僕の勝手なBest10 【LOVE PSYCHEDELICO(ラブ・サイケデリコ)】編-第8位『Calling You』をご紹介!

LOVE PSYCHEDELICO(ラブ・サイケデリコ)の25年の歴史!

第8位『Calling You』──2013年の「新章」を告げた曲

デリコの第8位は『Calling You』です。

LOVE PSYCHEDELICOのキャリアにおいて大きな転換期を象徴する曲です。
収録アルバムは 2013年4月17日リリースの『IN THIS BEAUTIFUL WORLD』
2000年代初頭の衝動的なロックサウンドから一歩進み、音楽的にも精神的にも「成熟」を印象づける楽曲群が並んだ作品でした。

その中で『Calling You』は、派手なギターリフや爆発的なリズムを抑え、静かな語りかけのような響きで聴く者を惹き込みます。 「デリコのもう一つの顔」を知らしめた楽曲と言ってよい一曲です。

とにかくご機嫌サウンドと、ノリノリが大好きです。(;´∀`)

🎥まずはいつものように、Youtubeの公式動画をご覧ください。

🎬 公式動画クレジット(公式音源)
🎬 LOVE PSYCHEDELICO – Calling You (Official Video)
From: LOVE PSYCHEDELICO Official YouTube Channel
📖 2行解説
2000年代を代表するデビュー期の名曲で、独自の英語混じりの歌詞とグルーヴが印象的。
2020年リリースのベスト盤『Complete Singles 2000-2019』にも収録され、今なおファンに支持され続けている。

言葉が描く「夜」の質感

英語と日本語の二重奏

LOVE PSYCHEDELICOの魅力の核は、英語と日本語を自在に行き来する歌詞表現にあります。
『Calling You』でも、KUMIの書くフレーズは意味だけでなく、響きやリズム感を重視して組み立てられています。

好きさ瞳の奥淡い色の virgin blue
君と踊り明かす夢に舞う butterfly
君と velvet sky

「virgin blue」は純粋で未分化な感情の色合いを示し、「velvet sky」は肌触りまで連想させる夜の濃さを伝えます。
日本語の短いフレーズと英語の比喩的表現を組み合わせることで、聴き手は視覚と触覚の両方に働きかけられ、都会の夜の湿った空気を感じることができます。


「不安」と「予感」の揺らぎ

曲は冒頭から「まだ生まれない不安」を描きます。

まだ生まれない不安にただ dancing alone

ここには、始まりそうで始まらない関係の心細さが凝縮されています。
しかし、物語はすぐに転じます。

今生まれゆく予感はそう forbidden fruits

「禁断の果実」という言葉は、恋が持つ甘美さと危うさを一度に象徴します。
幸福の兆しでありながら、触れるとリスクも孕む。
この両義的な表現こそが、曲全体を支える心理的緊張を形作っています。


サビが放つ普遍的な問い

“What makes the world go round?”

サビで繰り返されるのは次のフレーズです。

What makes the world go round?

直訳は「世界を回しているものは何か?」。
一見壮大な哲学的問いに見えますが、曲全体の流れを考えると、恋に翻弄される主人公の切実な実感が込められていることがわかります。

  • 「どうしてこんなにも心が揺れるのか」
  • 「私を突き動かしているものの正体は何なのか」

この問いが繰り返されることで、聴き手は自らの経験と重ね合わせ、曲を個人的な物語として受け止めることができます。


“Can you hear? My love is calling”

同じくサビで繰り返されるのがこのフレーズです。

Can you hear? My love is calling

ここには二重の意味が潜んでいます。
一つは相手に向けた呼びかけ。もう一つは、自分自身への呼びかけです。
心の奥底で芽生えた愛が、臆病な自分に「動き出せ」と促している。
『Calling You』というタイトルは、単に「相手を呼ぶ」だけではなく、内面に潜む声をも象徴しているのです。


曲構成とドラマ性

『Calling You』の構成は、過度な盛り上げを避けながらも物語性を強く感じさせる設計になっています。

  1. 序盤:不安や孤独を描く
  2. 中盤:サビで緊張感を高め、問いを投げかける
  3. 終盤:愛が答えであると示し、物語を閉じる

約5分の中に「起承転結」が凝縮され、まるで短編映画のような流れを持っています。


リリース当時の背景

2013年という時期は、LOVE PSYCHEDELICOにとって活動の幅をさらに広げた時期でした。
デビューから10年以上を経て、国内外での評価も安定し、英語圏でのライブ活動も精力的に行われていた頃です。
『IN THIS BEAUTIFUL WORLD』はその成熟を象徴するアルバムであり、『Calling You』は「ロック的疾走感だけではないバンドの表現力」を示す代表例として位置づけられました。

物語の結末──問いへの答え

サビで繰り返された「What makes the world go round?」という問いに、終盤で初めて明確な答えが示されます。

Love makes the world go round

シンプルですが、この一文に至るまでの過程が重要です。冒頭の不安、中盤の予感と禁断の果実、そしてサビでの逡巡。それらを経て導き出された結論だからこそ、聴き手に大きな説得力を持ちます。
恋愛の高揚感をただ歌うのではなく、人を動かし世界を回す根源的な力として「愛」が提示される。この展開が『Calling You』をラブソング以上の存在へと押し上げています。


サウンドが支えるドラマ性

『Calling You』は、豪華なアレンジや派手なギターソロを排しているにもかかわらず、強い印象を残します。これは「抑制された音作り」の成果です。

  • ギター:アコースティックが中心となり、繊細なストロークが歌詞を際立たせる。
  • リズム:跳ねずに一定のグルーヴを維持し、落ち着きと緊張感を同時に演出。
  • ヴォーカル:KUMIの声はクリアでありながら、フレーズによっては深みのあるハスキーさをのぞかせ、感情の揺れを表現。

このアレンジにより、曲全体は大きな抑揚を作らずとも緊張と解放の物語を描き切っています。


アルバム全体での役割

『IN THIS BEAUTIFUL WORLD』には、ロックの力強さを前面に押し出した楽曲も多数収録されています。その中で『Calling You』は、聴き手の心拍数を意図的に落ち着ける位置に配置され、アルバムの流れを整理する役割を果たしています。

もし全曲が勢い任せのアップテンポであれば、聴き手は疲弊してしまうでしょう。『Calling You』の存在によって、アルバムは緩急を獲得し、ひとつの物語としての完成度を高めています。


新しい切り口──初めて聴く人へのガイド

1. ライブでの表情

『Calling You』は、ライブではしばしば会場を一気に静寂へと導く曲として演奏されます。
アップテンポな楽曲の合間に差し込まれると、観客は自然と耳を澄まし、ステージと一体感を持って曲の物語に浸ることができます。スタジオ版よりも呼吸が長く取られ、余韻を大切にしたアレンジが施されるのも魅力です。

2. 制作時の空気感

リリース当時、KUMIはインタビューで「夜に生まれる感情を曲にした」と語っています。
日常の中でふと立ち止まり、自分の中から湧き上がる声に耳を傾ける──その瞬間を切り取ったのが『Calling You』でした。アルバムのテーマである「世界と自分のつながり」とも響き合い、この曲は作品全体の核を担う存在になっています。

3. 聴くシチュエーション

この曲の真価は、静かな時間にこそ発揮されます。深夜のドライブ、仕事帰りの電車、窓辺で一人きりの夜。そうした「少し感情が揺れる時間帯」に聴くと、歌詞の一行一行が現実に重なってくるのです。


まとめ──静かな力を持つラブソング

『Calling You』は、LOVE PSYCHEDELICOが2013年に提示した「静かな確信のロック」です。
大音量や速いテンポではなく、抑制された表現で「愛が世界を回す」という普遍的な答えにたどり着く。
派手さはなくとも、聴き手の記憶に長く残る一曲です。

ランキング第8位という位置づけは、「爆発的な衝動」ではなく「深く染み込む強さ」を評価した結果です。
この曲を通して、デリコの幅広い表現力に是非気付いてください。

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