落葉のコンチェルト』です。
アルバート・ハモンド編もあと2曲となりました。第2位は、『For The Peace Of All Mankind (落葉のコンチェルト )』です。
邦題は否応なしに、秋の気配を感じるタイトルです。大好きな一曲です。この曲が2位となったことで、1位はもうお分かりですね?それは明日発表します。
🎥まずはいつものように、Youtubeの公式動画をご覧ください。
📺 公式クレジット
提供元:Legacy Recordings(レガシー・レコーディングス)
楽曲タイトル:For The Peace Of All Mankind(落葉のコンチェルト)
アーティスト:アルバート・ハモンド(Albert Hammond)
収録アルバム:『The Free Electric Band(ザ・フリー・エレクトリック・バンド)』
作曲者:マイケル・ヘイゼルウッド(Michael Hazelwood)
発売日:1973年8月16日
著作権表記:© 1973 Sony Music Entertainment Inc.
動画公開日:2017年1月26日
【公式クレジット】
動画タイトル:For The Peace Of All Mankind(落葉のコンチェルト)
アーティスト:アルバート・ハモンド(Albert Hammond)
公演タイトル:Songbook Tour(ソングブック・ツアー)
収録場所・日付:2015年11月30日、ドイツ・ベルリンのSchwuZにて収録
リリース媒体:『Songbook DVD – Live in Berlin 2015』に収録
アップロード元:Albert Hammond Official(公式チャンネル、認証バッジ付き)
公開日:2018年2月9日
平和への静かな呼び声
──Albert Hammondの名バラードが響かせた70年代の祈り
1973年に発表された「For The Peace Of All Mankind」は、アルバート・ハモンドが自ら作詞・作曲・歌唱を手がけたバラードです。
アルバム『The Free Electric Band』に静かに収められたこの楽曲は、過剰な演出とは無縁でありながら、深い余韻と普遍的な願いを湛えています。戦争の記憶が残る時代に、“人類すべての平和”という重たいテーマを、柔らかく、丁寧に、そっと差し出すような一曲──。
この作品が持つ力を、背景・文脈・構成から見つめ直してみましょう。
揺れる世界と日本──1970年代の時代背景
世界情勢の転換点
1970年代初頭。ベトナム戦争は泥沼化しつつも、1973年にパリ和平協定が成立。アメリカ軍の撤退が始まりました。1972年にはニクソン大統領が中国を訪問し、東西冷戦下における外交の潮目が変わった時代です。ただし、戦争の傷跡は深く、アメリカ国内では反戦・反体制運動が続き、社会には虚脱と分断が漂っていました。

日本社会もまた転換期に
1970年の大阪万博には6,400万人以上が来場し(今回の万博はどうなるのでしょうね?)、経済成長の成果を誇示しました。一方で、1971年の大阪空港騒音訴訟や1972年の沖縄返還など、「豊かさの代償」と向き合う局面も訪れます。人々は便利になった生活の裏で、どこかで「心の安らぎ」を求めはじめていたのかもしれません。
優しさで時代を包んだ音楽たち
──フォークとソフトロックの共鳴
1970年代は、ジャンルの壁を越えて音楽が感情と結びついた時代でした。マイルス・デイヴィス『Bitches Brew』(1970年)はジャズとロックを大胆に融合。
一方、キャット・スティーヴンスやニール・ヤングは、内省的な詞とアコースティックな響きで心に寄り添う歌を発信していました。カーペンターズのソフトロックは家庭に温もりを届け、“やさしさ”が人々を癒す音楽となっていました。

アルバート・ハモンドの登場
──歌と祈りを繋げたソングライター
アルバート・ハモンドは1944年、英領ジブラルタルに生まれました。ロンドンで音楽活動を開始し、1972年に「It Never Rains in Southern California」でソロデビューを果たします。
翌年のアルバム『The Free Electric Band』は、彼の叙情的な作風の結晶といえる内容で、「For The Peace Of All Mankind」が収録されていました。
静寂に込められたメッセージ──構成と詞の内側を読み解く
音構造の設計
アコースティックギターの柔らかなイントロに始まり、ハモンドの声が静かに重なっていきます。
サビで繰り返される「For the peace of all mankind」は、過剰な装飾を排し、“音の引き算”によって祈りの余韻が残されています。

歌詞が描くのは個人の別れか、それとも…
「Will you go away?」という問いかけは、失恋や離別の情景にも見えますが、「争いからの訣別」とも重ねて読むことができます。
“個”と“社会”の重なり
個人的な別れが、社会への願いへと重なる──この楽曲は、そうした静かな転化の構造を持っています。
“静かな祈り”と呼ばれた背景
──日本における受容と再発見
この曲は日本では「落葉のコンチェルト」という邦題で紹介され、静かなバラードとして秋の情景とともに親しまれてきました。1970年代後半からFM番組や輸入盤紹介記事などでこの名称が使われ、現在でも多くの日本人リスナーにこの邦題で知られています。
紅葉が舞う季節、ギターの音色と言葉よりも深く訴えるメロディ。「言葉よりも音が願っている」──この感覚こそが日本人の心に響いたのです。

2020年代に再び注目を浴びる理由
──色あせぬ優しさの力
アルバート・ハモンドは現在も音楽活動を続けており、2024年3月にはドイツ・ハイデンハイムでライブを行いました。また、過去のベルリン公演の映像がYouTubeに公開され、SNSでも話題となっています。
落ち葉の音が導く未来
──音が語る、争わぬ世界
「For The Peace Of All Mankind」は、戦いではなく“戦いの後に残る願い”を描いた楽曲です。もしあなたが静かな夜にこの曲を聴くなら、落ち葉が舞う音に耳を澄ませるような、そんな気持ちになるはずです。それはきっと、アルバート・ハモンドが「音」で届けた、時代を超えた手紙なのです。

『TFor The Peace Of All Mankind』(落葉のコンチェルト):意訳
ひとときの情熱に身を任せた夜。
言葉を交わさずとも、互いの望みは明らかだった。
ただの気まぐれのはずが、君は思いがけず深く心に残った。
だが、すべては過ぎ去るためにあった──
世界の平和のために、いや、自分の心の静けさのために。あの時、もっと早く気づけていれば、
あるいはこの結末は変えられたのかもしれない。
けれど今、手元に残されたのは、
指先の跡と、消せない記憶だけ。
もう戻れないなら、せめて静かに去ってほしい。
この部屋の扉をそっと閉じて、何もなかったように。「人類の平和のために」と繰り返すその言葉の裏に、
忘れたいと願う心の葛藤が揺れている。
愛の名を借りた別れの歌は、
ひとりの男の小さな祈りなのかもしれない。
by Ken
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