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➡🌈 優しさで世界を変えた兄妹 ― カーペンターズという奇跡💛
🎸【カーペンターズ編】第11位『This Masquerade』です。
第11位は「マスカレード」です。1973年の曲。もう50年以上前になるんですね。
下の動画紹介のサムネールが、懐かしすぎます。このアルバムはかなり聴きこみました。

当時15歳だった僕は、底なし沼のような洋楽世界の入り口付近に立ったばかり。
当然その頃は、洋楽といっても、耳障りの良いポップス中心に聴いていたので、この「マスカレード」は少し違和感がありました。
今で言う、アダルト・コンテンポラリー(Adult Contemporary)というか、 ソフト・ロック系バラード あるいは スムース・バラードといったもので、つまり僕にとっては新しい音楽ジャンルのように聞こえたのです。
「大好き…!」といった表現で紹介する楽曲ではないけど、僕の音楽の幅を広げてくれた一曲には違いないです。
超約
この曲の主人公たちは、かつては自然に会話ができていたのに、今では互いに“仮面”を外せなくなっています。関係を見つめ直そうと試みても、素直に言葉を交わせず、すれ違いばかりが積み重なる。離れようと考える瞬間もありますが、相手の表情を見ると踏み切れず、曖昧な状態を維持してしまう。この曲は、気持ちが揺らぎ続ける二人が、出口のないループに迷い込んだ姿を静かに描き出しています。
🎥まずはいつものように、Youtubeの公式動画をご覧ください。
🎬 公式動画クレジット(公式音源) 『This Masquerade』— カーペンターズ Provided to YouTube by Universal Music Group A&M Records/ユニバーサル ミュージック グループより提供 🎼2行解説 1973年発表のアルバム『Now & Then』に収録された、関係の停滞を静かに描くアダルト・コンテンポラリー作品。カレン・カーペンターの抑えたボーカルが、二人のすれ違いを淡々と浮かび上がらせる名曲です。
曲の基本情報
マスカレードとは、”仮面舞踏会”のことです。
カーペンターズの作品の中でも、ここまで“沈黙の重さ”を真正面から扱った曲は多くありません。
華やかなアレンジが特徴の彼らのカタログの中に置かれると、この曲は一段と異質で、まるで照明が落ちたステージにひっそりと浮かぶスポットライトのような存在感を放っています。
明るさや優しさを基調にした彼らの代表曲とは違い、関係がうまく進まない二人の静かな空気を淡々と描き、じわりと胸の奥に広がる感覚を残します。

リリース/収録アルバム
『This Masquerade』は、1973年のアルバム『Now & Then』 に収録された1曲です。
オリジナルはシンガーソングライターのレオン・ラッセルが1972年に発表した楽曲で、翌年にカーペンターズがアレンジを変えて取り上げました。
『Now & Then』は、A面にオリジナル楽曲、B面にオールディーズのメドレーを置く構成が特徴のアルバムで、当時の彼らの幅広い音楽性を示す1枚です。その中で『This Masquerade』はA面の最終曲という位置にあり、アルバムの空気を一度沈める“締め”の役割を果たしています。
他の明朗な曲調と比べると、本曲は影の部分を強く感じさせ、当時のカーペンターズにあった“柔らかさの裏側に潜む陰り”を象徴するような存在です。カレンのボーカルは澄んだ響きを保ちながらも、感情を過度に表現せず、曲全体を淡いグラデーションのまま保つ方向でまとめています。このコントロールがこの曲の価値を大きく高めています。
チャートと時代背景
カーペンターズ版『This Masquerade』はシングルカットされていないため、チャート上の具体的な成績は残っていません。しかし、楽曲そのものが持つ評価は高く、1976年にはジョージ・ベンソンが本曲をカバーし、こちらのバージョンが大ヒットを記録。ベンソン版がグラミー賞を獲得したことで、この曲の知名度と評価が一段と上がりました。
1970年代前半のアメリカでは、恋愛の不安定さや心の葛藤を扱った楽曲が増えており、単なるラブソングではない「内観的な作品」がリスナーの共感を集めていました。本作はまさにその潮流の一部であり、カーペンターズの世界観の新たな側面を提示したと言えます。

曲のテーマと世界観
主人公の背景
この曲の主人公たちは、言葉を交わせば交わすほど距離が広がってしまう状況にいます。
お互いを責めたいわけではなく、相手を理解したいという思いは確かに存在している。しかし、感情の置き場所をうまく掴めず、かつて自然にできていたコミュニケーションがぎこちなくなっている。
“話したいのに話せない”という矛盾した状態が続くことで、二人は次第に疲弊し、関係は次の段階に進めないまま停滞してしまいます。

この複雑な状況を、カレンのボーカルは強調しすぎることなく、静かな視線で描きます。
どこか客観的で、感情を押しつけず、状況そのものを淡々と説明するかのような歌唱が、逆に聴き手の心に深く残る構造になっています。
物語の導入
曲の序盤では、主人公たちの間に漂っている“言葉にならない不安”が描かれます。
話し合おうとしても、必要な言葉を見つけられない。理解したい、理解されたいという願いがあるのに、話せば話すほど気持ちが一致しない。そのため、会話を試みること自体が次第に恐れに変わっていきます。
この気まずさや葛藤を、カーペンターズは表面的なドラマチックさで演出せず、あえて淡々と描写します。過剰な感情表現がないぶん、聴き手はより現実に近い“すれ違いの空気”を感じ取り、物語の中の主人公たちに静かに寄り添ってしまうのです。

歌詞の核心部分と解釈
象徴的なフレーズ
本曲では短いフレーズが繰り返し登場し、そのたびに主人公の“動けなさ”が強調されます。
その中でも特に象徴的なのが、
“lost in this masquerade”(仮面のまま迷い込んでしまった)
という一文です。
このフレーズは、単に「仮面をかぶっている」という比喩に留まらず、二人が本心を見せないまま関係を続けている状態そのものを象徴しています。
“lost” は「迷っている」という意味だけではなく、「出口の方向さえ見えない」というニュアンスを含んでおり、主人公たちが抱えている停滞の深刻さを示しています。
また、歌詞の流れを追うと、二人とも“本当は関係を大切にしたい”という気持ちが残っていることが分かりますが、思いを言葉にしようとすると、かえって距離が浮き彫りになるという矛盾が描かれています。この構造が本曲の痛切さを生み出しています。

主人公の心理変化
曲が進むにつれ、主人公の意識は
「何とか理解し合いたい」
から
「どうしてこの状態を続けてしまうのか」
へと変化していきます。
離れようと考える場面は確かにあります。しかし、相手の表情を見た瞬間に迷いが生まれ、結局は現状を変えられない。相手を責めたい気持ちではなく、気持ちを整理できない自分への苛立ちがじわりと滲みます。
主人公は、完全に諦めたわけではありません。むしろ“解決の糸口を探したい”という意志が残っている。しかしその意志が具現化されないまま、元の場所に戻ってしまう。この揺れが曲全体に独特の緊張感を与えています。

サウンド/歌唱の魅力
アレンジの特徴
カーペンターズ版『This Masquerade』は、過度な装飾を排したシンプルな構成が特徴です。
ピアノが主軸となり、控えめなストリングスが背景をゆっくりと彩ります。どのパートも前面に出すぎず、全体が静かに溶け合うような響き方をするため、主人公たちの“言葉にならない関係”をそのまま音響で表現しているようにも感じられます。

リチャード・カーペンターによるアレンジは、原曲のブルージーな雰囲気を残しつつ、より滑らかで透明感のある方向へまとめています。
特に印象的なのは、フレーズの“溜め”を最小限に抑え、あえて直線的で落ち着いた流れを保っているところです。これにより、感情の揺れというよりも“出口の見えない静けさ”が浮かび上がり、曲の世界観にぴったりと寄り添っています。
カレン・カーペンターの歌唱
この曲でのカレンの歌声は、過去の華やかなヒット曲で聴く印象とは異なり、淡々としたナレーションのような静けさを持っています。
決して声量を誇示せず、叫ぶこともなく、わずかな揺らぎの中で淡々と言葉を置いていく――この“抑制”こそが、本曲に奥行きを与える最大の要因です。
カレンは特定の感情を過剰に強調するのではなく、状況の輪郭だけを丁寧になぞるように歌っています。そのため聴き手は、主人公の気持ちを本人の声から直接受け取るのではなく、曲全体の空気から自然に理解する形になります。この“距離感を保った表現”が、曲のテーマである「仮面のままの二人」という構図と見事に一致しています。
Best20で第11位に入る理由(まとめ)
他曲との差別化
カーペンターズの楽曲には、温かさや柔らかさを基調とした作品が多い中、本曲は“静かな葛藤”を扱った希少な存在です。
華やかなポップスの合間に置くと、その重みがさらに強調され、アルバム全体に深みをもたらす役割を果たします。
また、恋人同士の衝突や別れを直接描いた楽曲ではなく、「言葉を交わせないまま続く関係」という非常に繊細なテーマを扱っている点が独特です。感情の爆発ではなく、静かな停滞こそが曲の焦点であり、このアプローチがカーペンターズの中でも異彩を放ちます。

アレンジの節度、カレンの抑制された歌唱、そして物語の描き方――
そのすべてが一歩引いたところから状況を見つめる構造になっており、この立体感こそが本曲を特別なものにしています。
読者が聴き直したくなる一言
『This Masquerade』は、一度聴いた時には気づけなかった“静かに沈んでいく感情”が、聴き返すたびに新しい形で浮かび上がってくる曲です。
華やかではないのに、なぜか心から離れない――その理由を確かめるためにも、ぜひ改めて耳を傾けてみてください。
カレン・カーペンターのわずかな声の揺れが、あなたの記憶のどこかにそっと残るはずです。


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