🎸僕の勝手なBest20【エリック・クラプトン編】- 第13位『Bad Love』をご紹介!

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エリック・クラプトン物語 ― 栄光と試練のギターレジェンド!

🎸【エリック・クラプトン編】第13位『Bad Love』です。

第13位は、アップテンポのこの曲です。なんか調子が良い曲です!つい「Bad Love」のところで、この単語が口から出てきます!

超約

過去のつらい恋愛を乗り越え、ようやく本物の愛に出会った喜びを歌う。
孤独な日々を歩んできた主人公が、愛によって強く、幸せな自分を取り戻す物語。
「もう悪い愛(Bad Love)はたくさんだ」と、再生と誇りを胸に誓う決意の歌。

🎥まずはいつものように、Youtubeの公式音源をご覧ください。

🎬 公式動画クレジット(公式音源)
Provided to YouTube by The Orchard Enterprises
「Bad Love」 · Eric Clapton · Mick Jones
収録アルバム:Journeyman
© 1989 EPC Enterprises, LLP. Under exclusive license to Surfdog Records.
💡 2行解説
クラプトンがフォリナーのミック・ジョーンズと共作した1989年のロックナンバー。
ギターリフとヴォーカルが一体となった、円熟期の力強いサウンドを象徴する名曲です。

リリース背景と時代の転換点

1989年、エリック・クラプトンが放ったアルバム『Journeyman』その中で最も勢いと開放感に満ちたロックナンバーが『Bad Love』です。
タイトルの“Bad”を「悪い」と訳すのは簡単ですが、ここでは“苦い愛”“報われなかった恋”と捉えた方が本質に近いでしょう。
この曲は、過去の痛みを引きずりながらも前を向くための決意表明。
クラプトンが“再び自分を取り戻す”瞬間を象徴する一曲です。

70〜80年代、彼はアルコール依存や人間関係の崩壊に苦しみ、創作にも迷いを抱えていました。
その中で生まれた『Journeyman』は、まさに再生の記録。
クラプトン自身が「このアルバムでやっと前を向けた」と語っており、その中心に置かれたのがこの『Bad Love』でした。


『Journeyman』の中での位置づけ

『Bad Love』は、アルバムの中で最も“生き返ったクラプトン”を感じられる曲です。
『Pretending』や『Running on Faith』など、彼の内面を静かに見つめる曲が多いなか、
この『Bad Love』だけは“立ち上がる力”を持っています。
それはギターではなく、声で語る強さです。
この時期のクラプトンは「ギターよりも歌で自分を証明したい」と語っており、その意志が結実したのがこの一曲でした。

制作陣とサウンドの方向性

共作者はフォリナーのミック・ジョーンズ
彼のアリーナロック的なセンスと、クラプトンのブルース・フィールが混ざり合い、ストレートながらも深みのあるサウンドが完成しました。
プロデュースはラス・タイトルマン。そしてバンドには、フィル・コリンズ(ドラム&コーラス)ピノ・パラディーノ(ベース)、グレッグ・フィリンゲインズ(キーボード)らが参加。
厚みのある演奏陣の支えが、クラプトンのヴォーカルを見事に際立たせています。


歌詞が描く“立ち直り”の物語

『Bad Love』の核心は、失恋ではなく自己再生の宣言です。
クラプトンは自らの過去を否定するのではなく、そこから抜け出す姿を描きました。

“I’ve had enough bad love”(もう苦い愛はたくさんだ)

この一行は、ただの別れの言葉ではありません。
痛みを通して“終わり方を学んだ”男の言葉です。
同じ失恋でも、ここには自嘲も悲観もない。
潔く区切りをつけ、前へ進む姿勢が滲み出ています。


“誇れる愛”を求める意味

I need something I can be proud of.”(誇れる何かがほしい)

恋愛の話のようでありながら、これは人生そのものへのメッセージです。
クラプトンは、もはや情熱や依存を追い求めていません。
必要なのは「自分を誇れる愛」、つまり尊重と信頼に基づく関係
長年の挫折を経た彼だからこそ、この一節には真実味があります。
ここには、若い頃の“レイラ”のような激しさではなく、“落ち着いた希望”が宿っているのです。


“With you here by my side”が示す救い

“With you here by my side, there’s no more bad love.”
(あなたがそばにいれば、もう苦い愛はない)

この“You”は、恋人であると同時に、クラプトンを再び支えた音楽そのものを指しているようにも聞こえます。
依存ではなく“共存”としての愛を描く——それがこの曲の深さです。
彼にとって音楽は、人生の伴侶であり、もう逃げ込む場所ではない。
この一行に、その新しい関係性が凝縮されています。


音と構成 ― “切り裂くリフ”から始まる希望

『Bad Love』を印象づけるのは、冒頭のギター・リフです。
クラプトンの作品の中でも最も明快なフックを持ち、聴いた瞬間に「決意の音」が鳴り響くように感じられます。
その後の展開も極めてストレート。無駄な転調や装飾を避け、リフとコーラスの繰り返しで“断ち切る力”を描き出しています。

No more bad love.”(もう苦い愛はいらない)

繰り返されるこのフレーズが、彼の心のドアを一つずつ開いていくようです。
ロックというよりも“浄化の音楽”に近いといえるでしょう。


サウンドの深層 ― “決意のロック”としての完成度

『Bad Love』は、単なる復活の象徴ではなく、クラプトンが“言葉で前に進む力”を取り戻した証拠です。
その構成はきわめて明快。ギターのイントロで自分の影を断ち切り、コーラスで未来を宣言します。

ミック・ジョーンズがもたらした構築美

共作者のミック・ジョーンズは、フォリナーのヒット曲で培った“アリーナロックの設計図”をクラプトンに提供しました。
しかしクラプトンはそこにブルースの情感を流し込み、単なる商業的ロックとは一線を画しています。
直線的で、飾り気がなく、それでいて温かい。
この“筋の通った音作り”が、彼の再出発を支える骨格となりました。

コーラスの明るさが生む希望

サビの“I’ve had enough bad love”(もう苦い愛はたくさんだ)
を繰り返す部分では、女性コーラスが加わり、言葉の重さが軽やかに昇華されます。
ネガティブな表現を、光の方向へ転換するアレンジ。
クラプトンのボーカルが持つ渋みと、コーラスの明るさが重なる瞬間、悲しみが“前向きな余韻”へと変わります。


グラミー受賞 ― 声で勝ち取った栄光

この曲は1990年のグラミー賞「最優秀ロック・ボーカル・パフォーマンス(男性)」を受賞しました。
注目すべきは、“ギター”ではなく“ボーカル”での受賞だった点です。
クラプトンはかつて“ギターの神様”と呼ばれながらも、そのイメージに縛られていた時期が長く続きました。
『Bad Love』での彼は、技巧を超えて“言葉で自分を語る音楽家”へと変わったのです。

声の深みとリズムの融合

冒頭の
Oh what a feeling I get when I’m with you.”(君といると心が満たされる)
の一節から、声にはもう翳りがありません。
過去の苦しみを抱えたまま、それを受け入れた人間だけが出せる温度です。
サウンドとボーカルが完全に一体化し、“生き直すロック”という新しい表現を生み出しました。


ライブでの進化 ― 音が語る物語

ロイヤル・アルバート・ホールでの衝撃

1991年、ロイヤル・アルバート・ホール公演。
『Bad Love』が1曲目として演奏されると、観客はイントロのリフだけで歓声を上げました。
それは単に人気曲だからではありません。
クラプトンが再びステージの主役に戻ったという“確認の瞬間”だったのです。

この時の演奏は、スタジオ版よりテンポがやや速く、ギターの歪みも強め。
リフが力強く弾き出されるたび、彼の“決意の呼吸”が聞こえるようでした。
『Journeyman』という旅の中で、この曲は「出発の号砲」のような存在だったのです。

バンドとの呼吸

フィル・コリンズの正確なドラム、ピノ・パラディーノの柔らかい低音。
この組み合わせが、クラプトンのボーカルを包み込むように支えています。
彼らの演奏は、クラプトンの心情を翻訳する“もう一つの声”。
ライブごとにテンポや抑揚が微妙に異なり、それがまた彼の人生の変化を映していました。


歌詞の終盤に見える“静かな勝利”

“No more bad love.”(もう苦い愛はいらない)
“Had enough.”(もう十分だ)

同じ言葉を繰り返しながらも、終盤では怒りや痛みが消え、安堵に変わる
クラプトンは、苦しみを完全に否定するのではなく、
「それがあったから今の自分がある」と受け入れているのです。

この繰り返しが、聴き手に不思議な浄化をもたらします。
愛に疲れた人が、自分を許しながら歩き出す——そんな穏やかなエンディング。
それは、彼の“人生の回復”そのものでした。


『Journeyman』という旅の中で

アルバム・タイトル“Journeyman”には「修行中の旅人」という意味があります。
クラプトンにとって、『Bad Love』はその旅の途中で見つけた確信の歌でした。
完璧ではないけれど、確かに前へ進んでいる。その“途中の肯定”が、アルバム全体を貫いています。

この曲を境に、彼は創作のリズムを取り戻し、翌年には『Tears in Heaven』を生み出します。
その深い悲しみの前に、心を整える時間として『Bad Love』があった。
まるで“夜明け前の灯”のような役割を果たしていたのです。


終わりに ― “誇れる何か”を求めて

I need something I can be proud of.”(誇れる何かがほしい)

この一節は、恋愛の枠を超えた普遍のメッセージです。
人間関係、仕事、夢——私たちも同じように「誇れる何か」を探し続けています。
クラプトンはその答えをギターではなく、“生き方そのもの”で示しました。

『Bad Love』は“苦い愛”の歌であると同時に、
“誇れる生き方”へのラブソング。
聴き終えた後に残るのは、悲しみではなく清々しさ。
それが、この曲が30年以上経った今も色あせない理由です。


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