🎸僕の勝手なBest20【エリック・クラプトン編】- 第11位『Little Wing』をご紹介!

【エリック・クラプトン】について、詳しくはこちらをご覧ください。・・・・
エリック・クラプトン物語 ― 栄光と試練のギターレジェンド!

第11位『Little Wing』

11位は『Little Wing』です。クラプトンはとても好きなアーティストですが、そのなかでも、いわゆる「Layla」アルバム(紹介動画の一番最初のサムネのアルバムです)が一番思い入れが深いので、この曲を選んだのかもしれません。『僕の勝手な・・・』ということで、勘弁してください。

客観的にも見ても、ジミー・ヘンドリックスの名曲でもあるので、選曲自体は問題ないと思います。( ;∀;)

超約

彼女は雲の中を自由に歩きながら、幻想の世界に心を遊ばせている。
悲しいとき、彼女は微笑みと優しさでそっと寄り添い、すべてを受け入れてくれる。
夢と現実の境界に立つ存在——それが“リトル・ウィング”。
彼女の翼は、誰の心にも希望を残して飛び立っていく。

🎥まずはいつものように、Youtubeの公式動画(音源)をご覧ください。

🎬 公式動画クレジット(公式音源)
🎵 クレジット(公式情報)
Little Wing · Derek & The Dominos
℗ 1970 Universal International Music B.V.
Album: Layla and Other Assorted Love Songs(1970年)

💬 2行解説
ジミ・ヘンドリックスの名曲をエリック・クラプトンが敬意を込めてカバーした名演。
クラプトンとデュアン・オールマンのギターが絡み合い、魂の共鳴を感じさせる圧巻の一曲です。
🎬 公式動画クレジット(ライブ音源)
Little Wing (Live from Madison Square Garden) · Eric Clapton · Steve Winwood · Jimi Hendrix
© 2009 EPC Enterprises, LLP / Wincraft Music Ltd. under exclusive license to Surfdog Records
Album: Live from Madison Square Garden(2009年)

📖 2行解説
クラプトンとスティーヴ・ウィンウッドが、伝説のマディソン・スクエア・ガーデンで披露した圧巻の共演。ヘンドリックスへの敬意を込めたギターの対話が、時代を超えて観客を魅了します。

最後はおまけとして、スティングが歌う『Little Wing』(公式)です。聴き比べてみてください。テイストがクラプトンとはだいぶ違います!!

🎵 クレジット(公式情報)
**Little Wing** · Sting
℗ Provided to YouTube by Universal Music Group
Album: *Nothing Like the Sun*(1987年)

💬 2行解説
ジミ・ヘンドリックスの名曲を、スティングがジャズ的な解釈で再構築したカバー。
繊細なヴォーカルと優美なサウンドが融合し、原曲のスピリットを静かに継承しています。

概要とリリース情報

『Little Wing』は、ジミ・ヘンドリックスが1967年に発表した名曲を、エリック・クラプトンが自らの解釈で再構築した作品です。クラプトンはこの曲をデレク・アンド・ザ・ドミノス名義で録音し、1970年のアルバム『Layla and Other Assorted Love Songs』に収録しました。
シングルとしての大きなヒットは狙われておらず、アルバム全体の流れの中で静かな中心を担っています。
演奏はギター、ピアノ、ベースが絶妙に絡み合う小編成で、ヴォーカルよりも音の表情に重きを置いた構成。およそ5分半の中に、派手さではなく穏やかな情熱が宿っています。

音で語るという選択

言葉を減らし、意味を増やす

クラプトン版『Little Wing』では、ボーカルパートが控えめです。
言葉をあえて減らすことで、演奏そのものが語りの中心になります。
ピッキングは柔らかく、音数は最小限。それでも一つひとつの音に“表情”があります。
クラプトンにとってこの曲は、テクニックを誇示するための場ではなく、「感情を音に変換する手段」だったように思われます。

速度とリズムの設計

テンポはゆったりしており、拍を強調せず自然な流れを保っています。
ヘンドリックス版の浮遊感を引き継ぎつつ、クラプトンらしい穏やかな重みを加えたバランス。
一音ごとに呼吸を置くような演奏は、緊張と安らぎが交互に訪れるような心地よさを生み出しています。
この抑制された進行が、アルバム『Layla〜』の中で次の感情の高まりを引き立てる役割を果たしています。

翼のイメージを描く

詩の引用とその再解釈

歌詞の中に、印象的な表現が並びます。

walking through the clouds”(雲の中を歩く)
“butterflies and zebras”(蝶とシマウマ)
“anything you want”(望むものは何でも)

これらの言葉は、現実を軽やかに離れ、自由な感覚を示しています。
クラプトン版では、それを音色の変化で表現しました。
ピッキングの立ち上がりが羽ばたきのように響き、ビブラートの揺れが風の流れを描きます。
詩を直接的に説明する代わりに、音の立ち上がりと消え際で感覚的な情景を再現しているのです。

羽ばたきを感じさせるピッキング

クラプトンのタッチは、決して力強くありません。
弦を軽く押さえ、わずかな振動の違いで表情を変えています。
この繊細なアタックが、歌詞にある「空を歩く感覚」を聴き手に想像させるのです。
まるで音が“上に昇っていく”ような設計で、聴く人の心を柔らかく引き上げます。

和音の響きに込めた静かな動き

コードチェンジの瞬間に、ベース音が一瞬だけ遅れることがあります。
その微妙な“ずれ”が、風の流れのような自然な動きを生み出しています。
演奏全体に統一感がありながらも、わずかな揺れが生命感を与えているのです。
ここには、譜面には書けない“人の体温”があります。

原曲との距離感と位置づけ

ジミ・ヘンドリックス版との対比

オリジナルの『Little Wing』はわずか2分半ほどの小品で、鮮烈な詩情が凝縮されています。
クラプトン版はその骨格を保ちつつも、倍以上の長さを与え、感情をゆっくりと展開させました。
ヘンドリックスが「夢の中の電気的な閃光」を描いたとすれば、クラプトンは「手触りのある現実の夢」を描いたと言えるでしょう。
忠実さと自由さのバランスが絶妙で、敬意がそのまま音楽的成熟に変わっています。

アルバム内で果たした役割

『Layla and Other Assorted Love Songs』は、愛の高揚と痛みを往復するような構成のアルバムです。
その中で『Little Wing』は、感情の波を一度静め、次の章への導線となる位置にあります。
物語のテンポを整える“呼吸の場”として機能しており、全体の構成に深みをもたらしています。
単体で聴いても美しいですが、アルバムの流れの中で聴くと、その意味が倍増します。

制作背景と祈り

録音当時、クラプトンはジミ・ヘンドリックスの死に深く心を痛めていました。
彼にとって『Little Wing』は単なるカバーではなく、尊敬する友への静かな弔辞でした。
派手なアレンジや技巧ではなく、慎みと想いで弾くこと自体が追悼の形となっています。
そのため、聴く者が抱く感情も“哀しみ”ではなく“感謝”に近いものです。
この演奏には、言葉にできない祈りの温度が宿っています。


歌詞の象徴とその読み解き

感情の抽象化

『Little Wing』の歌詞には、具体的な人物や状況は登場しません。

“with a thousand smiles, she gives to me free”(千の笑顔をくれる)
“it’s all right, she said”(大丈夫だと彼女は言う)

この「彼女」は実在の誰かではなく、“希望”や“優しさ”の象徴として描かれています。
クラプトンはその象徴を、音の中に移し替えました。
歌う代わりに弾く。語る代わりに響かせる。
その選択が、彼の音楽観を最も純粋な形で表しているように感じられます。

翻訳しないことで生まれる深み

クラプトン版では、歌詞をすべて伝えようとせず、むしろ“意図的に言葉を省く”ことで聴き手に想像の余地を残しています。
ヘンドリックスが描いた夢の断片を、クラプトンは“静かな映像”として再構築した。
翻訳よりも“響き”で伝えるアプローチは、彼の音楽人生全体に通じる哲学でもあります。

クラプトン版だけが持つ静かな力

祈りのような演奏

このカバーには、ヘンドリックスへの追悼という側面だけでなく、音楽そのものへの感謝が感じられます。
派手な演出や即興を封印し、淡々と演奏を続ける姿勢が、逆に深い人間味を生み出しているのです。
ギターが泣くのではなく、静かに寄り添っているように響く。
聴く者の心の中に“癒し”を置いていくような表現が、この曲を特別なものにしています。

残響ではなく「余韻のない静けさ」

曲が終わったあとも、長くリバーブを残すことはありません。
音が消えた瞬間、静けさだけが残る——その潔さがクラプトンらしい。
多くを語らず、伝えるべきものだけを置いて去る。
それが彼の『Little Wing』の核であり、他のどんなカバーにもない“祈りの構造”です。

後世への影響

クラプトン版『Little Wing』は、その後のアーティストにも多くの示唆を与えました。
ジェフ・ベックやスティーヴィー・レイ・ヴォーンがこの曲をライブで演奏するたびに、彼らの解釈にもどこかクラプトンの静けさが残っています。
激情の表現より、沈黙を音に変えるという発想。
それは、70年代以降の“ロックの成熟”を象徴する転換点でもありました。
クラプトンの“少ない音で伝える”という美学は、今も多くのギタリストに息づいています。

まとめ

『Little Wing』は、クラプトンがジミ・ヘンドリックスに捧げた静かな手紙のような曲です。
力強さよりも誠実さを選び、技巧よりも感情の温度を優先したカバー。
その演奏には、過剰な装飾も、押しつけがましい解釈もありません。
ただ「音を通じて敬意を示す」という一点に集中しています。
アルバムの中では一瞬の小曲に見えますが、聴き手の心には深い印象を残す。(しかし、この曲がなかったらアルバムの完成度は低いものになったと僕は感じています)
クラプトンの長いキャリアの中でも、この“静かな翼”こそ、彼の本質を最も端的に表す1曲といえるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました