🎸僕の勝手なBest10【エリック・カルメン編】- 第8位『Change of Heart』をご紹介!

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🎸【エリック・カルメン編】第8位『Change of Heart』

本記事では、エリック・カルメンの軌跡を振り返りながら、個人的な視点から選んだ「エリック・カルメンの名曲Best10」をご紹介しています。今回はその第8位として、1978年リリースの『Change of Heart』に焦点を当てます。

この曲は、ラズベリーズ時代のパワーポップとも、ソロ初期に見られたラフマニノフ的バラードとも異なる、新しい側面を示した一曲です。その変化の背景には、セルフプロデュースという大胆な試みと、音楽的成熟がありました。

🎥まずはいつものように、Youtubeの公式動画をご覧ください。

🎬 公式動画クレジット(公式音源)
曲名:Change of Heart(Remastered)
アーティスト:Eric Carmen
提供元:Arista / Legacy(Auto-generated by YouTube)
動画公開日:2014年11月7日
📖 2行解説
1978年発表のアルバム『Change of Heart』収録の表題曲。
リマスター音源で、エリック・カルメンの洗練されたポップセンスが冴えわたります。

セルフプロデュースによる進化

クラシック出身のポップ職人が見せたもう一つの顔

幼少期よりクラシック音楽に親しみ、ジュリアード音楽院での学びを経て、厳格な音楽理論と演奏技術を身につけました。この素養は彼の楽曲の随所に反映されています。

『Change of Heart』が収録された3rdアルバム『Change of Heart』(1978年)では、従来のバラード路線とは異なる爽快なポップ路線へと舵を切っています。プロデュースは前作『Boats Against the Current』に続き自身が担当。AOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)色が強まり、いわゆるウエストコースト・サウンドへと歩み寄った作品となりました。

このサウンドの変化は、彼が単なる失恋ソングの書き手にとどまらず、時代感覚とアレンジセンスを兼ね備えたポップ職人であったことを改めて証明しています。


豪華ミュージシャンが築いた緻密な音世界

ウエストコーストを支えた名手たちの共演

『Change of Heart』には、1970年代後半のアメリカ音楽界を代表するスタジオミュージシャンたちが多数参加しています。その顔ぶれは実に豪華で、AORファンにとっては垂涎のラインナップと言っても過言ではありません。

ドラムス

  • ジェフ・ポーカロ(後にTOTOを結成)
  • ラス・カンケル(ジェームス・テイラー、キャロル・キングとの共演で知られる)
  • ナイジェル・オルソン(エルトン・ジョン・バンドのドラマー)

ベース

  • リーランド・スカラー(ジャクソン・ブラウンやジェイムス・テイラーの常連)
  • マイク・ポーカロ(ジェフの弟で、のちにTOTO正式メンバー)

ギター

  • ダニー・コーチマー(“ザ・セクション”の中心人物)
  • リッチー・ズィトー(後年は映画音楽プロデューサーとしても活躍)

キーボード

  • ジェイ・ウィンディング
  • クレイグ・ダーギー

バックコーラス

  • サマンサ・サング(『Emotion』のヒットで知られる)
  • ブレンダ・ラッセル(後年の『Piano in the Dark』がグラミー賞候補に)
  • ヴァレリー・カーター
  • ブルース・ジョンストン(ビーチ・ボーイズ)

彼らの熟練したプレイが、エリック・カルメンの柔らかく繊細なボーカルを巧みに引き立て、楽曲に深みと輝きを与えています。ここには「スターを支える演奏陣」という域を超えた、音楽職人たちの真摯な姿勢が反映されています。

歌詞が描く心の風景

感傷と現実が交差する導入部

『Change of Heart』の歌詞は、過去の恋愛を回想しながらも、その先にある可能性を探ろうとする視点で描かれています。冒頭のフレーズでは、恋が続いていた頃の甘く明るい記憶が、現在との対比で際立ちます。

I can still recall when we said that our love was forever
All those plans we made for tomorrow that looked so bright

(あのとき、永遠に続くと言い合った愛を今も思い出すよ
明日への希望に満ちたあの計画の数々を)

ここには、ただの懐古ではない「時間に対する実感」が含まれています。過去の情景は鮮やかに蘇りながらも、それが今は失われたものであるという現実が、歌詞の行間から滲んでくるのです。

孤独と未練を内包したAメロ〜Bメロ

続く歌詞では、恋人を失った後の孤独な日々が率直に綴られています。

And I understand all the reasons you gave me for leavin’
But that doesn’t help when I’m sleepin’ alone each night

(君が去った理由はわかっているよ
でも、それでも夜ひとりで眠るのはつらいんだ)

理解を示しつつも、「それでも寂しさは消えない」という本音が吐露されます。この矛盾を抱えた心情は、恋愛経験者であれば誰しもが共感できる部分でしょう。決して感情を誇張することなく、あくまで日常の延長にある孤独が描かれている点に、この曲のリアリティがあります。

希望を捨てないサビのメッセージ

タイトルの本質が宿るリフレイン

サビに入ると、曲は一転して前向きなトーンに変化します。ここで繰り返されるのが、タイトルにもなっている「Change of Heart(気持ちの変化)」という言葉です。

So if you ever have a change of heart
Just remember it’s not too late to start
If you still believe in what love can do

(もし君の心が変わることがあったなら
思い出してほしい、始めるのに遅すぎることはないと
もしまだ、愛の力を信じているのなら)

このフレーズが、楽曲の核心です。過去を悔やむだけでなく、「いつかやり直せるかもしれない」という希望を持ち続ける姿勢が、聴く者の心をそっと励まします。

一度別れた恋人に対してここまで素直になれるのは、決して弱さではありません。むしろ、時間と向き合い、自己を見つめ直したからこそ出てくる率直なメッセージです。

微妙な感情の綾

強がりと本音の絶妙なバランス

この曲の中でも特に興味深いのが、次のような「強がり」と「本音」の交錯です。

I can find somebody else
But no one else can make me feel the way you do

(他の誰かを見つけることだってできるさ
でも、君のように僕の心を動かせる人はいない)

ここには、男性的なプライドと、抑えきれない未練の両方が詰まっています。形式的には強がりを見せながらも、実際には相手への想いを断ち切れていない。こうした「揺れ」の描写が、この曲をより人間味ある作品にしています。

表面的には明るいサウンドに乗せられていますが、内側では複雑な感情が折り重なっています。このギャップが、聴けば聴くほど味わいを深める要因となっているのです。

なぜ今、『Change of Heart』が響くのか

シティポップと呼応する感覚

『Change of Heart』がリリースされたのは1978年。すでに45年以上が経過していますが、楽曲の魅力はまったく色あせていません。むしろ近年になって、日本国内の“シティポップ再評価”の流れの中で、この曲が改めて注目される土壌が整ったともいえるでしょう。

シティポップは、都会的で洗練されたサウンドと、軽快さと哀愁を共存させたメロディが特徴のジャンルです。山下達郎、竹内まりや、大貫妙子、大瀧詠一といったアーティストに代表されるこの音楽潮流は、ここ数年、Z世代や海外リスナーの間で「発見される」現象が起きています。

エリック・カルメンの『Change of Heart』には、まさにその文脈と親和性の高い要素がいくつも存在します。今改めてこの曲を聴くと、まるで1970年代アメリカの音楽と1980年代初頭の東京の街並みがどこかで交差していたかのような錯覚を覚えるほどです。


普遍性を内包したメロディ

時代も世代も超えて届くもの

『Change of Heart』が特別なのは、時代性を超えて聴き手に自然に届く“普遍性”を持っているからです。

その感情は、国や世代を問わず多くの人が体験するものです。そしてそれを、説教臭くならず、センチメンタルに寄りかかることもなく、ごく自然な感情の揺れとして描けていることが、エリック・カルメンという作り手の非凡な点です。

さらに、メロディ自体にも癖がなく、それでいて耳に残る工夫が凝らされています。変化しすぎない展開の中で、聴くたびに気づきが増していくタイプの曲と言えるでしょう。


エリック・カルメンのバラードイメージからの脱却

もう一つの代表作として

『Change of Heart』は、その“繊細な悲しみ”を持ちながらも、同時に“軽快で明るい”という要素を備えており、彼の持つ別の魅力を引き出しています。

AORというジャンルにおいて、このような曲は決して少なくありませんが、ここまで感情とサウンドの両立が自然に溶け合っている例は稀です。

この曲をもって、エリック・カルメンの表現力が単なる「悲しみの人」ではないことを証明しているのです。


まとめ:今こそ聴かれるべき一曲

『Change of Heart』は、1978年という時代の産物でありながら、その表現は驚くほど現代的です。

  • 感情の抑揚を抑えた品のある歌唱
  • 都会的で明るいのに、どこか胸に残るアレンジ
  • 強くならなくてもいい、“受け入れる勇気”を描いた歌詞
  • 自然体で希望を語る余韻

これらは、今の時代だからこそ、多くのリスナーにそっと届くはずです。


🏁 僕の勝手なBest10【エリック・カルメン編】第8位としての位置づけ

今回選んだ『Change of Heart』は、いわゆる代表曲ではありません。しかし、だからこそ“通好みの1曲”として、そして隠れた名曲として紹介する意味があると考えました。

多くのヒット曲に隠れて見過ごされがちなこの曲には、エリック・カルメンの職人性と人間味が、ギュッと凝縮されています。

「まだ聴いたことがない」という方はもちろん、「昔一度聴いたけど忘れていた」という方にも、もう一度その音の風景に触れてほしい。
そしてその中に、**“あなた自身の変化(Change of Heart)”**を重ねてみてください。


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