ふきのとうの歴史【前編】「出会い~デビュー〜初期成功~成長期」まで~北の大地から生まれたハーモニー(1970〜1976)

北海道の雄大な自然を背景に、

心温まるメロディと飾らない言葉で多くの人々の心を捉えたフォークデュオ、ふきのとう。

細坪基佳と山木康世、二人の個性と才能が織りなすハーモニーは、日本のフォークシーンに確固たる地位を築き、後の音楽シーンにも大きな影響を与えました。その軌跡を辿るには、まず彼らの生い立ち、そして運命的な出会いから始めることにしましょう。

細坪基佳のルーツ

1952年10月27日、細坪基佳(ほそつぼ もとよし)は北海道札幌市に生まれました。幼少期からアメリカンフォークやカントリーミュージックに魅了され、ラジオから流れる海外音楽に耳を傾けて育ちました。中学時代にはギターを手にし、地元の仲間とバンド活動を開始。

高校に進学後もその情熱は冷めず、作詞作曲にも挑戦し、音楽への没頭が深まっていきます。のちに“ふきのとうの声”と呼ばれる彼の透明感と哀愁を帯びた歌声は、この時期に確立されたものでした。

山木康世の音楽的原風景

1950年10月23日、同じく札幌市に生まれた山木康世(やまき やすよ)は、唱歌や民謡、日本のフォークに強い関心を持ちながら育ちました。
高校時代にはフォークギターを手にし、自作の曲作りにも取り組むようになります。四季の移ろいや北海道の風景、人々の暮らしを織り込んだ詩情あふれる作風は、彼の音楽の根幹を成しており、後の「ふきのとう」における詞と旋律の原点となります。

二人の共通点と相違点

伸びやかな歌声の細坪と、文学的で叙情的な楽曲を生み出す山木。違う個性を持ちながらも、共に北海道という風土に育まれ、若き日にフォークミュージックに目覚めたという共通項が、後の融合を予感させるものでした。

「ふきのとう」の誕生と歩み出し

運命的な出会いと結成のきっかけ

1971年春、札幌のフォーク喫茶「ぱずる」で、細坪基佳と山木康世は初めて出会いました。当時、北海道大学に在学していた山木は自作曲を弾き語りで披露しており、その詩情あふれる世界観に感銘を受けた細坪は、自らも音楽活動を続けていた高校卒業後の若者でした。


細坪の伸びやかな声と表現力に惹かれた山木、そして山木の詞と旋律に心を打たれた細坪。二人は互いの才能に深く共鳴し、札幌の夜にセッションを重ねていくようになります。これが、後の「ふきのとう」結成の原点となりました。

グループ名に込められた意味

1972年、ふたりは正式に「ふきのとう」を結成します。
グループ名の由来は、雪解けの頃に芽を出す「ふきのとう」から。寒さの中でも春の到来を告げるその姿に、「人々の心に寄り添い、あたたかな希望を届ける存在でありたい」という思いが込められていました。

地道な活動と創作の日々

ライブハウスや学園祭を中心に活動し、札幌の音楽ファンの間で少しずつ評判を広げていった二人。当時は共同生活を送りながら音楽制作に没頭し、創作への情熱を共有していきました。
1973年にはヤマハ音楽振興会のオーディション「ポプコン」に応募し、これがメジャーデビューのきっかけとなります。

デビューと初期の飛躍(1974年〜1976年)+アルバム紹介!

「白い冬」での全国デビュー

1974年5月21日、シングル「白い冬」で全国デビュー。北海道の冬をテーマにしたこの曲は、情景描写と感情の機微が融合した名曲で、ふきのとうの叙情的な世界観を広く印象づけました。僕も正にこの曲からふきのとうにハマっていくことになります!
同年10月には、1stアルバム『ふきのとう』をリリース。デビュー作ながら完成度の高い楽曲が並び、業界内外から注目を集めました。

🎵1stアルバム 『ふきのとう』 (1974年10月21日リリース)

A面

1. 帰り道
 アマチュア時代にヤマハ北海道大会で優秀グループ賞を獲得したエポックメイキングな代表曲。温かなメロディに乗せて、帰路に思いを馳せるノスタルジックな世界観が印象的です。
2. ひとりぼっちで
 細坪基佳が切なく孤独を歌い上げる、静謐でやさしいフォーク。
 控えめながらも胸に響く歌声が、タイトル通りの「ひとり感」をリアルに伝えます。
3. 雨降り
 山木康世による作詞・作曲、雨音を思わせる穏やかなリズム。
 しっとりとした歌い口が、物憂げな雨の日の情景を見事に描写します。
4. 夕暮れの街
 白い冬のB面としても知られる、哀愁漂うバラード。
 夕闇に包まれる街並みが浮かぶような、郷愁を誘うナンバーです。
5. 夏の人
 夏の切なさと懐かしさを織り込んだ軽やかなミドルテンポ曲。
 陽の光と風を思わせる描写が、聴き手の心をそっと揺らします。
6. プラットホーム
 駅を舞台にしたストーリー性のあるフォーク調ナンバー。
 旅立ちと別れの予感を象徴的に描く、情緒豊かな一曲です。

B面

7. 涙色の町
 山木康世の感受性豊かな詞が際立つ、切なく染み入るバラード。
 街を歩くたびに胸が締めつけられるような情景が浮かぶ佳作です。
8. 一人暮し
 細坪のリアルな日常感覚が漂うミニマルなフォークソング。
 シンプルながら暮らしの温もりと孤独が繊細に描かれています。
9. バイ バイ スーザン
 軽快なリズムに乗せて別れを歌うポップなナンバー。
 悲しさを抑えながらも、前へ進む強さを感じさせる曲調です。
10.螢(インストゥルメンタル)
 山木康世による静謐なインスト曲。
 夜に光る蛍の儚さと静けさが、音だけで美しく表現されています。
11.花火
 儚い夏の一瞬を切り取る叙情的なバラード。
 夜空に咲く花火に象徴される、心の揺れる瞬間が胸に残ります。
12.ロマン
 やわらかなメロディがロマンチックな情緒を高める一曲。
 日常の風景に夢を重ね、心をゆっくりと昇らせてくれます。
13.白い冬
 デビューシングルとしてオリコン最高14位を記録した名曲。
 雪景色をバックにした切ない恋心を描写し、ふきのとうの代表作に。

「ふたり乗りの電車」と楽曲の深化

1975年の2ndアルバム『ふたり乗りの電車』には、「初夏」や「散歩道」など、ふきのとうらしい柔らかな叙情を感じさせる楽曲が並びました。
この頃からフォークソング全体が社会現象化し、ふきのとうも吉田拓郎井上陽水かぐや姫らと並んで、フォークムーブメントの中心的存在となっていきます。

🎵2ndアルバム 『ふたり乗りの電車』 (1975年6月1日リリース)

A面

1. 散歩道
 3rdシングル「初夏」カップリング曲としても知られるポップなミドルテンポ。
 日常を切り取るような歌詞に、軽やかなグルーヴが印象的です。
2. 冬の雨
 村上実(山木康世ペンネーム)の作詞による、雨の哀愁を描いたフォークナンバー。
 静かな雨音を思わせるアレンジが、味わい深い一曲です。
3. 乾いた秋
 落ち葉舞う寂しさと、移り変わる季節の余韻を感じさせる歌。
 乾いたアコギが優しく胸を締めつけます。
4. 小さな昔
 記憶の中の小さな出来事に焦点を当てた叙情派フォーク。
 丁寧に歌い上げる歌声が、温かい郷愁を呼び起こします。
5. 夜行列車
 ピアノが印象的な夜の旅情歌。
 長い車窓を流れる景色と、寂しさが交差する風景が漂います。
6. 濡れたコートに濡れた雨傘
 雨の駅前で交わす切ない別れを描いたフォーク。
 タイトルそのままの情景描写が胸に響きます。
7. 田舎町
 ノスタルジックな故郷の情景を描いた代表曲。
 田舎道を歩くようなのんびりした佇まいが魅力的です。

B面

8. 初夏
 3rdシングルA面曲。草木が芽吹く初夏の清々しさを歌う名バラード。
 ふきのとうを代表する一曲として広く愛されています。
9. 蝉
 夏の終わりを感じさせる蜩の音とともに始まるインスト/歌混合曲。
 セミの鳴き声が、記憶と郷愁を呼び覚ます名小品です。
10.南風の頃
 2ndシングルA面。軽やかな南風をテーマにした快活なメロディ。
 初々しさと明るさが詰まった、夏の風景が浮かぶフォーク。
11.静かな夜に
 夜の静けさと向き合うしっとりバラード。
 余韻ある空間を大切にした歌唱が味わい深く胸に響きます。
12.雪どけ水
 南風の頃B面、春先の情景を描いた小品。
 雪どけの水音が脳裏に浮かぶような清廉さがあります。
13.5月 (May Song)
 5月の爽やかさと切なさを織り交ぜた叙情派フォーク。
 “初夏”への布石ともいえる、これからの季節を感じさせる楽曲です。

より内省的かつ洗練された表現を描いた3rdアルバム『風待茶房』

1976年の3rdアルバム『風待茶房』では、都会の静けさや人生の機微を詩的に描きながら、ふきのとうの音楽性はより内省的かつ洗練された表現へと進化を遂げました。
「やさしさとして想い出として」や「君は人形」など、叙情的で繊細な楽曲が並び、聴く者の心に静かに染み渡るアルバムとなっています。

🎵3rdアルバム 『風待茶房』 (1976年7月1日リリース)

A面

1. やさしさとして想い出として
 1980年にシングルカットされた名曲の原型となるアルバム・バージョン。
 切なさと温かさを併せ持った歌詞が、深い共感を呼びます。
2. 街はひたすら
 先行シングルとしてもリリースされ、都会の孤独と流れを描き出す。
 淡々とした語り口が心に残る、都会派フォークの傑作です。
3. 作品A
 細坪基佳による実験的要素を含む楽曲。
 ミニマルながら独自の世界観を確立し、聴き手を引き込む一曲です。
4. 君は人形
 切ない恋心を閉鎖的なイメージで表現。
 細やかな感情描写が胸に迫る、叙情派フォークの佳作です。
5. 夢の生活
 山木康世が描く日常への憧れとリアルの狭間。
 穏やかでありながら、どこか切ない空気をまとった一曲です。
6. みぞれの朝
 冬の朝の静けさと冷たさが伝わる楽曲。
 透き通るようなサウンドに包まれた、美しい冬の風景が浮かびます。

B面

7. 遥かなる海の星達
 山木康世によるインストゥルメンタル。
 広がる海と星を思わせる、静けさと情緒に満ちた音世界です。
8. 君によせて
 細坪の真摯な歌声で「あなたへ」を届けるバラード。
 ピュアな恋心がそのまま伝わる、シンプルで美しい作品です。
9. 小春日和
 暖かな日溜まりを思わせるタイトル通りのほっこりソング。
 柔らかな歌声と優しいメロディが心地よい雰囲気を醸し出します。
10.風の船(海よりも深く…)
 先行シングル曲。風に乗って旅立つような情景が胸に響きます。
 浮遊感のあるアレンジが特徴的な、爽やかなフォークナンバーです。
11.運命河
 “河”に例えた運命の流れと葛藤がテーマの深い作品。
 一見シンプルながら、奥深い歌詞が心の奥へ染み入ります。
12.朝もやの中
 朝靄に包まれる町と心象風景を重ねたバラード。
 静かな歌声と曖昧な情景描写が、余韻を残す閉幕を飾ります。

ふきのとうの歴史【後編】
1978年〜解散・現在までの「円熟期・終幕・再会」へ続く・・・・

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