■【ボストン】について詳しくはこちらから!➡Wikipedia
僕の勝手なBest10:【Boston】編-第4位は・・・「A Man I’ll Never Be」の深層に迫る ―
【Boston】編-第4位は、『A Man I’ll Never Be(遥かなる想い)』です。言葉にすると魅力が伝わらないかもしれませんが、珠玉のバラードです。
明日紹介予定の第3位の曲と今の今まで悩んでいました。いずれも素晴らしい曲なんですけど。!(^^)!
🎥まずは、注目の映像3本をご紹介!
まず最初の動画は、1978年リリースの「A Man I’ll Never Be」のパフォーマンス映像で、スタジオ録音された音源を使用したプロモーションビデオです。
次の動画は、1977年3月16日にカリフォルニア州ロングビーチ・アリーナで行われたBostonのライブパフォーマンスが音源の動画です。
このこの公演は、デビューアルバム『幻想飛行』(1976年)の成功を受けた「北米」ツアーの一環として開催されました。当日は1日2公演が行われ、この映像はそのうちの1stショウまたは2ndショウのいずれかを収めたものと考えられます。
音源はステレオ・サウンドボード録音で、FM放送番組「King Biscuit Flower Hour」でも放送された高音質な記録として知られています。このライブでは、セカンドアルバム『Don’t Look Back』(1978年)に収録される前の「A Man I’ll Never Be」が演奏されており、スタジオ録音とは異なるライブならではのアレンジや即興的な演奏が特徴です。
映像は当時のライブパフォーマンスを収めたもので、スタジオ録音に映像を組み合わせたプロモーションビデオではありません。トム・シュルツのギターとキーボード、ブラッド・デルプのボーカルが織りなす緻密なサウンドは、スタジオ録音に匹敵する完成度を持ちながらも、ライブならではの臨場感とエネルギーを感じさせます。
この映像は、Bostonのライブパフォーマンスの魅力を伝える貴重な資料であり、ファンにとっては必見の内容となっています。
最後の動画は、アルバム『Don’t Look Back』に収録されているスタジオ録音音源に、映像を組み合わせたプロモーションビデオの形式となっています。映像には、バンドの演奏シーンや関連するビジュアルが含まれており、楽曲の雰囲気やメッセージを視覚的に補完しています。
時代のうねりの中で誕生した“心の叫び”
1970年代後半、アメリカ音楽は転換期を迎えていました。ディスコの熱狂、パンクの登場、プログレッシブロックの深化という三極化の中で、Bostonはそのいずれにも属さず、独自の音楽美学を貫き通しました。バンドの中心人物トム・シュルツは、ギタリストでありながらエンジニアでもあり、徹底したサウンドメイキングで知られます。

1976年のデビューアルバム『Boston』は、史上最も成功したデビュー作のひとつとして語り継がれており、その成功の余波を受けてリリースされたセカンドアルバム『Don’t Look Back』(1978年)には、今日まで語り継がれる珠玉のバラード「A Man I’ll Never Be」が収録されています。
言葉にできない“未完成な男”の告白
音の構造と感情の導線
「A Man I’ll Never Be」は、Bostonの中でも極めて内省的な作品です。バンドの代表作「More Than a Feeling」や「Don’t Look Back」のような高揚感とは異なり、静かに、しかし確かな熱を帯びて始まるこのバラードは、7分近い演奏時間を通して、自己否定と葛藤という感情の深部を丁寧に描いていきます。
静寂に近いギターのアルペジオから始まり、キーボードとドラムが徐々に感情を上乗せしていく構成は、楽曲が内面の波をそのまま反映しているかのようです。サビで放たれる「I’m just a man I’ll never be」というフレーズは、決して声を張り上げることなく、それでも心を打つ説得力を持っています。

歌詞のテーマとメッセージ
本楽曲のテーマは“理想と現実の断絶”。愛する人の期待に応えられない自分を責める語り手は、「あなたの望むような男にはなれない」という自己認識を受け入れながらも、その思いに苦しんでいます。
これは、単なる恋愛の悲哀ではありません。自己実現に失敗した者の孤独、他者への愛と自分への不信が交錯する、深い人間性の記録とも言えるのです。

Bostonというバンドの“内なるエネルギー”
Bostonは、レコード会社からの期待とトム・シュルツの完璧主義の間で常に揺れていたバンドでした。事実、『Don’t Look Back』の制作時にはレーベルからのプレッシャーに追われたシュルツが、「急ぎすぎた」と後に述懐するほど、創作の自由が奪われていたと言われています。
しかし、「A Man I’ll Never Be」に限って言えば、そうした制約の中にあっても、音楽の本質を見失わないバンドの力強さが感じられます。シュルツは、当時まだ珍しかった自宅スタジオを使い、独自の録音機材で徹底的にサウンドを追求しました。その努力が、この楽曲に繊細な感情表現と極めて高い音質をもたらしています。
時代の中で際立つ“孤高のバラード”
流行とは無縁の美学
1978年といえば、ビージーズやドナ・サマーがディスコチャートを席巻し、ヴァン・ヘイレンがハードロックを再定義していた時代。そんな中で「A Man I’ll Never Be」のような静謐で重厚なバラードがシングルカットされ、ビルボードで31位(Hot 100)を記録したのは異例とも言える現象でした。
この曲は、アルバム全体の構成上も特異な存在でした。疾走感のある他の楽曲に対して、時間の流れを止めるかのようなゆったりとしたテンポと、内面に迫るメッセージが際立っていたのです。

技術の粋を尽くしたプロダクション
この時期のBostonは、音響機器の開発にも関わるほど技術志向が強く、レコーディングにおいても独自のアプローチを貫きました。「A Man I’ll Never Be」でも、ボーカル・トラックの重ね方やリバーブの配置に至るまで、スタジオワークが徹底されています。
特に注目すべきは、ブロッド・デルプのヴォーカルです。ただ感傷的に歌うのではなく、常に抑制の効いたトーンを保ちつつ、絶妙な情感を乗せています。リスナーはそこに、無理に訴えかけるのではなく、自然と染み入るような“真実の声”を感じ取るのです。
海を越えて共鳴した“メロディの重み”
日本ではBostonの楽曲が大々的にヒットすることはなかったものの、音楽に敏感な層の間では高い評価を受けていました。特に「A Man I’ll Never Be」のような叙情性に富んだ楽曲は、日本のメロディ志向と相性がよく、80年代以降の日本のロックバンドにも密かな影響を与えたと考えられます。
この楽曲に通底する“未完成さの受容”というテーマは、成熟を志向しながらも常に不完全であるという人間像を映し出しており、文学や映画といった他の表現領域とも共鳴しています。

隠された技術と哲学 ― トム・シュルツの信念
本楽曲の制作過程では、トム・シュルツが開発した「Rockman」というエフェクターが後のBostonサウンドに導入される伏線も見て取れます。まだこの時点では製品化されていませんでしたが、彼の技術者としての才能はすでに随所に現れており、ギターサウンドの持続性や透明感はその萌芽だったと言えるでしょう。
また、Bostonの活動スタイルはツアー中心ではなく、作品の完成度を優先するスタジオ型。これは商業的な成功よりも音楽の純度を守るという哲学に基づいた判断でした。「A Man I’ll Never Be」は、その信念の象徴とも言える楽曲です。
結びにかえて
心の奥底に届く“本当のメッセージ”
「A Man I’ll Never Be」は、恋愛のバラードという枠を超え、誰しもが抱える“なれなかった自分”への痛みと向き合う楽曲です。Bostonのメロディラインとシュルツの探求心、そしてデルプの誠実な歌声が融合し、この楽曲は静かに、しかし確実に私たちの心に残ります。
時代に媚びることなく、自分たちの理想と音楽の本質を追求したBostonの姿勢が結実したこの一曲は、今なお多くの人々の人生の節目で、静かに流れ続けているのです。

『A Man I’ll Never Be 』–Boston
If I said what’s on my mind
You’d turn and walk away
Disappearing way back in your dreams僕がこの胸の想いを告げたら
きみは振り向いて去ってしまうのか
現実よりも夢の世界に消えてしまうのかIt’s so hard to be unkind
So easy just to say
That everything is just the way it seems冷たくすることなんてできそうもない
言ってしまえば こんなに楽そうなのに
“すべて 思う通りにはいかないんだ”ってYou look up at me
And somewhere in your mind you see
A man I’ll never beきみは僕のことを見上げて
どこかきみの心のなかに浮かべてる
僕が決してなれそうにない すごい男のことを
If only I could find a way
I’d feel like I’m the man you believe I am
And it gets harder every day for me
To hide behind this dream you see
A man I’ll never be何か方法が見つけられたら
きみが信じてるような僕になれるのか?
日ごとに辛くなっていくよ
陰に隠れてるのがつらいんだ
きみが夢見ている
「僕がとてもなれそうにない素敵なヤツ」のねI can’t get any stronger
I can’t climb any higher
You’ll never know just how hard I’ve triedこれ以上強くはなれないよ
これ以上高い山には登れない
僕が隠れて努力してきたことなんて
きみには決して伝わらないんだCry a little longer
And hold a little tighter
Emotions can’t be satisfiedちょっとばかし長く泣いてしまったよ
きみを抱きしめるのに力も入ってしまった
でも気持ちを収めることはできないYou look up at me
And somewhere in your mind you see
A man I’ll never beそしてきみはまた僕を見上げてる
「僕が決してなれない凄い男」を
きみの心のどこかに描いて…If only I could find a way
I’d feel like I’m the man you believe I amAnd it gets harder every day for me
To hide behind this dream you see
A man I’ll never be何か方法さえあるのであれば
僕も努力して
きみの思い描く男になれたのかもしれないでも実際にはそれは難しくて
きみといるのが日に日に辛くなる
きみはまだ思い描くのさ
「理想の男」を
僕が決してなれそうにもないスーパーマンを…引用:ブログ 洋楽和訳 Neverending Music 日本語訳 by 音時 より
コメント