ケイティ・ペリーの誕生日に『Roar』をご紹介!
1984年10月25日、アメリカ・カリフォルニア州サンタバーバラに生まれたケイティ・ペリー(本名:キャスリン・エリザベス・ハドソン)は、現代ポップスを象徴するアーティストのひとりです。
牧師の家庭に育ち、幼い頃から教会で歌を学んだ彼女は、音楽に“祈りと希望”のエッセンスを自然に取り入れてきました。

2008年のヒット曲『I Kissed a Girl』で一躍スターダムにのし上がると、その後『Teenage Dream』『Firework』『California Gurls』など、明るさと強さを両立させた名曲を次々に発表しました。
エネルギッシュなパフォーマンスやカラフルな世界観で知られるケイティ・ペリーですが、その根底には常に“自分らしさを貫く勇気”というテーマがあります。
2013年の代表作『Roar』は、まさにその理念を体現した作品であり、彼女のキャリアにおける転換点となった楽曲です。
今回は、彼女の誕生日に合わせてこの楽曲をじっくりと掘り下げていきます。
まずはYoutubeの公式動画をご覧ください。
✅ 公式動画クレジット
Katy Perry – “Roar” (Official Music Video)
© 2013 Capitol Records / Katy Perry Official YouTube Channel
🎬 解説(2行)
ジャングルを舞台に“自立と強さ”をテーマに描いた、ケイティ・ペリーの代表的アンセム。
アルバム『PRISM』(2013年)からの先行シングルで、世界的ヒットを記録した公式MVです。
✅ 公式動画クレジット Katy Perry – “Roar” | Coronation Concert at Windsor Castle – BBC © BBC (Official YouTube Channel) / Published on May 8, 2023 🎬 解説(2行) 2023年5月にウィンザー城で開催された国王チャールズ3世の戴冠記念コンサートでのパフォーマンス映像。ケイティ・ペリーが「Roar」を堂々と歌い上げ、壮大な照明と観客の合唱が感動を呼んだBBC公式映像です。
僕がこの曲を初めて聴いたのは
| My Age | 小学校 | 中学校 | 高校 | 大学 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60才~ |
| 曲のリリース年 | 2013 | ||||||||
| 僕が聴いた時期 | ● |
この曲がリリースされたのが2013年です。
そのころ僕は、仕事で福岡市に単身赴任していました。仕事の疲れや、単身生活での食生活の乱れ等もあり、少し精神的な変化をきたしていたころです。
これではいかんと、スイミングスクールに通い始めたころ、スクール内で流れていたのがこの曲です。
そこで、何度も聴いているうちに気持ちも軽くなったのを覚えています。
当時の僕のエネルギードリンクのような楽曲でした。MVの出来もよく、当時何度聞いたかわかりません。いまでもこのユニークなMVには感心します。ぜひ皆さんも、今回紹介していますのでご覧になってください。
『Roar』というタイトルに込められた意味
「吠える」という行為の象徴性
『Roar』の意味は単なる「叫び」ではありません。
それは、自分の声を取り戻し、再び歩き出すための“宣言”です。
ケイティ・ペリーはこの曲を、離婚やプレッシャーを乗り越える過程で書き上げました。
Aメロの「I used to bite my tongue and hold my breath(舌を噛み、息をひそめていた)」という一節は、過去の彼女をそのまま映しています。
そこから「I got the eye of the tiger(私は虎の目を持っている)」へと進む構成は、沈黙から覚醒へというストーリーそのものです。
この変化を、言葉だけでなくメロディとビートで表現しているのが『Roar』の魅力です。

リリース当時の背景とポップシーンの流れ
機械音の時代に“人間の声”を取り戻した曲
2013年当時、ポップシーンはEDM(Electronic Dance Music(エレクトロニック・ダンス・ミュージック))の最盛期にありました。
多くのヒット曲が電子的なサウンドと加工ボーカルで構成されていた中で、ケイティ・ペリーはあえて“生の声”を中心に据えたポップスを発表しました。
『Roar』のサウンドは、クラップ(手拍子)やドラムなどの有機的な音で構成されており、彼女の歌声が曲の中心にあります。
その結果、聴く人が「一緒に声を出したい」と感じる自然なグルーヴが生まれました。
人工的なビートが主流の時代に“声のリアリティ”を取り戻したことこそ、この曲が時代を超えた理由です。
メロディと構成 ― 感情の流れを設計した音
抑圧から解放へと向かう構造
『Roar』のメロディは、静かな独白から始まり、次第に言葉が確信へと変わっていくように設計されています。冒頭では、息を抑えたような声で自分の殻を探るように歌い、続くパートでその声がわずかに前へ踏み出します。
そしてサビでは、まるで胸の奥に溜めていた空気を一気に放つように、声が空間全体を満たします。
音の高低よりも、「ためて、放つ」という呼吸のリズムによって感情を描く構成です。

この変化は単なる音量の上昇ではなく、“沈黙の破壊”そのものを音楽にしたものです。
そのため聴き手は、メロディを追ううちに自然と呼吸を合わせ、まるで自分自身が声を上げているような感覚を得るのです。
この構成はライブでも非常に効果的で、観客が自然に手を叩き、声を上げるリズムを作ります。
ペリーはこの“身体が反応する設計”を非常に重視しており、彼女のポップスには常に「感情を動かす仕掛け」が隠されています。
歌詞の世界とメッセージ
自分をヒーローにするための歌
『Roar』の歌詞は、強さを誇示するものではありません。
それは“弱さを受け入れた上での強さ”を描いています。
「I went from zero, to my own hero(私はゼロから自分自身のヒーローになった)」というラインは、他人の評価に頼らず、自分を支える力を信じるというメッセージです。
また、「Now I’m floatin’ like a butterfly, stinging like a bee」(蝶のように舞い、蜂のように刺す)というフレーズは、ボクシングの名言を引用しています。――つまり、優しさと力の両立を表しています。
ケイティ・ペリーが掲げる“強さの定義”は、他人を押しのけることではなく、「ありのままの自分を受け入れる勇気」なのです。

自然モチーフの象徴性
虎・雷・蜂――それぞれの意味
歌詞に登場する自然のモチーフは、すべて感情の段階を象徴しています。
虎(tiger)は勇気、雷(thunder)は衝動、蜂(bee)は痛みと努力の象徴です。
それぞれが「内に潜む本能」を呼び覚ます存在として機能しています。

ペリーはこれらを単なる比喩ではなく、**“人間の原始的な強さ”**として配置しました。
『Roar』が聴く人の胸に残るのは、言葉が抽象的だからではなく、自然のイメージによって“心の実感”に変わっているからです。
“声を上げる”という行為の進化
個人の叫びから共鳴の声へ
『Roar』が世界的なアンセムとなった理由は、ケイティ・ペリーが自分の経験を誰にでも当てはまるメッセージに変換したことにあります。
サビの「Cause I am a champion, and you’re gonna hear me roar」は、自分だけでなく、聴く人それぞれの「私」に響く構造です。
それは「自分もまたチャンピオンである」と信じさせてくれる一文です。

SNSが急速に広がり、人々が“他者の視線”を常に意識するようになった2010年代前半。
この曲は「自分の価値を他人の声ではなく、自分の声で証明する」ための宣言として機能しました。
だからこそ、10年経った今もこの曲は共感を呼び続けています。
ライブで完成する“Roar”
観客と一体になる音楽
ライブで『Roar』が始まると、観客の大合唱が会場を包みます。
ケイティ・ペリーはサビでマイクを客席に向け、**「声を共有する空間」**を作り出します。
彼女のライブは単なるパフォーマンスではなく、“一緒に叫ぶことで生まれる解放”を体験する時間なのです。
ステージではジャングルを思わせる緑や金色の照明が使われ、衣装も「自然と生命力」をモチーフにしています。ペリーがステージを裸足で歩くシーンは、作り物の世界から抜け出して**「素の自分として立つ」**象徴です。その姿が『Roar』という曲のテーマを視覚的に完成させています。
メロディ・コード・リズムの設計
音で描く“立ち上がる力”
『Roar』の音づくりは、シンプルですがとても緻密です。
基本となるコード(和音)はポップスでよく使われる王道パターンですが、演奏にはわずかな“ゆらぎ”が残されています。
完全に機械的ではなく、手拍子やドラムの一打ごとに人の体温を感じるようなリズムになっているのです。

テンポは速すぎず遅すぎず、聴いていて体が自然に動き出すような中速テンポです。
特に印象的なのは、サビの直前に一瞬だけ音が止まる瞬間。
まるで深呼吸をしてから思い切り声を出すように、その“間”のあとで音が一気に広がります。
それが『Roar』のタイトルにも通じる、「自分の声を解き放つ瞬間」を音で表現しているのです。
理屈ではなく感覚で響く曲――だからこそ、聴くたびに思わず拳を握りたくなるような力を感じるのでしょう。
ミュージックビデオが描く“覚醒の寓話”
ジャングルの物語に込められた哲学
公式ミュージックビデオ(最初の紹介動画です)では、飛行機事故でジャングルに取り残された女性が主人公です。
最初は怯えながら森をさまよう彼女が、動物たちと向き合いながら生きる力を取り戻していきます。
そして最後には虎と対峙し、恐れずに吠える――まさに“自己再生”を映像化したシーンです。

この物語の核心は、**「支配ではなく共存」**にあります。
ケイティ・ペリーは、恐怖に打ち勝つのではなく受け入れることで強くなるという哲学を描いています。
ジャングルという舞台は、華やかなステージとは対照的に、彼女が“素の自分”に戻る象徴的な空間です。
自然と共に生きる姿が、『Roar』という曲に込められた本来のメッセージを体現しています。
現代に生き続ける『Roar』
SNS時代を超えた普遍性
リリースから10年以上経った現在でも、『Roar』は世界中の卒業式やスポーツイベントで流れ続けています。
SNSの動画では、挑戦や再出発の場面にこの曲を使う若者も多く見られます。
それはこの曲が、「勝つための強さ」ではなく、「もう一度立ち上がる勇気」を歌っているからです。
結び ― 「Hear Me Roar」のその先へ
『Roar』は、2010年代ポップ史を象徴する「自己肯定の歌」です。
ペリーが言う“チャンピオン”とは、他人を倒した勝者ではなく、自分を信じ直した人のことです。
彼女はこの曲で、痛みを包み隠さず、明るいポップに変換する力を証明しました。
彼女の声は、誰かの代わりに叫ぶためのものではなく、
「あなたも自分の声で叫べる」というメッセージです。
その声が今日も世界のどこかで、静かに、しかし確かに響き続けています。


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