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第2位:『なごり雪』
いよいよ残り2曲です。皆さん大体わかりますよね後の2曲!
そう、第2位は『なごり雪』です。
わがふるさと、津久見をイメージして作ったと伊勢正三自身が語っています。(>_<)
『なごり雪』の物語(Short stories)
1. 春の別れ
東京行きの夜行列車が、静かにホームに滑り込んできた。雪がまだわずかに残る駅のホームには、二人の若者が立っていた。
「本当に行っちゃうのか……?」
浩司は言葉を絞り出すように呟いた。目の前に立つ奈津子は、黒いコートの裾を軽く握りしめ、小さく頷いた。
「ごめんね……」
それだけ言うと、奈津子は小さな笑みを浮かべた。別れの寂しさを隠そうとする、いつもの強がりな笑顔だった。浩司は喉の奥が苦しくなるのを感じながら、ポケットの中で固く拳を握った。
「なあ、本当に東京に行かなきゃダメなのか?」
「……うん。ずっと前から決めてたことだから。」
奈津子の声は、どこか春の風のように淡かった。それはまるで、「引き止めないで」と言っているようでもあった。
「東京の大学に行って、そこで夢を叶えたいの。浩司の気持ちは嬉しいけど……私は私の道を行くよ。」
浩司は、何度も聞いたその言葉を、改めて心に刻むように聞いていた。
ふと、空を見上げると、春のはずの空から、小さな雪が舞い降りていた。
「雪だ……」
「本当だね。……なごり雪、だ。」
二人は顔を見合わせた。「なごり雪」──春が来ても消えずに残る最後の雪。その言葉の響きが、まるでこの瞬間の二人の関係を象徴しているように感じられた。
「浩司、ありがとうね。ずっとそばにいてくれて。」
「奈津子……。」
電車の発車のベルが鳴った。奈津子はそっと浩司の手を握り、そしてすぐに離した。
「さよなら。」
そう言うと、奈津子は振り返り、迷いなく列車に乗り込んだ。浩司は動けずに、ただ彼女の背中を見つめていた。
窓際に座った奈津子が、最後にもう一度だけ浩司を見た。そして、小さく微笑んだ。その笑顔が、浩司の胸に焼き付いた。
列車が動き出す。ホームが少しずつ遠ざかる。浩司はただ、立ち尽くしていた。
2. 季節の移ろい
それから数年が経った。
浩司は地元に残り、小さな町の公務員として働いていた。特別なことは何もない、けれど穏やかで、静かな日々。
奈津子のことを、時々思い出す。東京に行って夢を叶えたのだろうか。どこかで元気にしているだろうか。そんなことを考えながら、彼女が去ったあの駅を通るたびに、あの日の雪の匂いを思い出す。
春が近づくと、町には新しい季節の風が吹く。なのに浩司の心のどこかには、まだあの「なごり雪」が残っていた。
3. 再会
ある日、浩司は駅の前のベンチに座り、缶コーヒーを片手にぼんやりと空を眺めていた。春の空は澄んでいて、ほんのりとした暖かさがあった。
「……久しぶり。」
ふいに聞こえた懐かしい声に、浩司は驚いて顔を上げた。
そこに立っていたのは、奈津子だった。
「奈津子……?」
彼女は以前よりも少し大人びた雰囲気をまとっていた。でも、あの頃と変わらない優しい笑顔をしていた。
「突然ごめんね。でも、どうしてもこの町に帰ってきたくて。」
浩司は言葉を失ったまま、ただ奈津子を見つめていた。
「東京ではね、いろいろあったよ。夢を追いかけて、でも現実はそんなに甘くなくて……結局、私は何も成し遂げられなかったのかもしれない。」
奈津子はそう言って、少しだけ笑った。
「でも、不思議と後悔はしてないの。あの時、自分で選んだ道だから。」
浩司は、奈津子の瞳の奥にある微かな寂しさを感じた。でも、それ以上に彼女がこの町に戻ってきたことが、なぜか嬉しかった。
「今は、どこに住んでるんだ?」
「まだ決めてないの。しばらくは実家にいようかなって。」
二人の間に、柔らかな春の風が吹いた。
「あの時と同じように、雪が降ってたらよかったのにな。」
「そしたら、また『なごり雪』って言えたのにね。」
奈津子はくすっと笑った。
「ねえ、浩司。もしよかったら……今度、どこかでご飯でも食べない?」
浩司は、驚きながらも微笑んだ。そして、ゆっくりと頷いた。
「うん。喜んで。」
春の光が、二人の上にそっと降り注いでいた。
かつて別れを告げた駅で、二人は新しい何かを始めようとしていた。
「なごり雪」は、いつか必ず消えてしまうもの。でも、その記憶は、心のどこかでずっと降り続いているのかもしれない。
── 今度こそ、春の光の中で。
かぐや姫の「なごり雪」は、
1974年にリリースされたフォークの名曲で、春の別れと切なさを描いた日本の音楽史に残る一曲です。伊勢正三の詩とメロディが織りなすこの曲は、季節の移ろいと旅立ちの心情を静かに歌い、多くの心を掴みました。この記事では、「俺の勝手なBest10:かぐや姫編」の第2位として、「なごり雪」の魅力を徹底解剖。1970年代の時代背景や僕のささやかな記憶を交えつつ、その普遍的な響きに迫ります。さあ、春の残雪と共に旅立つ情景へ飛び込みましょう。
かぐや姫と『なごり雪』の誕生秘話
「なごり雪」は、1974年3月5日にシングルとしてリリースされました。作詞・作曲は伊勢正三で、かぐや姫の終盤期に生まれた名曲です。この時期、かぐや姫(南こうせつ、伊勢正三、山田パンダ)は「神田川」(1973年)で大ヒットを記録し、フォークブームの頂点にいました。伊勢は、雪が降る春の情景に着想を得て、恋人との別れを重ねてこの曲を書いたとされます。元々はソロ曲として構想されていましたが、かぐや姫のアルバム『三階建の詩』(1974年)に収録され、後にシングル化。オリコン最高6位、売上約60万枚を記録しました。
僕が高校1年生(1974年、16歳)の時に聴いているはずです。ショーやん(伊勢正三)は小中学の先輩ですから、いつもマークしてましたもんね( ;∀;)
春の訪れと別れの季節が重なり、どこか懐かしくもあり切ない楽曲です。
1970年代の時代背景と『なごり雪』の情景
高度成長の終焉と春の旅立ち

1974年、日本は高度経済成長の終わりを迎えていました。1973年のオイルショックで経済が揺らぎ、安定を求めて地方から都会へ旅立つ若者が増えた時代です。春は卒業や就職の季節であり、故郷を離れる切なさが社会に漂っていました。フォークソングは、吉田拓郎や井上陽水と共に、かぐや姫が若者の心情を代弁。「なごり雪」は、雪が残る春の駅での別れを歌い、時代に寄り添ったのです。
かぐや姫の音楽性と伊勢正三の感性
かぐや姫は、南こうせつの温かさ、伊勢正三の詩情、山田パンダの安定感でフォークを築きました。「なごり雪」は伊勢のソロ色が強く、アコースティックギターの素朴さと柔らかな声が際立ちます。「神田川」の都会的な切なさや「赤ちょうちん」の情景とは異なり、季節と別れを静かに描いたこの曲は、かぐや姫の多面性を示しています。
『なごり雪』の音楽的魅力と歌詞の深み
春の切なさを奏でるメロディ
「なごり雪」の魅力は、静かなギターアルペジオから始まり、サビの「君が去ったホームに残り 降り続く雪だけが~」で情感が溢れるメロディにあります。伊勢正三の声は優しくもあり哀愁を帯び、南こうせつと山田パンダのコーラスが控えめに寄り添います。シンプルなアレンジが、別れの情景を際立たせる。以下の音源で、その切なさを味わってください。
歌詞に描かれる別れの情景
伊勢正三の歌詞は、春の残雪と恋人の旅立ちを繊細に描きます。「汽車を待つ君の横で 僕は時計を気にしてる」は、別れの瞬間を。「なごり雪も降る時を知り ふざけすぎた季節の後で、今春が来て君は綺麗になった・・・」は、自然と人の別れが重なる切なさを表現。情景と心情が溶け合い、鮮明な映像を浮かばせます。
- 時間の流れ: 時計を気にしながらも去る恋人。
- 自然の象徴: なごり雪が別れを彩る。
- 普遍性: 誰もが経験する旅立ちの寂しさ。
『なごり雪』の文化的影響とカバー
「なごり雪」はリリース後、多くのアーティストにカバーされました。イルカの1975年版が特に有名で、透明感ある声でオリコン1位(1976年)、売上150万枚超に。伊勢正三も風見鶏やソロで再録し、2002年の映画『雪に願うこと』の主題歌に。他に徳永英明(1996年)、森山直太朗(2006年)らがカバーし、世代を超えて愛されています。僕もイルカ版を聴いた時、原曲とは異なる柔らかさに心を奪われました。イルカもホント歌が上手いです。
僕と『なごり雪』のささやかな記憶
僕が高校生だった1974年。大分(県、津久見市)という(南国という)土地柄「なごり雪」はめったに降りませんでした。しかし、伊勢正三の出身も同じ津久見市。そこをモチーフにしたこの歌は、我々津久見市民、大分県民の誇りでもありましたね。
もちろん、同郷意識は強くありますが、それ以上に楽曲の素晴らしさが光ります。直接的なエピソードは少ないけれど、春の別れのたびに「なごり雪」が頭をよぎったものです。
ライブ映像(伊勢の声が情感たっぷり!)で、かぐや姫の魂を感じてください。
時代を超える『なごり雪』の響き
「なごり雪」は、1970年代のフォークから現代のJ-POPまで影響を与えました。SNSでは「春に聴くと泣ける」と若者に支持され、卒業シーズンに流れる定番曲に。ストリーミングで再生回数を伸ばし、2025年の今も色褪せません。春の残雪が降るたび、この曲が蘇ります。
『なごり雪』の特別な魅力
「なごり雪」は、「赤ちょうちん」(第5位)の情景や「僕の胸でおやすみ」(第4位)の癒しとは異なり、春の別れを静かに描く独特の魅力が。「22才の別れ」(第3位)を上回る第2位に選んだのは、その情景の美しさゆえです。伊勢正三の感性が、季節と人の心を繋ぎます。
まとめ:『なごり雪』が残す春の永遠の響き
「なごり雪」は、かぐや姫のフォーク魂と1970年代の春が詰まった名曲。僕のささやかな記憶を彩り、今も切なさを呼びます。あなたの春の別れの記憶は?コメントで教えてください。次回のBest10もお楽しみに!

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