僕の勝手な【Cover Selection】:『Africa』(TOTO)──HSCCが魂でつなぐ80年代サウンドの再生

■HSCCについて詳しくは、こちらから➡|HSCCという奇跡のバンドを知っていますか?

今回の『僕の勝手なCover Selection』の楽曲は・・・

1982年にTOTOが発表した『Africa』です。

世界中で長く愛されてきたポップスの金字塔です。
複雑なリズム、幾層にも重ねられたコーラス、そしてアフリカ大陸への敬意と幻想が入り混じったスピリチュアルな世界観。
そのすべてが融合したこの楽曲を、オーストラリアの実力派集団HSCC(The Hindley Street Country Club)が、まるで“時を超えた再生”のように現代へよみがえらせています。

彼らの演奏には、精密な再現力と人間味のある温度が同居しています。
そして何よりも、原曲を単に「演奏する」のではなく、いまの時代にもう一度息づかせることへの誠実な意志を感じます。

イントロダクション

 『Africa』の歌詞:超約

遥か彼方の地に思いを馳せながら、
過去と向き合い、自分を見つめ直す旅の歌です。
たとえどんな困難があっても、心の導きに従い、
愛と祈りの場所──アフリカへと帰ろうとする物語です。

まずはYoutubeの公式動画からご覧ください。

✅ 公式動画クレジット
『Africa』(TOTO)カバー演奏
演奏:ザ・ヒンドリー・ストリート・カントリー・クラブ(The Hindley Street Country Club)
出演:ダニー・ロプレスト、ジョーダン・レノン
プロデュース:HSCC
公開日:2025年10月31日
© The Hindley Street Country Club 公式YouTubeチャンネル

💬 2行解説
TOTOの名曲をHSCCが二人のボーカリストで力強く再現したライブ映像です。
完璧なアンサンブルとリアルな熱量が融合した、彼らの代表的パフォーマンスのひとつです。

では、本家のTOTOの―『Africa』(公式動画)です

🎬公式動画クレジット(日本語表記)
『Africa』(TOTO)公式ミュージックビデオ
アーティスト:TOTO(トト)
監督:スティーヴ・バロン(Steve Barron)
公開日:2013年5月22日(YouTube公式チャンネルリマスター版)
レーベル:Sony Music Entertainment
© 1982 Columbia Records / Sony Music Entertainment

💬 2行解説
TOTOの代表曲として世界的に愛される「Africa」の公式HDリマスター版。
1980年代の空気感と壮大なメロディが、今なお色あせない魅力を放っています。

原曲『Africa』──TOTOが描いた祈りと幻想

時代の空気を封じ込めた唯一無二のサウンド

『Africa』が収録されたアルバム『TOTO IV』(1982年)は、バンドの最高傑作と評される作品です。
『Rosanna』と並ぶ代表曲として、全米チャートの頂点を獲得しました。

作詞・作曲を手がけたデヴィッド・ペイチは、実際にアフリカを訪れたことがなかったといわれます。
それでも少年時代にテレビで見た風景や物語を通して、遠い大陸への憧れを音楽に込めました。
結果として生まれたのは、現実ではなく想像上のアフリカ
それが逆に普遍的な人間の祈りや郷愁を象徴するものとなったのです。

リズムの軸を支えるのは、ジェフ・ポーカロによる独特のハーフタイム・シャッフル。
跳ねすぎず、沈み込みすぎず、絶妙なグルーヴを保つこのビートが、曲全体に“旅するような浮遊感”をもたらしています。
さらにアナログシンセやエレピが幾重にも重なり、デジタルでは再現できない柔らかさと立体感をつくり出しています。

「I bless the rains down in Africa」という印象的なフレーズには、単なる風景描写を超えた“救いと浄化”の意味が込められています。
TOTOのサウンドが放つ透明な力――それはまさに1980年代の理想主義そのものだったのです。


HSCC版『Africa』──ライブで甦る熱と呼吸

オープニングから感じるリアルな臨場感

HSCCの演奏が始まった瞬間、まず耳を奪われるのはドラムの存在感です。
原曲のテンポを一切崩さず、それでいてスタジオ録音にはない生命感があります。
スネアの余韻やハイハットの粒立ちが心地よく、まるで“空気の振動”まで再現しているように感じられます。

ベースは深く、温かく、リズムと呼吸を共有するように動きます。
このベースとドラムの安定感があるからこそ、全体のグルーヴが人間的で柔らかなものになっているのです。
TOTO版の神話的な荘厳さが、HSCCでは生きた祈りのリズムとして伝わります。


ボーカルとコーラスの融合──声が織りなす構築美

リードボーカルは原曲の雰囲気を忠実に守りながらも、フレーズごとの抑揚や息づかいがよりドラマティックです。
一方、女性コーラス陣は音域のバランスと響きが美しく、単なる伴奏ではなくもうひとつの旋律を形づくっています。

サビの「It’s gonna take a lot to drag me away from you」が響くとき、リードとコーラスの一体感はまさに圧巻です。
スタジオ録音では得られない“その場の空気”が映像越しにも伝わり、観ている側まで自然とリズムに引き込まれていきます。


「再現」ではなく「再生」へのアプローチ

HSCCの魅力は、音を正確にコピーすることではありません。
彼らは原曲の美しさをそのまま受け取りながらも、現代のリスナーがリアルに感じられる温度に変換して演奏しています。
一つひとつの音に呼吸があり、演奏の中に会話がある。
その自然な“間”が、単なるトリビュートを超えた感動を生み出しています


HSCCのアレンジ──構成の妙と空間の使い方

原曲の骨格を崩さずに「今の音」を作り出す

HSCCの『Africa』を聴くと、まず感じるのは音の整理の巧みさです。
TOTO版ではシンセのレイヤーが何層にも重なっていましたが、HSCCはその複雑さを整理し、アナログ楽器中心で構成しています。

キーボードのサウンドはやや控えめにし、そのぶんギターのクリーンなトーンを際立たせています。
リズムギターが刻む細かなカッティングが心地よく、原曲では聴き逃しがちなビートの“跳ね返り”が可視化されているようです。

また、コーラスの重ね方にも工夫があります。
音圧で押し切るのではなく、余白を活かした響きを重視。
特に後半のリフレイン部分では、ボーカルのラインを少しずつ厚くしながら、曲全体を包み込むように盛り上げていきます。
それが映像の中で生き生きと感じられるのは、演奏者全員の“聴き合う姿勢”があるからです。


原曲との対話──TOTOへの深いリスペクト

形ではなく「精神」を受け継ぐ

TOTOの『Africa』は、80年代の完成されたサウンドアートです。
それをHSCCは、あくまで原曲の設計を尊重しながら、“演奏の喜び”として再解釈しています。

TOTOが作り上げた神話的なサウンドは、当時の最先端テクノロジーの産物でした。
しかしHSCCは、そこに“生身の人間のエネルギー”を加えたのです。
結果として、1982年の象徴だった楽曲が、2020年代の空気をまとった“新しい生命”として再び動き始めました。

この演奏には、プロの技巧を超えた純粋な音楽愛が感じられます。
彼らにとっての「再現」は、TOTOの模倣ではなく、音楽そのものへの敬意を形にする行為なのです。

80年代サウンドの再評価──HSCCが示す未来

カバーを通じて伝わる「音の文化」

HSCCの活動は、単なるカバーバンドの域を超えています。
彼らは80年代から90年代の名曲を、録音技術・演奏力・チームワークの三拍子で再現し、
“リアルな演奏文化”を後世に残そうとしています。『Africa』のような楽曲は、当時のスタジオワークの象徴でもありました。
コンピュータが主導する前の時代、音楽は人間のタイミングと感性によって形作られていました。
HSCCの演奏は、その原点を思い出させてくれるのです。

聴き手が参加する“再体験”の時間

この『Africa』を聴くと、誰もが自然にリズムを刻みたくなります。
それは単なる懐かしさではなく、音楽の根源的な快感です。
演奏の完成度と同時に、観る人の記憶を呼び覚ます力を持っています。

1980年代を知る世代には“時を超えた再会”として、若い世代には“本物の音楽”との出会いとして響く。
その普遍性こそ、HSCCの最大の魅力ではないでしょうか。


終章──“I bless the rains down in Africa”が意味するもの

TOTOのこの一節は、単に地名を歌ったフレーズではありません。
それは、人間の中にある「祈り」や「許し」を象徴しています。
HSCCの演奏によってその言葉が再び息を吹き返し、聴く人それぞれの心の中で、静かに光を放っていきます。

『Africa』という曲は、40年以上経った今もなお、“音楽が時間を超えてつながる”という奇跡を証明し続けています。そして、その橋渡しをしているのが、まさにHSCCなのです。

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