【7月15日】は、リンダ・ロンシュタットの誕生日!
ジャンルを越境した“アメリカの恋人”
7月15日は、アメリカ音楽界の至宝、リンダ・ロンシュタット(Linda Ronstadt)の誕生日です。1946年、アリゾナ州ツーソンに生まれた彼女は、艶やかな中低音と自在な抑揚で、聴く者の心をつかみ続けてきました。
彼女の歩んだ道は、カントリー、ロック、AOR、ラテン、スタンダードナンバーにまで及び、まさに「ジャンルを越えた表現者」と呼ぶにふさわしいものです。特定のスタイルに縛られることなく、あらゆる楽曲を自分の声で再解釈する姿勢は、他に類を見ません。
また、その凛とした美貌と聡明な佇まいは、単なる“女性シンガー”ではなく、時代の象徴としての存在感を放っていました。
今日の紹介曲:『It’s So Easy』
まずはYoutube動画(公式動画)からどうぞ!!
🎧 公式動画クレジット
🎬 公式クレジット
Linda Ronstadt – “It’s So Easy”
from the album Simple Dreams (1977) Ⓟ Asylum Records / Rhino Entertainment
📝 2行解説
Buddy Hollyの原曲をLinda Ronstadtが力強く再解釈し、1977年に全米チャートTop 5入りの大ヒットを記録しました。彼女の情熱的なボーカルと洗練されたサウンドが、「恋に落ちることの気軽さ」を瑞々しく歌い上げています。
🎧 公式動画クレジット
Linda Ronstadt – "It's So Easy"
from the album Simple Dreams(1977年)
© Warner Music Group(配信:Rhino Entertainment)
📝 2行解説
1977年リリースのロック・アルバム『Simple Dreams』からの人気曲。
Buddy Hollyの原曲を大胆にアレンジした、力強いボーカルが魅力のカバーです。
僕がこの曲を初めて聴いたのは・・・♫
My Age | 小学校 | 中学校 | 高校 | 大学 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60才~ |
曲のリリース年 | 1977 | ||||||||
僕が聴いた時期 | ● |
僕がこの曲を初めて聴いたのはリリース当時で、住まいはいつもの世田谷のアパートでした!
リンダ・ロンシュタットを初めて知ったのがこの曲「It’s So Easy」でした。テンポよく、ノリノリの雰囲気が、お花畑感満載の学生には心地よかったんですね。
ただ、その後も時折彼女の音楽は耳にしましたが、どのジャンルかといったジャンル分けの出来ない方で、広角シンガーといった印象が強いです。
イーグルスが、彼女のバックバンドをやっていた話はあまりにも有名ですね。
※1971年、リンダ・ロンシュタットがツアー・サポート・バンドを探していたとき、プロデューサーのジョン・ボイラン(John Boylan)の紹介で、グレン・フライ(Gt/Vo)、ドン・ヘンリー(Dr/Vo)、バーニー・レドン(Gt)、ランディ・マイズナー(Ba)がバックを務めることになりました。彼ら4人はロンシュタットのライブで演奏するうちに意気投合し、そのまま独立して結成したのが「イーグルス」です(1971年後半に結成、1972年デビュー) 僕は後々この話を知った時は驚きましたね!!
グラミー13冠、ロックの殿堂、そして声を失った後も…
彼女はこれまでに13回のグラミー賞を受賞し、2014年にはロックの殿堂入りを果たしました。2013年にはパーキンソン病によって声を失ったことを公表し、ライブ活動からは引退。しかしその後も、2019年にはグラミー生涯功労賞を受けるなど、彼女の業績は変わらぬリスペクトを集め続けています。

今なお、多くの女性シンガーたちが「自分の原点はリンダ・ロンシュタット」と語るように、彼女は“表現の自由”を体現した先駆者でもあるのです。
1977年、音楽の地殻変動が起きた年
『It’s So Easy』が収録されたアルバム『Simple Dreams』(邦題:夢はひとつだけ)が発表された1977年は、音楽界においても大きな転換期でした。
- イギリスでは、セックス・ピストルズが象徴するパンク・ムーブメントが主流の価値観を破壊。
- アメリカでは、ディスコブームが華やかに広がりつつあり、
- 一方で、スティーリー・ダンの『Aja(彩)』に代表されるAORが、新しいロック像を提示していました。(このスティーリー・ダンの『Aja(彩)』、極上のアルバムです・・・そのうちご紹介します。)
ウェストコーストの逆襲とシンガーソングライターたち
このような多極化が進むなか、リンダ・ロンシュタットは、イーグルスやジャクソン・ブラウンらとともにウェストコースト・ロックの中核として存在感を放っていました。内省的な歌詞とカントリーの温かみを掛け合わせたこのスタイルは、70年代前半に大きな支持を集めた一方、時代の変化により次のフェーズへと移行しつつあったのです。その中でリンダが選んだのが、「原点回帰」でした。

日本の1977年:歌謡曲黄金期とスポーツの記録
一方、同じ年の日本ではピンク・レディーが「渚のシンドバッド」「ウォンテッド」で一世を風靡。キャンディーズが解散を発表し、沢田研二がレコード大賞を受賞するなど、歌謡曲はかつてない盛り上がりを見せていました。
加えて、王貞治選手の通算756号ホームラン達成(9月3日)は、日本列島を歓喜で包み込む象徴的な出来事でした。
洋楽とリンダの立ち位置
当時の日本において、リンダ・ロンシュタットのような洋楽シンガーは、限られた洋楽ファンがレコード店で探し出す“知る人ぞ知る存在”だったかもしれません。しかし、その歌声の魅力は、国や言葉を超えて伝わる普遍性をすでに備えていたのです。
『It’s So Easy』:50年代への敬意と77年の解釈
この年、リンダが放ったのが『It’s So Easy』。元々は1958年、ロックンロール創成期の象徴とも言えるバディ・ホリー&ザ・クリケッツの楽曲です。

バディ・ホリーとリンダのつながり
オリジナルはヒットこそしなかったものの、リンダはこの佳曲に惚れ込み、20年後の1977年に再解釈。バディ・ホリーに対する敬意を表しながらも、自らの表現力でアップデートし、新たな命を吹き込みました。
この姿勢こそ、“最高のインタープリター”としてのリンダ・ロンシュタットの真骨頂だったのです。
歌詞の魅力:「恋に落ちるのって、こんなに簡単!」
“It’s so easy to fall in love”(恋に落ちるのって簡単)と繰り返されるサビは、シンプルながらも耳に残ります。内省や比喩に頼らず、まっすぐに感情を歌い上げるスタイルは、当時としてはむしろ新鮮でした。

理屈より感情、複雑さより楽しさ
1970年代には、ボブ・ディラン以降の内省的な歌詞や、観念的な世界観を持つシンガーソングライターが多く登場していました。そんな中で、『It’s So Easy』のようなストレートな言葉と構成は、時代のカウンターとも言える存在だったのです。
特に、「人は恋なんて愚か者のすることだと言うけれど/私は行くわ、ルールなんて破って」というラインは、当時の女性像の更新をも象徴するメッセージとして受け止められました。
サウンドの魅力:華やかさと切れ味の共存
この楽曲のアレンジは、ピーター・アッシャーのプロデュースによって洗練されたものに仕上がっています。
ギタリストのワディ・ワクテルが骨太なリフを響かせ、リー・スクラーのベースがグルーヴを支えます。さらに、楽曲の中盤にはサックスソロが挿入され、バディ・ホリーの原曲にはなかった大人のエッセンスが加わっています。

“カバー以上のカバー”へ
リンダのボーカルは、軽やかさと自信が絶妙に同居しており、単なる「再演」にとどまらず、50年代の青春ソングを77年の女性による現代的なラブソングへと昇華させています。
『Simple Dreams』の快挙と意義
この楽曲を含むアルバム『Simple Dreams』は、当時全米チャート1位を29週連続でキープしていたフリートウッド・マック『Rumours』を抜いて1位を獲得しました。
これは、女性アーティストが商業的にも批評的にも評価されることが稀だった当時において、大変意義のある出来事です。
インタープリターとしての真価
このヒットは、自ら楽曲を書かずとも、表現者として圧倒的な存在感を示すことができることを証明しました。リンダは「曲を生んだ人」ではなく、「曲に命を吹き込んだ人」としての評価を確立したのです。

結びに:今こそ響く、純度の高いロックンロール
『It’s So Easy』は、過去をなぞるだけでなく、その時代の空気を吸い込んだ新しい解釈として私たちの前に立ち現れました。そして今、ふたたび「シンプルに恋すること」の喜びを歌うこの曲は、複雑な時代にこそ響きます。
未来に残したい、声の遺産
声を失った今もなお、リンダ・ロンシュタットの歌は多くの人々に愛され続けています。『It’s So Easy』はその代表曲として、時代とジャンルを越えて、これからも私たちの心に“恋する力”を届けてくれるでしょう。
『It's So Easy』(Linda Ronstadt):意訳
恋に落ちるのは
あまりにも簡単だった
愚かだとわかっていても
心は理屈を超えていた
ルールを破ってもいいと
思わせるほどの想いがあった
あなたに触れれば
すべてが自然に動き出す
胸の奥が教えてくれる
これは運命なのだと
愛の扉は
もう開いてしまっている
簡単すぎるほど
あなたを好きになっていた
ただそのことに
気づくのが遅かっただけ
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