第7位は、【星の指輪】です。
第7位は「星の指輪」です。メロディー的には、第8位の「少年の心」の方が好きですが、なんといっても歌詞ですね。下の超約にもありますが、恋人時代ではなく、夫婦の愛情を描いています。
こういうと多くの読者が引いてしまうかもしれませんが、僕は今でも妻のことが大好きです。
すっかり、いいばあさんになってしまいましたが、それでも大切な人です。
僕は大した取り柄もなく、どちらかというとろくでもない人間ですが、芯の強い彼女は、いうことははっきりと言いながらも、今でも傍にいてくれます。いま彼女は仕事と孫の世話で天手古舞ですが、いつか、そう遠くない日に、短くてもよいので、2人で旅行でもしたい。今はそんな些細なことが僕の夢の一つです。
超約
忙しい日々の中で夢を忘れかけた夫婦が、ある夜ふたたび恋人に戻る。
若い頃の輝きを思い出しながら、「君がいなきゃ何も意味がない」と気づく物語。
夜明け前の空に輝く星を、愛の証としてもう一度贈る――
そんな“再び始まる愛”を静かに描いた歌です。
まずは公式動画をご覧ください。
🎵 公式クレジット
Provided to YouTube by Sony Music Labels Inc.
『星の指輪』- Shogo Hamada(浜田省吾)
© 1993 Sony Music Entertainment (Japan) Inc./Released on: 2013-04-24
💬 2行解説
1993年リリースのアルバム『その永遠の一秒に』収録曲で、別れを受け入れながらも“永遠の愛”を信じる切ないラブソング。
静かなピアノとストリングスが、浜田省吾の抑えたボーカルを引き立てる名バラードです。
はじめに ― “愛の続き”を描いた希少な歌
『星の指輪』は、浜田省吾の数ある名曲の中でも「恋の始まり」ではなく「愛の続き」を描いた、非常に珍しい作品です。
若い恋人たちが夢を追う物語ではなく、結婚して年月を重ねた二人が、ふとした夜にもう一度“恋人”に戻る。
この設定だけで、すでに多くのリスナーが心を掴まれるはずです。

リリース情報と作品の位置づけ
『星の指輪』は1993年にリリースされたアルバム『その永遠の一秒に 〜The Moment of the Moment〜』の収録曲で、翌1994年にはシングルカットされました。
この時期の浜田省吾は、『J.BOY』や『誰がために鐘は鳴る』で描いてきた社会派のロック路線から、より“個人の内面”へとテーマをシフトさせた時期にあります。
バンドサウンドを前面に出した80年代から一転して、90年代初頭の彼は“静かに語る”楽曲を増やしています。
『星の指輪』もその延長線上にあり、派手さはないものの、聴けば聴くほど心に残る構成です。
この曲は特に女性ファンからの人気が高く、コンサートでは静まり返った客席の中に涙をぬぐう人が多く見られました。
「夫婦の愛」を真正面から描くことは、ロックミュージシャンにとっては珍しい挑戦ですが、浜田省吾はそこに照れも皮肉も持ち込みません。
むしろ誠実に、優しく、まっすぐに「君を愛している」と言い切る。
この潔さが、多くのファンの記憶に残り続けている理由です。

歌の冒頭に描かれる“生活のリアル”
歌はこうして始まります。
髪をとかし 化粧して
一番好きな服を着て
子供達 お袋にあずけて
出かけよう 今夜
わずか数行の中に、結婚生活の時間がぎゅっと詰まっています。
子どもを預け、久しぶりに二人で出かける夜。
それは恋人時代のデートではなく、長い時間を共に生きてきた夫婦が、もう一度“恋人の顔”を取り戻す瞬間です。

「歩こう 雨上がりの街」「踊ろう 夜が明けるまで」――。
このシーンの描写に、かつての彼女の笑顔が重なって見えるようです。
浜田省吾の詞は、生活をそのまま描きながらも、どこか映画のワンシーンのようなロマンチックさを保っています。
この“生活の中のドラマ”こそが、90年代以降の彼の作風の核心になっていきました。
変わらぬ愛への確信
サビの一節にこうあります。
ほら 誰もが振り返るよ 君のことを
今も変わらず 俺 君に恋してる
ここに込められたのは、過去への懐かしさではなく“現在進行形の愛”です。
若い頃の恋人を思い出すのではなく、いま目の前にいる相手こそが一番美しい――。
「昔の君が良かった」とは決して言わない。
そこに、浜田省吾というアーティストの誠実さが現れています。
彼は“老い”や“衰え”を恐れず、むしろそれを人間の尊さとして受け止めてきた人です。
『星の指輪』でも、「時間が経っても恋している」という言葉が、自然体のまま響きます。
このリアリティは、経験を重ねた彼だからこそ書けたものでしょう。

失われた夢と、それでも残ったもの
中盤では少しトーンが変わります。
若い頃の計画(ゆめ)なんて もう思い出せない
忙しいだけの仕事に追われているうちに
時には 貧しさの中 夢見る心 捨てたけど
ここで描かれるのは、“現実を生きる大人の姿”です。
恋も夢も、日々の仕事や生活の中で少しずつ磨り減っていく。
しかしこの歌は、そんな自分を責めません。
「君がいなきゃ たとえすべて手にしても/うつろで孤独な日々が続くだけさ」――。
結局、彼が気づいたのは「夢よりも君こそが一番大切だった」という事実です。
この“気づき”が曲全体を温かく包み、聴き終えたあとに静かな幸福感を残します。

ここで強調しておきたいのは、この作品が“愛の理想”を描いているのではなく、“愛の現実”を肯定している点です。
完璧ではない日々、すれ違いや疲れも抱えながら、それでも互いに寄り添う。
この視線こそ、浜田省吾がたどり着いた成熟の表現といえるでしょう。
「星の指輪」という象徴の意味
タイトルにもなっている「星の指輪」は、この曲の最も象徴的なモチーフです。
夜明け前の空に光る星を「指輪」に見立てて贈る――つまり、形のない愛の証を差し出す場面です。
現実的には高価な贈り物ではなく、ただの比喩にすぎません。
けれど、それこそがこの曲の“成熟した愛”を象徴しています。
お金や物ではなく、時間と共に深まってきた信頼や思い出こそが、二人を結ぶ本当の絆。
星の光は手に取れないけれど、確かにそこにある。
そんな普遍的な象徴を通して、浜田省吾は「愛の本質」を静かに描き出しています。

星を指輪にするという発想には、“再び贈る”というニュアンスもあります。
若い頃のプロポーズで渡した指輪の記憶を重ねながら、改めて「もう一度始めよう」と語りかけるような温もりがある。
この比喩に、夫婦の長い旅路と、永遠を誓う再確認の意味が重なって見えてきます。
ライブでの表情とファンの受け止め方
ライブで『星の指輪』が演奏されると、会場全体の空気が柔らかく変わります。
ステージ照明が落ち、静かなピアノのイントロが響く瞬間、観客は自然と息をひそめます。
そしてサビの「今も変わらず 俺 君に恋してる」でふっと涙ぐむ人が多い。
この曲は、浜田省吾のライブの中では“休息の場”のような役割を果たしています。
激しいロックナンバーの合間に挟まれることで、聴く人が自分の人生を思い返す時間になる。
若いファンにとっては「いつかこんな関係になれたら」という憧れの歌であり、
中高年のファンにとっては「自分たちの今を映す鏡」のような歌なのです。

また、彼がこの曲を歌う時の表情は穏やかで、語り口も柔らかい。
まるで自分の家族や友人に向けて話しかけるような親密さがあります。
ロックシンガーとしての鋭さを一瞬だけ緩め、人間・浜田省吾としての素顔を見せてくれる瞬間――それが『星の指輪』の魅力です。
この曲を第7位に選んだ理由
『星の指輪』を「僕の勝手なBest10」で第7位に選んだのは、派手さではなく“深さ”を評価したからです。
浜田省吾の作品には、社会を描いた歌、青春の夢を描いた歌、孤独を描いた歌など、テーマの広がりがあります。
その中でこの曲は、人生の中盤以降にしか届かない“静かな幸福”を描いた希少な存在です。
多くのラブソングは「出会い」か「別れ」を軸にしていますが、『星の指輪』はそのどちらでもない。
「続いていく愛」に焦点を当てています。
このバランス感覚こそが、浜田省吾の成熟と表現の厚みを示していると言えるでしょう。
また、歌詞の中に出てくる「夢見る心を捨てたけど」という一行が、この曲の強度を支えています。
理想を追いかける若者の時代を越え、現実を生き抜く人間の強さと優しさ。
その視点が、ただのラブソングを超えて“人生讃歌”へと変えているのです。
終わりに ― それでも君と歩いていく
『星の指輪』は、結婚生活や長い付き合いの中で“愛が薄れていく”のではなく、“形を変えていく”ことを教えてくれる歌です。
日々の忙しさに追われながらも、心の奥で「君がいてくれてよかった」と思える――それが本当の幸福。

「贈ろう 夜明け前の空に 輝く星を指輪にして」
このラストの一節には、明日への祈りと再出発の光が宿っています。
夜明けは、終わりではなく“新しい朝”の始まり。
浜田省吾は、愛を語ることで、人生そのものを肯定しているのです。
第7位『星の指輪』――それは、若い恋の眩しさを超えた先にある、“静かで確かな愛”の証。
聴くたびに、誰かをもう一度大切にしたくなる、そんな永遠の名曲です。
  
  
  
  

コメント