今日6月25日は、カーリー・サイモンの誕生日
カーリー・サイモンという人物
1943年6月25日、アメリカ・ニューヨーク生まれのカーリー・サイモンは、1970年代を象徴するシンガーソングライターの一人です。
父親は出版社「サイモン&シュスター」の共同創業者であり、文化的・知的な環境で育った彼女は、アーティスティックな感性と洗練された都会的な雰囲気を備えていました。パーソナルな感情を繊細に表現するソングライティングが高く評価され、彼女はグラミー賞やアカデミー賞に輝くなど、商業的・芸術的成功の両方を収めた稀有な存在です。

今日の紹介曲:『うつろな愛』をご紹介!
まずはYoutube動画の(公式動画)からどうぞ!!
🎧 公式動画クレジット
🎧 Carly Simon - You're So Vain (2015 Remaster)
📺 YouTube公式音源リンク
📅 公開日:2015年11月20日|
🎼 提供:Rhino/Elektra|© 1972 Elektra Entertainment
♫2行解説
1972年発表の名曲をリマスター収録。キャロル・キング的なピアノ主体のアレンジと、謎に包まれた歌詞が今なお語り継がれる不朽の1曲です。
🎥 公式動画クレジット
🎤 Carly Simon - You're So Vain (Live On The Queen Mary 2)
📺 YouTube公式動画リンク
📅 公開日:2018年9月21日|
🎼 © 2005 Columbia Records / Sony Music Entertainment
📝 2行解説
豪華客船クイーン・メリー2号上で披露された臨場感あるライブ映像。観客との距離感も近く、スタジオ録音とは異なるエネルギーが伝わってきます。
僕がこの曲を初めて聴いたのは・・・♫
僕がこの曲を初めて聴いたのは・・・♫ | |||||||||
小学校 | 中学校 | 高校 | 大学 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | |
曲のリリース | 1972 | ||||||||
聴いた時期 | ● |
僕がこの曲を初めて聴いたのは、リリース当時の中学2年生の時です。
英語は好きな教科でしたが、さすがに歌詞はわかりません。洋楽で気に入るポイントは、ほぼすべてメロディーと演奏力、歌唱力ですね。
当時、英語がわからなくても『You’re So Vain』が僕の心を掴んだのは、やはりそのメロディに理由があります。イントロの低音ピアノが静かに幕を開け、カーリーの声がまるで小さくシャウトを繰り返す感じ。サビで広がるメロディは切なくも力強く、聴く者の感情を揺さぶります。中盤の“ウイーン”という浮遊感のあるペダルスティールギターが、どこか遠くの感情を思い出させてくれるようでした。言葉を超えて心に届く——そんな音楽の本質が、この曲には詰まっていました。中学2年生の僕のファーストインプレッションです。ホントに中学時代に聴いた楽曲の中でも”特別な一曲”です。
1972年という時代:シンガーソングライターの全盛期
1972年という年は、アメリカ社会が大きな変革期にあった時代です。ベトナム戦争の出口が見え始め、カウンターカルチャー※の熱気が収まりつつあった頃、人々の関心は社会全体からより内省的で個人的な表現へと向かっていました。この流れの中で、キャロル・キング『つづれおり』、ジェームス・テイラー、ジョニ・ミッチェルらが次々にヒットを飛ばし、自己の感情や日常を描くシンガーソングライターのスタイルが確立していきました。カーリー・サイモンも、その中心にいた一人です。彼女の楽曲は、他のアーティストのような素朴さや土臭さとは一線を画し、都会的で洗練された美意識に貫かれていました。
※カウンターカルチャー(Counterculture)とは、「既存の社会の価値観や文化、体制に反発・対抗する文化的運動やライフスタイル」のことを指します。日本語では「対抗文化」や「反体制文化」と訳されることもあります。

『うつろな愛』のリリースと衝撃
『You’re So Vain』は1972年11月8日にシングルとして発表され、翌年には全米チャート1位を獲得。収録アルバム『No Secrets』も全米1位を記録する大ヒットとなりました。1973年のグラミー賞では主要3部門にノミネートされ、2004年にはグラミー殿堂賞にも選出されています。
歌詞の世界:皮肉と観察の交錯
この曲の最大の魅力は、何といってもその歌詞にあります。冒頭の「You walked into the party like you were walking onto a yacht(ヨットに乗り込むみたいにパーティーに現れた)」からして、対象となる男性の自己陶酔ぶりが鮮やかに描かれます。

「Your hat strategically dipped below one eye, your scarf it was apricot(帽子は片目に戦略的にかかり、スカーフはアプリコット色)」と続くあたりで、彼の自己演出の巧妙さが皮肉たっぷりに示されます。そして決定打は「You had one eye in the mirror as you watched yourself gavotte(ガヴォットを踊る自分を鏡で見つめていた)」という一節。ここで“うぬぼれ屋”のナルシシズムが完全に浮き彫りになります。
名フレーズ「clouds in my coffee」の解釈
中盤に登場する「I had some dreams, they were clouds in my coffee(私の夢は、コーヒーに浮かぶ雲のようなものだった)」という詩的な表現も注目です。この「clouds」は、友人ビリー・マーニットとの会話から生まれたフレーズで、楽しいはずだった人生に現れた“思わぬ曇り”を象徴しています。期待していた未来が現実によってかき乱されていく切なさと、淡い喪失感が感じられます。

“犯人捜し”の50年史:彼は一体誰?
リリース当時から、この楽曲は「一体誰について歌っているのか?」という問いで世間をにぎわせてきました。カーリー・サイモンは多くの著名人と浮名を流していたこともあり、候補者は尽きません。

最有力候補たち
ウォーレン・ベイティ:2015年、カーリー自身が「2番の歌詞は彼について」と明言。
ミック・ジャガー:この曲のバックボーカルに無償で参加しているという事実が逆に“怪しい”とされてきました。
ジェームス・テイラー:曲の発表5日前にカーリーと結婚した夫。当てつけ説もありますが、根拠には乏しい。
その他:キャット・スティーヴンス、クリス・クリストファーソン、デヴィッド・ゲフィンなども名が挙がります。
カーリー自身の証言
カーリーは「3人の男性を混ぜて書いた」と述べており、そのうち名前を明かしたのはベイティのみ。残る2人は現在も伏せられたままで、その“秘密”がこの楽曲の魅力の一部として残されています。
音作りの妙とジャガーの“毒”
本作のプロデューサーはリチャード・ペリー。ベースはクラウス・フォアマン、ストリングスアレンジはポール・バックマスターと、豪華なメンバーによる録音でした。カーリー自身のピアノに加え、ジャガーのバックボーカルが曲の毒気を増幅させており、歌詞と音の両面から“痛烈な皮肉”を完成させています。

1972年の日本:激動の中で響く洋楽
この年、日本では札幌オリンピック、あさま山荘事件、沖縄返還、日中国交正常化といった歴史的出来事が続発しました。音楽では『喝采』や『女のみち』が大ヒットし、一方で吉田拓郎や井上陽水といったフォーク勢が台頭。カーリー・サイモンの都会的で知的な音楽は、日本の若者にとっても新しい“風”だったはずです。・・・・・これら全て生々しく覚えております(>_<)
結論:「うぬぼれ」は誰の心にもある

『You’re So Vain』は、単なるゴシップソングではなく、「Vanity(虚栄)」という普遍的テーマを見事に描いた一曲です。私たち自身もまた、少なからず誰かの視線を意識し、自分の見せ方を気にしながら生きている。その姿こそが、“うぬぼれ屋”なのかもしれません。カーリー・サイモンがこの曲で描いたのは、決して誰か一人の男ではなく、私たち一人一人が持つ滑稽で愛すべき一面だったのではないでしょうか。
さらにその後:カーリーと『うつろな愛』の現在地
カーリー・サイモンはその後も長く音楽活動を続け、1988年には映画『ワーキング・ガール』の主題歌『Let the River Run』でアカデミー賞、グラミー賞、ゴールデングローブ賞を全て受賞するという快挙を達成します。

『You’re So Vain』は彼女のキャリアにおいて、最もアイコニックな曲であると同時に、時代を象徴する「自己意識の歌」として現在も頻繁に引用され続けています。SNS時代、自己演出と他者評価が一層密接になった現代において、「うぬぼれ」というテーマはかつてないほどリアリティを増しています。
You're So Vain -Carly Simon - :意訳
若かったあの日
あなたはまるで風のように現れた
ヨットを操るかのように
得意げに、その場を支配していた
鏡を見つめるあなたの横顔
誰よりも、自分自身に夢中だった
スカーフと帽子、そしてその笑み
まるで物語の主人公のように
誰もが思った、あなたは完璧だと
だけど私は知っていた
それは見せかけの強さで
心の中は、誰よりも空っぽだった
あなたはきっと
この歌が自分のことだと思ってる
でもそれが、もうすでにあなた自身を
語っているという皮肉よ
夢はコーヒーの泡のように
静かに浮かび、やがて消えた
勝者のつもりで旅立ったあなたは
孤独という影を引き連れていた
You're so vain
そう、あなたはうぬぼれ屋
でもそんなあなたを
私は今も、忘れられない
by Ken
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