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🎸【ビリー・ジョエル編】第10位『The Longest Time』
第10位は『The Longest Time』です。
Best10に入れた理由を一言で説明するのは難しいのですが、この曲はビリー・ジョエルにしては珍しいアカペラ形式で、強い印象を残します。さらに「The Longest Time」というフレーズが何度も頭の中でリフレインし、まるで「Best10に入れろ!」と迫ってくるような感覚になるのです。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、耳に残る一曲であることは間違いありません。
🎥まずはいつものように、Youtubeの公式動画をご覧ください。
🎬 公式動画クレジット(公式音源)
曲名:Billy Joel – The Longest Time
アルバム:An Innocent Man(1983年)収録
公式チャンネル:Billy Joel Official
📖 2行解説
アカペラ風のコーラスが特徴的な1983年の名曲。
全米Billboard Hot 100でTop20入りを果たし、Billy Joelの代表的バラードのひとつとなった作品です。
冒頭の超約と全体像
『The Longest Time』は、別れの不安や未来の不確かさを抱えながらも、「いま一緒にいられる奇跡」を歌にした作品です。アカペラを主体とする構成はビリー・ジョエルの作品群の中でも特異であり、聴き手に「音楽は声だけでもここまで世界を作れる」という驚きを与えます。派手さよりも親密さを選び、長い余韻を残す楽曲です。

リリースとアルバム背景
発表時期と収録アルバム
この曲は1983年リリースのアルバム『An Innocent Man』に収められています。同作は1950年代から60年代のポップスやドゥーワップに影響を受けたアルバムで、ジョエル自身が青春期に慣れ親しんだ音楽へのオマージュ色が強い作品です。
アルバム全体がノスタルジックなトーンをまとっていますが、その中でも『The Longest Time』はひときわユニークで、ほぼ声だけで成り立っている点に特徴があります。
チャートでの評価
シングルとしても成功を収め、アメリカ・ビルボードのHot 100で14位、アダルトコンテンポラリー部門で1位を記録しました。MTV時代の真っただ中において、楽器を極力排したアカペラ調の曲がここまで受け入れられたのは異例であり、当時の音楽シーンに一石を投じた存在でした。

サウンドの特徴と独自性
アカペラという選択
『The Longest Time』は、ベースラインやパーカッションも含め、ほとんどが人声で演奏されています。
この手法は録音技術的にも挑戦であり、メロディラインだけでなくリズム感や低音を声で補うことで、リスナーに「近い距離感」を演出しました。
シンプルだからこそ残る余韻
楽器に頼らない分、声の質感や息づかいが強調され、歌詞の持つ素朴さがストレートに伝わってきます。例えば冒頭の繰り返しフレーズ
“Oh, oh, oh / For the longest time”
この素朴な一節が、伴奏なしでも空気を塗り替える力を持っていることは、彼の歌唱力と編曲の工夫の両方を証明しています。

歌詞が描くテーマ
不安と希望の交錯
歌詞は未来への不安を滲ませつつ、いま目の前にある幸福を手放さない意志を歌っています。
例えば
“If you said goodbye to me tonight / There would still be music left to write”
(今夜もし君が去ってしまっても まだ僕には書くべき音楽が残っている)
というフレーズは、別れを覚悟しながらも創作の力で希望を見いだそうとする姿勢を表しています。
失われたものと取り戻したもの
かつては「無邪気さを失った」と語りつつも、再び幸福を見出したことが歌詞に描かれています。
この視点はアルバム・タイトル『An Innocent Man』とも響き合い、失ったものを取り戻すという物語性を補強しています。

ビリー・ジョエル自身の語り
制作にまつわる小話
この曲はレコーディングの際、ほとんど楽器を排したため、スタジオでは「本当に売れるのか?」という声もあったといわれます。ジョエル自身も「遊び心から始めた」と語っていますが、結果的にはその冒険心がリスナーに新鮮な驚きをもたらしました。
音楽的ルーツとの結びつき
『The Longest Time』は、ジョエルが少年時代にラジオで聴いたドゥーワップ・グループの影響が色濃く出ています。彼にとっては「音楽を好きになった原点への回帰」であり、キャリアの中盤に差しかかっていた彼があらためて初心を取り戻すきっかけともなりました。

歌詞が映し出す情景
日常と非日常のあいだ
『The Longest Time』の歌詞は、壮大なストーリーではなく、ささやかな心情を描いています。そのため、聴き手は特別な舞台を想像するよりも、日常生活の延長線上にこの曲を置くことができます。
“Maybe this won’t last very long / But you feel so right”
(長くは続かないかもしれない でも君はしっくりくる)
この一節は、現実を見据えながらも目の前の幸せを肯定する、生活感ある視点を象徴しています。

都会の風景との親和性
アカペラによる素朴な響きは、都会の喧騒のなかでふと耳にしたときに、逆に強い印象を残します。派手なアレンジやシンセサウンドに頼らず、あえて人の声だけで紡ぐことで、ニューヨークの街角や深夜のダイナーといった場面に自然に溶け込むような情景が浮かんできます。

聴き手に残る余韻
循環する構造
曲の最後は力強く締めくくらず、あえて余白を残したまま終わります。これにより、聴き手は自然と「もう一度聴きたい」と思わされる仕掛けになっています。この循環性がタイトルの「The Longest Time(とても長い時間)」とも重なり、音楽体験として持続する感覚を与えます。
今なお歌い継がれる理由
合唱やカバーでの広がり
この曲はシンプルな構成ゆえに、学校の合唱やアマチュアコーラスで盛んに取り上げられてきました。楽器を必要としないため再現性が高く、歌う人の世代を問わず親しまれている点が大きな特徴です。

普遍的なメッセージ
歌詞に込められている「不安を抱えながらも幸福を信じる」という姿勢は、時代を超えて共感を呼びます。恋愛の歌としてだけでなく、友情や家族愛など幅広い関係性に置き換えることができる柔軟さも、長く支持される理由でしょう。
本作が持つ位置づけ
アルバム全体の中で
『An Innocent Man』は、ノスタルジーと遊び心を前面に出したアルバムですが、『The Longest Time』はその中で最も素朴で親密な曲です。派手さや技巧に走らず、声そのものの力を信じた点で、このアルバムの精神を象徴していると言えるでしょう。
ビリー・ジョエルのキャリアにおいて
『The Longest Time』は、ジョエルのキャリアにおける「冒険の成功例」として語られます。彼はピアノマンとしての姿が強調されがちですが、この曲では楽器をほぼ使わずにヒットを生み出しました。この挑戦が示したのは、彼が単なるシンガーソングライターにとどまらない「表現の開拓者」であるという事実です。
まとめ
『The Longest Time』は、声だけで成り立つ音楽の力を証明した作品であり、同時に「失った無邪気さを取り戻す」というテーマをそっと描いた楽曲です。リリースから40年以上経った今も合唱やカバーで歌い継がれているのは、そのメッセージが普遍的だからにほかなりません。ビリー・ジョエルの豊かなキャリアの中で、この曲は派手さではなく「持続する余韻」で輝きを放ち続けています。

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