【6月12日】は、 ジョン・ウェットン(John Wetton)の誕生日-『 』
ジョン・ウェットン(John Wetton) は、1949年6月12日、イングランド・ダービーシャー州ダービーに生まれたベーシスト/ボーカリスト/作曲家です。
キング・クリムゾンやU.K.など、プログレッシブ・ロックの名門バンドを渡り歩いたのち、1981年にスーパーグループ「Asia」を結成。重厚でメロディアスなベースプレイと、哀愁と力強さを併せ持つボーカルで多くのファンを魅了しました。
代表曲『Heat Of The Moment』は、1982年に大ヒットを記録し、彼の名を世界中に知らしめました。2017年1月31日、長い闘病の末に67歳で逝去。今もなおその声は多くの人の心に響き続けています。
まずはYoutube動画の(公式動画)からどうぞ!!
🎵 クレジット情報
🎥 Asia – Heat Of The Moment (Official Music Video)
📺 出典:YouTube公式チャンネル「Asia」より(動画リンクはこちら)
📅 公開日:2022年11月19日(HDリマスター版として再公開)
🎼 収録作品:デビュー・アルバム『Asia』(1982年)より
🎵 2行解説:
この映像は、アジアの代表曲「Heat Of The Moment」の公式ミュージックビデオです。メロディアスな展開と壮大なコーラスが印象的な、1980年代AOR・プログレハードの名曲です。
🎥 公式ライブ映像
動画タイトル:Asia - Heat Of The Moment (Live In Tokyo)
配信元:Asia 公式YouTubeチャンネル(@Asia)
公開日:2023年2月24日
🎵 2行解説
2007年に東京・厚生年金会館で収録された再結成ライブ映像。ジョン・ウェットンを含むオリジナルメンバーによる貴重な演奏が堪能できます。
僕がこの曲を初めて聴いたのは・・・♫
My Age | 小学校 | 中学校 | 高校 | 大学 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60才~ |
曲のリリース年 | 1982 | ||||||||
僕が聴いた時期 | ● |
僕がこの曲を初めて聴いたのは、リリース直後と思いますが、社会人2年目でもあり、新生活と仕事に明け暮れる毎日でした。
当時の記憶としては、流行していたプログレッシブロックは引き続き聴いていましたが、音楽ズッポリの生活(大学時代)からは抜け出していましたので、中心は仕事で、おまけで遊びもくっついていました。
僕自身はこの曲をプログレだと思って聴いたことはありません。ロックの一種という感覚でしたが、本当にこの曲が好きになったのは、凄腕メンバー達で作ったバンドという触れ込みを聴いてからですね。はぁ、ある意味僕もミーハーでした。
特に重なる思い出はありませんが、1982年の頃は僕もエネルギー全開だったなと思うこの頃です。
『Heat Of The Moment』はなぜロック史の「特異点」となったのか?
― Asiaが起こした80年代のビッグバン
音楽の歴史には、時に「奇跡」としか形容できない瞬間が訪れます。それはジャンルの垣根や世代間の断絶をも超えて、新たな時代の幕開けを告げる一撃です。1982年、スーパーグループ「Asia」が放ったデビュー曲『Heat Of The Moment』は、まさにその象徴でした。

本日6月12日は、その奇跡の中心にいたボーカリスト兼ベーシスト、ジョン・ウェットンの誕生日です。彼の力強くも哀愁を帯びた声は、今なお多くのファンの心に深く刻まれています。
今回は彼の誕生日に際して、『Heat Of The Moment』がなぜ「時代の転換点」になり得たのかを、音楽的構造・歴史背景・日本への影響・そしてジョン・ウェットン自身の軌跡にまで踏み込んで徹底解剖します。
奇跡か、必然か?
プログレッシブ・ロックの巨神たちが起こした「クーデター」
『Heat Of The Moment』の衝撃を理解するには、まずAsiaの成り立ちに注目すべきです。結成メンバーは、まさにプログレッシブ・ロック界の伝説たちでした。
70年代の終焉とプログレ衰退
1970年代、キング・クリムゾン、イエス、ELPといったバンドがクラシックやジャズを融合した複雑で哲学的な楽曲でロックの芸術性を高めていました。しかし、70年代末にパンクとニューウェーブが台頭し、技巧主義を否定。「ダイナソー・ロック」という烙印がプログレに押され、時代はよりシンプルで衝動的な音楽を求め始めました。

Asiaの誕生:神々の帰還
Asiaのメンバー構成は、音楽界における“ドリームチーム”そのものでした。
- ジョン・ウェットン(元キング・クリムゾン〜U.K.):重厚なベースと情感あふれるボーカル
- スティーヴ・ハウ(元イエス):精緻なフレージングとアルペジオ
- カール・パーマー(元ELP):超絶技巧のドラミング
- ジェフ・ダウンズ(元バグルス〜イエス):未来的なシンセサウンドの創造者
これほどのメンバーが一堂に会したことで、ロックファンたちは熱狂しました。(僕はこの情報で、はい、好きになりました!)
プログレの頭脳で作られた「究極のポップソング」
彼らの目指したのは過去の焼き直しではなく、技術と感性を研ぎ澄ました新しいポップの創造でした。
デビュー作『Asia』(邦題:『詠時感〜時へのロマン〜』)は、全米9週連続1位を記録。その一方で、往年のプログレファンからは「裏切り」との批判も。しかしこれは妥協ではなく、むしろ高次元の挑戦だったのです。

『Heat Of The Moment』徹底解剖
― サウンドと歌詞に潜む3分半の魔法
鋼鉄のアンサンブルが生んだ新しい調和
- ジェフ・ダウンズのブラス風シンセが幕開けを告げ、
- ハウのリフは抑制された中に閃きが光り、
- パーマーのドラミングは無駄を削ぎ落とした重厚なビートを刻み、
- ウェットンのベースと歌声は楽曲に命を吹き込む──
彼らの個性はバラバラにならず、完全な調和として結晶化されていたのです。
歌詞が語る、あの瞬間の「後悔」
It was the heat of the moment
Telling me what your heart meant
The heat of the moment showed in your eyes
「熱くなったあの瞬間に、君の本心がようやく見えた」。
その後に訪れる後悔と自己嫌悪──この普遍的な感情が、多くのリスナーの胸を打ったのです。

「真珠をつかみ、龍の翼に乗る」──比喩に込められた飛翔の意味
歌詞の一節にある “You catch a pearl and ride the dragon’s wings” という表現は、単なる幻想的な描写ではありません。これは、**「貴重な何かをつかみ取り、危険を承知で新たな世界へ飛び立つ」**という人生の転機を象徴しています。

“真珠”は若さや純粋な夢、“龍の翼”は未知なる挑戦を示しており、まさに1980年代の幕開けと共に、ウェットン自身もまた音楽界という荒波に再び挑もうとしていたその心象を重ねているようにも感じられます。
「ティーンエイジャーの野望」──誰にでもある心の残像
終盤の “Teenage ambitions, you remember well” という一節は、誰しもが経験した若き日の理想と現実の乖離を突きつけます。
あの頃描いていた夢、憧れていた未来。それは時に曖昧で、今となっては忘れかけているようでいて、ふとした瞬間に記憶の底から浮かび上がってくる──。
ウェットンのこの問いかけは、単なる過去の回顧ではなく、「今、自分は何を見つめて生きているのか」を静かに問いかけているのです。

1982年、世界と日本が震えた日
『詠時感〜時へのロマン〜』が起こした社会現象
MTVの時代と「見る音楽」へのシフト
1981年、アメリカで開局したMTV(Music Television)は、音楽を「耳で聴くもの」から「目で見るもの」へと変貌させました。Asiaはこの新時代の到来に完璧にフィットした存在だったのです。
ロジャー・ディーンが手がけたアルバムジャケットの幻想的アートワークは、音楽のスケール感と完全に一致し、彼らのMVには当時最先端の映像表現が導入されていました。『Heat Of The Moment』の映像もまた、近未来的な演出とレーザー照明が印象的で、まさに「視覚で感じるロック」でした。
日本における受容と熱狂

1982年の日本は、東北・上越新幹線の開業や500円硬貨の登場など、社会が大きく変化する年でした。音楽シーンではアイドル全盛の中、Asiaのような技巧派の洋楽バンドは一種の“異物”として登場したにもかかわらず、驚異的な支持を集めました。
- プログレ系の血統に惹かれる洋楽リスナー
- 歌謡曲に通じる哀愁あるメロディに共感する一般層
- 邦題『詠時感』の秀逸な訳による世界観の補完
これらの要素が重なり、日本ではオリコンチャート上位にランクイン。翌1983年には武道館3日間連続公演(2本目の動画です)を即完売させるなど、Asiaは「一過性」ではない人気を築いたのです。
結論:なぜ『Heat Of The Moment』はロック史の「特異点」なのか
この楽曲は、単なるヒット曲ではなく、いくつもの音楽的・歴史的コンテクストが交差する一点=“奇跡の交差点”でした。

- 70年代プログレの知性と技巧
- 80年代ポップスの洗練されたサウンド
- MTV時代の映像文化との融合
- そしてジョン・ウェットンという希有なボーカリストの存在
これらの要素が高次元で融合し、初めて生まれたのが『Heat Of The Moment』です。この曲は「一瞬の激情」を歌っていますが、それ以上に、「ロック史上もっとも濃密な瞬間」そのものを内包しています。

『Heat Of The Moment』-Asia :意訳
かつては愛し合い、若さのままに笑い合ったふたり。
だが、ある一言がすべてを変えてしまった。
思いもよらぬ言葉が相手を傷つけ、取り返しのつかない距離が生まれる。
その瞬間、彼女の瞳に映っていたのは怒りではなく、深い哀しみだったのかもしれない――
それに気づいたとき、彼はようやく胸の内にある真実と向き合う。
時間が経ち、かつての輝きが色褪せても、
電話の前でひとり立ち尽くす夜が続いても、
ふたりで語り合った夢や野望は、心の奥で今も消えずに残っている。
「すべては、あの瞬間の激情だった」――
後悔と懺悔、そして過去への祈りを乗せて、
彼の声は、あの日の選択と向き合いながら、
もう一度、愛の記憶をたどってゆく。
by Ken
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