ある日本人が選んだクリスマスソング3曲-2曲目『Last Christmas(Wham!)』をご紹介!


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🎵 日本語ナレーション

再生ボタンを押すと、「ある日本人が選んだクリスマスソング3曲 ― 2曲目『Last Christmas』」について、 この曲にまつわる記憶や感情をたどる、約3分の日本語ナレーションを聴くことができます。

🎶 English narration

Press play to listen to an approximately three-minute English narration of this article: “Three Christmas songs chosen by one Japanese listener — No.2: ‘Last Christmas’.” The narration reflects on memory, loss, and the quiet emotions this song brings each winter.

※ 先にナレーションを聴いてから本文を読むと、曲に込められた感情や、年末特有の空気感がより立体的に感じられます。

🌐 English 🌐 日本語版

僕がクリスマスを感じる音楽の2曲目は……

Wham! の『Last Christmas』です

この曲を初めて聴いたときの場面を、正確には思い出せません。
けれど、「気がついたら、もう知っていた曲」だった、という感覚だけははっきりしています。

12月になると、街のどこかで流れている。
ラジオやテレビ、レコード屋の店内、デパートのBGM。
意識して探さなくても、自然と耳に入ってくる。

それでいて、不思議と耳障りではない。
むしろ、ふと足を止めさせるような力を持った曲でしたね。

超約『Last Christmas』

去年のクリスマス、僕は疑いもせず、心というものをそのまま手渡してしまった。
それは一晩で冷え、行き先を失い、静かに返ってきた。
だから今年は、もう同じ場所で立ち止まらないために、涙に名前をつけないために、
この心を誰に渡すのかを、少し時間をかけて選び直そうと思う。

まずは公式動画をご覧ください。

✅ 公式動画クレジット
Wham! – Last Christmas (Official Video)
アーティスト:Wham!
公式YouTubeチャンネル:WHAM!(認証済み)
初公開:2009年10月26日
※ 楽曲は1984年リリース

💬 2行解説
1984年に発表されたWham!最大のクリスマス・ヒットで、切ない失恋の記憶を雪景色の映像とともに描いた名作。毎年クリスマスシーズンに世界中で再生され続け、世代を超えて愛される“永遠の定番曲”となっています

クリスマスソングなのに、祝っていない

『Last Christmas』は、歌詞をちゃんと読めば読むほど、少し奇妙なクリスマスソングだと気づきます。
この曲は、「楽しかったクリスマス」を歌っていません。
冒頭で語られるのは、こんな内容です。

Last Christmas, I gave you my heart
But the very next day you gave it away

去年のクリスマス、心を捧げた。
けれど、次の日には、それを手放されてしまった。

いきなり「失恋の話」から始まるクリスマスソング。
しかも、その語り口は、感情を爆発させるようなものではなく、どこか淡々としていて、静かです。

怒っているわけでもない。恨んでいるわけでもない。
ただ、「そういうことがあった」と事実を並べているだけのように聞こえます。

「今年はもう泣かないために」

続くフレーズも印象的です。

This year, to save me from tears
I’ll give it to someone special

今年は、もう泣かないために。
だから、心をあげる相手を選ぶ。

この一文には、失恋の痛みと同時に、ほんのわずかな前向きさが含まれています。
完全に立ち直ったわけではない。でも、同じ失敗は繰り返したくない。
その慎重さ、少し臆病になった感じが、とても人間的で、リアルです。


距離を取りながら、まだ惹かれている

歌詞はさらに続きます。

Once bitten and twice shy
I keep my distance, but you still catch my eye

一度傷ついて、臆病になった。
距離は保っている。
それでも、あなたから目を離せない。

この部分を読むと、この曲が単なる「終わった恋の歌」ではないことが分かります。気持ちは、まだ完全には終わっていない。理性では分かっていても、感情は追いついていない。

「近づきたい」と「近づきたくない」が、同時に存在している状態。
この曖昧さこそが、『Last Christmas』の核心なのだと思います。


包装された「I love you」

個人的に、とても印象に残っている一節があります。

I wrapped it up and sent it
With a note saying “I love you”

心を包んで、送った。「愛してる」と書いたメモを添えて。

ここには、どこか不器用で、少しだけ痛々しい優しさがあります。

言葉にしてしまったからこそ、あとには引けなかった。一生懸命だったからこそ、傷も深くなった。

そういう恋をした経験がある人なら、このフレーズに、思わず立ち止まってしまうかもしれません。


「また騙される」と分かっているから

そして、この前半部の締めくくりは、とても冷静です。

But if you kissed me now
I know you’d fool me again

もし今キスされたら、きっと、また騙される。
これは、強がりではありません。相手を断罪する言葉でもない。

「自分は、そういう人間だ」と、静かに認めているだけの言葉です。だからこそ、この曲は、聴く人の胸に長く残るのだと思います。


混み合った部屋の中で

後半の歌詞では、視点が少しだけ外側へ移ります。
場面は、人であふれた部屋。友人たちがいて、賑やかな空気があるのに、語り手はそこにうまく馴染めていません。

あの恋の相手も、同じ空間にいる。
だから語り手は、明るい場所に身を置きながら、心だけはどこかに隠している。

人に囲まれているのに孤独で、笑っているのに落ち着かない。
年末の夜にふっと訪れる、あの感覚に近いです。

この曲が祝祭を描かないのに、季節に似合ってしまうのは、たぶんここです。
クリスマスはあたたかいだけじゃない。
にぎやかさの中で、自分の寂しさが輪郭を持ってしまう夜でもある。


支え合っていたはずの関係

後半で強くなるのは、振り返りです。

語り手は、相手のことを「頼れる人」だと思っていた。
でも時間が経って冷静になると、別の見え方が浮かび上がってきます。

自分は本当に大切にされていたのか。
それとも、都合のいい役割──ただ話を聞き、涙を受け止めるための存在──になっていただけなのか。

恋が終わったあとに訪れる、あの過剰に冷静な自己分析。
楽しかった場面よりも、引っかかっていた瞬間のほうが、あとから鮮明になる。

この曲は、その「遅れて効いてくる痛み」を、騒がずに描いています。


仮面をかぶった恋人

ここで描かれる相手は、単純な悪者ではありません。

魅力もあった。
情熱も、本物だったと思いたくなるだけの何かが、確かにあった。

それでも結果として、語り手の心は深く傷ついてしまった。
だからこの曲は、復讐にも断罪にも向かわず、「分かっていたのに信じてしまった」という痛みだけを残します。

恋の一番つらいところは、相手の悪意よりも、自分の期待がほどけていく瞬間なのかもしれません。
この曲の痛みは、その種類の痛みに近い。


もう二度と、同じ場所には戻らない

後半には、はっきりとした決意が現れます。

もう次へ進んだ。同じ結末は繰り返さない。

ただしそれは、胸を張る勝利宣言というより、自分に言い聞かせる言葉のように聞こえます。
強がりでも弱さでもなく、前に進むための言葉。

失った経験は、次の選び方を慎重にする。それは、少し大人になるということなのかもしれません。


それでも繰り返されるサビ

曲の終盤、同じフレーズが何度も戻ってきます。

でも、意味合いは少しずつ変わっていく。
最初は傷だった過去が、最後には「過去として置けるもの」になっている。
出来事は消えない。けれど、抱え方は変えられる。

この曲が聴き手に残すのは、派手な感動ではなく、その静かな変化です。

「去年は、そうだった」。
ただそれだけの言葉が、時間の力で、前を向く言葉になる。


日本人にとっての「Last Christmas」

日本で育った僕にとって、この曲は恋愛の歌であると同時に、年末の歌でもあります。

一年を振り返って、少しだけ後悔を思い出し、それでも「来年はもう少しうまくやろう」と思う。
その気分に、静かに寄り添ってくれる。

大げさな決意じゃない。
人生が劇的に変わるわけでもない。

ただ、次は同じ失敗をしないようにしよう。
その控えめな前進が、冬の空気とよく合うんだと思います。

毎年のように街のどこかで流れていて、それなのに、うるさくない。
聴くたびに、自分の一年の感情に触れてしまう。

だからこの曲は、何度聴いても「去年の歌」にはならないのだと思います。
それでも、心はどこにも落ち着いていない。

年末という季節には、こういう感覚がよく似合います。
忘年会や集まり、賑やかな場所。
笑ってはいるけれど、ふとした瞬間に、
どうしようもなく一人になる。

『Last Christmas』は、その「人混みの中の孤独」を、とても静かに描いています。

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