T. Rexの歴史とマーク・ボランの歩みは、こちらから!
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本文を読む前に、『テレグラム・サム』の重いギターリフ、独特のグルーヴ、そしてT. Rex黄金期の魅力をつかみたい方におすすめです。
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音声を先に聴くことで、『テレグラム・サム』の反復リフの中毒性、少し不穏なグルーヴ、そしてマーク・ボラン独特のヴォーカルの魅力をよりつかみやすくなります。
僕の勝手なBest10【T. Rex編】第2位『テレグラム・サム』
第2位に選んだのは、1972年の『テレグラム・サム(Telegram Sam)』です。
重く刻まれるギターリフ、シンプルなのに身体へまとわりつくようなグルーヴ、そしてマーク・ボラン独特の気怠く妖しいヴォーカル。
『ゲット・イット・オン』や『20センチュリー・ボーイ』と同じように、最初の数秒だけでT. Rexだと分かります。しかし『テレグラム・サム』には、それらとは少し違う、どこか不穏で奇妙な格好良さがあります。
そして、この曲が登場した1972年は、英国で「T. Rextasy」と呼ばれるほどT. Rex人気が爆発していた年でした。
超訳
テレグラム・サム、やっぱり頼れるのは君だ。
奇妙な奴らが次々と現れても、君だけは特別。
世界がどれだけ騒がしく変わっても、
最後に頼りになるのは、いつだって君なのさ。
まずは、YouTube公式音源をお聴きください。
公式音源クレジット
T. Rex「Telegram Sam」
作詞・作曲:マーク・ボラン
プロデュース:トニー・ヴィスコンティ
1972年1月21日シングル発売
収録アルバム:『The Slider』
Provided to YouTube by CRIMSON TECHNOLOGY, Inc.
© Spirit Services Holdings S.A.R.L. o.b.o. SpiritCatalogue Holdings, S.A.R.L.
2行解説
T. Rexにとって通算3曲目の全英No.1となり、2週連続で首位を記録した黄金期の代表曲。
重い反復リフとマーク・ボランの独特なヴォーカルが、「T. Rextasy」と呼ばれた熱狂の時代を鮮やかに伝えています。
『Born to Boogie』のウェンブリー映像で蘇った2016年版
公式映像クレジット
T. Rex「Telegram Sam」
2016 Promo Video / Born To Boogie
映像:1972年3月18日 ロンドン・ウェンブリー Empire Pool
撮影:リンゴ・スター
公開:Demon Music Group
2016年『Born To Boogie』Blu-ray / DVD再発記念プロモーション映像
2行解説
1972年3月18日に行われた2回のウェンブリー公演をリンゴ・スターが撮影した映像から、2016年に新たに編集された公式プロモーション・ビデオ。
T. Rex人気が頂点に達した時期のマーク・ボランを、ステージ上の動きや観客の熱気とともに味わえる貴重な記録です。
1972年――「T. Rextasy」の幕を開けた全英No.1
『テレグラム・サム』は、1972年1月21日に英国でシングルとして発売されました。
チャートには初登場3位で入り、翌週には1位へ上昇。そこから2週連続で全英No.1を記録しました。

『ホット・ラヴ』『ゲット・イット・オン』に続く、T. Rex通算3曲目の全英1位です。
前年の1971年に一気にスターダムへ駆け上がったT. Rexは、この曲によって年が変わっても勢いがまったく衰えていないことを証明しました。
マーク・ボラン自身のレーベルから出た最初のシングル
『テレグラム・サム』には、チャート成績とは別に重要な意味があります。
この曲は、マーク・ボランが新たに立ち上げた「T. Rex Wax Co.」から発売された最初のシングルでした。
つまり、人気絶頂期のボランが、単なるバンドのフロントマンから、自らの名前とブランドで作品を送り出す存在へと進んだ時期でもあります。
その最初の一枚がいきなり全英1位になったことを考えると、当時のボランが英国でどれほど大きな存在だったのかが分かります。
『The Slider』より約半年早く世に出た
『テレグラム・サム』は、後に1972年7月発売のアルバム『The Slider』へ収録されました。
したがって、「アルバムからシングルカットされた曲」ではありません。実際にはシングルが先で、『The Slider』の到来を予告するような役割を果たした一曲です。

『テレグラム・サム』はコペンハーゲンで録音された
この曲の制作過程も興味深いものです。
1971年11月、マーク・ボランはデンマークのコペンハーゲンに滞在していました。
プロデューサーのトニー・ヴィスコンティによれば、ボランは現地で『テレグラム・サム』と『サンダーウィング』を書き上げ、「すぐに録音したい」と連絡してきたそうです。
そこでヴィスコンティが以前利用したことのあるコペンハーゲンのローゼンバーグ・スタジオでセッションが行われました。
短期間で曲を仕上げるT. Rexの録音スタイル
基本録音は1971年11月初旬に行われ、その後ロンドンのトライデント・スタジオでオーバーダビングとミックスが進められました。
ヴィスコンティは当時のT. Rexについて、一曲を何日もかけて作り込むより、演奏の勢いが失われる前に短期間で仕上げることが多かったと振り返っています。
『テレグラム・サム』を聴いたときに感じる、どこか生々しい勢い。その背景には、こうした制作スタイルもあったのでしょう。

単純なリフを、ここまで強くできるのか
『テレグラム・サム』の中心にあるのも、やはりギターリフです。音数は多くありません。複雑なコード進行が続くわけでもありません。
それでも、最初のフレーズが鳴った瞬間に曲の世界が完成します。
短いフレーズを繰り返し、その反復自体を快感へ変えてしまう。これは『ゲット・イット・オン』にも通じる、ボランの大きな武器です。
『ゲット・イット・オン』より少し不穏なグルーヴ
ただし、『テレグラム・サム』のリフには『ゲット・イット・オン』とは違う感触があります。
より重く、少し乾いていて、同じ場所をぐるぐる回り続けるような感覚があります。
その上にボランのヴォーカルが乗ることで、軽快なロックンロールというより、どこか妖しく、少し危険な空気が漂います。
この「単純なのに妙に落ち着かない」感覚が、『テレグラム・サム』ならではの魅力だと思います。
「Telegram Sam」とは誰なのか

タイトルの「Telegram Sam」には、実在人物との関係が指摘されています。一般には、当時マーク・ボランのマネージャーを務めていたトニー・セコンダがモデルだったとされています。
ボランにとってセコンダは、単に仕事を管理する人物ではなく、T. Rexが巨大な成功を手にしていく時期を支えた重要人物でした。
一方で、ボラン自身は後に「ニューヨークで自分のためにちょっとした用事をしてくれた人物について書いた」といった別の説明も残しています。
したがって、「Telegram Sam=トニー・セコンダ」と完全に一つへ固定するより、セコンダを有力なモデルとしながら、ボラン自身が意図的に意味を曖昧にしていたと考える方が自然でしょう。
次々と登場する奇妙な人物たち
歌詞には、テレグラム・サムだけでなく、ジャングル・フェイス・ジェイク、ゴールデン・ノーズ・スリム、パープル・パイ・ピートなど、奇妙な名前を持つ人物が次々と現れます。
さらに「Bobby」はボブ・ディランを指すと解釈されてきました。
しかし、この曲で大切なのは、それぞれの人物の正体をすべて特定することではないと思います。名前そのものの響き、言葉遊び、そしてボランがそれをリズムへ乗せる感覚。
意味の分からない言葉でさえ、ボランが歌えばロックンロールになってしまう。そこに彼のソングライターとしての面白さがあります。
1972年3月18日――ウェンブリーがT. Rex一色になった日
『テレグラム・サム』の勢いを視覚的に伝えてくれるのが、冒頭で紹介した2016年版プロモーション映像です。

使用されているのは、1972年3月18日にロンドンのエンパイア・プール、現在のウェンブリー・アリーナで行われたT. Rexの2公演です。
どちらも完売。そのステージを撮影したのが、ビートルズのリンゴ・スターでした。
これらの映像を中心に制作された映画が、同年公開の『Born to Boogie』です。
2016年には映画のBlu-rayとDVD再発に合わせ、2公演の素材を組み合わせた『テレグラム・サム』の新しい公式プロモーション映像が制作されました。
曲だけを聴いても勢いは十分伝わりますが、ステージ上のボランを見ると、当時なぜ英国中がT. Rexに熱狂したのかがさらに分かりやすくなります。
おまけ――日本のロック界による『テレグラム・サム』
こちらは公式動画ではありませんが、日本のロック・ファンには非常に興味深い映像です。
豪華な日本人ミュージシャンたちが『テレグラム・サム』を演奏する映像で、T. Rexの楽曲が日本のロック・ミュージシャンにも長く愛されてきたことを感じさせます。
公式配信ではないため、記事内への動画埋め込みはせず、下の画像からYouTubeへリンクしています。

後の世代へ残った、単純で強いロックンロール
『テレグラム・サム』は、1972年だけで役割を終えた曲ではありません。
1980年には、英国のバンドBauhausがこの曲をカバーしています。
T. Rexの華やかなグラムロックと、Bauhausの暗く鋭いポストパンク/ゴシック的な音楽性は、一見かなり離れているように見えます。
それでも曲として成立するのは、中心にあるギターリフとリズムの骨格が極めて強いからでしょう。
時代や音色を変えても残るフック。それこそが、ボランの曲が後の世代へ受け継がれてきた理由の一つだと思います。
僕が第2位に選んだ理由
『テレグラム・サム』は、T. Rexというバンドの魅力を非常に濃く感じられる曲です。
複雑な演奏ではない。大きな展開があるわけでもない。それでも、一度リフが始まれば最後まで耳を離せません。
そして、マーク・ボランのヴォーカルが乗った瞬間、それは単なるブギーでも、普通のギター・ロックでもなくなります。
奇妙な人物名、曖昧な歌詞、単純な反復、少し不穏なグルーヴ。

それらが全部まとまって、「これはT. Rexにしか作れない」という音になっています。
僕の勝手なBest10【T. Rex編】第2位は、『テレグラム・サム』。
シンプルなリフを繰り返すだけで、これほど妖しく、これほど格好良く、そしてこれほど忘れられない曲にしてしまう。黄金期のマーク・ボランの才能が、最も鮮明に表れた一曲です。


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