僕の勝手なBest10 【LOVE PSYCHEDELICO(ラブ・サイケデリコ)】編-第9位『Rain』をご紹介!

LOVE PSYCHEDELICO(ラブ・サイケデリコ)の25年の歴史!

はじめに

デリコの、第9位は『Rain』です。

『Rain』は、2007年6月27日に発売された4枚目のアルバム『Golden Grapefruit』に挿入された曲です。
LOVE PSYCHEDELICOの成熟した時期を示す作品です。再生時間約5分9秒。2020年には公式YouTubeチャンネルでミュージックビデオが公開され、ベスト盤『Complete Singles 2000–2019』ともリンクしながら、過去曲として新たな命を与えられました。

🎥まずはいつものように、Youtubeの公式動画をご覧ください。

🎬 公式動画クレジット(公式音源)
曲名:LOVE PSYCHEDELICO – Rain
チャンネル:LOVE PSYCHEDELICO 公式(登録者数12.6万人)
公開日:2020年6月3日
収録作品:アルバム 『Golden Grapefruit』(2007年6月27日リリース)
📖 2行解説
アコースティックな響きと切ないメロディが印象的な、デリコ中期を代表するナンバー。
都会的で洗練されたサウンドの中に、雨に濡れた感情を映し出した名曲です。

はじめに──『Golden Grapefruit』の中で刻まれた静かな陰影

本作は派手さや爆発的な盛り上がりを持たず、アルバム全体の流れをつなぐ中継点として、都市の湿度や夜の静寂を写し出すように存在しています。全曲を通して聴くと、この楽曲の配置が緊張と緩和を支える大きな役割を果たしていることに気づかされます。


歌詞が描く都市の情景

空虚な街と愛の兆し

歌詞冒頭の「君のいないtownは全景がstone」という一節は、都市に降る雨の冷たさと、誰もいない街の虚無感を端的に示しています。続く「そのtraceは気まぐれなflame」「僕はunder the sun 情感のcloud」という表現では、都会の乾いた風景と感情の揺らぎが重ねられ、雨が降る前の湿度を含んだ空気を感じさせます。

サビの繰り返しが示す心の往復

サビ部分では「Oh, you make me feel」「Oh, make me real」と感覚と現実を往復する言葉が繰り返されます。別バリエーションの「Oh, don’t make me blue」「Oh, you make me blue」では、愛によってもたらされる喜びと不安が交錯します。ここでの繰り返しは単なる言い換えではなく、雨が降り続けるように感情が絶え間なく循環する様子を表現しているのです。

Rainという象徴

「Rain, Oh Rain」「You’re a mysterious woman」というフレーズは、雨そのものが不可解な女性像と重ねられ、愛やロマンスの不確かさを象徴しています。雨が降り注ぐことで感情がリセットされ、新しい始まりを予感させるモチーフとして繰り返されている点は、歌詞全体の核心です。

後半のイメージの拡張

「Sunset」「moon」「虹」という視覚的なモチーフが後半に登場することで、単なる雨の描写から自然現象全体へとスケールが拡張されます。「愛を降らしてよ」「愛がくれるlogic」といった表現は、雨が単なる気象ではなく、愛のメタファーであることをさらに明確に示しています。


音の設計──雨を感じる質感

静けさをまとう導入

曲は控えめなイントロから始まり、聴き手に余白を与えます。派手さを避けたこの導入が、歌詞の“濡れた都市”の雰囲気と呼応し、自然に物語へ引き込んでいきます。

規則性と変化の同居

リズムとコード進行は規則的で、絶え間ない雨粒の落下を想起させます。しかし、一定の規則の中で強弱や展開が変化し、雨脚が急に強まったり弱まったりするような感覚をもたらします。この繰り返しと揺らぎのバランスが、楽曲全体を覆う“気象的な質感”を支えています。

ボーカルの抑制

KUMIの歌唱は力強く押し出すのではなく、抑え気味のトーンを維持しています。淡々とした響きの中に哀しみや解放の余韻を漂わせることで、歌詞の「Rain」という象徴が一層引き立ちます。声量で押すのではなく、抑揚をコントロールすることで世界観を構築しているのです。


アルバム内の役割──流れをつなぐ接着点

『Golden Grapefruit』には「Freedom」や「7 Days」など、動きのある楽曲が配置されています。その中に置かれた『Rain』は、作品全体の色調を調整する接着剤のような存在です。耳をリセットさせ、アルバムを最後まで聴き通すための緩急を与えています。

単曲としても成立しますが、アルバムを通しで聴くときに真価を発揮する楽曲であり、LOVE PSYCHEDELICOが「一枚で世界観を描く」ことを重視している姿勢がよく表れています。

雨というモチーフの文化的な重み

日本の音楽や文学において「雨」はしばしば象徴的な意味を帯びてきました。孤独、再生、感情の浄化といったテーマは古典から現代まで繰り返し描かれてきています。『Rain』もその系譜の中に位置づけられる楽曲です。

ただし、LOVE PSYCHEDELICOの『Rain』は、単に感傷を雨に重ねるのではなく、都市の情景を組み合わせる点が独特です。歌詞に登場する「town」「square」「moon」「sunshine」といった言葉は、抽象的な自然描写ではなく、現代生活の場面を切り取る役割を果たしています。都市に生きる人間の心情を、降りしきる雨と共に描き出したことが、この曲の大きな特色です。


ファンの体験と結びつく『Rain』

記憶を重ねる楽曲

リスナーの感想を見ても、『Rain』は日常の風景と強く結びつく曲として受け止められています。雨の日に聴くと街の景色が違って見える、失恋の帰り道に耳にして気持ちが整理された、といった声が多く聞かれます。これは、歌詞が抽象性と具体性を交互に行き来しているため、聴く人が自身の体験を重ねやすいからです。

感情の循環を再現する構造

サビの反復やRainというフレーズの繰り返しは、同じ表現の羅列ではなく、感情が巡り続ける構造そのものを体現しています。リスナーが自分の体験を投影したとき、その反復がむしろ共鳴の場を提供し、日常的な出来事に音楽的な意味を与えてくれるのです。


ミュージックビデオ公開による再評価

2020年に公式YouTubeでミュージックビデオが公開されたことで、『Rain』はアルバム曲から再び脚光を浴びることになりました。動画概要欄にはベスト盤『Complete Singles 2000–2019』へのリンクが掲載され、過去の楽曲を再提示する一環として紹介されたことが確認できます。

この公開は、新たな世代のリスナーにとっての入口となり、また既存のファンにとっても「アルバムの中の静かな曲」が「映像を伴った作品」として再認識される契機となりました。映像の中で映し出される都市の風景やモノクローム調の演出は、歌詞に含まれる都市性と雨の象徴性を強調し、曲の本質を視覚的に補完しています。


他曲との比較における『Rain』の特異性

アルバム『Golden Grapefruit』の中には、「Freedom」「Aha! (All We Want)」など、明るく推進力を持つ曲が多数収められています。それらがエネルギッシュに展開する中、『Rain』は静かで湿度を帯びた空間を与える対照軸として機能します。

同時期のラブ・サイケデリコ作品の多くは、ギターリフやテンポの推進が印象的でしたが、この曲は抑制された演奏と反復構造によって存在感を示しています。これは単なる“静かな曲”ではなく、アルバムを物語として聴くときに不可欠な要素となっているのです。


まとめ──『Rain』の不変の魅力

『Rain』は、派手なシングル曲のように強く前面に出るタイプの作品ではありません。それでも、都市と雨を結びつける詩的表現、反復による感情の循環、アルバム全体を支える配置、そして映像公開による再評価を通じて、今なおリスナーの記憶に深く刻まれています。

雨という普遍的なモチーフを用いながらも、単なる情緒描写に終わらず、現代都市の風景や人間関係の曖昧さを映し出すことで、唯一無二の存在感を放っているのです。


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