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➡🌈 優しさで世界を変えた兄妹 ― カーペンターズという奇跡💛
🎸【カーペンターズ編】第10位『Hurting Each Other』です。
今日から、いよいよ後半に入ります。
第10位は『Hurting Each Other』です。
この曲は、カーペンターズが“成熟期”に入ろうとする時期に生まれた作品で、当時の彼らが持つ繊細さと力強さ、その両面がはっきりと刻まれています。甘いラブソングが多かった彼らのレパートリーの中でも、本作はとりわけ感情の揺れをストレートに描いた楽曲で、恋愛の摩擦やすれ違いにフォーカスしているのが特徴です。音は優しくても、メッセージは鋭い。そんなギャップがこの曲の深みを作り出しています。
テンポはゆったりしながらも、サビで一気に厚みを増すサウンド構造が印象的で、聴いているうちに胸の奥を刺激するような高ぶりが広がっていきます。曲全体に漂う“説明できない苦しさ”が、誰にとっても思い当たる経験と重なるため、この曲は時代を越えて聴かれ続けているのだと思います。

超約
この曲に描かれているのは、互いを深く大切に思っているのに、気持ちが食い違い、望まない衝突を繰り返す二人の姿です。離れたいわけではなく、それなのにどうして傷つけ合ってしまうのか、その理由が見つけられずに戸惑っている状況が中心にあります。感情の根っこには確かな愛情があるのに、言葉の選び方やちょっとした反応のズレが心の負担となり、二人はそのたびに関係の立て直しを模索しています。物語は、この迷いと葛藤を丁寧に追いかけながら、二人が向き合おうとする姿を静かに描いています。
🎥まずはいつものように、Youtubeの公式動画をご覧ください。
🎬 公式動画クレジット(公式音源)
Carpenters – Hurting Each Other(1972)**
提供:Carpenters Official(YouTube公式チャンネル)
【2行解説】
緻密なアレンジとカレンの深いボーカルが交差し、関係のすれ違いを鮮明に描く一曲です。
サビで一気に感情が高まり、カーペンターズの表現力の幅を実感できる代表的な名演です。
曲の基本情報
リリース/収録アルバム
『Hurting Each Other』は、1972年1月にシングルとしてリリースされました。収録アルバムは同年の名盤『A Song for You』。このアルバムは彼らのキャリアでも屈指の完成度を誇っており、全体を通して感情表現が豊かで、ポップスとしての響きと深さが両立しています。
実は本曲はカーペンターズのオリジナルではなく、1960年代に複数の歌手が歌ってきた楽曲のカバーです。しかし、カーペンターズ版は原曲の雰囲気を残しつつ、よりドラマティックに構築されており、世界的な“決定版”となりました。

彼らのアレンジは、ストリングスの入り方やコーラスの重ね方が非常に緻密で、シンプルなメロディを豊かな音像へと押し上げています。カレンのボーカルを中心に組み立てることで、歌の中にある“痛み”を押し付けすぎず、しかし明確に伝えるバランスに仕上げている点が特徴的です。
チャートと時代背景
Billboard Hot 100では最高2位を記録し、Adult Contemporaryチャートでは1位を獲得しました。
1970年代初頭のアメリカは、ソフトロックやアダルト・コンテンポラリーの黄金期。落ち着いたメロディと明瞭な歌声を求める流れが強まっており、カーペンターズはまさにその中心にいました。

当時の音楽シーンは、フォークからロックへ、さらにバラードの高度化へと舵を切り始めていた時期です。そんな中で『Hurting Each Other』は、恋愛の“綺麗ではない部分”を真正面から描きつつも、メロディはあくまで美しく保つというスタイルで、幅広い層から支持を得ました。カーペンターズの多面性がリスナーに強く印象づけられた作品であり、彼らの代表曲の中でも特に人気が高い理由がここにあります。
曲のテーマと世界観
主人公の背景
この曲に登場する主人公は一人ではなく、“二人の関係そのもの”が中心に据えられています。二人は互いに愛情を持ちながらも、何かが噛み合わず、言葉少ななまま心の距離が広がってしまう。相手を責めたいわけではない。でも、どうしても傷つけてしまう。こうしたリアルな感情が、物語の核になっています。

恋愛ソングの多くは片方の視点から語られますが、この曲は二人の関係全体を俯瞰し、どちらも悪くないのに状況が悪化してしまう“不可解なもどかしさ”を描いています。この視点が物語に独特の深みを与え、聴き手にも「こんな経験があったかもしれない」と思わせる説得力を生んでいます。
物語の導入
楽曲の序盤では、二人の間に明確な問題があるわけではなく、原因が掴めないまま衝突してしまっている状況が示されます。
二人の気持ちは確かであるにもかかわらず、その確かさと衝突の繰り返しが矛盾となって重くのしかかってくる。この“言葉にしづらい負の流れ”が物語の導入で描かれ、リスナーは自然と二人の行方が気になり始めます。
サビに向かって感情が高まり、二人が抱える痛みや困惑が徐々に輪郭を帯びてくる。そこには押しつけがましい表現はなく、ただ事実を受け止めるような姿勢で物語が進むのが特徴です。こうした構造が、曲全体の深い味わいを支えています。
歌詞の核心部分と解釈
象徴的なフレーズ
『Hurting Each Other』は、表面的にはシンプルな言葉を繰り返す構成ですが、その反復には“関係が崩れていく感覚”が込められています。中でも “Hurting each other”(互いを傷つけている)という短い言葉は、曲全体を支える中心軸になっています。
このフレーズは、悲壮感を煽るためではなく、「どうしてこうなるのか」という疑問を投げかける役割を持っています。主人公たちは傷つけようとしているわけではなく、むしろ愛情を前提にしているのに、なぜか行き違いが生じてしまう。そこで立ち上がる“説明できない苦しさ”が、この曲をただの悲しいラブソングから一段深い物語へ押し上げています。

また、フレーズの反復は、頭では理解しているのに行動が変わらない、そんな人間の弱さを象徴しているとも言えます。行動と感情が一致しないときに生まれる摩擦を、カレンの声が淡々と、しかし確実な体温をもって描き出しているのです。
主人公の心理変化
物語が進むにつれて、主人公たちは衝突そのものよりも、繰り返してしまう理由を探す方向へ意識が向かっていきます。
前半では「どうしてこうなるのか」という戸惑いが中心でしたが、後半になると「このままを続けてはいけない」という内省が生まれています。二人とも離れる意思がないことは明らかで、その一方で行き違いを自然に止める方法がわからないという葛藤が静かに積み重なっていきます。

この心理の移り変わりに音楽がしっかり寄り添っており、曲後半のサビにかけてコーラスが増え、ストリングスが前に出てくることで、感情の揺れが音と一緒に増幅していきます。
特にカレンの声は、説明的になることなく、抑えた表現力でこの状況を描いているのが特徴です。声の厚塊ではなく、発音の端々に“ためらい”のニュアンスが漂い、主人公の迷いがそのまま音として伝わります。
サウンド/歌唱の魅力
アレンジの特徴
『Hurting Each Other』の魅力の一つが、静と動の切り替えの鮮明さです。
イントロからAメロにかけてはピアノとストリングスが比較的控えめに配置され、歌の内容を見つめる“静かな時間”が続きます。そこからサビに入ると、コーラスが一気に広がり、感情の密度が増していきます。
リチャード・カーペンターの編曲は、決して音を埋めるためではなく、感情の起伏に合わせて楽器を配置しているのが特徴です。
ストリングスが前に出る部分と、ボーカルを最優先に置く部分の使い分けが巧みで、曲がもつテーマ性をより大きく感じさせます。

特にサビでは、
“痛み”が押しつけになる寸前のボーダーを絶妙に保つサウンドメイク
が光っています。これにより、曲が過剰に悲劇的になることを避け、あくまで“現実的な感情”として聴き手に届くバランスが保たれています。
カレンのボーカルの魅力
本曲のカレンの歌唱は、代表曲の中でもかなり感情の揺れが濃い部類に入ります。
特に“hurting”という単語で語尾にわずかな震えを残す歌い方が、主人公の弱さを象徴する大きなポイントになっています。
張り上げるわけではなく、息をコントロールしながら“言葉そのものの重さ”で感情を伝えているため、歌が終わった後に余った感情が胸に残るような感覚があります。

さらに、コーラスが重なるサビ部分での声の広がりも秀逸です。カレンの声が複数重なることなく、自然な厚みを生み出すことで、二人の感情の混ざり合いが音として伝わってきます。
この曲はカレンの声質が生む“包み込むような落ち着き”だけでなく、感情の揺れも確かに残す、珍しいタイプの歌唱を楽しめる一曲です。
Best10に入る理由
他曲との差別化
『Hurting Each Other』が第10位に入った最大の理由は、
「カーペンターズが持つ“優しさ”とは別の側面を鮮明に描いているから」
です。
彼らの多くの楽曲は穏やかさや温かさが軸になっていますが、この曲は関係の摩擦や痛みの部分に焦点を当てており、心理描写の密度が高い。
「誰が悪いわけでもないのにうまくいかない」という、人間関係の中で誰もが経験する感情を掘り下げている点が大きな魅力です。

さらに、メロディの美しさだけでなく、曲全体のドラマ性が強く、聴き返すたびに主人公たちの表情が変わるように感じられます。
その一方で、大仰な悲しみではなく、現実に近い感情の温度で描かれているため、聴き疲れしない普遍性も備えています。
読者が聴き直したくなる一言
この曲を改めて聴くと、カレンが言葉に乗せる“ためらい”が、メロディの陰影を丁寧に作っていることに気づきます。
サビで重なるコーラスは、感情の高ぶりを大げさに見せるのではなく、二人の関係を支えようとする“音の支柱”のように響きます。
聴き終えたあと、静かに心の奥に重さを残す。この感覚こそが、この曲を第10位に選んだ最大の理由です。


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