■【レッド・チェッペリン】について、詳しくはこちら・・・・➡ 💛
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文章の流れをもとに構成し、
「Fool in the Rain」が持つ穏やかな距離感を、語りとして辿ります。
読む前に、あるいは読み終えたあとに、ぜひ耳でも味わってみてください。
🇯🇵 日本語ナレーション
🇺🇸 English narration
🎸【レッド・チェッペリン編】第25位は
第25位は『Fool in the Rain』です。
この順位を見て、少し意外に感じる方もいるかもしれません。
Led Zeppelin といえば、巨大な音像、神話的なスケール、圧倒的な演奏力。そうしたイメージから最も遠い場所にあるのが、この曲だからです。
Best25の中では25位に置きましたが、これから紹介していく曲たちへの入口として、最初に取り上げたい一曲でした。

『Fool in the Rain』は、ツェッペリンが「何かを証明しなくても成立する段階」に到達していたことを、過度な主張なしに示している曲です。この穏やかさは、初期や全盛期のツェッペリンを知っているほど、かえって印象に残ります。
超約
この曲の主人公は、誰かとの約束を信じて待ち続けた末に、その約束が果たされなかった現実を受け取ります。時間は過ぎ、期待だけが取り残される。
しかし彼は、相手を責めることも、自分を悲劇の中心に置くこともしません。
起きた出来事を一度受け止め、「自分は状況を読み違えていたのかもしれない」と理解しようとします。
物語の焦点は恋の成否ではなく、その理解に至る過程にあります。
🎥まずはいつものように、Youtubeの公式動画をご覧ください。
🎬 公式動画クレジット(公式音源)
Fool in the Rain(Remaster)
Led Zeppelin
提供:Atlantic Records
収録アルバム:In Through the Out Door(1979)
🎼2行解説
レッド・ツェッペリン後期を代表する一曲で、シャッフル感のある独特のリズムと、どこか都会的で洗練されたアレンジが印象的な楽曲。巨大なロックバンドでありながら、力で押し切らない「余白」と「グルーヴ」を獲得していたことを示す名作です。
曲の基本情報
リリースとアルバム内での位置
『Fool in the Rain』は1979年に発表されたアルバム『In Through the Out Door』 に収録されています。
バンド後期にあたるこの時期、ツェッペリンは初期のような切迫感からは距離を取り、制作の主導権や音楽的関心も分散していました。ただし、そのことが作品の完成度を下げているわけではありません。

この曲から伝わってくるのは、迷いよりも整理された落ち着きです。過去の成功をなぞることも、新しさを過剰に打ち出すこともない。その姿勢が、この曲の自然な佇まいにつながっています。
曲のテーマと世界観
主人公は「行動しない側」にいる
この曲で描かれる主人公は、物語を前に進める存在ではありません。決断によって状況を変えることもなく、ただ時間の経過の中に置かれています。
重要なのは、その状態が否定的に描かれていない点です。期待が外れたこと、勘違いだった可能性を、主人公は過剰に dramatize しません。感情は確かに存在しますが、それが物語を支配することはない。
この距離感が、曲全体に独特の安定感をもたらしています。悲劇になりきらず、かといって軽視もしない。その中間に留まり続ける姿勢が、この曲の核です。

「何も起きなかった時間」を描くという選択
物語の大半は、出来事ではなく「待つ時間」によって構成されています。誰かを待ち、雨の中で時間が過ぎていく。その間、状況は何も好転しません。
しかし、この「起きなかったこと」こそが物語になります。初期のツェッペリンに見られる劇的な展開とは対照的に、この曲は停滞そのものを描写します。そこに、この時期ならではの視点があります。
歌詞の核心部分と解釈
「回収しない」物語としての特異さ
この曲を聴いていて、いつも印象に残るのは、物語がどこにも着地しないことです。
誤解は解かれず、関係は修復されず、状況が劇的に変わることもありません。
多くのロックソングでは、出来事は次の行動へのきっかけになります。
怒りに変わるか、決別へ向かうか、あるいは新しい関係を探しに行く。
けれど『Fool in the Rain』は、そのどれも選びません。

主人公が最終的に手にするのは、「自分は状況を読み違えていたのかもしれない」という、ごく小さな理解だけです。
それは勝利でも、救済でもありません。
ただ、起きたことをそのまま受け取った結果にすぎない。
この“回収しなさ”が、この曲を凡庸な失恋譚から遠ざけています。
なぜ恨みに転ばないのか
もうひとつ特徴的なのは、物語が誰かを責める方向へ進まないことです。
約束が果たされなかったにもかかわらず、相手の不誠実さを告発するような構造にはなっていません。
ここでは、誰が悪かったのか、どちらが正しかったのか、そうした判断が意図的に曖昧にされています。
主人公が引き受けるのは、「そう思い込んでいた自分がいた」という事実だけです。
この距離の取り方が、感情を過剰に膨らませない。結果として、曲全体に軽やかさが残ります。

サウンドが生む距離感
リズムが感情を中和する
この曲の内容だけを文字で追うと、もっと重たい音像を想像しても不思議ではありません。
しかし実際の演奏は、終始よく動き、跳ねるようなリズムを保っています。
このリズムによって、主人公の内面は必要以上に拡大されません。
音楽が感情を煽るのではなく、出来事を少し離れた位置から眺める視点を与えている。
もしこの曲が、重く引きずるようなビートで演奏されていたら、物語は一気に悲劇へ傾いていたでしょう。
そうならなかったのは、音の設計が最初から「深刻になりすぎない」方向を選んでいるからです。
聴き手の時間軸から見たこの曲
大学時代に集中して聴いた経験から
ここは一般論ではなく、あくまで僕自身の体験として書きます。
僕は、ツェッペリンを大学時代の数年間に、かなり集中的に聴きました。そういつもの世田谷区東松原の古いアパートの一室です。
その頃は、音の強度や展開の大きさに自然と意識が向いていたように思います。
曲ごとの違いよりも、「どれだけ圧倒されるか」が重要だった時期です。

そうした聴き方をしていると、『Fool in the Rain』は、どうしても背景に退いてしまう曲でした。
音は軽やかで、展開も穏やか。
一聴して記憶に焼きつくタイプではありません。
時間を置いて見えてきた立ち位置
ところが、時間を置いてあらためて聴き直したとき、この曲はまったく違う位置に現れました。
約束が外れたこと。
期待していた出来事が起きなかったこと。
それでも生活が続いていくという感覚。
そうした経験をいくつか経たあとで聴くと、この曲の穏やかさは、弱さではなく、出来事を引き受けたあとの姿勢として響いてきます。
主張しないからこそ、あとから意味が追いついてくる。
この曲が静かに残る理由は、そこにあるように思います。
Best25に入る理由
なぜ25位なのか
この曲は代表曲ではありません。
それでも、これを外したBest25は、どこか息苦しい。
壮大さや緊張感が続いたあと、最後に空気を入れ替える役割が必要になる。
『Fool in the Rain』は、その役割を過不足なく果たします。

なぜ最初に紹介するのか
Best25の中では25位に置きましたが、これから紹介していく曲たちへの入口として、最初に取り上げたい一曲でした。
この曲から始めることで、「ツェッペリンは強さだけのバンドではない」という前提を、無理なく共有できるからです。
聴き直したくなる一言
若い頃には通り過ぎ、時間を経て、静かに戻ってくる。
Best25の始まりに置くことで、これから続く24曲の聴き方も、ほんの少し変わるはずです。

※本曲はアルバム
『In Through the Out Door』に収録されています。
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